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初めてのキス、2人から俺に……
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毎日丁寧にセイが塗ってくれているお陰で、俺の身体にいくつも刻まれていた跡がパッと見じゃあ、ほとんど分からないくらいに薄くなってきた。
だから、薬を塗る時間は短くなってきたんだけど。代わりにスキンケアをする時間が増えてきている気がするな。
なんか、見たことない容器がまた増えてるし……でも、これも二人の立派なお嫁さんになるには欠かせないことみたいだし。
俺は服を捲っているだけでいいから、別に構わないんだけどね。
「よし、これで終わりだ」
「いつもありがとう、セイ」
「どういたしまして。でも、俺達が好きでやってることだからな。気にしなくていいんだぞ」
布で濡れた手を拭い終えたセイが、乱れた俺の衣服を整え、頭を優しく撫でてくれた。
「えへへーほっぺ、もっちもちだねぇ。ますます可愛くなっていく君を見てると俺達、スッゴく嬉しいよ」
俺の全身を包み込むように後ろから、赤い腕に抱きすくめられる。ぎゅうぎゅうと抱き締められながら、柔らかい頬がむにっと押しつけられた。
不思議だなぁ。さっきまで感じていた肌寒さが一気になくなって、心までぽかぽかしてきちゃったや。
つい俺が笑っちゃうと、二人もくすくす微笑んだ。だめ押しにソウからは頬に、セイからは額にキスを送ってもらえて、自分でも分かるくらいに顔が熱くなってしまった。
『口にはしてねぇのか?』
二人からいっぺんにしてもらえたからかな。ふと、頭の中にカミナの言葉がぽこりと浮かぶ。
「……ねぇ、セイ、ソウ……キス、口にはしてくれないの?」
なんとなく口にしてしまった途端、俺を抱くソウの腕に力がこもり。目の前にあったセイの表情が、目を点にしたまま真顔で固まってしまった。
「もしかして、俺に色気ってやつがないから? だからしてくれないの?」
カミナは俺達らしくて微笑ましいな、って言ってくれたけれども。
もし普通の夫婦がするキスが、頬と額だけじゃなくて口にもするんだったら。
俺としてはして欲しいし、二人からしてもらえるように頑張るんだけどな。
だから俺に足りないんであろう、色気をつけるためにも、二人の意見を聞きたかったんだけど。
「いや、確かにサトルちゃんは可愛い系だけど……色気はちゃんとあるし、むしろ普段とのギャップがスゴくて俺達が大変ってゆーか……」
「するつもりではあるんだぞ? でも、その……いざ君を前にしてしまうと、それを越えると止まらなくなりそうというか……」
早口で一気に捲し立てられたせいなのかな。二人の言葉の意味を、頭で理解することは出来なかったけれど。
俺を優しく撫でるソウの手と、セイの真剣な表情から、二人の優しさというか、俺への想いが伝わってきたような気がして……
「よく、分からないけど……俺の為にしてこなかった、ってこと?」
「そうだよ!」
「そうだぞ!」
尋ねた俺に対して返ってきた力強い肯定に、やっぱり二人は優しいな……と当たり前のことを再認識しちゃったや。
「じゃあ、俺がして欲しいって言ったらしてくれるの?」
「「……それは」」
戸惑うような低い声と高い声が綺麗に重なって、ゆっくり顔を上げたセイが、俺を抱き抱えるソウと何やら目配せをする。
するりと赤と青の尻尾が俺の腰の辺りに巻きつき、優しく抱え上げられ、何故か正座をしている二人の前へとそっと下ろされた。
「させて、もらいます……」
「させていただきます……」
なんでちょっと他人行儀な言い方なんだろう?二人とも俯いているせいで表情がよく分からないし。
でも、二人の尻尾が大きく揺れてるから、嫌ってことはないんだと思うけど。
「セイ、ソウ、キスして?」
いつも通りに名前を呼んだだけなのに、二人の大きな肩がびくりと跳ねる。
また二人だけで目でお話をしてから、長い尻尾が俺を抱き寄せ、赤い手が俺の頬をゆるりと撫でた。
「サトルちゃん……」
急にあの、甘ったるい声で名前を紡がれたせいで、身体に力がこもってしまう。
金色の瞳から穏やかな光が消えて、代わりに違う熱を帯びていて。
無邪気に上がっていたはずのソウの口角が柔らかく微笑んで。
ゆっくりと近づいてくるその唇に釘付けになってしまった。
鼻先が僅かに触れ合って、感じた温かい吐息に、俺の心臓が狂ったように暴れだす。
何で?キスなんて、今まで何度もしてもらっていたのに……してもらう場所が、いつもと違うってだけなのに。
「愛してるよ」
甘い声で、甘い言葉をもらって……それだけでもう、いっぱいいっぱいなのに。
ソウの唇と俺の口が重なって、電気が流れたみたいに全身がびくびくと震えてしまった。
「あ、ソウ……」
彼の柔らかい感触が、まだ唇に残っている気がする。
軽く触れただけで、ゆっくりと離れていってしまったそれを……少し残念に、寂しく思ってしまったのは何でだろう。
「次は俺の番だな」
穏やかな声が太い尻尾で俺を抱き寄せる。ごつごつした青い手が俺の頭を、背中を優しく撫でた。
太い指に顎を持ち上げられて、熱のこもった瞳に射抜かれる。
このまま見つめていると、吸い込まれてしまいそうなのに……どうしてだろう。目が離せない……目を離したくない。
「サトル……」
いつもより低めの声がお腹の奥の方まで響いてきて、背筋に不思議な感覚が走った。
こつんと額が合わさって、泣きたくなるくらい優しい口元に……俺の心も、魂も、全部奪われてしまいそうだ。
「愛してるぞ」
ゆっくりと近づいてきた彼の唇が、そっと俺の口に触れてから離れていく。
やっぱり、電流が走ったみたいに俺の身体は情けなく震えてしまって……
顔よりも熱を持ってじんじんと疼く唇を、指先で触りながら嬉しそうに、幸せそうに微笑む彼等をぼんやりと見つめることしか出来なかった。
ああ、そっか。……俺の知っていたキスは、キスじゃなかったんだ。
いや、あれもキスなのはキスなんだけど、そうじゃなくて。カミナが言っていた……色気がないって意味がなんとなくだけど、分かった気がする。
「どうだった? 俺達とのキスは」
「その、初めてにしては上手くやれたと思うんだが……」
まだふわふわした気持ちでいる俺の頬をひと撫でしてから、ソウが悪戯っぽく笑う。
俺と指を絡めながら、恥ずかしそうに白い頬を染めて目を泳がせているセイを……もー折角格好つけてるのに余計なこと言わないでよね!と頬を赤らめたソウが肘で小突いた。
え、嘘……今の、初めてなの?
二人とも滅茶苦茶慣れてる感じがしたし、大人の余裕ってゆーか……色気ってやつを身をもって感じていたんだけど。
……そういえば、俺が二人にとって初めてのお嫁さんなんだよね。
もしかして……こういう、恋人同士がするようなことも、俺とするのが最初だったりするのかな……
……どうしよう、また心臓がおかしくなってきちゃった。
これ以上はないって思ってたのに、さっきよりも顔が熱い。
どれだけ力を込めても嬉しくて、嬉しすぎて頬が勝手に緩んじゃうや。
「ふふ、可愛いサトルちゃん……顔真っ赤にしちゃって、照れてるの?」
「喜んでくれたみたいで俺達も嬉しいぞ」
実は緊張しすぎて震えを堪えるのが大変だったんだ、とふにゃりとセイが頬を緩める。
俺も!心臓が口から飛び出ちゃうかと思ったよーとソウが元気よく腕を上げた。
なんだ、二人とも俺と一緒だったんだ。
たったそれだけのことで、なんだか安心しちゃうんだから不思議だな。
「俺も、二人がいつも以上に格好よくて、心臓が爆発しちゃうかと思ったよ」
「ホントに? やったぁ!」
「君にそう褒めてもらえるだけで、心が弾んでしまうな……」
快活な声を上げ、ガッツポーズをしたソウが俺の頭を撫で回す。
噛み締めるように呟いたセイが、俺と繋いだ手に力を込めた。
だから、薬を塗る時間は短くなってきたんだけど。代わりにスキンケアをする時間が増えてきている気がするな。
なんか、見たことない容器がまた増えてるし……でも、これも二人の立派なお嫁さんになるには欠かせないことみたいだし。
俺は服を捲っているだけでいいから、別に構わないんだけどね。
「よし、これで終わりだ」
「いつもありがとう、セイ」
「どういたしまして。でも、俺達が好きでやってることだからな。気にしなくていいんだぞ」
布で濡れた手を拭い終えたセイが、乱れた俺の衣服を整え、頭を優しく撫でてくれた。
「えへへーほっぺ、もっちもちだねぇ。ますます可愛くなっていく君を見てると俺達、スッゴく嬉しいよ」
俺の全身を包み込むように後ろから、赤い腕に抱きすくめられる。ぎゅうぎゅうと抱き締められながら、柔らかい頬がむにっと押しつけられた。
不思議だなぁ。さっきまで感じていた肌寒さが一気になくなって、心までぽかぽかしてきちゃったや。
つい俺が笑っちゃうと、二人もくすくす微笑んだ。だめ押しにソウからは頬に、セイからは額にキスを送ってもらえて、自分でも分かるくらいに顔が熱くなってしまった。
『口にはしてねぇのか?』
二人からいっぺんにしてもらえたからかな。ふと、頭の中にカミナの言葉がぽこりと浮かぶ。
「……ねぇ、セイ、ソウ……キス、口にはしてくれないの?」
なんとなく口にしてしまった途端、俺を抱くソウの腕に力がこもり。目の前にあったセイの表情が、目を点にしたまま真顔で固まってしまった。
「もしかして、俺に色気ってやつがないから? だからしてくれないの?」
カミナは俺達らしくて微笑ましいな、って言ってくれたけれども。
もし普通の夫婦がするキスが、頬と額だけじゃなくて口にもするんだったら。
俺としてはして欲しいし、二人からしてもらえるように頑張るんだけどな。
だから俺に足りないんであろう、色気をつけるためにも、二人の意見を聞きたかったんだけど。
「いや、確かにサトルちゃんは可愛い系だけど……色気はちゃんとあるし、むしろ普段とのギャップがスゴくて俺達が大変ってゆーか……」
「するつもりではあるんだぞ? でも、その……いざ君を前にしてしまうと、それを越えると止まらなくなりそうというか……」
早口で一気に捲し立てられたせいなのかな。二人の言葉の意味を、頭で理解することは出来なかったけれど。
俺を優しく撫でるソウの手と、セイの真剣な表情から、二人の優しさというか、俺への想いが伝わってきたような気がして……
「よく、分からないけど……俺の為にしてこなかった、ってこと?」
「そうだよ!」
「そうだぞ!」
尋ねた俺に対して返ってきた力強い肯定に、やっぱり二人は優しいな……と当たり前のことを再認識しちゃったや。
「じゃあ、俺がして欲しいって言ったらしてくれるの?」
「「……それは」」
戸惑うような低い声と高い声が綺麗に重なって、ゆっくり顔を上げたセイが、俺を抱き抱えるソウと何やら目配せをする。
するりと赤と青の尻尾が俺の腰の辺りに巻きつき、優しく抱え上げられ、何故か正座をしている二人の前へとそっと下ろされた。
「させて、もらいます……」
「させていただきます……」
なんでちょっと他人行儀な言い方なんだろう?二人とも俯いているせいで表情がよく分からないし。
でも、二人の尻尾が大きく揺れてるから、嫌ってことはないんだと思うけど。
「セイ、ソウ、キスして?」
いつも通りに名前を呼んだだけなのに、二人の大きな肩がびくりと跳ねる。
また二人だけで目でお話をしてから、長い尻尾が俺を抱き寄せ、赤い手が俺の頬をゆるりと撫でた。
「サトルちゃん……」
急にあの、甘ったるい声で名前を紡がれたせいで、身体に力がこもってしまう。
金色の瞳から穏やかな光が消えて、代わりに違う熱を帯びていて。
無邪気に上がっていたはずのソウの口角が柔らかく微笑んで。
ゆっくりと近づいてくるその唇に釘付けになってしまった。
鼻先が僅かに触れ合って、感じた温かい吐息に、俺の心臓が狂ったように暴れだす。
何で?キスなんて、今まで何度もしてもらっていたのに……してもらう場所が、いつもと違うってだけなのに。
「愛してるよ」
甘い声で、甘い言葉をもらって……それだけでもう、いっぱいいっぱいなのに。
ソウの唇と俺の口が重なって、電気が流れたみたいに全身がびくびくと震えてしまった。
「あ、ソウ……」
彼の柔らかい感触が、まだ唇に残っている気がする。
軽く触れただけで、ゆっくりと離れていってしまったそれを……少し残念に、寂しく思ってしまったのは何でだろう。
「次は俺の番だな」
穏やかな声が太い尻尾で俺を抱き寄せる。ごつごつした青い手が俺の頭を、背中を優しく撫でた。
太い指に顎を持ち上げられて、熱のこもった瞳に射抜かれる。
このまま見つめていると、吸い込まれてしまいそうなのに……どうしてだろう。目が離せない……目を離したくない。
「サトル……」
いつもより低めの声がお腹の奥の方まで響いてきて、背筋に不思議な感覚が走った。
こつんと額が合わさって、泣きたくなるくらい優しい口元に……俺の心も、魂も、全部奪われてしまいそうだ。
「愛してるぞ」
ゆっくりと近づいてきた彼の唇が、そっと俺の口に触れてから離れていく。
やっぱり、電流が走ったみたいに俺の身体は情けなく震えてしまって……
顔よりも熱を持ってじんじんと疼く唇を、指先で触りながら嬉しそうに、幸せそうに微笑む彼等をぼんやりと見つめることしか出来なかった。
ああ、そっか。……俺の知っていたキスは、キスじゃなかったんだ。
いや、あれもキスなのはキスなんだけど、そうじゃなくて。カミナが言っていた……色気がないって意味がなんとなくだけど、分かった気がする。
「どうだった? 俺達とのキスは」
「その、初めてにしては上手くやれたと思うんだが……」
まだふわふわした気持ちでいる俺の頬をひと撫でしてから、ソウが悪戯っぽく笑う。
俺と指を絡めながら、恥ずかしそうに白い頬を染めて目を泳がせているセイを……もー折角格好つけてるのに余計なこと言わないでよね!と頬を赤らめたソウが肘で小突いた。
え、嘘……今の、初めてなの?
二人とも滅茶苦茶慣れてる感じがしたし、大人の余裕ってゆーか……色気ってやつを身をもって感じていたんだけど。
……そういえば、俺が二人にとって初めてのお嫁さんなんだよね。
もしかして……こういう、恋人同士がするようなことも、俺とするのが最初だったりするのかな……
……どうしよう、また心臓がおかしくなってきちゃった。
これ以上はないって思ってたのに、さっきよりも顔が熱い。
どれだけ力を込めても嬉しくて、嬉しすぎて頬が勝手に緩んじゃうや。
「ふふ、可愛いサトルちゃん……顔真っ赤にしちゃって、照れてるの?」
「喜んでくれたみたいで俺達も嬉しいぞ」
実は緊張しすぎて震えを堪えるのが大変だったんだ、とふにゃりとセイが頬を緩める。
俺も!心臓が口から飛び出ちゃうかと思ったよーとソウが元気よく腕を上げた。
なんだ、二人とも俺と一緒だったんだ。
たったそれだけのことで、なんだか安心しちゃうんだから不思議だな。
「俺も、二人がいつも以上に格好よくて、心臓が爆発しちゃうかと思ったよ」
「ホントに? やったぁ!」
「君にそう褒めてもらえるだけで、心が弾んでしまうな……」
快活な声を上げ、ガッツポーズをしたソウが俺の頭を撫で回す。
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