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やっと出会えた、俺達だけのお嫁さん
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いつもの日にちに、いつもの時間。人間って律儀だよね、こと儀式の類いに関しては。
本気で俺達の加護が得られるとでも思ってるのかな?
加護ってさ、例えるんだったら自分の身体の一部を切り取ってあげるみたいな行為なのに。ホントにあげる相手のことが好きじゃないと、出来る筈がないことなのに。
顔も名前も知らない、ましてや誰かを犠牲にすることで、自分はノーリスクで恩恵を受けようだなんてさ。そんな烏滸がましいことを考えているようなクズに、やるもんなんてあるわけないでしょ?バカじゃないの?
ホント、心が醜いヤツはとことん醜いよね……人も神も。
憂鬱な気分で明滅する白い光を眺めていた俺の肩を、セイの青い手が優しく叩く。
「大丈夫か? どこか具合が悪いのか?」
心配そうに俺を見つめる金色の瞳に、胸の中で渦巻いていた黒いもやが晴れていく。ぼんやりと黙ったままの俺を不安に思ったのか、頭や背中を温かい手で撫でてくれた。
「んーん、大丈夫。世の中がセイばっかりだったら平和なのになって思ってさ」
セイみたいに優しいヤツばっかりだったら、生け贄なんてクソみたいな因習もなくなってさ。俺達も気軽に人の世界に、お嫁さん探しに行けたりするんだろうに。
隙あらば神を殺そうと、その力を利用しようと。ましてや、神に成り代わろうだなんて考えてるヤツらの世界を行き来するだなんて、身の毛がよだつどころじゃないもんね。
クソみたいなヤツらの手によって捧げられた、心根が綺麗なあの子達が居ないんだったら。とっくに滅ぼしてるよあんな世界。
「俺だけ増えるのか? だったらお前も同じ数だけ増えてくれないと、増えた俺が困ってしまうぞ」
……普段は真面目というか、俺より断然賢いくせに……時々すっとんきょうな受け取り方するよね、セイってば。そういうところも、ある意味素直なのかもしれないけどさ。
沢山のセイに囲まれた俺を想像してしまい、なんだか可笑しくなってくる。
腹の中でグツグツと煮えたぎっていた怒りも、心の中でわだかまっていたドロドロした苦しさも。あっという間に吹き飛ばしてしまうなんて……ホント、スゴいよね、俺の片割れは。
「ははっ、そうだねー。セイは寂しがり屋さんだから、一人のセイにつき俺が付いていないとね」
「……否定はしないが、そもそも俺達は二人で一つなんだからな。増える時も減る時も一緒だぞ」
「……そうだね」
差し出された大きな手をそっと握る。繋いだまま前を向いた俺達に、一際大きな光が降り注いで……ふわりと舞い降りるみたいに、真っ白な装束に身を包んだ子が現れた。
纏った衣よりも白い髪に、白い肌。痩せ細っている小さな身体のせいで、余計に儚く見えてしまう。
……なんでだろう。今までもこの子みたいに不憫な子は、散々見てきたのに。
守ってあげなくちゃ。俺が、俺達が幸せにしてあげなくちゃって、強く思ったんだ。
そう感じたのは俺だけじゃないみたいで、俺の手を引いて駆け寄ったセイが、その子を優しく抱き上げた。
セイの瞳には、俺ですら見たことのない穏やかな温かい光を帯びていて……すぐに分かったんだ。セイも、その子のことを好きになったんだって。
嬉しくて、でも少し寂しくて、それでもやっぱり嬉しくて。なんて言ったらいいんだろう……不思議な気持ちだ。
一つだけ確かなことは、目の前に居るこの子に俺達が一目惚れしちゃったってことかな。
「やっとだね、セイ」
やっと出会えた俺達だけのお嫁さん、めいいっぱい愛して大事にしてあげないと。あー……でもまずは俺達のこと受け入れてもらって、好きになってもらうのが先だよね。
まぁ、時間はいっぱいあるんだし……ちょっとずつでいいから、仲良くなっていけるといいな。
ほんの僅かに見開かれた切れ長の目が、すぐさま力強く輝く。きっと伝わったんだろうな、セイにも、俺の気持ち。
「……ああ、俺達で幸せにするぞ。絶対に」
逞しい腕の中で、静かに眠る白い頬にそっと触れる。思っていたよりもずっと温かくて、柔らかくて、なんだか胸の奥が熱くなった。
何て名前なんだろう?どんな声で、どんな風に喋るんだろう?
髪の色はセイの角の色とお揃いだけど、瞳の色は何色なのかな?俺の角か、鱗の色と一緒だと嬉しいな。でも違ったら違ったで俺達のお嫁さんなんだもん、絶対綺麗な色に決まってるよ!
「可愛いな、まるで小動物みたいだ」
小さく息を漏らしながら、細い腕を懸命にセイの背中に回して、甘えるみたいに胸元に頬をすり寄せている。
ホントだ!可愛いなぁ、でも…
なんでだろう……俺、初めてセイに対してちょっと腹が立ってるってゆーか、悔しがってるんだけど。
「セイばっかりズルい! 俺にも抱かせてよ!」
俺だって、この子に甘えられたい!いっぱい抱き締めて、柔らかい頬を、キラキラした髪を撫でてあげたいのに!
「駄目だ。折角気持ち良さそうに寝てるのに、起こしてしまうだろ? 後で代わってやるから今は我慢しろ」
うー……正論過ぎてぐうの音も出せないじゃん……
分かってるよ、そんな申し訳なさそうな顔しなくてもさ。俺に意地悪してるわけでも、その子を独り占めしたいわけでもないって。
疲れた顔、してるもんね……よっぽどひどい目に合ってきたのかなこの子も。
ほんの少し記憶の断片を読み取っただけでも、胸をかきむしりたくなるような苦しみと。消えてなくなってしまいたいほどの、深い悲しみが伝わってきて……この子を嘲る連中に、目の前が赤く染まりそうになる。
……でも落ち着かないと、今は。セイの言う通り、起こしちゃったら可哀想だし。セイだって、怒りたくなるの必死に我慢してるんだもんね。
「絶対だよ? ちゃんと二人で半分こするんだから」
俺の言葉に反応したみたいに、丸まっていた小さな身体がピクリと震えて、くるんと反った睫毛が揺れる。
ゆっくりと開いた丸い瞳に、綺麗な赤に、言葉を失くしてしまうほど心を奪われた。
まだ寝惚けているのか、今の状況が飲み込めていないのか、ぼんやりとセイの胸元を見つめている。
「あれ、起きたんじゃない?」
「全く……ソウの声が煩かったんじゃないか? ごめんな、起こしてしまって」
騒がしく音を立てる心臓を宥めながら、必死に平静を装う。
やっばい!お揃いじゃん俺の鱗の色と!!セイだけじゃなくて俺ともだなんて、ますます運命感じちゃうんだけどっ!!
普通にあの子の頭、撫でてるけど……セイ気づいてないのかな?
折角だし、黙っとこう。どんな反応するか楽しみだなぁ。絶対、滅茶苦茶喜ぶと思うけどね。
名前はサトルっていうんだって、なんか響きが可愛くて素敵だよね!声もスゴく可愛いいし。鈴の音色みたいだってセイが言ってたけど、滅茶苦茶分かるよ!透き通ってて綺麗だもん!
恋は盲目ってよく聞くけど……俺も例外では無かったみたい。この子の全てが可愛らしく、愛おしく思えちゃうから不思議だよね。
セイもすっかりサトルちゃんにメロメロなのか、これ以上ないくらいにだらしがない顔してるけど……もしかして俺も知らず知らずのうちに、あんな顔になっちゃってたりするのかな。
仮にそうだとしても仕方ないよね。だってサトルちゃん、スッゴく可愛いんだもん!
あんまりにも小さくて細いし、なかなか話してくれなかったから最初は不安だったけど。思っていたよりは元気そうだし、ちょっとした誤解はあったけどプロポーズも上手くいったみたいだし。中々いい滑り出しなんじゃない?俺達の新婚生活!
なんて、完っ全に浮かれてたこの時の自分を、今すぐ尻尾でひっぱ叩きたいんだよねー……
本気で俺達の加護が得られるとでも思ってるのかな?
加護ってさ、例えるんだったら自分の身体の一部を切り取ってあげるみたいな行為なのに。ホントにあげる相手のことが好きじゃないと、出来る筈がないことなのに。
顔も名前も知らない、ましてや誰かを犠牲にすることで、自分はノーリスクで恩恵を受けようだなんてさ。そんな烏滸がましいことを考えているようなクズに、やるもんなんてあるわけないでしょ?バカじゃないの?
ホント、心が醜いヤツはとことん醜いよね……人も神も。
憂鬱な気分で明滅する白い光を眺めていた俺の肩を、セイの青い手が優しく叩く。
「大丈夫か? どこか具合が悪いのか?」
心配そうに俺を見つめる金色の瞳に、胸の中で渦巻いていた黒いもやが晴れていく。ぼんやりと黙ったままの俺を不安に思ったのか、頭や背中を温かい手で撫でてくれた。
「んーん、大丈夫。世の中がセイばっかりだったら平和なのになって思ってさ」
セイみたいに優しいヤツばっかりだったら、生け贄なんてクソみたいな因習もなくなってさ。俺達も気軽に人の世界に、お嫁さん探しに行けたりするんだろうに。
隙あらば神を殺そうと、その力を利用しようと。ましてや、神に成り代わろうだなんて考えてるヤツらの世界を行き来するだなんて、身の毛がよだつどころじゃないもんね。
クソみたいなヤツらの手によって捧げられた、心根が綺麗なあの子達が居ないんだったら。とっくに滅ぼしてるよあんな世界。
「俺だけ増えるのか? だったらお前も同じ数だけ増えてくれないと、増えた俺が困ってしまうぞ」
……普段は真面目というか、俺より断然賢いくせに……時々すっとんきょうな受け取り方するよね、セイってば。そういうところも、ある意味素直なのかもしれないけどさ。
沢山のセイに囲まれた俺を想像してしまい、なんだか可笑しくなってくる。
腹の中でグツグツと煮えたぎっていた怒りも、心の中でわだかまっていたドロドロした苦しさも。あっという間に吹き飛ばしてしまうなんて……ホント、スゴいよね、俺の片割れは。
「ははっ、そうだねー。セイは寂しがり屋さんだから、一人のセイにつき俺が付いていないとね」
「……否定はしないが、そもそも俺達は二人で一つなんだからな。増える時も減る時も一緒だぞ」
「……そうだね」
差し出された大きな手をそっと握る。繋いだまま前を向いた俺達に、一際大きな光が降り注いで……ふわりと舞い降りるみたいに、真っ白な装束に身を包んだ子が現れた。
纏った衣よりも白い髪に、白い肌。痩せ細っている小さな身体のせいで、余計に儚く見えてしまう。
……なんでだろう。今までもこの子みたいに不憫な子は、散々見てきたのに。
守ってあげなくちゃ。俺が、俺達が幸せにしてあげなくちゃって、強く思ったんだ。
そう感じたのは俺だけじゃないみたいで、俺の手を引いて駆け寄ったセイが、その子を優しく抱き上げた。
セイの瞳には、俺ですら見たことのない穏やかな温かい光を帯びていて……すぐに分かったんだ。セイも、その子のことを好きになったんだって。
嬉しくて、でも少し寂しくて、それでもやっぱり嬉しくて。なんて言ったらいいんだろう……不思議な気持ちだ。
一つだけ確かなことは、目の前に居るこの子に俺達が一目惚れしちゃったってことかな。
「やっとだね、セイ」
やっと出会えた俺達だけのお嫁さん、めいいっぱい愛して大事にしてあげないと。あー……でもまずは俺達のこと受け入れてもらって、好きになってもらうのが先だよね。
まぁ、時間はいっぱいあるんだし……ちょっとずつでいいから、仲良くなっていけるといいな。
ほんの僅かに見開かれた切れ長の目が、すぐさま力強く輝く。きっと伝わったんだろうな、セイにも、俺の気持ち。
「……ああ、俺達で幸せにするぞ。絶対に」
逞しい腕の中で、静かに眠る白い頬にそっと触れる。思っていたよりもずっと温かくて、柔らかくて、なんだか胸の奥が熱くなった。
何て名前なんだろう?どんな声で、どんな風に喋るんだろう?
髪の色はセイの角の色とお揃いだけど、瞳の色は何色なのかな?俺の角か、鱗の色と一緒だと嬉しいな。でも違ったら違ったで俺達のお嫁さんなんだもん、絶対綺麗な色に決まってるよ!
「可愛いな、まるで小動物みたいだ」
小さく息を漏らしながら、細い腕を懸命にセイの背中に回して、甘えるみたいに胸元に頬をすり寄せている。
ホントだ!可愛いなぁ、でも…
なんでだろう……俺、初めてセイに対してちょっと腹が立ってるってゆーか、悔しがってるんだけど。
「セイばっかりズルい! 俺にも抱かせてよ!」
俺だって、この子に甘えられたい!いっぱい抱き締めて、柔らかい頬を、キラキラした髪を撫でてあげたいのに!
「駄目だ。折角気持ち良さそうに寝てるのに、起こしてしまうだろ? 後で代わってやるから今は我慢しろ」
うー……正論過ぎてぐうの音も出せないじゃん……
分かってるよ、そんな申し訳なさそうな顔しなくてもさ。俺に意地悪してるわけでも、その子を独り占めしたいわけでもないって。
疲れた顔、してるもんね……よっぽどひどい目に合ってきたのかなこの子も。
ほんの少し記憶の断片を読み取っただけでも、胸をかきむしりたくなるような苦しみと。消えてなくなってしまいたいほどの、深い悲しみが伝わってきて……この子を嘲る連中に、目の前が赤く染まりそうになる。
……でも落ち着かないと、今は。セイの言う通り、起こしちゃったら可哀想だし。セイだって、怒りたくなるの必死に我慢してるんだもんね。
「絶対だよ? ちゃんと二人で半分こするんだから」
俺の言葉に反応したみたいに、丸まっていた小さな身体がピクリと震えて、くるんと反った睫毛が揺れる。
ゆっくりと開いた丸い瞳に、綺麗な赤に、言葉を失くしてしまうほど心を奪われた。
まだ寝惚けているのか、今の状況が飲み込めていないのか、ぼんやりとセイの胸元を見つめている。
「あれ、起きたんじゃない?」
「全く……ソウの声が煩かったんじゃないか? ごめんな、起こしてしまって」
騒がしく音を立てる心臓を宥めながら、必死に平静を装う。
やっばい!お揃いじゃん俺の鱗の色と!!セイだけじゃなくて俺ともだなんて、ますます運命感じちゃうんだけどっ!!
普通にあの子の頭、撫でてるけど……セイ気づいてないのかな?
折角だし、黙っとこう。どんな反応するか楽しみだなぁ。絶対、滅茶苦茶喜ぶと思うけどね。
名前はサトルっていうんだって、なんか響きが可愛くて素敵だよね!声もスゴく可愛いいし。鈴の音色みたいだってセイが言ってたけど、滅茶苦茶分かるよ!透き通ってて綺麗だもん!
恋は盲目ってよく聞くけど……俺も例外では無かったみたい。この子の全てが可愛らしく、愛おしく思えちゃうから不思議だよね。
セイもすっかりサトルちゃんにメロメロなのか、これ以上ないくらいにだらしがない顔してるけど……もしかして俺も知らず知らずのうちに、あんな顔になっちゃってたりするのかな。
仮にそうだとしても仕方ないよね。だってサトルちゃん、スッゴく可愛いんだもん!
あんまりにも小さくて細いし、なかなか話してくれなかったから最初は不安だったけど。思っていたよりは元気そうだし、ちょっとした誤解はあったけどプロポーズも上手くいったみたいだし。中々いい滑り出しなんじゃない?俺達の新婚生活!
なんて、完っ全に浮かれてたこの時の自分を、今すぐ尻尾でひっぱ叩きたいんだよねー……
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