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マッチョな幼なじみと恋人同士になった件(ダンルート)
これから紡いでいく俺達の日々(終)
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いよいよ始まるダンとのルームシェア当日。てっきり、大量の私物を抱えてやってくるもんだと思っていたんだが。
「なぁ……ホントに荷物、それだけしか無いのか?」
「おう」
ダンが俺達の新居へと運んできたのは、大きめの段ボール二つだけ。
デートにて彼の私服を見た感じだと、お洒落に気を使っていたよな。だったら、服だけで二つ分埋まっちゃいそうなんだが。
大柄な背を丸めてしゃがみ込み、黙々と開封していくダン。短く肯定した彼の後から、失礼して覗き込む。
おいおい、服ですらないじゃないか。
「……中身、調理道具ばっかだし」
開いた箱の中には、鍋やフライパン、お玉やフライ返しなどが詰まっていた。
どれも使い込まれてはいるが、手入れが行き届いている。大事に使っているんだろう。
詰めていたり、包んだりしていた新聞紙を退けながら、大きな手がせっせと調理器具を引っ張り出しテーブルの上に次々と並べていく。
「料理が趣味なんだから仕方ないだろ? 後はシュンさえ居てくれればどうでもいいからな」
なっ……俺さえ居ればいいとか……唐突に嬉しいことを言ってくれるなよな……
振り向きざまに、しれっと告白してきたダンはなんの気もなさそうだ。こっちは顔が熱くて仕方がないってのに。
「……よくそんなこと……さらっと言えるよな」
「嬉しいくせに、照れるなよ」
負け惜しみで軽く憎まれ口を叩くも、あっさり見破られてしまった。
にやにやと口許を緩めながら大きな手で俺の頭をわしゃわしゃと撫で回してくる。そっちがその気なら、俺だって。
「……ばか……嬉しいに決まってるだろ」
いきなり素直になったことに驚いたのか、赤い睫毛が瞬いた。
チャンスだ。固まっているダンの頬を両手で掴んで唇を押しつけてやった。これで少しは一矢を報うことが出来ただろうか。
黙ったままの健康的な頬はほんのり染まり、夕日よりも赤い瞳が熱を帯びていく。
筋肉質な太い腕が俺に向かって伸びてきた。
「……おい、あんまり可愛いことすんなよ……襲っちまうぞ?」
肩を優しく抱き寄せられ、腕の中に閉じ込められる。熱い吐息と一緒に低く甘く囁かれ、背筋に淡い感覚が走った。
でも、それだけでは終わらない。耳に触れた柔らかい感触。続けざまに聞こえた、わざとらしいリップ音。
「……シュン」
欲に塗れた声が、俺を誘ってくる。
「……まだ、外、明るいよ?」
「……嫌か?」
イヤじゃないに決まってるだろ、とは言えなかった。言う勇気が無かった。彼に求められて、嬉しくて仕方がないのに。
せめてもと、広く逞しい背中に腕を回す。
やっぱり俺の口から聞きたいんだろうか。だんまりを決め込んでいると、尻をやわやわと揉まれた。優しいけれども、あの痺れるような感覚を思い出させる手つきに堪らなくなってしまう。
「……荷物、片付け終わったら……いいよ」
完敗だ。そもそも勝てる気がしないけれど。
「じゃあ、さっさと済ませねぇとな」
途端に明るい調子になった声。俺の頬に口づけてくれてから、背を向けて再び作業に戻っていく。
「なぁ、これ、食器棚に置いといてくれねぇか?」
「あ、うん」
ダンの手から受け取った手のひらサイズの何か。軽めのそれを包み込む新聞紙を外すと、見覚えしかない茜色が。夕焼け空をプリントしたマグカップが出てきた。
「ダンとペアで買ったコップ……」
「初デート記念の大切な品だからな、これからも二人で沢山思い出作ろうぜ」
振り返り、白い歯を見せながらダンが笑う。俺を見つめる眼差しは、温かくて柔らかい。
俺も満面の笑顔で頷いて、ダンの腕の中へ飛び込んだ。
了
「なぁ……ホントに荷物、それだけしか無いのか?」
「おう」
ダンが俺達の新居へと運んできたのは、大きめの段ボール二つだけ。
デートにて彼の私服を見た感じだと、お洒落に気を使っていたよな。だったら、服だけで二つ分埋まっちゃいそうなんだが。
大柄な背を丸めてしゃがみ込み、黙々と開封していくダン。短く肯定した彼の後から、失礼して覗き込む。
おいおい、服ですらないじゃないか。
「……中身、調理道具ばっかだし」
開いた箱の中には、鍋やフライパン、お玉やフライ返しなどが詰まっていた。
どれも使い込まれてはいるが、手入れが行き届いている。大事に使っているんだろう。
詰めていたり、包んだりしていた新聞紙を退けながら、大きな手がせっせと調理器具を引っ張り出しテーブルの上に次々と並べていく。
「料理が趣味なんだから仕方ないだろ? 後はシュンさえ居てくれればどうでもいいからな」
なっ……俺さえ居ればいいとか……唐突に嬉しいことを言ってくれるなよな……
振り向きざまに、しれっと告白してきたダンはなんの気もなさそうだ。こっちは顔が熱くて仕方がないってのに。
「……よくそんなこと……さらっと言えるよな」
「嬉しいくせに、照れるなよ」
負け惜しみで軽く憎まれ口を叩くも、あっさり見破られてしまった。
にやにやと口許を緩めながら大きな手で俺の頭をわしゃわしゃと撫で回してくる。そっちがその気なら、俺だって。
「……ばか……嬉しいに決まってるだろ」
いきなり素直になったことに驚いたのか、赤い睫毛が瞬いた。
チャンスだ。固まっているダンの頬を両手で掴んで唇を押しつけてやった。これで少しは一矢を報うことが出来ただろうか。
黙ったままの健康的な頬はほんのり染まり、夕日よりも赤い瞳が熱を帯びていく。
筋肉質な太い腕が俺に向かって伸びてきた。
「……おい、あんまり可愛いことすんなよ……襲っちまうぞ?」
肩を優しく抱き寄せられ、腕の中に閉じ込められる。熱い吐息と一緒に低く甘く囁かれ、背筋に淡い感覚が走った。
でも、それだけでは終わらない。耳に触れた柔らかい感触。続けざまに聞こえた、わざとらしいリップ音。
「……シュン」
欲に塗れた声が、俺を誘ってくる。
「……まだ、外、明るいよ?」
「……嫌か?」
イヤじゃないに決まってるだろ、とは言えなかった。言う勇気が無かった。彼に求められて、嬉しくて仕方がないのに。
せめてもと、広く逞しい背中に腕を回す。
やっぱり俺の口から聞きたいんだろうか。だんまりを決め込んでいると、尻をやわやわと揉まれた。優しいけれども、あの痺れるような感覚を思い出させる手つきに堪らなくなってしまう。
「……荷物、片付け終わったら……いいよ」
完敗だ。そもそも勝てる気がしないけれど。
「じゃあ、さっさと済ませねぇとな」
途端に明るい調子になった声。俺の頬に口づけてくれてから、背を向けて再び作業に戻っていく。
「なぁ、これ、食器棚に置いといてくれねぇか?」
「あ、うん」
ダンの手から受け取った手のひらサイズの何か。軽めのそれを包み込む新聞紙を外すと、見覚えしかない茜色が。夕焼け空をプリントしたマグカップが出てきた。
「ダンとペアで買ったコップ……」
「初デート記念の大切な品だからな、これからも二人で沢山思い出作ろうぜ」
振り返り、白い歯を見せながらダンが笑う。俺を見つめる眼差しは、温かくて柔らかい。
俺も満面の笑顔で頷いて、ダンの腕の中へ飛び込んだ。
了
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