気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

文字の大きさ
上 下
129 / 519
マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

最近、サルファー先輩がよそよそしい……何か、俺は先輩に嫌われるようなことをしてしまったんだろうか?

しおりを挟む
 あの騒動が終わってから、俺は正式に剣術部の一員となり日々鍛錬に励んでいる。

 入部を決めた理由は二つ、せめて自分の身くらい守れるようになりたいというのが一つ。もう一つは、堂々とサルファー先輩の側にいられるからだ。

 結局下心じゃないか! と言われても構わない。だって、剣術部しか俺には先輩との接点がないのだ。必死にもなるさ。それに、あわよくば下校中、先輩と二人っきりになれるかもしれないし。

 ただ、最近サルファー先輩の態度が妙によそよそしい。

 俺が話しかけても、どこか上の空。前はよく俺のことを撫でてくれたり、抱き締めてくれたりとスキンシップ多めだったのに。最近は、近付こうとするだけで距離を取られてしまう。

 今日なんて、久々に二人っきりで帰れると思ったのに。俺に何か言いかけた後「すまない」と一言残して走り去っていってしまった。

 心当たりはない。でも、俺は、何か先輩に嫌われるようなことを、してしまったのだろうか?



 とぼとぼと一人、寮を目指して歩いていると、自販機の前に見覚えのあるオレンジ色の頭が見えた。

 向こうもこちらに気付いたんだろう。追加で、いつものオレンジジュースを買ってから、先にベンチに腰掛け、俺に手招きをする。

「お疲れーシュンちゃん。オニーサンと一服していかない?」

「頂きます……」

 お礼を言って受け取り、ソレイユ先輩の隣に座った。直後だった。

「……サルフに、何かされた?」

 反射的に横を向くと、ソレイユ先輩が眉をしかめながら俺を見つめていた。

 いつも穏やかな光を湛えているオレンジの瞳が、今は怒りに燃えている。

 落ち込んでいるのはバレるとは思っていたけど、まさか相手まで。とにかく、誤解を解かないと。

「先輩は悪くないんです! ……俺が、先輩に……き、嫌われるようなこと……しちゃった、みたいで……」

「サルフがそう言ってたの? シュンちゃんのこと嫌いって」

 自分から、嫌われるって口に出すだけでも苦しかった。だけど、もっと苦しかった。

 まだ言われてもいないのに、サルファー先輩から嫌いだと告げられる場面を想像して、痛いくらいに胸が締め付けられてしまう。

 急に視界がボヤけてきた。喉の奥まで震えてきて、上手く声が出せない。違うって、言わないといけないのに。

「……言われたの?」

 肩を震わせながら黙ってしまった俺のせいだ。また、誤解が重なってしまった。ソレイユ先輩の声が、突然低くなる。

 慌てて首を何度も横に振ると、少しだけピリピリした空気が和らいだ気がした。

「シュンちゃん……ゆっくりでいいからさ、オレに話してくれない?」

 俺の頭を撫でながら、ソレイユ先輩が優しい声で語りかける。

 ただそれだけなのに、何だかスゴく安心して……膝の上で握り締めていた手の甲が、こぼれた雫で熱くなった。



「落ち着いた?」

「はい……すみません、ソレイユ先輩」

 俺が泣き止むまで、先輩は何も言わずに頭を撫で続けてくれた。

 それがとても嬉しくて、とても申し訳なかった。

「いーのいーのオレのことは。それより、今はシュンちゃんの方が大事でしょ」

「ありがとうございます。先輩は、いつも優しいですね」

「……シュンちゃんだからね」

「え?」

「何でもないよー? で、一体何があったの? オニーサンが、キミの力になってあげよう!」

 先輩が何か呟いた様な気がしたが、小さくてよく聞き取れなかった。

 聞き返そうとしたが、ニコリと笑いながら話題を変えられてしまう。

 すっかり、いつも通りに振る舞う先輩を追求する訳にもいかず、俺はぽつぽつと最近のサルファー先輩の様子について話した。

「成る程ね、よしっオニーサンに任せなさい! バッチリ解決してあげるよ!」

「どうするんですか?」

「それは、明日になってからのお楽しみってことで! 放課後いつも通り部活においで。大丈夫、キミの幸せはオレが守るから」

 不安げに見つめる俺の背中を励ますように、ソレイユ先輩がぽんぽんと優しく叩く。

 俺に微笑みかける先輩が、何故かとても儚げに見えて、また俺の目から涙があふれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」 知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど? お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。 ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...