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初めてのお出掛け、初めての変装
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撫でるように、なぞるように、柔らかい物が俺の目元を滑っていく。
…ちょっとだけ擽ったい。
でも我慢しないと、下手に動いたら俺のせいでやり直しになってしまう。
しばらくすると柔らかい物が離れていっ、て頭に紐のような物を巻かれた。
カラカラときのみを振った時に聞こえるような音がして、続けざまに頭の上に何かを被せられる。
何かさらさらしたものが首筋に少し触れた。
俺の首から上で行われている作業と同時進行で、手の甲にもさっきの柔らかい物が触れていく。
左右の手を満遍なく這い回った後に、爪には冷たい液体を塗られていった。
「こっちはオッケー。そっちは?」
「終わったぞ。後は最後の仕上げだけだな」
「…本当に、入れるの?」
目を閉じたまま恐る恐る二人に尋ねる。
ほんの少しの沈黙の後に、頭をぽんぽんと優しく撫でられた。
「俺としてはさぁ…サトルちゃんの綺麗なお目目を隠すようなことはしたくないんだけどね」
「ごめんな、少しだけ我慢してくれ…君を守る為なんだ」
少し高めの声が不満げにぼやき、低めの声が申し訳なさそうな声で話す。
「でもさぁー…何かあっても最悪、俺達が全部ぶっ飛ばせばよくない?」
「お前は相変わらずだな…そのせいで徒党を組まれたことがあっただろう?」
なおも食い下がる不機嫌そうな声に対して、穏やかな声が呆れたように軽く息を吐いてから諭した。
それでも納得がいかないのか、そいつらもまとめてぶっ飛ばしたんだからいいじゃん!とごねている。
「俺、頑張るから…入れていいよ?」
勇気を振り絞ってそう二人に告げると、途端に水を打ったような静けさが部屋に訪れた。
怖いけど、俺のせいで仲良しな二人が言い合いになってしまうほうが嫌だもんな。
少しして息を飲むような、何かを飲み下すような音が俺の耳に届く。
「セイ?ソウ?」
彼等の表情が見えないせいで、余計に不安になってしまう。
黙ったままの二人に呼び掛けると、バタバタと慌てているような音がしてから、両方の肩を力強く掴まれた。
「俺達、優しくするからね!」
「絶対に傷つけるようなことはしないからな!」
「うんっありがとう。俺、どうすればいい?」
彼等の温かい励ましの言葉に、雲が晴れるみたいに胸の中で渦巻いていた不安が消えていく。
俺の問いかけに少し上ずったような声でセイが。
「お、俺達が良いと言うまで、目を開けたままでいてくれないか?」
と言ってきたので、力を込めて目を大きく開いた。
ほんのりと白い頬を赤らめた彼が、透明な掌サイズの箱から小さな物を指の先に乗せる。
俺の瞼を太い指が閉じてしまわないように強く押さえながら、青い指先が徐々に迫ってきた。
反射的に目を閉じそうになるのを必死に堪えていると、左手に何か温かいものが重なる。
視線だけをそちらに向けると赤い鱗に覆われた、俺よりひと回り大きな手が、俺の手を包み込むように優しく握ってくれていて…
「大丈夫だよ」
柔らかな、ほっとするようなその声に、強ばっていた身体がふっと緩んだ。
「よし、出来たぞ」
「ふぇ?」
あまりの呆気なさに、思わず変な声が出てしまう。
「どうだ?痛くはないか?」
四つの金色の瞳が心配そうに俺を見つめている。
痛いも何も、入れたって感覚すら無かったんだけど…本当に入ってるのかな?
「大丈夫だよ、もう片方もするんだよね?」
「ああ、いいか?」
小さく頷くと、彼等に刻まれていた眉間の皺が消えていく。
ゆるりと目尻を下げてから、再び箱に入っている物を指先に乗せた。
反対側もあっという間だった。
ソウの手を握っていたらいつの間にか終わっていて、よく頑張ったなとセイが頬を撫でてくれた。
赤くて長い尻尾が、俺の腰の辺りにしゅるりと巻き付く。
軽々と俺の身体が持ち上げられて、逞しい腕の中にぽすんと収まった。
「ほら、サトルちゃん見て見て!」
彼の身長よりも大きな姿見に、俺を抱えたソウの姿が映る。
「スゴい…これが、俺?」
左の目元には、ソウと同じ赤い鱗が模様のように描かれていて…右の目元には、セイと同じ青い鱗が描かれている。
さらに、左の側頭部の辺りに黒い角の飾りが、反対側には白い角の飾りが付けられていて。
髪の毛と瞳は、彼等とお揃いの金色になっていた。
「手の方もよく出来ているだろう?俺の自信作だぞ!」
明るいセイの声に促されて、自分の手を目の前に掲げる。
両手の甲も左は赤、右は青の鱗が描かれていて、爪も角と同色の色で染まっていた。
まるで…俺の身体が半分ずつ、セイとソウになっちゃったみたいだ。
「こうしてみるとさぁ、ホントに設定通り兄弟みたく見えるよね!俺達!」
弾んだソウの声に同意するように、俺達の隣に並んでいるセイが太い首を何度も縦に振った。
兄弟、か…
鏡に映る二人の色に染まっている俺の姿に、変装だとはいえ胸の中がぽかぽかして…勝手に頬が緩んでしまう。
それは、ほんの少し前のことで…
のんびりとセイの大きな膝の上で、彼の胸板に背中を預け、寛いでいた時だった。
…ちょっとだけ擽ったい。
でも我慢しないと、下手に動いたら俺のせいでやり直しになってしまう。
しばらくすると柔らかい物が離れていっ、て頭に紐のような物を巻かれた。
カラカラときのみを振った時に聞こえるような音がして、続けざまに頭の上に何かを被せられる。
何かさらさらしたものが首筋に少し触れた。
俺の首から上で行われている作業と同時進行で、手の甲にもさっきの柔らかい物が触れていく。
左右の手を満遍なく這い回った後に、爪には冷たい液体を塗られていった。
「こっちはオッケー。そっちは?」
「終わったぞ。後は最後の仕上げだけだな」
「…本当に、入れるの?」
目を閉じたまま恐る恐る二人に尋ねる。
ほんの少しの沈黙の後に、頭をぽんぽんと優しく撫でられた。
「俺としてはさぁ…サトルちゃんの綺麗なお目目を隠すようなことはしたくないんだけどね」
「ごめんな、少しだけ我慢してくれ…君を守る為なんだ」
少し高めの声が不満げにぼやき、低めの声が申し訳なさそうな声で話す。
「でもさぁー…何かあっても最悪、俺達が全部ぶっ飛ばせばよくない?」
「お前は相変わらずだな…そのせいで徒党を組まれたことがあっただろう?」
なおも食い下がる不機嫌そうな声に対して、穏やかな声が呆れたように軽く息を吐いてから諭した。
それでも納得がいかないのか、そいつらもまとめてぶっ飛ばしたんだからいいじゃん!とごねている。
「俺、頑張るから…入れていいよ?」
勇気を振り絞ってそう二人に告げると、途端に水を打ったような静けさが部屋に訪れた。
怖いけど、俺のせいで仲良しな二人が言い合いになってしまうほうが嫌だもんな。
少しして息を飲むような、何かを飲み下すような音が俺の耳に届く。
「セイ?ソウ?」
彼等の表情が見えないせいで、余計に不安になってしまう。
黙ったままの二人に呼び掛けると、バタバタと慌てているような音がしてから、両方の肩を力強く掴まれた。
「俺達、優しくするからね!」
「絶対に傷つけるようなことはしないからな!」
「うんっありがとう。俺、どうすればいい?」
彼等の温かい励ましの言葉に、雲が晴れるみたいに胸の中で渦巻いていた不安が消えていく。
俺の問いかけに少し上ずったような声でセイが。
「お、俺達が良いと言うまで、目を開けたままでいてくれないか?」
と言ってきたので、力を込めて目を大きく開いた。
ほんのりと白い頬を赤らめた彼が、透明な掌サイズの箱から小さな物を指の先に乗せる。
俺の瞼を太い指が閉じてしまわないように強く押さえながら、青い指先が徐々に迫ってきた。
反射的に目を閉じそうになるのを必死に堪えていると、左手に何か温かいものが重なる。
視線だけをそちらに向けると赤い鱗に覆われた、俺よりひと回り大きな手が、俺の手を包み込むように優しく握ってくれていて…
「大丈夫だよ」
柔らかな、ほっとするようなその声に、強ばっていた身体がふっと緩んだ。
「よし、出来たぞ」
「ふぇ?」
あまりの呆気なさに、思わず変な声が出てしまう。
「どうだ?痛くはないか?」
四つの金色の瞳が心配そうに俺を見つめている。
痛いも何も、入れたって感覚すら無かったんだけど…本当に入ってるのかな?
「大丈夫だよ、もう片方もするんだよね?」
「ああ、いいか?」
小さく頷くと、彼等に刻まれていた眉間の皺が消えていく。
ゆるりと目尻を下げてから、再び箱に入っている物を指先に乗せた。
反対側もあっという間だった。
ソウの手を握っていたらいつの間にか終わっていて、よく頑張ったなとセイが頬を撫でてくれた。
赤くて長い尻尾が、俺の腰の辺りにしゅるりと巻き付く。
軽々と俺の身体が持ち上げられて、逞しい腕の中にぽすんと収まった。
「ほら、サトルちゃん見て見て!」
彼の身長よりも大きな姿見に、俺を抱えたソウの姿が映る。
「スゴい…これが、俺?」
左の目元には、ソウと同じ赤い鱗が模様のように描かれていて…右の目元には、セイと同じ青い鱗が描かれている。
さらに、左の側頭部の辺りに黒い角の飾りが、反対側には白い角の飾りが付けられていて。
髪の毛と瞳は、彼等とお揃いの金色になっていた。
「手の方もよく出来ているだろう?俺の自信作だぞ!」
明るいセイの声に促されて、自分の手を目の前に掲げる。
両手の甲も左は赤、右は青の鱗が描かれていて、爪も角と同色の色で染まっていた。
まるで…俺の身体が半分ずつ、セイとソウになっちゃったみたいだ。
「こうしてみるとさぁ、ホントに設定通り兄弟みたく見えるよね!俺達!」
弾んだソウの声に同意するように、俺達の隣に並んでいるセイが太い首を何度も縦に振った。
兄弟、か…
鏡に映る二人の色に染まっている俺の姿に、変装だとはいえ胸の中がぽかぽかして…勝手に頬が緩んでしまう。
それは、ほんの少し前のことで…
のんびりとセイの大きな膝の上で、彼の胸板に背中を預け、寛いでいた時だった。
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