気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな幼なじみと恋人同士になった件(ダンルート)

満たされてるのに、もっと欲しくて

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 大柄な身体がゆっくり屈んできて、俺達の額が静かに合わせる。ようやく顔が見えた。いつになく真剣な真っ赤な瞳が俺を射抜く。

 胸が苦しい。心臓がドキドキと高鳴っていく。

「な、なんだ? 大事な、話って」

 上手く言葉が紡げない。声の震えがうつったみたいに握った拳まで震えてきた。

「……お前のこと離さないって……俺、言ったよな?」

「うん」

「ずっと一緒にいてくれるって、約束してくれたよな?」

「……うん」

 ずっと見つめてくれていた赤い瞳が、熱のこもった眼差しが、僅かに揺らいで沈んでいく。

「でも、シュンが倒れた時……俺は、何も出来なかった。セレストさんや、ライのお陰で何とかなったけど……俺は、何も……」

「……ダン」

「……分かってる。分かってるんだ。俺一人の力だけでお前のことを守ろうだなんて……そんなの、傲慢だって」

 顔を伏せ、眉間に深く皺を刻みながらダンが歯噛みする。苦々しい、見ているだけで胸が締めつけられる表情で。

「それは……俺も弁えてるつもりだ。でもあの時、凄く後悔したんだ。こんなことになるなら……お前にちゃんと、俺の気持ちを伝えておくんだったって……」

 ダンがゆっくり顔を上げる。焦がれるような、燃えるような赤い瞳が俺を捉える。

「シュン……好きだ、大好きだ、愛してる……」

 頬に触れてくれた手が熱い。俺の身体も。

「お前のこと、俺なしじゃいられなくするって……前、言ったけどさ……俺の方が、もうお前なしじゃいられなくなっちまった……」

 泣きそうだ。嬉しいはずなのに、視界がじわじわぼやけてきていく。

「俺と、付き合って欲しい……ずっと、俺の側にいてくれないか?」

 答えなんて、もう、決まっていた。

「俺も、ダンじゃなきゃ、嫌だっ……ずっと一緒にいたい……大好きだよ……」

「……シュン!」

 太く逞しい腕が俺の身体を抱き締める。伝わってくる大好きな温もりに、胸がポカポカと温かくなっていく。

 こんなにも幸せなのに、満たされているのに、何でだろう……心の奥底からじわりと欲が湧いてきてしまう。

「……ダン……その…………キス、して欲しい」

 思わず、衝動のまま強請ってしまっていた。腕に込められた力が緩んで、大きな手が俺の頬に添えられる。

 喜びに満ちあふれた笑顔がゆっくり近づいてくる。触れてくれた唇も熱かった。

「……もう一回」

 短くせがむとまた優しく触れてくれた。でも……

 まだ、足りない。まだ、欲しい。もっと、もっと、ダンに触れて欲しい。

 触れれば、すぐに離れていってしまう。追いすがるように太い首に腕を回すと、喉の奥でひそかに笑う声が聞こえた。

「どうした? ずいぶん甘えん坊だな」

「……今朝、してくれなかったから」

 つい、こぼれてしまっていた素直な気持ち。

 嬉しそうに細められていた瞳が、驚いたように見開かれて、じっと見つめられて。急に何だか恥ずかしくなった。

 熱くなった顔ごと目を逸らす。けれども、すぐに顎を掴まれて、向かされてしまう。ダンは、やっぱり嬉しそうに笑っていた。

「そっか……ごめんな、寂しい思いさせて。これからはいっぱいしてやるからな」

 頬に触れるだけのキスをくれたダンが、低く静かな声で囁く。

「今日は、シュンと離れたくない……部屋、泊まっていいよな?」

「うん……俺も、ダンと一緒に」

 言葉の続きは飲み込まれた。噛みつくような勢いで口づけられて。熱い吐息に混じって消えた。
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