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【番外編】みんなとハロウィン、犬猫論争円満解決
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すぐ行くって言葉の通りに、ほんの数十分程度でジンさんがやって来た。大きな瓶を数本と、色とりどりの折り紙を鞄に詰め込んで。
なんでもカミナの雷雲が、超特急で運んでくれたらしい。それでかな、少し息切れしてたり、普段は綺麗に整えられている髪の毛が、色んな方向にぴょんぴょん逆立ってたのは。
セイとソウのとは種類が違うけど、やっぱり神様の加護っていうか、神力って万能だよね。
それだけみんなの、神様としての力というか格がスゴいってことなのかもしれないけどさ。
そんなこんなで食事の準備が終わるまでの間に部屋の飾り付けをしたり、ランタンを作ろうって話になってたんだけど。
そこでまた、仮装の問題が再燃しちゃって、今に至るというわけで。
「いっそのこと、サトルに決めてもらった方がいいんじゃねぇか? そもそもこの子の為のハロウィンだろう」
四本の腕を動かしながら、ジンさんがいまだに熱弁し続ける二人に向かって口を開く。
途端にぴたりと言い争いが収まって、二人の熱い視線が俺に注がれる。
いや、まぁ、そうなんだけどさ。着けるのも、着るのも俺なんだし。
でもさ、どっちかなんて選べないよ!絶対!!
前に変装した時だって、負けたソウが滅茶苦茶落ち込んだっていうのにさ。
もう、いっそのこと全部順番に着てしまえば……
「全部ってのは無しだぜ? 着替えたらいつもの撮影会が始まっちまうだろ。それなのに取っ替え引っ替えしてたら時間が足んねぇし、おめぇも疲れちまうしな」
唯一円満の解決手段が塞がれた!
しかもわりと事実だから反論出来ない……俺への優しさは半分くらい嘘だろうけど。
だって笑ってるし、楽しそうに!
口元を綻ばせている彼をじっと見ても、綺麗な笑顔を返されるだけで。なお見つめ続けても、パチンとウィンクを返されるだけだった。
「サトルちゃんは黒猫と魔法使いどっちがいーい?」
「俺の狼か吸血鬼の方が良いよな?」
二人の笑顔が眩しい。
これでもかってくらい、わくわくしてる気持ちが溢れていて。どっちかの表情を曇らせるなんて俺には出来ないよ……
「あのさ、全部の良いとこどりするってのは……ダメ、かな?」
何とか捻り出した提案に、二人が顔を見合わせる。
「俺、耳だけは譲れないんだけど」
「だったら尻尾は俺のでいいな?」
二色の手が重なって、力強い握手が交わされた。
真剣な光を帯びた四つの瞳が、それぞれの衣装を食い入るように見比べ始める。
「下は魔法使いのが可愛くない?」
「確かに……だったら上はこっちのでいいな?」
「うん! 襟の所も可愛いし、赤いベストも感じいいね」
さっきまでの空気が嘘のように和やかな、和気あいあいとしたものに変わる。
「やるじゃねぇか、アイツらの手綱を握ってるだけのことはあるな」
まただ、いつも速すぎて気づけない。
そのせいで俺からしたら突然カミナの膝の上に瞬間移動したような、不思議な気分になってしまう。
「カミナってさぁ、基本は優しいけど意地悪だよね」
「悪い悪い、好きな奴等にはつい、ちょっかいかけたくなっちまうんだよ」
特に悪びれる様子もなく、八重歯を覗かせる彼の頬をぐにっと摘まむ。
カミナにとっては痛くも痒くもないんだろう。カラカラと楽しそうに笑うどころか大きな掌に頬を挟まれ、逆にこねくりまわされてしまったんだ。
ふわりふわりと俺の周りを、折り紙で出来た飾りが舞い踊る。
少し離れた位置に浮かぶ、黒い雲からオレンジ色の淡い光が放たれて俺を照らした。
「あー可愛い! 俺達のサトルちゃん、可愛すぎるんだけど…」
「その場でゆっくり回ってみてくれないか? いいぞ! 最高だ!!」
言われた通りに回転すると、俺の後ろに付けられている尻尾がふわりと動く。
セイとソウに生えてるものとは色も形も違うけど、ちょっとだけ嬉しくなっちゃうな。
「おい! おめぇらシャッターチャンスだぜ!」
「分かってるよ! 集中してるんだから大きな声出さないでよね!」
「可愛いなぁ、後で焼き回ししてくれよ」
「勿論いいぞ! ジンの作ってくれた飾りのお陰で、いつも以上に愛らしい写真が撮れてるからな」
「おいおい、肝心の衣装と照明は誰のお陰だと思ってんだ?」
「一応、感謝はしてるよ?」
「ちゃんとお前の分も焼き回すから、大人しく照らしていてくれ」
俺様の扱い雑じゃねぇか!?と大きな抗議の声に連動するかのように、照明の色が変化して俺の全身が真っ赤に染まる。
二人はさして気にすることもなく、これはこれでいい写真が撮れるとシャッターを切り続けている。
日頃の行いってやつだろうな。
カミナはハロウィンなんて関係なしにイタズラしてくるし。
今だって構われないからって、デタラメに色変えてるし。
それでも相手にされてないんだから、何だか可哀想になっちゃうな。
「ねぇ、カミナも仮装してるんだからさ……一緒に写らない?」
そう、声をかけてまばたきをした時にはすでに、俺の身体は筋肉質の腕に抱き上げられていた。
ほんの少し前まで、への字に歪んでいた口がふにゃりと緩んでいる。
「おい、おめぇら俺様達が写るんだ! 格好よく撮れよ!」
「えー……ズールーいー! 俺達もサトルちゃんと一緒に写真撮ーりーたーいー!」
「くっ……こんなことなら余っていた狼の耳でも着けておけば良かったか」
構えていたカメラを下ろしてソウが口を膨らませる。隣にいたセイが、がくりと膝から崩れ落ちた。
「……俺も二人との写真、欲しいな。みんなとのも」
「だったら撮ればいいじゃねぇか」
そう言ったジンさんの手には、掌の形に折られた紙が握られていた。
宙に向かって放り投げると、勝手に四つの折り紙が浮かび上がって二人のカメラを持ち上げる。
「後はコイツらが勝手に動いて撮ってくれるぜ?」
「ジン、ナイス! カミナ、何枚か撮ったらサトルちゃん渡してよね!」
「次は俺で、その後はジンだな! 順番だぞ!」
「分かった分かった……ほら、さっさと並べよ」
明るいざわめきがオレンジ色に染まった室内に響く。
みんなに代わる代わる抱き抱えてもらって頬を寄せて、何度もシャッターを切ってもらう。
一人で撮ってもらっていた時も嬉しかった、二人が、みんなが楽しそうに笑っていたから。
でも、やっぱり一人よりみんなと一緒の方が何倍も嬉しくて、心がふわふわするんだ。
なんでもカミナの雷雲が、超特急で運んでくれたらしい。それでかな、少し息切れしてたり、普段は綺麗に整えられている髪の毛が、色んな方向にぴょんぴょん逆立ってたのは。
セイとソウのとは種類が違うけど、やっぱり神様の加護っていうか、神力って万能だよね。
それだけみんなの、神様としての力というか格がスゴいってことなのかもしれないけどさ。
そんなこんなで食事の準備が終わるまでの間に部屋の飾り付けをしたり、ランタンを作ろうって話になってたんだけど。
そこでまた、仮装の問題が再燃しちゃって、今に至るというわけで。
「いっそのこと、サトルに決めてもらった方がいいんじゃねぇか? そもそもこの子の為のハロウィンだろう」
四本の腕を動かしながら、ジンさんがいまだに熱弁し続ける二人に向かって口を開く。
途端にぴたりと言い争いが収まって、二人の熱い視線が俺に注がれる。
いや、まぁ、そうなんだけどさ。着けるのも、着るのも俺なんだし。
でもさ、どっちかなんて選べないよ!絶対!!
前に変装した時だって、負けたソウが滅茶苦茶落ち込んだっていうのにさ。
もう、いっそのこと全部順番に着てしまえば……
「全部ってのは無しだぜ? 着替えたらいつもの撮影会が始まっちまうだろ。それなのに取っ替え引っ替えしてたら時間が足んねぇし、おめぇも疲れちまうしな」
唯一円満の解決手段が塞がれた!
しかもわりと事実だから反論出来ない……俺への優しさは半分くらい嘘だろうけど。
だって笑ってるし、楽しそうに!
口元を綻ばせている彼をじっと見ても、綺麗な笑顔を返されるだけで。なお見つめ続けても、パチンとウィンクを返されるだけだった。
「サトルちゃんは黒猫と魔法使いどっちがいーい?」
「俺の狼か吸血鬼の方が良いよな?」
二人の笑顔が眩しい。
これでもかってくらい、わくわくしてる気持ちが溢れていて。どっちかの表情を曇らせるなんて俺には出来ないよ……
「あのさ、全部の良いとこどりするってのは……ダメ、かな?」
何とか捻り出した提案に、二人が顔を見合わせる。
「俺、耳だけは譲れないんだけど」
「だったら尻尾は俺のでいいな?」
二色の手が重なって、力強い握手が交わされた。
真剣な光を帯びた四つの瞳が、それぞれの衣装を食い入るように見比べ始める。
「下は魔法使いのが可愛くない?」
「確かに……だったら上はこっちのでいいな?」
「うん! 襟の所も可愛いし、赤いベストも感じいいね」
さっきまでの空気が嘘のように和やかな、和気あいあいとしたものに変わる。
「やるじゃねぇか、アイツらの手綱を握ってるだけのことはあるな」
まただ、いつも速すぎて気づけない。
そのせいで俺からしたら突然カミナの膝の上に瞬間移動したような、不思議な気分になってしまう。
「カミナってさぁ、基本は優しいけど意地悪だよね」
「悪い悪い、好きな奴等にはつい、ちょっかいかけたくなっちまうんだよ」
特に悪びれる様子もなく、八重歯を覗かせる彼の頬をぐにっと摘まむ。
カミナにとっては痛くも痒くもないんだろう。カラカラと楽しそうに笑うどころか大きな掌に頬を挟まれ、逆にこねくりまわされてしまったんだ。
ふわりふわりと俺の周りを、折り紙で出来た飾りが舞い踊る。
少し離れた位置に浮かぶ、黒い雲からオレンジ色の淡い光が放たれて俺を照らした。
「あー可愛い! 俺達のサトルちゃん、可愛すぎるんだけど…」
「その場でゆっくり回ってみてくれないか? いいぞ! 最高だ!!」
言われた通りに回転すると、俺の後ろに付けられている尻尾がふわりと動く。
セイとソウに生えてるものとは色も形も違うけど、ちょっとだけ嬉しくなっちゃうな。
「おい! おめぇらシャッターチャンスだぜ!」
「分かってるよ! 集中してるんだから大きな声出さないでよね!」
「可愛いなぁ、後で焼き回ししてくれよ」
「勿論いいぞ! ジンの作ってくれた飾りのお陰で、いつも以上に愛らしい写真が撮れてるからな」
「おいおい、肝心の衣装と照明は誰のお陰だと思ってんだ?」
「一応、感謝はしてるよ?」
「ちゃんとお前の分も焼き回すから、大人しく照らしていてくれ」
俺様の扱い雑じゃねぇか!?と大きな抗議の声に連動するかのように、照明の色が変化して俺の全身が真っ赤に染まる。
二人はさして気にすることもなく、これはこれでいい写真が撮れるとシャッターを切り続けている。
日頃の行いってやつだろうな。
カミナはハロウィンなんて関係なしにイタズラしてくるし。
今だって構われないからって、デタラメに色変えてるし。
それでも相手にされてないんだから、何だか可哀想になっちゃうな。
「ねぇ、カミナも仮装してるんだからさ……一緒に写らない?」
そう、声をかけてまばたきをした時にはすでに、俺の身体は筋肉質の腕に抱き上げられていた。
ほんの少し前まで、への字に歪んでいた口がふにゃりと緩んでいる。
「おい、おめぇら俺様達が写るんだ! 格好よく撮れよ!」
「えー……ズールーいー! 俺達もサトルちゃんと一緒に写真撮ーりーたーいー!」
「くっ……こんなことなら余っていた狼の耳でも着けておけば良かったか」
構えていたカメラを下ろしてソウが口を膨らませる。隣にいたセイが、がくりと膝から崩れ落ちた。
「……俺も二人との写真、欲しいな。みんなとのも」
「だったら撮ればいいじゃねぇか」
そう言ったジンさんの手には、掌の形に折られた紙が握られていた。
宙に向かって放り投げると、勝手に四つの折り紙が浮かび上がって二人のカメラを持ち上げる。
「後はコイツらが勝手に動いて撮ってくれるぜ?」
「ジン、ナイス! カミナ、何枚か撮ったらサトルちゃん渡してよね!」
「次は俺で、その後はジンだな! 順番だぞ!」
「分かった分かった……ほら、さっさと並べよ」
明るいざわめきがオレンジ色に染まった室内に響く。
みんなに代わる代わる抱き抱えてもらって頬を寄せて、何度もシャッターを切ってもらう。
一人で撮ってもらっていた時も嬉しかった、二人が、みんなが楽しそうに笑っていたから。
でも、やっぱり一人よりみんなと一緒の方が何倍も嬉しくて、心がふわふわするんだ。
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