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皆からの「好き」に溺れて
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目が覚めてすぐ視界に映ったのは柔らかい笑顔。
「おはよう、レン」
真っ白なシーツの上で頬杖をつきながら、淡い緑の眼差しがうっとり見つめている。タレ目の瞳はふにゃりと下がり、緩やかな笑みを描いた口元は蕩けるようだ。
……甘い。なんだかとても。見つめられているだけなのに、胸の辺りが擽ったくなってしまう。
「お、おはよう……ヒスイ」
どうにか挨拶を返せた俺に寝起きでもカッコいい顔がゆっくり近づいてくる。布団の中をこっそり這うように動く衣擦れの音が妙に大きく聞こえた。
ゴツゴツした手が頬に添えられ、額が重なり、鼻先がちょこんと先に触れ合う。
もう分かってるのにドキドキしてしまう。キスしてもらえるんだなって分かってるのに。
「ん……は、ん、んっ……」
予想通り重なった俺達。慣れてるよな……やっぱり。受け止めるのがやっとな俺と違って。
柔らかい唇が甘やかすみたいに優しく何度も触れてくれる。時々そっと食まれる度に背筋にぞくぞくした感覚が走って変な気分になってしまう。
「ふ……っ……ん、ぁ……」
すっかり身を任せていると不意に離れていってしまった。喜びに溢れていたハズの笑顔が不満気にくしゃりと歪んでしまっている。
「……ヒスイ?」
「ねぇ、レン……何、考えてたの? 今は俺としてるのに……」
そんなことまで分かるんだな。そりゃそうか。余裕そうだもんな。
「レン?」
ますます寂しさの増した声と瞳。これは全部話した方が良さそうだ。ちょっと照れくさいけれど。
「ああ、ごめん。今も、さっきも……ヒスイのこと考えてたんだ」
「……俺のこと?」
「うん……キス、慣れてるなって、俺のことちゃんと見れるくらい余裕あるんだなって……俺はいっぱいいっぱいだからさ、ヒスイが喜んでくれるようなキスする余裕なんて……んっ」
何故かまた触れてもらえていた。
さっきより熱い温度に求められてるみたいに何度も口づけられて、あっという間に満たされていく。心も頭もふわふわしていく。
「ん、ん、ふ……ぁ、ひすぃ……」
「ごめんね……レン、好きだよ……大好き……」
聞こえる訳ないのに……胸の辺りがきゅって高鳴った気がした。
散々言ってきた言葉。好きだって、ヒスイとまだ幼なじみで親友だった時は平気で言えていたのに。
「俺も……す、好き……」
同じ言葉なのに、何でこんなにドキドキするんだろう。何でこんなに頬が緩んでしまうんだろう。
「レン……」
ゆるりと細められた緑に俺だけが映る。鮮やかな煌めきに見惚れて、吸い込まれそうになっていた時だ。
「はーい! そこまで! みどりんの番は、また後でね」
突然感じた浮遊感。
呆気に取られたヒスイからぐるりと切り替えられ、代わりに視界に映ったのは中性的な眩しい笑顔。
肩まで伸ばした黄色の髪にぴょこんと寝癖をつけた、小型犬のように愛らしい瞳が俺に微笑んでいた。
「だ、ダイキさん」
相変わらず可愛くてカッコいい。
でも、何で彼まで俺の部屋に? いつの間にベッドにいたんだ?
「おはよう、レンレン。もしかして忘れちゃってた? オレ達のこと」
俺の困惑が伝わったんだろう。寂しそうに眉を下げ、細い首をこてんと傾げる。
オレ……達? 更に追加された疑問は、続けて上がった朗らかな声と優しい声によって解消されることになる。
「おはよう、レン! 元気そうで何よりだ!」
「おはよう、レン君。僕達ともおはようのキス、してくれるよね? 皆、君の恋人なんだから、ね?」
皆を乗せた広いベッドが軋んだ音を立てるくらい、筋骨隆々の身体を前のめりにして、爽やかな笑顔を振りまくコウイチさん。
紺色のケースから取り出したスクエアタイプの眼鏡をかけながら、青空のように透き通った瞳を細めるアサギさん。
途端にぽん、ぽん、ぽんと思い出された昨日の甘い混沌。
どうしようない自分を全部告白したにも関わらず、何故か受け入れてくれたどころか、好きだと言ってくれたダイキさんとコウイチさん。
晴れて恋人同士になった皆と夕ご飯を頂いてから、一つのベッドで寝たんだった。ジャンケンに勝ったヒスイとダイキさんに腕枕をしてもらいながら。
「あ」
「もーうっかりさんなんだから! そんなところも可愛いけどさ」
「ごめんなさい……おはようございます、ダイキさん、コウイチさん、アサギさん」
黄、赤、青、嬉しそうに細められた三色の瞳に俺も嬉しくなってしまう。
柔らかい温もりに頬を包まれたかと思えば吐息が触れ合う距離まですでに、ハリウッドのスターみたく華やかなお顔が迫ってきていた。
「レン……好きだよ」
「ぁ……ん、んっ……」
甘く囁く唇に吐息を奪われた。こういう時は鼻でするんだって教えてもらったけれど、疎かになってしまう。
夢中になってしまうんだ。触れ合う度にジンと熱くなるような、頭の奥が痺れるような感覚に。
上手く出来てないのはお見通しらしい。丁度息継ぎがしたくなったタイミングで、クスリと微笑んだ唇が離れていってしまった。
「は、ふ……っダイキさ……」
「……お返事は?」
桜色の唇が艷やかに微笑む。まだ息の整っていない俺の口を、しなやかな指でなぞるみたいに撫でながら。
おへんじ……さっきの、かな?
「す、好き……です……俺も、ダイキさんのこと……」
「良く出来ました」
よしよしと頭を褒めてもらって、頬にキスもしてもらって。のぼせたみたいにぽやぽやしている内に細い腕から逞しい腕へとバトンタッチされていた。
律儀だな……なんて思っていた余裕はあっという間になくなってしまう。
「レン……好きだぞ。俺の想いを受け取ってくれ」
「っ……俺も……好きで、んぅ……は、ん……こういちさ……ふ、んっ、ん……」
好きだって全身で言われてるみたいだ。身動きが取れないくらいに抱き締められて、境が分からなくなるまで繰り返し口づけられて。
……おかしくなりそうだ。好きな人達から絶え間なく触れてもらえて、いっぱい好きを注いでもらえて。もう……俺……
「へばっちゃうのはまだ早いよレン君。僕の気持ちも受け取ってもらわないと……」
「……あさぎ、さ……」
滲んだ視界にいつの間にか柔らかい笑みが映っていた。レンズ越しに見つめる青空がうっとりと微笑んでいる。
「好きだよ……レン君。君も同じ気持ちでいてくれるよね?」
「はぃ……好き、です……アサギさんが好き……んむ……」
満足そうに微笑む唇によって、もう何度目か分からない口づけが送られる。
嬉しくて、熱くて、なんだか気持ちがよくて……もうずっとこのままがいいな、なんて思ってしまう。
穏やかな波に揺蕩うような、優しい日差しに包まれているような……とびきりの心地よさに浸っていた俺の頬を慣れた温もりがそっと包み込んだ。
「……ひふい?」
熱に浮かされている頭と一緒に口まで蕩けたんだろうか。上手く舌が回らない。
けれども頭の方はすぐに覚めた。柔らかく微笑む口から発せられたとんでもないお願いのお陰で。
「今度はレンの方からして欲しいな。俺達全員に、順番にね」
ぐったりしている俺の身体をすっぽり抱き抱えてくれているヒスイ。彼を、俺達を囲むように居住まいを正している三色の瞳が期待に揺れている。
いや、まぁ確かに、もらったんなら返すべきだろうけど。
「ちょ、ちょっと待って……休憩、少し休憩してから……」
流石にインターバルが欲しい。
心臓は壊れそうなくらいにばっくばくだし、身体もなんだかおかしいんだ。ふわふわ、そわそわ、むずむずしてさ。
だから、一旦クールダウンさせてもらわないとマズいのに。
「え? 必要ないでしょ? だって、レン……青岩先輩としてる時、もっとして欲しそうな顔、してたでしょ?」
「あ、ぅ……」
それ以上言葉にならなかった。けど、もう認めているみたいなもんだろう。
確信を得た緑の瞳が嬉しそうに微笑む。
「ふふ、本当にレンは可愛いね……大丈夫だよ。レンが満足出来るまで、俺達がいっぱい愛してあげるからね……」
「良いこと言うねぇ、みどりん! レンレンの為にオレ頑張っちゃうよ!」
「俺も最善を尽くそう! キミを想う気持ちは負けていないからな!」
「僕も精一杯努力するよ。君にもっと好きになってもらえるようにね」
視界を満たす四人の笑顔。
それぞれの手が俺を甘やかすように動く。手を取り繋いでくれるもの、頬を、頭を背中をゆったり撫でてくれるもの。
……俺も、皆に返さなきゃ。応えなきゃ、この温かい想いに。
そう決意を固めたのだけれど。気がつけばまた俺は注がれてしまっていた。
絶え間なく皆が送ってくれる、いっぱいの好きに溺れてしまっていたんだ。博士からのモーニングコールがかかるまでの間、ずっと。
「おはよう、レン」
真っ白なシーツの上で頬杖をつきながら、淡い緑の眼差しがうっとり見つめている。タレ目の瞳はふにゃりと下がり、緩やかな笑みを描いた口元は蕩けるようだ。
……甘い。なんだかとても。見つめられているだけなのに、胸の辺りが擽ったくなってしまう。
「お、おはよう……ヒスイ」
どうにか挨拶を返せた俺に寝起きでもカッコいい顔がゆっくり近づいてくる。布団の中をこっそり這うように動く衣擦れの音が妙に大きく聞こえた。
ゴツゴツした手が頬に添えられ、額が重なり、鼻先がちょこんと先に触れ合う。
もう分かってるのにドキドキしてしまう。キスしてもらえるんだなって分かってるのに。
「ん……は、ん、んっ……」
予想通り重なった俺達。慣れてるよな……やっぱり。受け止めるのがやっとな俺と違って。
柔らかい唇が甘やかすみたいに優しく何度も触れてくれる。時々そっと食まれる度に背筋にぞくぞくした感覚が走って変な気分になってしまう。
「ふ……っ……ん、ぁ……」
すっかり身を任せていると不意に離れていってしまった。喜びに溢れていたハズの笑顔が不満気にくしゃりと歪んでしまっている。
「……ヒスイ?」
「ねぇ、レン……何、考えてたの? 今は俺としてるのに……」
そんなことまで分かるんだな。そりゃそうか。余裕そうだもんな。
「レン?」
ますます寂しさの増した声と瞳。これは全部話した方が良さそうだ。ちょっと照れくさいけれど。
「ああ、ごめん。今も、さっきも……ヒスイのこと考えてたんだ」
「……俺のこと?」
「うん……キス、慣れてるなって、俺のことちゃんと見れるくらい余裕あるんだなって……俺はいっぱいいっぱいだからさ、ヒスイが喜んでくれるようなキスする余裕なんて……んっ」
何故かまた触れてもらえていた。
さっきより熱い温度に求められてるみたいに何度も口づけられて、あっという間に満たされていく。心も頭もふわふわしていく。
「ん、ん、ふ……ぁ、ひすぃ……」
「ごめんね……レン、好きだよ……大好き……」
聞こえる訳ないのに……胸の辺りがきゅって高鳴った気がした。
散々言ってきた言葉。好きだって、ヒスイとまだ幼なじみで親友だった時は平気で言えていたのに。
「俺も……す、好き……」
同じ言葉なのに、何でこんなにドキドキするんだろう。何でこんなに頬が緩んでしまうんだろう。
「レン……」
ゆるりと細められた緑に俺だけが映る。鮮やかな煌めきに見惚れて、吸い込まれそうになっていた時だ。
「はーい! そこまで! みどりんの番は、また後でね」
突然感じた浮遊感。
呆気に取られたヒスイからぐるりと切り替えられ、代わりに視界に映ったのは中性的な眩しい笑顔。
肩まで伸ばした黄色の髪にぴょこんと寝癖をつけた、小型犬のように愛らしい瞳が俺に微笑んでいた。
「だ、ダイキさん」
相変わらず可愛くてカッコいい。
でも、何で彼まで俺の部屋に? いつの間にベッドにいたんだ?
「おはよう、レンレン。もしかして忘れちゃってた? オレ達のこと」
俺の困惑が伝わったんだろう。寂しそうに眉を下げ、細い首をこてんと傾げる。
オレ……達? 更に追加された疑問は、続けて上がった朗らかな声と優しい声によって解消されることになる。
「おはよう、レン! 元気そうで何よりだ!」
「おはよう、レン君。僕達ともおはようのキス、してくれるよね? 皆、君の恋人なんだから、ね?」
皆を乗せた広いベッドが軋んだ音を立てるくらい、筋骨隆々の身体を前のめりにして、爽やかな笑顔を振りまくコウイチさん。
紺色のケースから取り出したスクエアタイプの眼鏡をかけながら、青空のように透き通った瞳を細めるアサギさん。
途端にぽん、ぽん、ぽんと思い出された昨日の甘い混沌。
どうしようない自分を全部告白したにも関わらず、何故か受け入れてくれたどころか、好きだと言ってくれたダイキさんとコウイチさん。
晴れて恋人同士になった皆と夕ご飯を頂いてから、一つのベッドで寝たんだった。ジャンケンに勝ったヒスイとダイキさんに腕枕をしてもらいながら。
「あ」
「もーうっかりさんなんだから! そんなところも可愛いけどさ」
「ごめんなさい……おはようございます、ダイキさん、コウイチさん、アサギさん」
黄、赤、青、嬉しそうに細められた三色の瞳に俺も嬉しくなってしまう。
柔らかい温もりに頬を包まれたかと思えば吐息が触れ合う距離まですでに、ハリウッドのスターみたく華やかなお顔が迫ってきていた。
「レン……好きだよ」
「ぁ……ん、んっ……」
甘く囁く唇に吐息を奪われた。こういう時は鼻でするんだって教えてもらったけれど、疎かになってしまう。
夢中になってしまうんだ。触れ合う度にジンと熱くなるような、頭の奥が痺れるような感覚に。
上手く出来てないのはお見通しらしい。丁度息継ぎがしたくなったタイミングで、クスリと微笑んだ唇が離れていってしまった。
「は、ふ……っダイキさ……」
「……お返事は?」
桜色の唇が艷やかに微笑む。まだ息の整っていない俺の口を、しなやかな指でなぞるみたいに撫でながら。
おへんじ……さっきの、かな?
「す、好き……です……俺も、ダイキさんのこと……」
「良く出来ました」
よしよしと頭を褒めてもらって、頬にキスもしてもらって。のぼせたみたいにぽやぽやしている内に細い腕から逞しい腕へとバトンタッチされていた。
律儀だな……なんて思っていた余裕はあっという間になくなってしまう。
「レン……好きだぞ。俺の想いを受け取ってくれ」
「っ……俺も……好きで、んぅ……は、ん……こういちさ……ふ、んっ、ん……」
好きだって全身で言われてるみたいだ。身動きが取れないくらいに抱き締められて、境が分からなくなるまで繰り返し口づけられて。
……おかしくなりそうだ。好きな人達から絶え間なく触れてもらえて、いっぱい好きを注いでもらえて。もう……俺……
「へばっちゃうのはまだ早いよレン君。僕の気持ちも受け取ってもらわないと……」
「……あさぎ、さ……」
滲んだ視界にいつの間にか柔らかい笑みが映っていた。レンズ越しに見つめる青空がうっとりと微笑んでいる。
「好きだよ……レン君。君も同じ気持ちでいてくれるよね?」
「はぃ……好き、です……アサギさんが好き……んむ……」
満足そうに微笑む唇によって、もう何度目か分からない口づけが送られる。
嬉しくて、熱くて、なんだか気持ちがよくて……もうずっとこのままがいいな、なんて思ってしまう。
穏やかな波に揺蕩うような、優しい日差しに包まれているような……とびきりの心地よさに浸っていた俺の頬を慣れた温もりがそっと包み込んだ。
「……ひふい?」
熱に浮かされている頭と一緒に口まで蕩けたんだろうか。上手く舌が回らない。
けれども頭の方はすぐに覚めた。柔らかく微笑む口から発せられたとんでもないお願いのお陰で。
「今度はレンの方からして欲しいな。俺達全員に、順番にね」
ぐったりしている俺の身体をすっぽり抱き抱えてくれているヒスイ。彼を、俺達を囲むように居住まいを正している三色の瞳が期待に揺れている。
いや、まぁ確かに、もらったんなら返すべきだろうけど。
「ちょ、ちょっと待って……休憩、少し休憩してから……」
流石にインターバルが欲しい。
心臓は壊れそうなくらいにばっくばくだし、身体もなんだかおかしいんだ。ふわふわ、そわそわ、むずむずしてさ。
だから、一旦クールダウンさせてもらわないとマズいのに。
「え? 必要ないでしょ? だって、レン……青岩先輩としてる時、もっとして欲しそうな顔、してたでしょ?」
「あ、ぅ……」
それ以上言葉にならなかった。けど、もう認めているみたいなもんだろう。
確信を得た緑の瞳が嬉しそうに微笑む。
「ふふ、本当にレンは可愛いね……大丈夫だよ。レンが満足出来るまで、俺達がいっぱい愛してあげるからね……」
「良いこと言うねぇ、みどりん! レンレンの為にオレ頑張っちゃうよ!」
「俺も最善を尽くそう! キミを想う気持ちは負けていないからな!」
「僕も精一杯努力するよ。君にもっと好きになってもらえるようにね」
視界を満たす四人の笑顔。
それぞれの手が俺を甘やかすように動く。手を取り繋いでくれるもの、頬を、頭を背中をゆったり撫でてくれるもの。
……俺も、皆に返さなきゃ。応えなきゃ、この温かい想いに。
そう決意を固めたのだけれど。気がつけばまた俺は注がれてしまっていた。
絶え間なく皆が送ってくれる、いっぱいの好きに溺れてしまっていたんだ。博士からのモーニングコールがかかるまでの間、ずっと。
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