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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
最近、サルファー先輩がよそよそしい……何か、俺は先輩に嫌われるようなことをしてしまったんだろうか?
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あの騒動が終わってから、俺は正式に剣術部の一員となり日々鍛錬に励んでいる。
入部を決めた理由は二つ、せめて自分の身くらい守れるようになりたいというのが一つ。もう一つは、堂々とサルファー先輩の側にいられるからだ。
結局下心じゃないか! と言われても構わない。だって、剣術部しか俺には先輩との接点がないのだ。必死にもなるさ。それに、あわよくば下校中、先輩と二人っきりになれるかもしれないし。
ただ、最近サルファー先輩の態度が妙によそよそしい。
俺が話しかけても、どこか上の空。前はよく俺のことを撫でてくれたり、抱き締めてくれたりとスキンシップ多めだったのに。最近は、近付こうとするだけで距離を取られてしまう。
今日なんて、久々に二人っきりで帰れると思ったのに。俺に何か言いかけた後「すまない」と一言残して走り去っていってしまった。
心当たりはない。でも、俺は、何か先輩に嫌われるようなことを、してしまったのだろうか?
とぼとぼと一人、寮を目指して歩いていると、自販機の前に見覚えのあるオレンジ色の頭が見えた。
向こうもこちらに気付いたんだろう。追加で、いつものオレンジジュースを買ってから、先にベンチに腰掛け、俺に手招きをする。
「お疲れーシュンちゃん。オニーサンと一服していかない?」
「頂きます……」
お礼を言って受け取り、ソレイユ先輩の隣に座った。直後だった。
「……サルフに、何かされた?」
反射的に横を向くと、ソレイユ先輩が眉をしかめながら俺を見つめていた。
いつも穏やかな光を湛えているオレンジの瞳が、今は怒りに燃えている。
落ち込んでいるのはバレるとは思っていたけど、まさか相手まで。とにかく、誤解を解かないと。
「先輩は悪くないんです! ……俺が、先輩に……き、嫌われるようなこと……しちゃった、みたいで……」
「サルフがそう言ってたの? シュンちゃんのこと嫌いって」
自分から、嫌われるって口に出すだけでも苦しかった。だけど、もっと苦しかった。
まだ言われてもいないのに、サルファー先輩から嫌いだと告げられる場面を想像して、痛いくらいに胸が締め付けられてしまう。
急に視界がボヤけてきた。喉の奥まで震えてきて、上手く声が出せない。違うって、言わないといけないのに。
「……言われたの?」
肩を震わせながら黙ってしまった俺のせいだ。また、誤解が重なってしまった。ソレイユ先輩の声が、突然低くなる。
慌てて首を何度も横に振ると、少しだけピリピリした空気が和らいだ気がした。
「シュンちゃん……ゆっくりでいいからさ、オレに話してくれない?」
俺の頭を撫でながら、ソレイユ先輩が優しい声で語りかける。
ただそれだけなのに、何だかスゴく安心して……膝の上で握り締めていた手の甲が、こぼれた雫で熱くなった。
「落ち着いた?」
「はい……すみません、ソレイユ先輩」
俺が泣き止むまで、先輩は何も言わずに頭を撫で続けてくれた。
それがとても嬉しくて、とても申し訳なかった。
「いーのいーのオレのことは。それより、今はシュンちゃんの方が大事でしょ」
「ありがとうございます。先輩は、いつも優しいですね」
「……シュンちゃんだからね」
「え?」
「何でもないよー? で、一体何があったの? オニーサンが、キミの力になってあげよう!」
先輩が何か呟いた様な気がしたが、小さくてよく聞き取れなかった。
聞き返そうとしたが、ニコリと笑いながら話題を変えられてしまう。
すっかり、いつも通りに振る舞う先輩を追求する訳にもいかず、俺はぽつぽつと最近のサルファー先輩の様子について話した。
「成る程ね、よしっオニーサンに任せなさい! バッチリ解決してあげるよ!」
「どうするんですか?」
「それは、明日になってからのお楽しみってことで! 放課後いつも通り部活においで。大丈夫、キミの幸せはオレが守るから」
不安げに見つめる俺の背中を励ますように、ソレイユ先輩がぽんぽんと優しく叩く。
俺に微笑みかける先輩が、何故かとても儚げに見えて、また俺の目から涙があふれた。
入部を決めた理由は二つ、せめて自分の身くらい守れるようになりたいというのが一つ。もう一つは、堂々とサルファー先輩の側にいられるからだ。
結局下心じゃないか! と言われても構わない。だって、剣術部しか俺には先輩との接点がないのだ。必死にもなるさ。それに、あわよくば下校中、先輩と二人っきりになれるかもしれないし。
ただ、最近サルファー先輩の態度が妙によそよそしい。
俺が話しかけても、どこか上の空。前はよく俺のことを撫でてくれたり、抱き締めてくれたりとスキンシップ多めだったのに。最近は、近付こうとするだけで距離を取られてしまう。
今日なんて、久々に二人っきりで帰れると思ったのに。俺に何か言いかけた後「すまない」と一言残して走り去っていってしまった。
心当たりはない。でも、俺は、何か先輩に嫌われるようなことを、してしまったのだろうか?
とぼとぼと一人、寮を目指して歩いていると、自販機の前に見覚えのあるオレンジ色の頭が見えた。
向こうもこちらに気付いたんだろう。追加で、いつものオレンジジュースを買ってから、先にベンチに腰掛け、俺に手招きをする。
「お疲れーシュンちゃん。オニーサンと一服していかない?」
「頂きます……」
お礼を言って受け取り、ソレイユ先輩の隣に座った。直後だった。
「……サルフに、何かされた?」
反射的に横を向くと、ソレイユ先輩が眉をしかめながら俺を見つめていた。
いつも穏やかな光を湛えているオレンジの瞳が、今は怒りに燃えている。
落ち込んでいるのはバレるとは思っていたけど、まさか相手まで。とにかく、誤解を解かないと。
「先輩は悪くないんです! ……俺が、先輩に……き、嫌われるようなこと……しちゃった、みたいで……」
「サルフがそう言ってたの? シュンちゃんのこと嫌いって」
自分から、嫌われるって口に出すだけでも苦しかった。だけど、もっと苦しかった。
まだ言われてもいないのに、サルファー先輩から嫌いだと告げられる場面を想像して、痛いくらいに胸が締め付けられてしまう。
急に視界がボヤけてきた。喉の奥まで震えてきて、上手く声が出せない。違うって、言わないといけないのに。
「……言われたの?」
肩を震わせながら黙ってしまった俺のせいだ。また、誤解が重なってしまった。ソレイユ先輩の声が、突然低くなる。
慌てて首を何度も横に振ると、少しだけピリピリした空気が和らいだ気がした。
「シュンちゃん……ゆっくりでいいからさ、オレに話してくれない?」
俺の頭を撫でながら、ソレイユ先輩が優しい声で語りかける。
ただそれだけなのに、何だかスゴく安心して……膝の上で握り締めていた手の甲が、こぼれた雫で熱くなった。
「落ち着いた?」
「はい……すみません、ソレイユ先輩」
俺が泣き止むまで、先輩は何も言わずに頭を撫で続けてくれた。
それがとても嬉しくて、とても申し訳なかった。
「いーのいーのオレのことは。それより、今はシュンちゃんの方が大事でしょ」
「ありがとうございます。先輩は、いつも優しいですね」
「……シュンちゃんだからね」
「え?」
「何でもないよー? で、一体何があったの? オニーサンが、キミの力になってあげよう!」
先輩が何か呟いた様な気がしたが、小さくてよく聞き取れなかった。
聞き返そうとしたが、ニコリと笑いながら話題を変えられてしまう。
すっかり、いつも通りに振る舞う先輩を追求する訳にもいかず、俺はぽつぽつと最近のサルファー先輩の様子について話した。
「成る程ね、よしっオニーサンに任せなさい! バッチリ解決してあげるよ!」
「どうするんですか?」
「それは、明日になってからのお楽しみってことで! 放課後いつも通り部活においで。大丈夫、キミの幸せはオレが守るから」
不安げに見つめる俺の背中を励ますように、ソレイユ先輩がぽんぽんと優しく叩く。
俺に微笑みかける先輩が、何故かとても儚げに見えて、また俺の目から涙があふれた。
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