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みんなが一緒なら、大丈夫……きっと
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赤、青、黄色、ピンクに紫。色とりどりの珊瑚礁がお花畑みたいに広がっている庭の奥に、それは有った。真っ赤で大きくて立派で、俺が二人のところへ来たときにくぐったんであろう、古びた小さな社とは到底同じものに見えない建物が。
海をそのまま閉じ込めたようなタツミさんの瞳と、鳥居に向かって伸ばした青白い指先が淡い光を帯びる。それに応えるみたいに社の全体がぼうっと輝き、白い光が俺達を照らした。
「ここを通れば現世の、サトルちゃんの生まれた村まで一気にひとっ飛びってわけさ」
くるりと振り返ったタツミさんがキラキラした水面みたいな長い髪をかきあげ、ニッと笑う。
「……そこに、父さんが居るんだよね」
「ああ……恨みによって人神へと成ってしまった君のお父さんがね」
さっきまでのはつらつとした声とは違う、冷たく抑揚のない声が紡ぐ事実に。胸に、重たい石が乗っかったみたいに息が詰まって苦しくなる。
「サトルちゃん……」
「サトル……」
俺の不安が伝わっちゃったのかな? 左右から呼びかけてくれる高めの声と低めの声には、心配そうな響きが宿っていた。
赤と青の鱗で覆われた二本の尻尾が、俺の腰辺りにしゅるりと巻きつく。繋いだ二色の大きな手が、俺の手をぎゅっと握り直してくれる。大丈夫だよって言ってくれているみたいに。
不意に、ぽん、ぽんっと俺の背中や頭を優しく叩く感触に後ろを向けば、ゆるりと細められた緑色の瞳とかち合う。ジンさんだ。ガッチリとした褐色の腕を組み、背中から生えた二本の腕で俺の白い髪をわしゃわしゃと撫で回してくれる。
「ありがとうジンさん……大丈夫だよセイ、ソウ」
「まっお前には俺様達がついてっからな! 呪いだろうが、祟りだろうが一捻りだぜっ」
紫の瞳を輝かせ、意気揚々と言い放つカミナは相変わらずだ。いつの間にか俺を軽々と浅黒く太い腕で抱き抱え、額をこつんと合わせて白い歯を見せる。
「うんっ頼りにしてるよ、カミナ」
「おう、やっとこさイイ面になったな、その調子だ!」
高い高いするみたいに俺を抱き上げてから、青い鱗が散りばめられた分厚い胸板へと俺をぽすんっと押しつける。しっかり抱き止めてくれたセイの腕の中にいる俺の頬を、大きな手で包み込んだかと思えば無遠慮にムニムニと、太い指で摘まみ始めてしまった。
「なんせ今日は、おめぇらにとって一世一代の大舞台なんだからよぉ」
「おおぶふぁい?」
カミナから好き勝手に遊ばれているせいで、上手く喋れない。
「まぁ……確かに、サトルの親父さんを救おうってんだからなぁ」
そんな俺の疑問に、大舞台つぅか大勝負か? と応えたジンさんの、左側だけ長く丁寧に編まれた黒髪が、首の傾きに合わせて揺れる。続けて耳に下がった飾りが小さな音を鳴らす。
「そいつは当然としてよぉ。もっと大事なのはその先だぜ」
ぺちぺちと腰を叩き続ける赤く長い尻尾からの訴えにびくともしないし。俺を抱えるセイの、ソウとお揃いの金の瞳が向ける抗議の視線にも、物ともしないカミナが唇を尖らせる。いまだに太い指で俺の口元を、無理矢理笑顔の形で固定しながら。
「もしかして、魂の浄化のことかい? それなら恨みさえ鎮めてしまえばどうとでも……」
「ちげぇよ、報告すんだろうがっ! 結婚の!!」
尖った水色の爪の先で組んだ自分の二の腕を、とん、とんと一定のリズムで叩いていたタツミさんの言葉を遮り。お腹にずんずんと響く大声を放ったカミナのごつごつした手が、ようやく俺の頬を解放した。
みんな、きょとんと目を丸くしたのも一瞬で、
「勿論、俺様はサトルの料理の師匠として、挨拶させてもらうからなっ」
「だったら俺は友人だなぁ」
逞しい胸を張り、得意気に笑うカミナに続き、ジンさんが、がっしりした彼の肩に肘を置き、目尻を下げ。
「じゃあ僕は仲人だね。あれだけ長い間付き合ったんだ、当然だろう?」
細い腕で大柄な二人を押し退け、俺の視界に入ってきたタツミさんがフフンと鼻を鳴らす。
「ははっ、随分騒がしい挨拶になりそうだね」
「いいんじゃないか? 俺達らしくて。賑やかなのはいいことだぞ」
「……だね」
明るいざわめきに包まれながら、クスクスと目配せしていた大好きな四つの金色が。
力強く輝く紫が、温かい光を湛えた緑が、穏やかに見つめる青が。
みんなと違ってなんの力もないちっぽけな俺に、溢れそうなくらいの勇気をくれる。
きっと上手くいくって、大丈夫だって……そう、強く信じることが出来るんだ。
「みんな……よろしくね」
震えそうな喉から声を振り絞り、熱い目元を拭った俺に、頼もしい五人の声が力強く応えてくれた。
海をそのまま閉じ込めたようなタツミさんの瞳と、鳥居に向かって伸ばした青白い指先が淡い光を帯びる。それに応えるみたいに社の全体がぼうっと輝き、白い光が俺達を照らした。
「ここを通れば現世の、サトルちゃんの生まれた村まで一気にひとっ飛びってわけさ」
くるりと振り返ったタツミさんがキラキラした水面みたいな長い髪をかきあげ、ニッと笑う。
「……そこに、父さんが居るんだよね」
「ああ……恨みによって人神へと成ってしまった君のお父さんがね」
さっきまでのはつらつとした声とは違う、冷たく抑揚のない声が紡ぐ事実に。胸に、重たい石が乗っかったみたいに息が詰まって苦しくなる。
「サトルちゃん……」
「サトル……」
俺の不安が伝わっちゃったのかな? 左右から呼びかけてくれる高めの声と低めの声には、心配そうな響きが宿っていた。
赤と青の鱗で覆われた二本の尻尾が、俺の腰辺りにしゅるりと巻きつく。繋いだ二色の大きな手が、俺の手をぎゅっと握り直してくれる。大丈夫だよって言ってくれているみたいに。
不意に、ぽん、ぽんっと俺の背中や頭を優しく叩く感触に後ろを向けば、ゆるりと細められた緑色の瞳とかち合う。ジンさんだ。ガッチリとした褐色の腕を組み、背中から生えた二本の腕で俺の白い髪をわしゃわしゃと撫で回してくれる。
「ありがとうジンさん……大丈夫だよセイ、ソウ」
「まっお前には俺様達がついてっからな! 呪いだろうが、祟りだろうが一捻りだぜっ」
紫の瞳を輝かせ、意気揚々と言い放つカミナは相変わらずだ。いつの間にか俺を軽々と浅黒く太い腕で抱き抱え、額をこつんと合わせて白い歯を見せる。
「うんっ頼りにしてるよ、カミナ」
「おう、やっとこさイイ面になったな、その調子だ!」
高い高いするみたいに俺を抱き上げてから、青い鱗が散りばめられた分厚い胸板へと俺をぽすんっと押しつける。しっかり抱き止めてくれたセイの腕の中にいる俺の頬を、大きな手で包み込んだかと思えば無遠慮にムニムニと、太い指で摘まみ始めてしまった。
「なんせ今日は、おめぇらにとって一世一代の大舞台なんだからよぉ」
「おおぶふぁい?」
カミナから好き勝手に遊ばれているせいで、上手く喋れない。
「まぁ……確かに、サトルの親父さんを救おうってんだからなぁ」
そんな俺の疑問に、大舞台つぅか大勝負か? と応えたジンさんの、左側だけ長く丁寧に編まれた黒髪が、首の傾きに合わせて揺れる。続けて耳に下がった飾りが小さな音を鳴らす。
「そいつは当然としてよぉ。もっと大事なのはその先だぜ」
ぺちぺちと腰を叩き続ける赤く長い尻尾からの訴えにびくともしないし。俺を抱えるセイの、ソウとお揃いの金の瞳が向ける抗議の視線にも、物ともしないカミナが唇を尖らせる。いまだに太い指で俺の口元を、無理矢理笑顔の形で固定しながら。
「もしかして、魂の浄化のことかい? それなら恨みさえ鎮めてしまえばどうとでも……」
「ちげぇよ、報告すんだろうがっ! 結婚の!!」
尖った水色の爪の先で組んだ自分の二の腕を、とん、とんと一定のリズムで叩いていたタツミさんの言葉を遮り。お腹にずんずんと響く大声を放ったカミナのごつごつした手が、ようやく俺の頬を解放した。
みんな、きょとんと目を丸くしたのも一瞬で、
「勿論、俺様はサトルの料理の師匠として、挨拶させてもらうからなっ」
「だったら俺は友人だなぁ」
逞しい胸を張り、得意気に笑うカミナに続き、ジンさんが、がっしりした彼の肩に肘を置き、目尻を下げ。
「じゃあ僕は仲人だね。あれだけ長い間付き合ったんだ、当然だろう?」
細い腕で大柄な二人を押し退け、俺の視界に入ってきたタツミさんがフフンと鼻を鳴らす。
「ははっ、随分騒がしい挨拶になりそうだね」
「いいんじゃないか? 俺達らしくて。賑やかなのはいいことだぞ」
「……だね」
明るいざわめきに包まれながら、クスクスと目配せしていた大好きな四つの金色が。
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きっと上手くいくって、大丈夫だって……そう、強く信じることが出来るんだ。
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