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初めてのお留守番withカミナ、ふりふりエプロンで手作りパンケーキ大作戦その3
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見上げた真っ白な雲の群れの隙間から、黒い屋根が顔を出す。
高い、いななきを上げながら赤い鱗を纏った馬と、青い鱗を纏った馬が颯爽と地面へと降り立ち、勢いよく車輪のついた家の扉が開いた。
「たっだいまー!サトルちゃん!」
「ただいま、サトル」
「おかえり!セイ、ソウ!」
待ちわびていた、大好きな二人に向かって思いっきり手を広げる。
いつもみたいに赤と青の尻尾がひょいって抱えてくれて、温かい腕の中へと抱き寄せてくれる……はずだったんだけど。
四つの金色の瞳が俺の姿を捉えた瞬間、ソウは顔を両手で覆いながらへたりと座り込み。セイは胸を押さえながら膝から崩れ落ちてしまった。
「何で?エプロン、何で?」
「とびきり可愛い天使が……俺達の目の前に、天使が見えるんだぞ……」
「セイ?ソウ?」
名前を呼んでも、ぶつぶつと小さな聞き取れないくらいの声で呟くだけで、全然俺の方を見てくれない。
盛大な笑い声に振り向くと……師匠、カミナがお腹を抱えながら、それはそれは楽しそうに大きな口を開けていた。
「カミナの嘘つき!この格好でお出迎えしたら……セイとソウ喜んでくれるって、めろめろになるって言ってたじゃん!」
「あぁん?喜んでるし、しっかりメロメロになってるじゃねぇか、滅茶苦茶」
本当に?なんかずっと呻いてるし、とても喜んでくれているようには見えないんだけど?
文句を言っても目尻に浮かんだ涙を太い指で拭いながら、口元をますますにやつかせるだけで、なんの解決にもならない。
二人が帰ってきたら……いっぱいぎゅってしてもらって、それから初めて俺が作ったパンケーキを食べてもらうつもりだったのに。
「セイ、ソウ…抱っこ、してくれないの?ただいまの挨拶は?」
うずくまったままの二人の頭に触れようとして、勢いよく伸びてきた二色の腕に引き寄せられた。
「ごめんね……エプロン姿のサトルちゃんが、すっごく可愛くてつい」
「随分と寂しい思いをさせてしまったな……よく頑張ったな、えらいぞ」
落ち着く二人のぬくもりに包まれて、額や頬に何度もキスしてもらって。
胸の中のもやもやが、泣きたくなる寂しさが、あっという間にふわふわしたものへと変わっていく。
やっぱり俺は二人のことが、セイとソウのことが大好きなんだなって、強く思ったんだ。
「で、どういうこと?可愛い過ぎるんだけど」
「一体何を企んでいるんだ?」
何もしていないのに二人から疑いの目で見られるって、今までカミナは何をやらかしてきたっていうんだろう?
「礼を言うのはまだ早いぜ、なぁサトル?」
今のをお礼の言葉として受け取れるなんて、どれだけ前向きなんだろう、カミナって。
二人の視線がカミナから俺へと集中する。途端に心臓が煩くなって、喉の奥が震えだしてきてしまった。
「あの……さ、俺……二人の為に、パンケーキ……作ったんだ、カミナと一緒に……だから、食べて欲しくて」
「ホンとに!?サトルちゃんの手作り!?やったぁ!!ちょっとーカミナ早く言ってよこういう大事なことはさー」
「サトルが、俺達の為にっ……今すぐカメラの用意を!いや、まずはしっかり味わわなければな!」
宝玉みたいな金色の瞳が輝いて、二人の目尻が下がって、頬がふにゃりと緩んだ。
まだ、食べてもらってないのに二人の今の表情だけで胸がいっぱいになってしまう。
どうしよう……もし美味しいよって褒めてもらえたら。二人に喜んでもらえたら、俺、嬉しすぎて心臓が壊れちゃうかもしれない。
大きなお盆にお皿を乗せてもらって、ゆっくりと振り返る。
視界の先には広い背中と、赤と青の尻尾が左右に大きく揺れていて、ますます鼓動が速くなってしまう。
「大丈夫だ、気持ちはたくさん込めただろ?」
見上げると大きな口から白い八重歯が覗いていて、俺を安心させるように……俺に勇気をくれるように、大きな手が俺の背中を優しく押した。
二人の前にお皿を並べる。ソウの前にはベーコンと目玉焼きが乗ったパンケーキを、セイの前には生クリームとフルーツがたっぷり乗ったパンケーキを。
「ソウはお肉……好きでしょ?だからしょっぱいのにしてみたんだ。セイは甘いの好きみたいだから……クリーム多めにしてみたよ」
揺れていた尻尾がぴたりと止まる。切れ長の二人の目が大きく見開かれて、弾かれるように俺の方へと向いた。
「これ、全部サトルちゃんが作ってくれたの?」
「俺達の好みに合わせて……味まで変えてくれたのか?」
「あ、いや……パンケーキは俺が作ったんだけど、ソウのトッピングはカミナが、セイの分はあの子達に作ってもらったんだ。俺は盛り付けただけで……」
「でもよぉ、おめぇらの為に二種類作りてぇって、言ったのはサトルだぜ?俺様達はちっと手伝っただけだ、なぁ?」
カミナの言葉を肯定するかのように、壁のすぐ側で並んでいた赤と青の蜥蜴達が力強く鳴く。
「皿んところの文字だってサトルが書いたんだぜ?」
「わっ、スゴい俺達の名前書いてあるっ!」
「ぐっ……ハートマーク付き、だと……」
「カミナに、教えてもらったんだ……好きだよって伝える時に使う記号だって」
再び俺の方へと向いた瞳が今度は突然潤み始める。絞り出すような、噛み締めるような声を上げながらソウが顔を覆い、セイが胸を押さえて悶えた。
「どうしよう、俺……嬉しすぎて泣きそうなんだけど……」
「俺もだ、こんなにも心のこもった料理を作ってくれるなんて……」
「おいおい、おめぇら泣きながらでもいいからさっさと食えよな!いくら俺様の力で保護してるっつても、ぐだぐたしてると旨さが逃げてっちまうだろうが!」
そんで早くコイツに感想言ってやれ、おめぇらに食わせるの楽しみにしてたんだからよぉ、と。
いつの間にか俺の横に来ていたカミナが、頭をぽんと優しく叩く。
薄く涙の膜が張った瞳が俺と皿を交互に見た後に、静かに二人同時に手を合わせた。
「「いただきます!」」
「……召し上がれ」
ナイフがパンケーキを切り分けて、フォークが口へと近づいていく。
薄茶色の欠片が二人の口に含まれた時、ただでさえおかしくなっていた心臓が……一際大きく高鳴った。
「どう、かな…」
なんでだろう、勝手に声が震えてしまう。
どうしてかな、二人の顔を見たいのに……見るのが怖いや。
俯いてた俺の肩に突然、衝撃が走る。
思わず顔を上げると、お日様みたいに輝く二人の笑顔が視界に映った。
「スッゴい美味しいよ!サトルちゃん!」
「美味しいぞ!俺の好みの甘さだ、凄いなサトル!」
「だから言ったろーが、大丈夫だって」
もう一度、今度は優しく肩を叩かれて、胸の奥が熱くなって、せっかくの二人の笑顔がぼやけてしまった。
高い、いななきを上げながら赤い鱗を纏った馬と、青い鱗を纏った馬が颯爽と地面へと降り立ち、勢いよく車輪のついた家の扉が開いた。
「たっだいまー!サトルちゃん!」
「ただいま、サトル」
「おかえり!セイ、ソウ!」
待ちわびていた、大好きな二人に向かって思いっきり手を広げる。
いつもみたいに赤と青の尻尾がひょいって抱えてくれて、温かい腕の中へと抱き寄せてくれる……はずだったんだけど。
四つの金色の瞳が俺の姿を捉えた瞬間、ソウは顔を両手で覆いながらへたりと座り込み。セイは胸を押さえながら膝から崩れ落ちてしまった。
「何で?エプロン、何で?」
「とびきり可愛い天使が……俺達の目の前に、天使が見えるんだぞ……」
「セイ?ソウ?」
名前を呼んでも、ぶつぶつと小さな聞き取れないくらいの声で呟くだけで、全然俺の方を見てくれない。
盛大な笑い声に振り向くと……師匠、カミナがお腹を抱えながら、それはそれは楽しそうに大きな口を開けていた。
「カミナの嘘つき!この格好でお出迎えしたら……セイとソウ喜んでくれるって、めろめろになるって言ってたじゃん!」
「あぁん?喜んでるし、しっかりメロメロになってるじゃねぇか、滅茶苦茶」
本当に?なんかずっと呻いてるし、とても喜んでくれているようには見えないんだけど?
文句を言っても目尻に浮かんだ涙を太い指で拭いながら、口元をますますにやつかせるだけで、なんの解決にもならない。
二人が帰ってきたら……いっぱいぎゅってしてもらって、それから初めて俺が作ったパンケーキを食べてもらうつもりだったのに。
「セイ、ソウ…抱っこ、してくれないの?ただいまの挨拶は?」
うずくまったままの二人の頭に触れようとして、勢いよく伸びてきた二色の腕に引き寄せられた。
「ごめんね……エプロン姿のサトルちゃんが、すっごく可愛くてつい」
「随分と寂しい思いをさせてしまったな……よく頑張ったな、えらいぞ」
落ち着く二人のぬくもりに包まれて、額や頬に何度もキスしてもらって。
胸の中のもやもやが、泣きたくなる寂しさが、あっという間にふわふわしたものへと変わっていく。
やっぱり俺は二人のことが、セイとソウのことが大好きなんだなって、強く思ったんだ。
「で、どういうこと?可愛い過ぎるんだけど」
「一体何を企んでいるんだ?」
何もしていないのに二人から疑いの目で見られるって、今までカミナは何をやらかしてきたっていうんだろう?
「礼を言うのはまだ早いぜ、なぁサトル?」
今のをお礼の言葉として受け取れるなんて、どれだけ前向きなんだろう、カミナって。
二人の視線がカミナから俺へと集中する。途端に心臓が煩くなって、喉の奥が震えだしてきてしまった。
「あの……さ、俺……二人の為に、パンケーキ……作ったんだ、カミナと一緒に……だから、食べて欲しくて」
「ホンとに!?サトルちゃんの手作り!?やったぁ!!ちょっとーカミナ早く言ってよこういう大事なことはさー」
「サトルが、俺達の為にっ……今すぐカメラの用意を!いや、まずはしっかり味わわなければな!」
宝玉みたいな金色の瞳が輝いて、二人の目尻が下がって、頬がふにゃりと緩んだ。
まだ、食べてもらってないのに二人の今の表情だけで胸がいっぱいになってしまう。
どうしよう……もし美味しいよって褒めてもらえたら。二人に喜んでもらえたら、俺、嬉しすぎて心臓が壊れちゃうかもしれない。
大きなお盆にお皿を乗せてもらって、ゆっくりと振り返る。
視界の先には広い背中と、赤と青の尻尾が左右に大きく揺れていて、ますます鼓動が速くなってしまう。
「大丈夫だ、気持ちはたくさん込めただろ?」
見上げると大きな口から白い八重歯が覗いていて、俺を安心させるように……俺に勇気をくれるように、大きな手が俺の背中を優しく押した。
二人の前にお皿を並べる。ソウの前にはベーコンと目玉焼きが乗ったパンケーキを、セイの前には生クリームとフルーツがたっぷり乗ったパンケーキを。
「ソウはお肉……好きでしょ?だからしょっぱいのにしてみたんだ。セイは甘いの好きみたいだから……クリーム多めにしてみたよ」
揺れていた尻尾がぴたりと止まる。切れ長の二人の目が大きく見開かれて、弾かれるように俺の方へと向いた。
「これ、全部サトルちゃんが作ってくれたの?」
「俺達の好みに合わせて……味まで変えてくれたのか?」
「あ、いや……パンケーキは俺が作ったんだけど、ソウのトッピングはカミナが、セイの分はあの子達に作ってもらったんだ。俺は盛り付けただけで……」
「でもよぉ、おめぇらの為に二種類作りてぇって、言ったのはサトルだぜ?俺様達はちっと手伝っただけだ、なぁ?」
カミナの言葉を肯定するかのように、壁のすぐ側で並んでいた赤と青の蜥蜴達が力強く鳴く。
「皿んところの文字だってサトルが書いたんだぜ?」
「わっ、スゴい俺達の名前書いてあるっ!」
「ぐっ……ハートマーク付き、だと……」
「カミナに、教えてもらったんだ……好きだよって伝える時に使う記号だって」
再び俺の方へと向いた瞳が今度は突然潤み始める。絞り出すような、噛み締めるような声を上げながらソウが顔を覆い、セイが胸を押さえて悶えた。
「どうしよう、俺……嬉しすぎて泣きそうなんだけど……」
「俺もだ、こんなにも心のこもった料理を作ってくれるなんて……」
「おいおい、おめぇら泣きながらでもいいからさっさと食えよな!いくら俺様の力で保護してるっつても、ぐだぐたしてると旨さが逃げてっちまうだろうが!」
そんで早くコイツに感想言ってやれ、おめぇらに食わせるの楽しみにしてたんだからよぉ、と。
いつの間にか俺の横に来ていたカミナが、頭をぽんと優しく叩く。
薄く涙の膜が張った瞳が俺と皿を交互に見た後に、静かに二人同時に手を合わせた。
「「いただきます!」」
「……召し上がれ」
ナイフがパンケーキを切り分けて、フォークが口へと近づいていく。
薄茶色の欠片が二人の口に含まれた時、ただでさえおかしくなっていた心臓が……一際大きく高鳴った。
「どう、かな…」
なんでだろう、勝手に声が震えてしまう。
どうしてかな、二人の顔を見たいのに……見るのが怖いや。
俯いてた俺の肩に突然、衝撃が走る。
思わず顔を上げると、お日様みたいに輝く二人の笑顔が視界に映った。
「スッゴい美味しいよ!サトルちゃん!」
「美味しいぞ!俺の好みの甘さだ、凄いなサトル!」
「だから言ったろーが、大丈夫だって」
もう一度、今度は優しく肩を叩かれて、胸の奥が熱くなって、せっかくの二人の笑顔がぼやけてしまった。
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