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全部ひっくるめて宝物
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紙袋の口を開くと甘い香りがより一層強くなる。
まだほんのりと温かい、鈴の形をしたカステラを一粒取り出す。
途端にくりくりとした黄色の瞳達が、一斉に輝き始めた。期待からか、細い尻尾が左右に大きく振られている。
列の先頭にいる子の口元へ掌に乗せたカステラを近づけると、小さな口をめいいっぱい大きく開いて勢いよく食いついてきた。
「美味しい?」
俺の問いかけに瞳はますますキラキラ輝き、尻尾がさらに激しく動く。
嬉しいな…まるで、美味しいよって言ってくれているみたいだ。
欠片1つ残すことなく綺麗にカステラを食べ終えて、きゅうっと短く鳴いた声はとても満足そうだ。
小さくて、すべすべした鱗を纏う頭をひと撫ですると、もう一度ご機嫌そうな鳴き声を上げて去っていく。
その子と入れ替わりに、先頭へと進み出た子が元気よく鳴いた。
「はいはい、ちゃんとみんなの分、有るからな。はいどうぞ」
「あー…可愛い、うちの子達にお土産配るサトルちゃん可愛すぎるんだけど」
「どの瞬間を撮っても可愛いだなんて…またアルバムが分厚くなってしまうな」
腹の底から絞り出すような声が溜め息と共に漏れる。噛み締めるような声に続けて、新たなシャッター音が耳に届いた。
…恥ずかしい。
今の俺の気持ちを一言で表せと言われたならば、迷わずそうだと断言できるくらいには。
可愛いって延々と側で言われ続けることもだけど、カメラ…だったっけ?
目に映っている光景を、そのまま一枚の絵にしちゃうやつ。
それを携えた二人が俺の周囲を忙しなく移動しては、一心不乱に絵を撮り続けている。
俺を、ただお土産に買ったカステラを、お留守番してくれていた蜥蜴達に配っているだけの俺の姿を。
まだ、変装した記念に撮った時のは分かるんだけどさ。これは一体、何の記念だっていうんだろう。
まぁ…二人が楽しそうにしているから、別にいいんだけど。
それでもやっぱり恥ずかしくて、自然と顔に熱が集まっていってしまう。
きゅう!と一際元気な鳴き声が、もやもやと思考を飛ばしていた俺を引き戻す。
「ああ、ごめんな。はい、きみの分だよ」
そわそわと小さな身体を揺らす、その口元へとカステラを運ぶ。
目を輝かせながら、ほっぺをもきゅもきゅと動かす姿に胸の中がほっこりした。
可愛いなぁ…確かに、二人が絵にして残しておきたい気持ちが分かるかも。ずっと眺めていても飽きないや。
また俺のすぐ側で、小さく呻く声と共に連続でシャッターを切る音が響く。
蜥蜴達の列が無くなるまで、その音が止むことはなかった。
霧みたいに真っ白な温かい湯気に包まれながら、柔らかい掌に撫でられ続けていると、つい瞼が重くなってきてしまう。
込み上げてくる欠伸を無理矢理噛み殺して、視線を自身の身体へと向ける。
すでに白い泡をふんだんに纏っている俺の肌に、追加でクリームでも盛るかのように。
赤い鱗で覆われた手と、青い鱗で覆われた手がゆるゆると行き来しては泡を擦り付けていく。
「今日は随分念入りだね」
普段はかわりばんこなのに、二人がかりで洗ってくれているってこともだけど。
洗い方が、その…尋常じゃない。
真剣な目をした二人から、泡まみれにされてはお湯で流され、また泡まみれにされるの繰り返しで。
温泉に浸かる前に、全身の皮膚がふやけてしまいそうだ。
俺の目から見たら、そんなに汚れている風には見えないんだけどな。
もしかして、神様である二人にしか見えない汚れとかあったりするんだろうか。
「…こびりついちゃってるからね。しっかり洗い落とさないと」
「全くだ。俺達のサトルにベタベタ触って…許せないんだぞ」
やっぱり人間の俺には見えない類いのやつか。ということは…あの男が原因なんだろうな。
大きな石が出来物のように、顔の至るところから飛び出ていた男の、不気味な笑顔を思い出してしまい背筋が寒くなる。
あの時、神力がどうとかって言っていたから…それを使われたせいで、見えない何かが俺の全身に付いてしまったのかな。
そんな強そう?なものが、石鹸の泡だけで落ちるのかってのも疑問だけど。
でも、そもそも見ることすら出来ない俺がとやかく考えても仕方がないし…二人に任せるのが一番だよな。
「はーい流すよー」
俺が目をつぶって頷いたのを合図に、丁度いい熱さのお湯が頭から爪先まで勢いよく流れていく。
肌を滑るように撫でていた大きな手が、張り付いた俺の白い髪をはらって耳にかけてくれた。
「ありがとう、セイ、ソウ。落ちた?」
「うーん…まぁ妥協点、かな」
「あまり続けていても肌に良くないしな…ごめんな、疲れただろう」
振り向くと、眉間の皺を深くしたままソウが唸りながら首を傾ける。
少し長めの金糸のような髪が、赤い鱗が散りばめられた小麦色の肌を彩るようにさらりと流れた。
青く逞しい腕が伸びてきて、俺の身体を軽々と抱き上げてくれる。
温泉の熱気のせいか、彼の側頭部から生えている白い角と同じくらい白い肌が、ほんのりと赤みを帯びていた。
「大丈夫だよ。俺は座ってるだけだったから…むしろ二人の方が疲れたんじゃない?」
「全っ然!そもそも俺達がやりたくてやってることだし。ね、セイ」
「ああ、だから心配しなくていいぞ」
気持ちだけは貰っておくね、と赤い手が俺の頭を撫でて温泉へと足を向けた。
穏やかな笑みを浮かべているセイに向かって腕を伸ばす。俺が回しやすいようにしているのか、少し上の方に抱き直してくれる。
太い首にしがみつくと、しっとりとしたほっぺたが俺の頬にすり寄るようにくっついてきた。
頬を寄せたまま緑色のお湯に身を委ねる。じんわりと染み渡っていく熱さに、肩に乗っかっていた重たい何かが溶けていくような気がした。
疲れていたのかもしれない、自分が思っていた以上に。…色々ありすぎたもんなぁ、今日は。
少し怖い思いもしたけれど、それ以上に楽しさや驚きに満ちた一日だった。
「どうしたのサトルちゃん、ご機嫌だね」
赤い鱗に覆われた長い指が、俺の頬にそっと触れる。
君が笑っていると俺達も嬉しいよ!と朗らかな笑みをソウが浮かべた。
「楽しかったなって思ってさ」
二人に出会ってからまだ間もないのに、数え切れないほど多くのものを貰っている。
あのまま村で過ごしていたら体験できなかったこと、知らなかった気持ち。
良いことも、ちょっと嫌なことも全部含めて俺の大切な宝物だ。
「また行こうな、三人で」
「今度はお祭りの時に行こうよ!花火がすっごく綺麗なんだ!」
俺に向けられたセイの柔らかな眼差しに、胸の奥が擽ったくなってまた頬が緩んでしまう。
弾んだ調子の声でソウが、白い歯を見せながらガッシリと筋肉のついた腕を大きく広げた。
花火について尋ねてみると…夜空にね、光の花が咲くんだよ!と無邪気に笑って顔を輝かせる。
上空で火薬が燃えて炎色反応を起こすんだ、金属の種類で色が変わってな、と丁寧に教えてくれようとしているセイを、だから夢がないって!と赤い尻尾がペシペシ叩く。
そんな二人のやり取りに、思わず笑いが込み上げてきて。
堪えられずに吹き出すと、二人にもうつっちゃって、笑いすぎて涙まで出てきてしまった。
吸い込まれるみたいにベッドに向かって飛び込むと、瞼が勝手に閉じかかってしまう。
眠気に抗っている俺に追い打ちをかけるように頭を、背中を、ニ色の手からゆったり撫でられた。
「二人とも止めてよ…それ、寝ちゃうから…」
「寝かせる為にやってるんだもん」
「疲れてるんだろう?ゆっくり休んでいいんだぞ」
「でも…まだ、してない」
何事かと二人の手が止まっている間に、何とか身体を動かして仰向けになる。
不思議そうに目を丸くしている二人の手を握って、軽く引っ張った。
顔を見合わせて、大きな背を丸めて、カッコいい二人の顔がゆっくり近づいてくる。
伸び上がって順番に両手で包み込んで、額に唇を寄せていく。
「おやすみ…セイ、ソウ」
良かった、眠ってしまう前に挨拶をすることが出来たぞ。
初めて二人からして貰った時は、お返しする前に俺、寝ちゃったからなぁ…ちょっと悔しかったんだよね。
満足感に浸りながら瞼を閉じる。寸前に映った二人の顔は、何故か耳の先まで真っ赤に染まっていた。
「何、今の…ズルくない?」
「俺達に、お休みの挨拶をするためだけに、頑張って起きようとしていたなんて…」
暴れだす心臓と乱れる呼吸を懸命に整えながら、穏やかな寝息を立てている彼を見つめる。
その表情はとても晴れやかで、達成感に満ちたものだった。
全く、この子はどれだけ自分達を夢中にさせたら気がすむのだろうか。
常日頃から自分は貰ってばかりだと申し訳なさそうに、でも嬉しそうに、はにかんでいるが。
「サトルには敵わないな」
「ねー流石俺達の見込んだお嫁さんだよ」
「絶対に、守るぞ」
「勿論!もう二度とあんな悲しそうな顔はさせないよ」
大きく頷いた自分の片割れに拳を向けると、赤い拳がコツンと合わさる。
口の端をにっとつり上げた彼と共に、柔らかい頬へキスを落とす。
愛おしい、俺達の、俺達だけの大切な宝物に。
まだほんのりと温かい、鈴の形をしたカステラを一粒取り出す。
途端にくりくりとした黄色の瞳達が、一斉に輝き始めた。期待からか、細い尻尾が左右に大きく振られている。
列の先頭にいる子の口元へ掌に乗せたカステラを近づけると、小さな口をめいいっぱい大きく開いて勢いよく食いついてきた。
「美味しい?」
俺の問いかけに瞳はますますキラキラ輝き、尻尾がさらに激しく動く。
嬉しいな…まるで、美味しいよって言ってくれているみたいだ。
欠片1つ残すことなく綺麗にカステラを食べ終えて、きゅうっと短く鳴いた声はとても満足そうだ。
小さくて、すべすべした鱗を纏う頭をひと撫ですると、もう一度ご機嫌そうな鳴き声を上げて去っていく。
その子と入れ替わりに、先頭へと進み出た子が元気よく鳴いた。
「はいはい、ちゃんとみんなの分、有るからな。はいどうぞ」
「あー…可愛い、うちの子達にお土産配るサトルちゃん可愛すぎるんだけど」
「どの瞬間を撮っても可愛いだなんて…またアルバムが分厚くなってしまうな」
腹の底から絞り出すような声が溜め息と共に漏れる。噛み締めるような声に続けて、新たなシャッター音が耳に届いた。
…恥ずかしい。
今の俺の気持ちを一言で表せと言われたならば、迷わずそうだと断言できるくらいには。
可愛いって延々と側で言われ続けることもだけど、カメラ…だったっけ?
目に映っている光景を、そのまま一枚の絵にしちゃうやつ。
それを携えた二人が俺の周囲を忙しなく移動しては、一心不乱に絵を撮り続けている。
俺を、ただお土産に買ったカステラを、お留守番してくれていた蜥蜴達に配っているだけの俺の姿を。
まだ、変装した記念に撮った時のは分かるんだけどさ。これは一体、何の記念だっていうんだろう。
まぁ…二人が楽しそうにしているから、別にいいんだけど。
それでもやっぱり恥ずかしくて、自然と顔に熱が集まっていってしまう。
きゅう!と一際元気な鳴き声が、もやもやと思考を飛ばしていた俺を引き戻す。
「ああ、ごめんな。はい、きみの分だよ」
そわそわと小さな身体を揺らす、その口元へとカステラを運ぶ。
目を輝かせながら、ほっぺをもきゅもきゅと動かす姿に胸の中がほっこりした。
可愛いなぁ…確かに、二人が絵にして残しておきたい気持ちが分かるかも。ずっと眺めていても飽きないや。
また俺のすぐ側で、小さく呻く声と共に連続でシャッターを切る音が響く。
蜥蜴達の列が無くなるまで、その音が止むことはなかった。
霧みたいに真っ白な温かい湯気に包まれながら、柔らかい掌に撫でられ続けていると、つい瞼が重くなってきてしまう。
込み上げてくる欠伸を無理矢理噛み殺して、視線を自身の身体へと向ける。
すでに白い泡をふんだんに纏っている俺の肌に、追加でクリームでも盛るかのように。
赤い鱗で覆われた手と、青い鱗で覆われた手がゆるゆると行き来しては泡を擦り付けていく。
「今日は随分念入りだね」
普段はかわりばんこなのに、二人がかりで洗ってくれているってこともだけど。
洗い方が、その…尋常じゃない。
真剣な目をした二人から、泡まみれにされてはお湯で流され、また泡まみれにされるの繰り返しで。
温泉に浸かる前に、全身の皮膚がふやけてしまいそうだ。
俺の目から見たら、そんなに汚れている風には見えないんだけどな。
もしかして、神様である二人にしか見えない汚れとかあったりするんだろうか。
「…こびりついちゃってるからね。しっかり洗い落とさないと」
「全くだ。俺達のサトルにベタベタ触って…許せないんだぞ」
やっぱり人間の俺には見えない類いのやつか。ということは…あの男が原因なんだろうな。
大きな石が出来物のように、顔の至るところから飛び出ていた男の、不気味な笑顔を思い出してしまい背筋が寒くなる。
あの時、神力がどうとかって言っていたから…それを使われたせいで、見えない何かが俺の全身に付いてしまったのかな。
そんな強そう?なものが、石鹸の泡だけで落ちるのかってのも疑問だけど。
でも、そもそも見ることすら出来ない俺がとやかく考えても仕方がないし…二人に任せるのが一番だよな。
「はーい流すよー」
俺が目をつぶって頷いたのを合図に、丁度いい熱さのお湯が頭から爪先まで勢いよく流れていく。
肌を滑るように撫でていた大きな手が、張り付いた俺の白い髪をはらって耳にかけてくれた。
「ありがとう、セイ、ソウ。落ちた?」
「うーん…まぁ妥協点、かな」
「あまり続けていても肌に良くないしな…ごめんな、疲れただろう」
振り向くと、眉間の皺を深くしたままソウが唸りながら首を傾ける。
少し長めの金糸のような髪が、赤い鱗が散りばめられた小麦色の肌を彩るようにさらりと流れた。
青く逞しい腕が伸びてきて、俺の身体を軽々と抱き上げてくれる。
温泉の熱気のせいか、彼の側頭部から生えている白い角と同じくらい白い肌が、ほんのりと赤みを帯びていた。
「大丈夫だよ。俺は座ってるだけだったから…むしろ二人の方が疲れたんじゃない?」
「全っ然!そもそも俺達がやりたくてやってることだし。ね、セイ」
「ああ、だから心配しなくていいぞ」
気持ちだけは貰っておくね、と赤い手が俺の頭を撫でて温泉へと足を向けた。
穏やかな笑みを浮かべているセイに向かって腕を伸ばす。俺が回しやすいようにしているのか、少し上の方に抱き直してくれる。
太い首にしがみつくと、しっとりとしたほっぺたが俺の頬にすり寄るようにくっついてきた。
頬を寄せたまま緑色のお湯に身を委ねる。じんわりと染み渡っていく熱さに、肩に乗っかっていた重たい何かが溶けていくような気がした。
疲れていたのかもしれない、自分が思っていた以上に。…色々ありすぎたもんなぁ、今日は。
少し怖い思いもしたけれど、それ以上に楽しさや驚きに満ちた一日だった。
「どうしたのサトルちゃん、ご機嫌だね」
赤い鱗に覆われた長い指が、俺の頬にそっと触れる。
君が笑っていると俺達も嬉しいよ!と朗らかな笑みをソウが浮かべた。
「楽しかったなって思ってさ」
二人に出会ってからまだ間もないのに、数え切れないほど多くのものを貰っている。
あのまま村で過ごしていたら体験できなかったこと、知らなかった気持ち。
良いことも、ちょっと嫌なことも全部含めて俺の大切な宝物だ。
「また行こうな、三人で」
「今度はお祭りの時に行こうよ!花火がすっごく綺麗なんだ!」
俺に向けられたセイの柔らかな眼差しに、胸の奥が擽ったくなってまた頬が緩んでしまう。
弾んだ調子の声でソウが、白い歯を見せながらガッシリと筋肉のついた腕を大きく広げた。
花火について尋ねてみると…夜空にね、光の花が咲くんだよ!と無邪気に笑って顔を輝かせる。
上空で火薬が燃えて炎色反応を起こすんだ、金属の種類で色が変わってな、と丁寧に教えてくれようとしているセイを、だから夢がないって!と赤い尻尾がペシペシ叩く。
そんな二人のやり取りに、思わず笑いが込み上げてきて。
堪えられずに吹き出すと、二人にもうつっちゃって、笑いすぎて涙まで出てきてしまった。
吸い込まれるみたいにベッドに向かって飛び込むと、瞼が勝手に閉じかかってしまう。
眠気に抗っている俺に追い打ちをかけるように頭を、背中を、ニ色の手からゆったり撫でられた。
「二人とも止めてよ…それ、寝ちゃうから…」
「寝かせる為にやってるんだもん」
「疲れてるんだろう?ゆっくり休んでいいんだぞ」
「でも…まだ、してない」
何事かと二人の手が止まっている間に、何とか身体を動かして仰向けになる。
不思議そうに目を丸くしている二人の手を握って、軽く引っ張った。
顔を見合わせて、大きな背を丸めて、カッコいい二人の顔がゆっくり近づいてくる。
伸び上がって順番に両手で包み込んで、額に唇を寄せていく。
「おやすみ…セイ、ソウ」
良かった、眠ってしまう前に挨拶をすることが出来たぞ。
初めて二人からして貰った時は、お返しする前に俺、寝ちゃったからなぁ…ちょっと悔しかったんだよね。
満足感に浸りながら瞼を閉じる。寸前に映った二人の顔は、何故か耳の先まで真っ赤に染まっていた。
「何、今の…ズルくない?」
「俺達に、お休みの挨拶をするためだけに、頑張って起きようとしていたなんて…」
暴れだす心臓と乱れる呼吸を懸命に整えながら、穏やかな寝息を立てている彼を見つめる。
その表情はとても晴れやかで、達成感に満ちたものだった。
全く、この子はどれだけ自分達を夢中にさせたら気がすむのだろうか。
常日頃から自分は貰ってばかりだと申し訳なさそうに、でも嬉しそうに、はにかんでいるが。
「サトルには敵わないな」
「ねー流石俺達の見込んだお嫁さんだよ」
「絶対に、守るぞ」
「勿論!もう二度とあんな悲しそうな顔はさせないよ」
大きく頷いた自分の片割れに拳を向けると、赤い拳がコツンと合わさる。
口の端をにっとつり上げた彼と共に、柔らかい頬へキスを落とす。
愛おしい、俺達の、俺達だけの大切な宝物に。
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