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またしても、ソレイユ先輩に悩みを当てられてしまったんだが?
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ここに来てから、学園と自室を行き来するだけの毎日だったからな。コンビニも部屋着で行ってたし。
何度クローゼットを眺めても、ハンガーにぶら下がっているのは制服に軍服、部屋着用のパーカーとTシャツが数着のみ。
下にいたっては、膝下七分丈のハーフパンツしかない。絶望的だ。
この服も、やっぱり例の……俺を召喚したやつが選んだってことだよな?
用意してもらっておいてなんだが……必要最低限すぎるな。生活費まで援助してもらってる手前、文句を言える立場じゃないんだけれど。
とはいえ、せっかくのデートだ。少しくらい、見栄を張りたい。
カッコよくて可愛いダンの隣に並んでも、大丈夫な格好ってのは大前提。後、出来れば少しでもダンに……いいなって思って欲しい。男として。
しかし、そんな服って有るんだろうか? そもそも、何着ていったらいいんだ? デートって。
全然分からん……したこと、ないからなぁ。
悲しみと絶望感が、うめき声になって口から漏れる。気がつけば、吸い込まれるみたいにベッドへ突っ伏していた。
……疲れた。何か、甘いものが欲しい。
ふと、この前ソレイユ先輩に奢ってもらったジュースを思い出した。甘酸っぱい、オレンジジュースを。
「……確か、寮の自販機にも売ってるって言ってたっけ」
このまま一人唸っていても仕方がないか。気分転換もかねて買いに行こう。
◇
自販機は寮から出て、すぐ側にあった。
ラインナップを確認すると、一番上の段の右端にオレンジ色のパッケージが見えた。間違いない。この前のと同じジュースだ。
財布から小銭を取り出し、一枚ずつ投入していく。こ気味のいい音がした後、ボタンが点灯した。
背伸びをしてボタンに手を伸ばしたところで、フッと上から影が落ち、俺より先に誰かの手がボタンを押した。
ガコンと重たい音を立ててジュースが落ちる。
「それが欲しかったんでしょ?」
振り返ると、オレンジ色の瞳と、ウェーブのかかった短めの髪。ゆるりと口角を上げたソレイユ先輩が立っていた。
「ありがとうございます」
取り出し口から缶を取る。ひんやりしていて気持ちがいい。
「いいのいいの。それより、気に入ってくれたんだね。リピーターが増えて嬉しいよ」
ひらひらと手を振りながら、先輩もポケットから取り出した小銭を入れていく。
「いっぱい布教して、しっかり推していかないと……万が一商品変更されたら、たまったもんじゃないからねぇ」
もう一度、ピッとしてからのガコン。お気に入りのジュースを手に、側のベンチに腰掛け微笑む先輩が、隣をポンポンと叩いて俺を招いた。
断る理由もないので、お邪魔させてもらう。少し離れて座ったのに、すぐさまぴたりと距離を縮められてしまった。さり気なく肩に回された長い腕に抱き寄せられて。
……何だかいい匂いがして、落ち着かない。とはいえ、離れるのもおかしい……よな。
されるがまま、黙ったままの俺に満足したのか、よしよしと頭を撫でられた。ご機嫌そうに、ふんふんと鼻歌なんか口ずさみながら、缶を振っている。
入念なシェイクの後、タブを開けると男らしい喉を鳴らしながら、中身を一気に煽り始めた。
「……んで、今日は何を悩んでんの? 幼なじみくんのこととか?」
……まさか、ビシリと言い当てられるなんて。
思わず横を向けば、得意げにニタリと口の端を上げる先輩と目が合った。
「そ、そんなに分かりやすいですか……俺?」
「それもあるんだけどさぁ。昨日、サルフにノロケられちゃって。何でも……シュンちゃんの部屋で、一夜を共にしたとか」
何度クローゼットを眺めても、ハンガーにぶら下がっているのは制服に軍服、部屋着用のパーカーとTシャツが数着のみ。
下にいたっては、膝下七分丈のハーフパンツしかない。絶望的だ。
この服も、やっぱり例の……俺を召喚したやつが選んだってことだよな?
用意してもらっておいてなんだが……必要最低限すぎるな。生活費まで援助してもらってる手前、文句を言える立場じゃないんだけれど。
とはいえ、せっかくのデートだ。少しくらい、見栄を張りたい。
カッコよくて可愛いダンの隣に並んでも、大丈夫な格好ってのは大前提。後、出来れば少しでもダンに……いいなって思って欲しい。男として。
しかし、そんな服って有るんだろうか? そもそも、何着ていったらいいんだ? デートって。
全然分からん……したこと、ないからなぁ。
悲しみと絶望感が、うめき声になって口から漏れる。気がつけば、吸い込まれるみたいにベッドへ突っ伏していた。
……疲れた。何か、甘いものが欲しい。
ふと、この前ソレイユ先輩に奢ってもらったジュースを思い出した。甘酸っぱい、オレンジジュースを。
「……確か、寮の自販機にも売ってるって言ってたっけ」
このまま一人唸っていても仕方がないか。気分転換もかねて買いに行こう。
◇
自販機は寮から出て、すぐ側にあった。
ラインナップを確認すると、一番上の段の右端にオレンジ色のパッケージが見えた。間違いない。この前のと同じジュースだ。
財布から小銭を取り出し、一枚ずつ投入していく。こ気味のいい音がした後、ボタンが点灯した。
背伸びをしてボタンに手を伸ばしたところで、フッと上から影が落ち、俺より先に誰かの手がボタンを押した。
ガコンと重たい音を立ててジュースが落ちる。
「それが欲しかったんでしょ?」
振り返ると、オレンジ色の瞳と、ウェーブのかかった短めの髪。ゆるりと口角を上げたソレイユ先輩が立っていた。
「ありがとうございます」
取り出し口から缶を取る。ひんやりしていて気持ちがいい。
「いいのいいの。それより、気に入ってくれたんだね。リピーターが増えて嬉しいよ」
ひらひらと手を振りながら、先輩もポケットから取り出した小銭を入れていく。
「いっぱい布教して、しっかり推していかないと……万が一商品変更されたら、たまったもんじゃないからねぇ」
もう一度、ピッとしてからのガコン。お気に入りのジュースを手に、側のベンチに腰掛け微笑む先輩が、隣をポンポンと叩いて俺を招いた。
断る理由もないので、お邪魔させてもらう。少し離れて座ったのに、すぐさまぴたりと距離を縮められてしまった。さり気なく肩に回された長い腕に抱き寄せられて。
……何だかいい匂いがして、落ち着かない。とはいえ、離れるのもおかしい……よな。
されるがまま、黙ったままの俺に満足したのか、よしよしと頭を撫でられた。ご機嫌そうに、ふんふんと鼻歌なんか口ずさみながら、缶を振っている。
入念なシェイクの後、タブを開けると男らしい喉を鳴らしながら、中身を一気に煽り始めた。
「……んで、今日は何を悩んでんの? 幼なじみくんのこととか?」
……まさか、ビシリと言い当てられるなんて。
思わず横を向けば、得意げにニタリと口の端を上げる先輩と目が合った。
「そ、そんなに分かりやすいですか……俺?」
「それもあるんだけどさぁ。昨日、サルフにノロケられちゃって。何でも……シュンちゃんの部屋で、一夜を共にしたとか」
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