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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

先生は、気に入ってくれるかな? 褒めてくれるかな?

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 着替え終えた俺の手を取り、腰を抱き寄せて先生がエスコートしてくれる。

「えっと……先生……」

「大丈夫。この時間は、あまり人がいないからね」

 じゃあ、いいか。

 気が緩み、調子に乗った俺は、寄りかかるくらいにくっついてしまった。歩き辛いかなとも思った。が、先生ほどの筋力の持ち主には、いらぬ心配だったよう。

 擽ったそうに微笑みながら、ほとんど俺を抱えるように歩み始めたんだ。

 ほどなくしてマンションの駐車場へと辿り着く。ホントに誰とも会わなかったな。そういえば、ここに来た時も誰とも、すれ違わなかったっけ。もしかしたら、人とあまり会わないような術とか設計とかされてたり?

 ぼんやりとどうでもいいことを考えている内に、先生の足が止まった。

 そこには、ネイビーブルーの車があった。先生の車のようだ。ポケットから取り出したキーを操作して、助手席のドアを開けてくれる。

「さあ、どうぞ」

「ありがとうございます」

 俺がシートに座るのを確認してから、ゆっくりドアを閉めてくれる。先生も運転席へと乗り込んだ。

「じゃあ、行こうか」

「は、はい……」

 シートベルトを閉めた俺の頭をひと撫でしてから、先生もシートベルトを。そして、ハンドルを握った。

 先生の趣味だろうか。カーオーディオから、聞いたことがあるようなクラシックが流れ始める。

 ……なんか、いつも以上にカッコいいかも。

 真剣な面持ちで前を見つめる先生の横顔にドキドキしてしまう。見惚れてしまう。

 ゆったりとしたメロディに耳を傾けながら、ぼんやりと先生を眺めている内に、徐々に車のスピードが落ちてきた。道路の端に停めてから、青い瞳がこちらを向く。

「じゃあ、私はここで待ってるから……大丈夫かい? ぼうっとして」

「あっ……はい、俺、行ってきますね!」

 バタバタと慌ててドアを開け、寮へと急ぐ俺を先生は不思議そうに見つめていた。言えば良かったかな。先生に見惚れてましたって。



 ほんの少しの後悔を胸に、自室に戻る。クローゼットから、以前ライに選んでもらった服一式を取り出した。こんな時の為にと買っておいて、選んでもらっておいて良かった。

 制服を脱いで、取り敢えずベッドの上に。ネイビーのクロップドパンツを穿いて、半袖のボーダーTシャツに袖を通した。

 七分袖の白いシャツを上から羽織ってから、洗面台の鏡で自分の姿を確認する。

「ライは、可愛いよって褒めてくれたけど……先生はどうかな」

 ほんの少しの不安が胸を過る。だけど、先生を待たせたままにしておく訳にはいかない。急がないと。最後に短い髪を整えてから、俺は部屋を後にした。
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