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マッチョな幼なじみと恋人同士になった件(ダンルート)

……別に、寂しいとか思ってないし

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 思えば、今日のダンは朝から様子がおかしかった。

 普段のダンなら朝の挨拶の後には必ず、頬かおでこにキスしてくる。俺がいくら、いきなりは止めて欲しい、と。心臓に悪いから、と何度も訴えても必ず、毎朝笑顔で。なのに……

 今日は、してこなかった。

 おはよう、とは言ってくれたけれど。目すら合わなかった。それとなく俺が声を掛けても、どうかしたか? とぼんやりとした顔で尋ねてくるだけだ。

 そのせいだろう。ライが不思議そうな顔で俺とダンを交互に見比べた後……何故か、シュン、大丈夫? と心配そうに俺の頭を撫でてくれたのは。

 ……いや、別に。……して欲しかった訳じゃないけど。

 ……寂しいとか、思ってないけど。全然。

 登校中も、変わらず様子が変だった。サルファー先輩が俺を抱き寄せようとしても、無言で払いのけるだけ。いつもなら噛みつくような勢いで、俺の相棒に触るな! とか、言ってくれていたのに。

 あまりの大人しさにサルファー先輩は、大丈夫なのか? と心配してくれて、ソレイユ先輩も……ダンくん、何か変な物でも食べちゃったの? と目を白黒させていた。

 授業中も当たり前のようき上の空。グレイ先生から、大丈夫? 保健室行く? と声をかけられた上に、弁当も半分以上残していた。

 朝からずっと理由を聞いたんだけれど……返ってくるのは……うん、だとか。……あぁ、だとか。気の抜けた返事ばかりだ。それ以外は答えてくれない。

 俺の方を見てはくれない。いつも、あんなに真っ直ぐに見つめてくれていた真っ赤な瞳が、今日は一度も。

 結局、何も分からないまま放課後を迎え、俺達はいつも通りの帰路についている。

 もう少しで俺の寮が見えてきた時、ダンが突然立ち止まった。

「……ダン? どうしたんだ?」

 今日、初めてまともに向き合えた顔は、酷く思い詰めていた。ゴツゴツした手が俺の肩を強く掴む。

「……シュン、少し……少しだけでいい。俺に時間をくれないか? 今から、お前と行きたい所があるんだ」

「……別に、いいけど……どこに行くんだ?」

 頷くとまた無言に戻ってしまった。優しく俺の手を引いて、黙々と歩き始める。

 ……どうやら、教えてはくれないらしい。どうせ聞いても、今日のように答えてはくれないんだろう。

 ……仕方がない。ついていけば、その内分かるハズだ。静かに息を吐き、広い背中を見つめながら歩みを進める。

 しばらくそうしていると、見覚えのある公園の入り口が見えてきた。

「ここって……デートの時の?」

 小さく頷いて、またそれっきり。いまだに無言のまま俺を連れ歩いていく。

 時間帯もあってか、園内に人影は一切見られない。街の雑踏から遠ざかったこの場所はひどく静かで、まるで世界に俺とダンの二人っきりになってしまったような錯覚に陥ってしまう。

 青紫色になった雲がのびて、濃いピンク色の空と混ざり合う。建物や草木は真っ黒に塗りつぶされて、まるで影絵の様だ。

 街を見渡せる広い高台へと辿り着く。そこで、ようやく立ち止まると俺の方に向き直った。逆光のせいで、彼の表情がよく見えない。

「……シュン、大事な話がある。聞いてくれるか?」
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