上 下
59 / 460
マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

洗いざらい白状したまえ!

しおりを挟む
「なんだね君ぃ! そういうことなら早く言いたまえよ! ほらっこのケーキは二人で食べたまえ!お邪魔虫の私は、さっさと退散するとしよう!」

 ニヤニヤ笑うセレストさんが、顔を耳まで赤くしている先生を肘でつついてから、俺に白い紙箱を手渡す。

 踵を返して玄関へと向かおうとするセレストさんの腕を、先生が慌てて掴んで止めた。

「どうしたんだね? まさか君……人に見られながらの方が興ふ」
「違うっ! ……急用が入って今から出ないと行けないんだ。夕方には戻るから、それまでシュン君の話し相手になってくれないかい?」

「ああ、なんだ。それならお安い御用だよ。私はてっきり君が変わった性癖の持ち主かと……すまなかった、私が悪かったからその顔を止めてくれ」

 さっきまでの愉快で仕方がないって顔が嘘のように、怯えた表情へと変わっていく。真っ青になりながら、叱られた子犬のように身体をブルブルと震わせているセレストさん。

 俺の方から先生の表情は窺えない。が、広い背中から漂うピリピリとした空気だけで、凄まじい怒りが伝わってきた。きっと鬼のような形相をしているに違いない。

 セレストさんの自業自得とはいえ、可哀想だな。すっかり涙目になっちゃってるし。

「……先生、時間……大丈夫ですか?」

 遅刻しちゃわないか心配なのは事実だし。そう思いながら助け船を出すと、先生がハッとした顔で振り返る。

 目を輝かせながら俺を拝むセレストさんに、思わず吹き出しそうになるのを堪えて、鞄を先生に手渡した。

「いってらっしゃい、グレイ先生」

 彼との身長差をスーツの襟を掴んで、伸び上がって埋めていく。そっと頬に口づけると先生の口元がふわりと綻んだ。

「シュン……いってきます」

 俺の頬にキスを返してくれた先生を、腕組みしながらセレストさんがニタニタと見つめている。

「……シュン君のことは頼んだよ。昼はそこにあるので好きにしていいから、彼にさっきみたいに変なことを言うのだけは止めてくれ」

 ほんのり頬を染めながら先生がセレストさんに釘を刺す。

「分かった分かった。後は私にどーんと任せて君はもう出掛けたまえ! 遅刻してしまうだろう?」

 しっしっと手で追い払うセレストさんに眉をひそめた先生は、俺に微笑みかけると部屋を出ていった。

 ガチャリと施錠音がした後、颯爽とセレストさんが俺の隣に腰掛けてきた。口の端を持ち上げ、足を高く組みながら俺の肩に腕を回してくる。

「さて、邪魔物はいなくなったな……さぁさぁ、私に昨夜のことを洗いざらい白状したまえ! 君の格好を見るに、何もなかった訳ではないだろう?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...