上 下
2 / 460
マッチョな幼なじみと恋人同士になった件(ダンルート)

満たされてるのに、もっと欲しくて

しおりを挟む
 大柄な身体がゆっくり屈んできて、俺達の額が静かに合わせる。ようやく顔が見えた。いつになく真剣な真っ赤な瞳が俺を射抜く。

 胸が苦しい。心臓がドキドキと高鳴っていく。

「な、なんだ? 大事な、話って」

 上手く言葉が紡げない。声の震えがうつったみたいに握った拳まで震えてきた。

「……お前のこと離さないって……俺、言ったよな?」

「うん」

「ずっと一緒にいてくれるって、約束してくれたよな?」

「……うん」

 ずっと見つめてくれていた赤い瞳が、熱のこもった眼差しが、僅かに揺らいで沈んでいく。

「でも、シュンが倒れた時……俺は、何も出来なかった。セレストさんや、ライのお陰で何とかなったけど……俺は、何も……」

「……ダン」

「……分かってる。分かってるんだ。俺一人の力だけでお前のことを守ろうだなんて……そんなの、傲慢だって」

 顔を伏せ、眉間に深く皺を刻みながらダンが歯噛みする。苦々しい、見ているだけで胸が締めつけられる表情で。

「それは……俺も弁えてるつもりだ。でもあの時、凄く後悔したんだ。こんなことになるなら……お前にちゃんと、俺の気持ちを伝えておくんだったって……」

 ダンがゆっくり顔を上げる。焦がれるような、燃えるような赤い瞳が俺を捉える。

「シュン……好きだ、大好きだ、愛してる……」

 頬に触れてくれた手が熱い。俺の身体も。

「お前のこと、俺なしじゃいられなくするって……前、言ったけどさ……俺の方が、もうお前なしじゃいられなくなっちまった……」

 泣きそうだ。嬉しいはずなのに、視界がじわじわぼやけてきていく。

「俺と、付き合って欲しい……ずっと、俺の側にいてくれないか?」

 答えなんて、もう、決まっていた。

「俺も、ダンじゃなきゃ、嫌だっ……ずっと一緒にいたい……大好きだよ……」

「……シュン!」

 太く逞しい腕が俺の身体を抱き締める。伝わってくる大好きな温もりに、胸がポカポカと温かくなっていく。

 こんなにも幸せなのに、満たされているのに、何でだろう……心の奥底からじわりと欲が湧いてきてしまう。

「……ダン……その…………キス、して欲しい」

 思わず、衝動のまま強請ってしまっていた。腕に込められた力が緩んで、大きな手が俺の頬に添えられる。

 喜びに満ちあふれた笑顔がゆっくり近づいてくる。触れてくれた唇も熱かった。

「……もう一回」

 短くせがむとまた優しく触れてくれた。でも……

 まだ、足りない。まだ、欲しい。もっと、もっと、ダンに触れて欲しい。

 触れれば、すぐに離れていってしまう。追いすがるように太い首に腕を回すと、喉の奥でひそかに笑う声が聞こえた。

「どうした? ずいぶん甘えん坊だな」

「……今朝、してくれなかったから」

 つい、こぼれてしまっていた素直な気持ち。

 嬉しそうに細められていた瞳が、驚いたように見開かれて、じっと見つめられて。急に何だか恥ずかしくなった。

 熱くなった顔ごと目を逸らす。けれども、すぐに顎を掴まれて、向かされてしまう。ダンは、やっぱり嬉しそうに笑っていた。

「そっか……ごめんな、寂しい思いさせて。これからはいっぱいしてやるからな」

 頬に触れるだけのキスをくれたダンが、低く静かな声で囁く。

「今日は、シュンと離れたくない……部屋、泊まっていいよな?」

「うん……俺も、ダンと一緒に」

 言葉の続きは飲み込まれた。噛みつくような勢いで口づけられて。熱い吐息に混じって消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...