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初めてのお留守番withカミナ、馴れ初め質疑応答編
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「ところでよぉ、サトルはどういう経緯でアイツらの嫁になったんだ?」
アイツら…人間には勿論、神相手にも身持ちが固かったからよぉ、気になってたんだよなぁ、と無邪気に頬を綻ばせる。
蜥蜴達によって出されたばかりの、湯気がもうもうと立ち上っているお茶を、ぐびぐびと一気飲みしながら。
よくある馴れ初めの質問だ、普通ならば。でも、俺にとっては普通じゃない。
だって、きっかけは生け贄にされたからです!って言うことになっちゃうんだぞ!有り得ないだろ!
「それ、言わなきゃダメ?」
「なんだ?言いにくい事情でもあんのか?」
おかわりを啜っていたカミナに尋ねると、湯呑みを置いて大きくガッシリとした身体を乗り出してくる。
「…生け贄にされた俺を、二人がお嫁さんにしてくれたんだ。だから…俺自身も、なんで選んでくれたのか分からないんだよ」
あまりにも真剣な瞳で見つめてくるもんだから、つい話してしまった。
自分で言ったことなのに、胸が軋んで苦しくなる。
二人が俺のことを大切に、その…愛してくれているのは分かるけど…正直理由は分からない。
言われたことはないし、自分から聞くのは…なんだか少し怖かったから。
「成程、一目惚れか。やるなぁお前!で、お前はアイツらの何処に惚れたんだ?」
え、それだけ?生け贄って言葉を簡単に受け入れちゃってるところもだけど。
反応薄くない?普通に次の質問に移っちゃってるし。
「どうしたんだ?目ぇ丸くしちまって」
「あ、いや…驚かないのかなって」
「生け贄のことか?」
黙って頷く俺を見ていた紫色の瞳に、ほんの少しだけ影が宿る。
ゆるりと上がっていた口角は、直線からへの字へと段階的に変わっていき、覚悟でも決めたかのように湯呑みを煽った。
「まぁ、俺様達にとっちゃあただのお見合いだからな。んで気に入ったら娶るし、そうじゃなかったら安全な所に送ってやるってだけだ」
湯呑みの底が、テーブルを叩く音が妙に大きく室内に響いた。指に何かがするりと巻きつく。
俺の膝の上で丸まっていた赤と青の二匹の蜥蜴達が、まるで手でも握ってくれているかのように、細い尻尾で俺の指と繋いでくれていた。
「自分の嫁をないがしろにするヤツはいねぇし、そもそも生け贄にされたぐれぇだからよ…もといた場所に帰るよりは、な」
そう言って言葉を濁すところが、彼なりの優しさなのかもしれない。
「幸せだよ、俺は」
今度はカミナの目が丸くなった。
「セイとソウのお嫁さんになれて」
「そっか…」
強ばっていた頬が緩んで、口の端がゆるりと上がる。
それ以上は何も言わなかったけど、ぽつりと呟いた彼の声色はひどく柔らかくて…俺の心にそっと染み渡っていった。
「で、何処に惚れたんだ?」
あっさりと余韻をぶち壊してくるところも、彼なりの優しさなのかもしれない。それが良いか悪いかは別として。
にんまりと愉しそうにつり上がったその口元からは、一切伝わってこないけども。
「なんか切っ掛けくれぇはあんだろ?」
黙ったままの俺に再び尋ねてくる。じっと見つめる瞳はキラキラ輝いていた。
切っ掛けか…気がついた時には大好きになってたからなぁ。ちゃんと考えたこと、無かったかも。
二人との今までを…大事にしまってある宝物を並べるように、記憶の引き出しから取り出していく。
どれを見ても、思い出しても…好きだなぁっていう当たり前すぎる感想しか思い浮かばないや。
「全部好きっつーのは無しだぜ」
神力って心の中まで見えたりするのだろうか。
今まさに口にしようとしていた言葉を、先に言われてしまった。
「お前が顔に出やすいっつーだけで、俺様はなんにもしてねぇぞ」
いや、そういうところが見えてるとしか思えないんだけど。
「余計なこと考えてる暇あんなら、ちゃんと思い出せよ」
そう言うんだったら、俺の心の声と会話しないでよね。
さっきから思考がぶれっぶれに横道それていってるのそのせいだよ?
「…切っ掛けって言われたら思い浮かぶのは手かな」
あ、俺も見えたかも、カミナの心。
なんだそりゃって思ってるよ絶対、そんな顔してる。
「俺、小さい頃の記憶って無くてさ…物心ついた時には一人で、友達もいなくて」
じいさんが言うには村の近くの森に倒れてたって話だけど。
全身傷だらけで、着の身着のままって感じで荷物も何もなくて。
両親も、その遺体すら近くに無かったらしいから…生きてるか死んでるかなんて分からないし。
何で名前だけは覚えていたのか、まぁ今となってはどうでもいい事だけどさ。
「だからかな…初めて二人に会った時に優しく撫でてもらったのがスゴく嬉しくて、人の手ってこんなに温かいんだなって…神様だけどさ」
静かに耳を傾けていてくれたカミナの目尻がゆるりと下がった。
指先にすべすべしたものが触れる。すり寄るみたいに押し付けていた、ニ色の蜥蜴達の頭を撫でると細い尻尾を左右に揺らした。
「その時かも、二人に惚れたの」
「なんだよぉ、ちゃんとあんじゃねぇか!」
浅黒く太い腕が、俺の肩を勢いよく抱き寄せて頭をわしゃわしゃ撫でてくる。
だから、急に瞬間移動してこないでよ!心臓に悪いんだけど!
「悪い悪い、お前にとっちゃあ慣れねぇことだもんな。俺様、雷神だからよぉ。光の速さで動けんだよ」
あー…それじゃあ俺の目で追えるわけがないよね。
いや普通に反則過ぎない?それ。
神様って本当に何でもありだな、いや神様なんだから当然といえば当然なのかな?
「でよぉ、おめぇらどこまで進んでんだ?」
穏やかな笑顔が急に…なんて言ったらいいんだろう?何かを企んでいるような悪い笑みに変わる。
妙な気配を察知したのか、膝の上から彼を非難するような、俺に警告をしてくれているような二匹の鳴き声が上がった。
「進むって、何が?」
カミナと、この子達は分かっているみたいだったけど。分からないことは素直に聞くしかないわけで、だからそのまま尋ねてみたのにな。
くしゃって紙を丸めたみたいに、彼の眉間に深い皺が刻まれてしまった。
「おいおい、そっからかよ…キスはしてんだよな?」
「してるよ?カミナも見たじゃん」
あからさまに、がっかりしたように息を吐いたカミナが質問を続ける。
おかしいなぁ…いってらっしゃいの挨拶をした時、カミナも一緒に見送りに出ていたのに。見えてなかったのかな?
「…口にはしてねぇのか?」
「いつも額か頬だけだけど?」
さらに続ける彼の顔が徐々に曇っていく。
俺の返答を聞くと、力が抜けてしまったみたいに幅が広い肩をがくりと落としてしまった。
「キスって、そういうもんじゃないの?」
二人にしてもらった初めてのキスは…胸がとってもほわほわして、頬が勝手にだらしなく下がっちゃったっけ。
今でもしてもらえると嬉しくて、胸が擽ったくなっちゃうんだけどさ。
「間違ってはねぇけどよ…なんっつーか、ほのぼのし過ぎてて色気がねぇなぁ」
それはそれで、おめぇららしくて微笑ましいけどな、と片方の眉を下げて胡坐をかく。
ニカッと持ち上がった大きな口から、白い八重歯がこぼれた。
「いろけ?それって…俺が二人の立派なお嫁さんになるのに必要だったりする?」
「まぁ、ねぇよりは有った方がってくれぇなもんだからなぁ…それよりもまずは料理だな!うめぇもんが作れるっつーのはそれだけで嫁力がたけぇぞ!」
褐色の指を顎に当てて、首を捻っていたカミナの顔がパッと輝く。
嫁力か…それを高めれば立派なお嫁さんに近づけそうだ。
「やる気があんなら俺様が、料理の師匠になってやろうか?」
「師匠って、カミナ料理出来るの?」
神様って…息してるだけで俺たちがご飯を食べているのと同じだって、聞いたんだけど。
食事はあくまで、味を楽しむためだけの趣味みたいなもののはずで。
だからこの子達も、俺が来たことで久々に腕を振るえるからって喜んでいたみたい。
それだけ神様達にとって、食事ってあまり重要じゃないって思っていたんだけどな。
「俺様、握り飯が好物でよ。米に合う具材を作ってる内に料理にハマっちまってなぁ…レパートリーが増えていくのがまた楽しいんだよなこれが」
そう熱弁する彼の表情は本当に楽しそうで、つられて俺も笑顔になってしまう。
…本当に好きなんだろうな、料理が。
少し自慢気に、図書館のレシピ本はあらかた制覇したぜ!と逞しい胸を張る彼は、いつもの堂々とした威圧感のある姿と比べて幼く見えて、胸がほっこりと温かくなった。
「だからよぉ、腕には自信あるぜ?どうだ?」
「いいの?俺、本当に何も知らないよ?」
したことはないのは勿論だけど、やり方もなにも分からないことばかりだ。
そんな俺に一から付き合うなんて、スゴく大変なことだと思うんだけど。
「そんなの当たりめぇだろうが。俺様だって、昔はお前と同じだったんだぜ?そんな事より大事なのはお前がやりてぇのか、やりたくねぇかだ」
ごつごつした手が俺の肩にゆっくりと置かれる。
真剣な彼の眼差しが、俺の返事を待つように静かな光をたたえていた。
「お願いカミナ、俺に料理を教えて?」
「っし!よく言った!今日からお前は俺様の弟子だ!」
腹の芯まで響くような豪快な笑い声を上げて、カミナが俺の背中をバシバシ叩く。
二匹の鋭い鳴き声が、嗜めるように膝の上から上がった。
アイツら…人間には勿論、神相手にも身持ちが固かったからよぉ、気になってたんだよなぁ、と無邪気に頬を綻ばせる。
蜥蜴達によって出されたばかりの、湯気がもうもうと立ち上っているお茶を、ぐびぐびと一気飲みしながら。
よくある馴れ初めの質問だ、普通ならば。でも、俺にとっては普通じゃない。
だって、きっかけは生け贄にされたからです!って言うことになっちゃうんだぞ!有り得ないだろ!
「それ、言わなきゃダメ?」
「なんだ?言いにくい事情でもあんのか?」
おかわりを啜っていたカミナに尋ねると、湯呑みを置いて大きくガッシリとした身体を乗り出してくる。
「…生け贄にされた俺を、二人がお嫁さんにしてくれたんだ。だから…俺自身も、なんで選んでくれたのか分からないんだよ」
あまりにも真剣な瞳で見つめてくるもんだから、つい話してしまった。
自分で言ったことなのに、胸が軋んで苦しくなる。
二人が俺のことを大切に、その…愛してくれているのは分かるけど…正直理由は分からない。
言われたことはないし、自分から聞くのは…なんだか少し怖かったから。
「成程、一目惚れか。やるなぁお前!で、お前はアイツらの何処に惚れたんだ?」
え、それだけ?生け贄って言葉を簡単に受け入れちゃってるところもだけど。
反応薄くない?普通に次の質問に移っちゃってるし。
「どうしたんだ?目ぇ丸くしちまって」
「あ、いや…驚かないのかなって」
「生け贄のことか?」
黙って頷く俺を見ていた紫色の瞳に、ほんの少しだけ影が宿る。
ゆるりと上がっていた口角は、直線からへの字へと段階的に変わっていき、覚悟でも決めたかのように湯呑みを煽った。
「まぁ、俺様達にとっちゃあただのお見合いだからな。んで気に入ったら娶るし、そうじゃなかったら安全な所に送ってやるってだけだ」
湯呑みの底が、テーブルを叩く音が妙に大きく室内に響いた。指に何かがするりと巻きつく。
俺の膝の上で丸まっていた赤と青の二匹の蜥蜴達が、まるで手でも握ってくれているかのように、細い尻尾で俺の指と繋いでくれていた。
「自分の嫁をないがしろにするヤツはいねぇし、そもそも生け贄にされたぐれぇだからよ…もといた場所に帰るよりは、な」
そう言って言葉を濁すところが、彼なりの優しさなのかもしれない。
「幸せだよ、俺は」
今度はカミナの目が丸くなった。
「セイとソウのお嫁さんになれて」
「そっか…」
強ばっていた頬が緩んで、口の端がゆるりと上がる。
それ以上は何も言わなかったけど、ぽつりと呟いた彼の声色はひどく柔らかくて…俺の心にそっと染み渡っていった。
「で、何処に惚れたんだ?」
あっさりと余韻をぶち壊してくるところも、彼なりの優しさなのかもしれない。それが良いか悪いかは別として。
にんまりと愉しそうにつり上がったその口元からは、一切伝わってこないけども。
「なんか切っ掛けくれぇはあんだろ?」
黙ったままの俺に再び尋ねてくる。じっと見つめる瞳はキラキラ輝いていた。
切っ掛けか…気がついた時には大好きになってたからなぁ。ちゃんと考えたこと、無かったかも。
二人との今までを…大事にしまってある宝物を並べるように、記憶の引き出しから取り出していく。
どれを見ても、思い出しても…好きだなぁっていう当たり前すぎる感想しか思い浮かばないや。
「全部好きっつーのは無しだぜ」
神力って心の中まで見えたりするのだろうか。
今まさに口にしようとしていた言葉を、先に言われてしまった。
「お前が顔に出やすいっつーだけで、俺様はなんにもしてねぇぞ」
いや、そういうところが見えてるとしか思えないんだけど。
「余計なこと考えてる暇あんなら、ちゃんと思い出せよ」
そう言うんだったら、俺の心の声と会話しないでよね。
さっきから思考がぶれっぶれに横道それていってるのそのせいだよ?
「…切っ掛けって言われたら思い浮かぶのは手かな」
あ、俺も見えたかも、カミナの心。
なんだそりゃって思ってるよ絶対、そんな顔してる。
「俺、小さい頃の記憶って無くてさ…物心ついた時には一人で、友達もいなくて」
じいさんが言うには村の近くの森に倒れてたって話だけど。
全身傷だらけで、着の身着のままって感じで荷物も何もなくて。
両親も、その遺体すら近くに無かったらしいから…生きてるか死んでるかなんて分からないし。
何で名前だけは覚えていたのか、まぁ今となってはどうでもいい事だけどさ。
「だからかな…初めて二人に会った時に優しく撫でてもらったのがスゴく嬉しくて、人の手ってこんなに温かいんだなって…神様だけどさ」
静かに耳を傾けていてくれたカミナの目尻がゆるりと下がった。
指先にすべすべしたものが触れる。すり寄るみたいに押し付けていた、ニ色の蜥蜴達の頭を撫でると細い尻尾を左右に揺らした。
「その時かも、二人に惚れたの」
「なんだよぉ、ちゃんとあんじゃねぇか!」
浅黒く太い腕が、俺の肩を勢いよく抱き寄せて頭をわしゃわしゃ撫でてくる。
だから、急に瞬間移動してこないでよ!心臓に悪いんだけど!
「悪い悪い、お前にとっちゃあ慣れねぇことだもんな。俺様、雷神だからよぉ。光の速さで動けんだよ」
あー…それじゃあ俺の目で追えるわけがないよね。
いや普通に反則過ぎない?それ。
神様って本当に何でもありだな、いや神様なんだから当然といえば当然なのかな?
「でよぉ、おめぇらどこまで進んでんだ?」
穏やかな笑顔が急に…なんて言ったらいいんだろう?何かを企んでいるような悪い笑みに変わる。
妙な気配を察知したのか、膝の上から彼を非難するような、俺に警告をしてくれているような二匹の鳴き声が上がった。
「進むって、何が?」
カミナと、この子達は分かっているみたいだったけど。分からないことは素直に聞くしかないわけで、だからそのまま尋ねてみたのにな。
くしゃって紙を丸めたみたいに、彼の眉間に深い皺が刻まれてしまった。
「おいおい、そっからかよ…キスはしてんだよな?」
「してるよ?カミナも見たじゃん」
あからさまに、がっかりしたように息を吐いたカミナが質問を続ける。
おかしいなぁ…いってらっしゃいの挨拶をした時、カミナも一緒に見送りに出ていたのに。見えてなかったのかな?
「…口にはしてねぇのか?」
「いつも額か頬だけだけど?」
さらに続ける彼の顔が徐々に曇っていく。
俺の返答を聞くと、力が抜けてしまったみたいに幅が広い肩をがくりと落としてしまった。
「キスって、そういうもんじゃないの?」
二人にしてもらった初めてのキスは…胸がとってもほわほわして、頬が勝手にだらしなく下がっちゃったっけ。
今でもしてもらえると嬉しくて、胸が擽ったくなっちゃうんだけどさ。
「間違ってはねぇけどよ…なんっつーか、ほのぼのし過ぎてて色気がねぇなぁ」
それはそれで、おめぇららしくて微笑ましいけどな、と片方の眉を下げて胡坐をかく。
ニカッと持ち上がった大きな口から、白い八重歯がこぼれた。
「いろけ?それって…俺が二人の立派なお嫁さんになるのに必要だったりする?」
「まぁ、ねぇよりは有った方がってくれぇなもんだからなぁ…それよりもまずは料理だな!うめぇもんが作れるっつーのはそれだけで嫁力がたけぇぞ!」
褐色の指を顎に当てて、首を捻っていたカミナの顔がパッと輝く。
嫁力か…それを高めれば立派なお嫁さんに近づけそうだ。
「やる気があんなら俺様が、料理の師匠になってやろうか?」
「師匠って、カミナ料理出来るの?」
神様って…息してるだけで俺たちがご飯を食べているのと同じだって、聞いたんだけど。
食事はあくまで、味を楽しむためだけの趣味みたいなもののはずで。
だからこの子達も、俺が来たことで久々に腕を振るえるからって喜んでいたみたい。
それだけ神様達にとって、食事ってあまり重要じゃないって思っていたんだけどな。
「俺様、握り飯が好物でよ。米に合う具材を作ってる内に料理にハマっちまってなぁ…レパートリーが増えていくのがまた楽しいんだよなこれが」
そう熱弁する彼の表情は本当に楽しそうで、つられて俺も笑顔になってしまう。
…本当に好きなんだろうな、料理が。
少し自慢気に、図書館のレシピ本はあらかた制覇したぜ!と逞しい胸を張る彼は、いつもの堂々とした威圧感のある姿と比べて幼く見えて、胸がほっこりと温かくなった。
「だからよぉ、腕には自信あるぜ?どうだ?」
「いいの?俺、本当に何も知らないよ?」
したことはないのは勿論だけど、やり方もなにも分からないことばかりだ。
そんな俺に一から付き合うなんて、スゴく大変なことだと思うんだけど。
「そんなの当たりめぇだろうが。俺様だって、昔はお前と同じだったんだぜ?そんな事より大事なのはお前がやりてぇのか、やりたくねぇかだ」
ごつごつした手が俺の肩にゆっくりと置かれる。
真剣な彼の眼差しが、俺の返事を待つように静かな光をたたえていた。
「お願いカミナ、俺に料理を教えて?」
「っし!よく言った!今日からお前は俺様の弟子だ!」
腹の芯まで響くような豪快な笑い声を上げて、カミナが俺の背中をバシバシ叩く。
二匹の鋭い鳴き声が、嗜めるように膝の上から上がった。
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