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【番外編】みんなとクリスマス、二人からのプレゼント
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「俺のことよりよぉ……雪遊びで身体、冷えちまっただろ? 丁度、ホットココアを作ってたんだ。用意すっから座ってな」
まだ少し目元と頬が赤いジンさんが、俺を三つ並んだ真ん中の席に座らせてから、五つのマグカップを鍋の近くに並べていく。
お玉で茶色の液体をそれぞれのカップに注いで、透明な袋いっぱいに詰まった白くて柔らかそうな丸いものを三つずつ、ココアにそっと浮かべていった。
「マシュマロココアか。美味しそうだな!」
「ふふっ、セイとサトルちゃんは好きだもんね。甘いの」
ジンさんのホットココア作りに、すっかり夢中になってしまっていた俺を挟むようにセイとソウが腰掛ける。向かいの席にはいつの間にか、カミナが堂々と椅子にふんぞり返っていた。
「ソウとカミナの分は、少し甘さ控え目にしてるぜ」
「やったぁ! ありがとう、ジン」
「おう、助かるぜ!」
「ねぇ、この白いのがマシュマロ?」
手元のカップからふわりと漂ってくるココアの香りは、前に食べたチョコレートケーキと似てるっていうか……一緒かも。
ココアが温かいからかな。とろりとマシュマロが溶けかけていて、見た目はなんだか生クリームみたいだ。
「ああ、甘くてふわふわで美味しいぞ!」
「メレンゲにシロップを加えて、ゼラチンで固めて作ってんだ。メレンゲっつーのは、卵白を白っぽくなるまでかき混ぜたもんで。ゼラチンは……」
「はいはい、料理講座はまた後でねー温かいうちに飲まないと、美味しさが逃げていっちゃうんでしょ?」
青い尻尾を揺らしながら顔を輝かせるセイの言葉に続いて、カミナが自分のカップに浮かぶマシュマロを指差しながら俺の疑問に答えてくれる。料理の師匠としてのスイッチが入っちゃったのか、説明に熱が入り始めた彼を宥めるように、ソウが言葉を遮った。
「ぐっ……その通りだぜ」
無造作に束ねた髪を、ばつが悪そうにガシガシとかき混ぜるカミナを見て、ソウがクスクス笑う。
なんか、ちょっと新鮮かも。いつもと立場が逆だからかな? 普段は、カミナが言う方だもんね。冷めないうちに早く食べてやれって。
「熱いからな。火傷しねぇように注意しろよ?」
「うん、いただきます!」
何度か息を吹きかけてから、慎重にカップへ口をつける。ジンさんに作ってもらったマシュマロココアは、とろりと甘くて美味しくて……お腹も、心もぽかぽかになったんだ。
◇
かまくらの中で温まった後も、みんなで大きな雪だるまを作ったり、その前で写真を取ったり。初めての雪遊びを満喫した俺は、心地のいい疲れに身を任せて、ソファに並んで座るセイとソウの膝の上で横になっていたんだけど……
「どうしたの? 二人とも、何だか難しい顔しちゃって……」
俺を見下ろす彼らの表情は、ちょっと寂しそうというか、喜ぶに喜べないって感じというか。なんて説明したらいいのか分からないけど、なんとなく元気がなさそうだなって思ったんだ。
「いやさぁーなんか、カミナとジンにイイとこ全部持っていかれちゃった気がしてさ……」
「まさか雪を降らせてくれたり、あんなに立派なかまくらを作ってくれるだなんて思わなかったからな……」
「二人とも……楽しく、なかったの?」
「そんなわけないよ! 滅茶苦茶楽しかったし、スッゴく嬉しかったよ!! でも、それがまた悔しいってゆーかさぁ……」
俺の質問に対して、ブンブンと首を振って否定するソウと、
「とても楽しかったぞ。それにまた、皆とのいい思い出が増えたからな」
と頷くセイにほっとする。
良かった……そんなことないって、分かってはいたけど。
起き上がって、二人の頭に手を伸ばす。お揃いの金色の髪をすくように撫でていると、しょんぼりとしていた目元がふわりと綻んだ。
「ただ……彼等の素晴らしいプレゼントに比べたら、俺達のものは霞んでしまいそうでな……」
困ったように微笑むセイに、うんうんと今度はソウが何度も頷く。
「もしかしてさ、二人も用意してくれてたの?」
俺達の……ってことは、そういうことだよね?
もう期待してしまっている俺の心臓は、うるさいくらいにドキドキと高鳴ってしまっている。頬だって、まだもらってもいないのに嬉しさで緩んじゃいそうだ。
黙ったまま互いに顔を見合わせていた二人が、壁の端に整列している蜥蜴達に目配せする。
しばらくしてから、赤と青の蜥蜴達が頭のお盆の上に、赤く染まった葉っぱと白く染まった葉っぱが仲良く並んだ植木鉢を乗せてきた。
「……綺麗だね、なんて名前の花なの?」
「ポインセチアって言うんだよ。君に似合うかなって思って……」
「前に、うちの子達から貰った花がしおれてしまって落ち込んでいただろう? この花は、寿命が長くてな。丁寧に育てさえすれば5年、10年ともってくれるんだ」
「だからね、押し花にしなくてもいいし……君と一緒に三人で、育てたいなって思ってさ」
赤と白。昔はちっとも好きにはなれなくて、今はとっても大好きな、俺と二人のお揃いの色。
落としちゃわないように、慎重に植木鉢を受け取ると、運んでくれた子達が嬉しそうに鳴いて、戻っていく。
温かい手が、俺の頭と頬を優しく撫でてくれる。見上げてかち合った四つの瞳には、泣きたくなるくらいに優しい光が宿っていた。
「……俺、大事にする。ずっと大切にするから……ありがとう……セイ、ソウ……大好きだよ」
二人からの贈り物を抱える俺を、二色の腕がそっと包み込む。その日から、部屋で一番日当たりのいい場所が、俺達の新しい家族の居場所になった。
まだ少し目元と頬が赤いジンさんが、俺を三つ並んだ真ん中の席に座らせてから、五つのマグカップを鍋の近くに並べていく。
お玉で茶色の液体をそれぞれのカップに注いで、透明な袋いっぱいに詰まった白くて柔らかそうな丸いものを三つずつ、ココアにそっと浮かべていった。
「マシュマロココアか。美味しそうだな!」
「ふふっ、セイとサトルちゃんは好きだもんね。甘いの」
ジンさんのホットココア作りに、すっかり夢中になってしまっていた俺を挟むようにセイとソウが腰掛ける。向かいの席にはいつの間にか、カミナが堂々と椅子にふんぞり返っていた。
「ソウとカミナの分は、少し甘さ控え目にしてるぜ」
「やったぁ! ありがとう、ジン」
「おう、助かるぜ!」
「ねぇ、この白いのがマシュマロ?」
手元のカップからふわりと漂ってくるココアの香りは、前に食べたチョコレートケーキと似てるっていうか……一緒かも。
ココアが温かいからかな。とろりとマシュマロが溶けかけていて、見た目はなんだか生クリームみたいだ。
「ああ、甘くてふわふわで美味しいぞ!」
「メレンゲにシロップを加えて、ゼラチンで固めて作ってんだ。メレンゲっつーのは、卵白を白っぽくなるまでかき混ぜたもんで。ゼラチンは……」
「はいはい、料理講座はまた後でねー温かいうちに飲まないと、美味しさが逃げていっちゃうんでしょ?」
青い尻尾を揺らしながら顔を輝かせるセイの言葉に続いて、カミナが自分のカップに浮かぶマシュマロを指差しながら俺の疑問に答えてくれる。料理の師匠としてのスイッチが入っちゃったのか、説明に熱が入り始めた彼を宥めるように、ソウが言葉を遮った。
「ぐっ……その通りだぜ」
無造作に束ねた髪を、ばつが悪そうにガシガシとかき混ぜるカミナを見て、ソウがクスクス笑う。
なんか、ちょっと新鮮かも。いつもと立場が逆だからかな? 普段は、カミナが言う方だもんね。冷めないうちに早く食べてやれって。
「熱いからな。火傷しねぇように注意しろよ?」
「うん、いただきます!」
何度か息を吹きかけてから、慎重にカップへ口をつける。ジンさんに作ってもらったマシュマロココアは、とろりと甘くて美味しくて……お腹も、心もぽかぽかになったんだ。
◇
かまくらの中で温まった後も、みんなで大きな雪だるまを作ったり、その前で写真を取ったり。初めての雪遊びを満喫した俺は、心地のいい疲れに身を任せて、ソファに並んで座るセイとソウの膝の上で横になっていたんだけど……
「どうしたの? 二人とも、何だか難しい顔しちゃって……」
俺を見下ろす彼らの表情は、ちょっと寂しそうというか、喜ぶに喜べないって感じというか。なんて説明したらいいのか分からないけど、なんとなく元気がなさそうだなって思ったんだ。
「いやさぁーなんか、カミナとジンにイイとこ全部持っていかれちゃった気がしてさ……」
「まさか雪を降らせてくれたり、あんなに立派なかまくらを作ってくれるだなんて思わなかったからな……」
「二人とも……楽しく、なかったの?」
「そんなわけないよ! 滅茶苦茶楽しかったし、スッゴく嬉しかったよ!! でも、それがまた悔しいってゆーかさぁ……」
俺の質問に対して、ブンブンと首を振って否定するソウと、
「とても楽しかったぞ。それにまた、皆とのいい思い出が増えたからな」
と頷くセイにほっとする。
良かった……そんなことないって、分かってはいたけど。
起き上がって、二人の頭に手を伸ばす。お揃いの金色の髪をすくように撫でていると、しょんぼりとしていた目元がふわりと綻んだ。
「ただ……彼等の素晴らしいプレゼントに比べたら、俺達のものは霞んでしまいそうでな……」
困ったように微笑むセイに、うんうんと今度はソウが何度も頷く。
「もしかしてさ、二人も用意してくれてたの?」
俺達の……ってことは、そういうことだよね?
もう期待してしまっている俺の心臓は、うるさいくらいにドキドキと高鳴ってしまっている。頬だって、まだもらってもいないのに嬉しさで緩んじゃいそうだ。
黙ったまま互いに顔を見合わせていた二人が、壁の端に整列している蜥蜴達に目配せする。
しばらくしてから、赤と青の蜥蜴達が頭のお盆の上に、赤く染まった葉っぱと白く染まった葉っぱが仲良く並んだ植木鉢を乗せてきた。
「……綺麗だね、なんて名前の花なの?」
「ポインセチアって言うんだよ。君に似合うかなって思って……」
「前に、うちの子達から貰った花がしおれてしまって落ち込んでいただろう? この花は、寿命が長くてな。丁寧に育てさえすれば5年、10年ともってくれるんだ」
「だからね、押し花にしなくてもいいし……君と一緒に三人で、育てたいなって思ってさ」
赤と白。昔はちっとも好きにはなれなくて、今はとっても大好きな、俺と二人のお揃いの色。
落としちゃわないように、慎重に植木鉢を受け取ると、運んでくれた子達が嬉しそうに鳴いて、戻っていく。
温かい手が、俺の頭と頬を優しく撫でてくれる。見上げてかち合った四つの瞳には、泣きたくなるくらいに優しい光が宿っていた。
「……俺、大事にする。ずっと大切にするから……ありがとう……セイ、ソウ……大好きだよ」
二人からの贈り物を抱える俺を、二色の腕がそっと包み込む。その日から、部屋で一番日当たりのいい場所が、俺達の新しい家族の居場所になった。
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