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第一章 気まぐれな白き虎
01話 始まり
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「うぇーーーん!」
気がつくと、白い空間にいた。おまけに目の前には泣きじゃくるピンク色の羽をつけた男の子が土下座をしている。
どういう状況コレ?僕は確か、道路に飛び出した猫を庇い車に轢かれたんだよね?じゃあ、ここは死後の世界?
「うぇーーーん!オエッ!グスグス、、、」
……とりあえず、泣き止ませるか。
僕は、目の前で泣きじゃくる5歳ほどの少年を抱き抱え泣き止むまで背中をさすった。すると、しばらくして落ち着いたのか「ありがとう。下してもらってもよろしいですか?」と言われたのでそっと下した。
「本当に申し訳ございませんでした」
そして、先程と同じ土下座をし急に謝り出した。
いやいや……君は一体何者なの?
いきなり、謝られても困るんだけど!
「私、先程助けられた猫なんです」
「のようには見えないけど?」
尻尾も猫耳もない。代わりにピンク色の羽はつけてるけど猫要素は皆無だ。
「はい。訳あって猫に化け、あなたの世界にお邪魔していました。あ!自己紹介がまだでしたね。私は精霊神エクローシアです。異世界からやってきました」
「僕は二階堂優です。それで、そのワケってなんですか?」
「飲み込みが早いですね?「ここはどこなんだ!」とか、「異世界って何?」とか聞かれるかと思いましたよ」
現代人を舐めたらいかんぜよ。最近弟に読まされたラノベとやらで予習済みなのだ。
……ちなみにかなり動揺しているのは内緒だ。まさか、ノンフィクションだなんて。
「訳はですね、優さんがいた世界に精霊が飛ばされてしまったのです。恐らく、精霊召喚の誤作動だとは思いますが、まさか別の世界に飛ばされてしまうだなんて思いもよりませんでした」
「なるほど、その精霊を連れ帰るためにこちらの世界に来たと」
「話が早くて助かります。その後、私はその精霊を無事元の世界に送ることができたのですが……」
少年は涙目でちらっとこちらを見る。
「最後、気が緩んでしまったのかついでに観光して帰ろうと思いぶらぶらしていたら赤信号に気づかず……」
また、ポロポロと涙をこぼし始める。次は声を押し殺し泣かないように意識をして。
「そうか、なら君を守れて良かったよ」
「私は、精霊神です。轢かれても死にません。それに優さんはまだ高校生、家族もいる。私はあなたの未来を奪ってしまった」
「確かに、無駄死にだったかもしれないな」
それを聞いてさらに精霊神の嗚咽が激しくなる。
何か生まれるんじゃないかって心配になるほどに。
「だけど後悔はないよ。庇ったのがただの子猫でも精霊神様でも轢かれても大丈夫そうな超ゴツいマッチョマンだったとしても僕は同じことをしていた」
僕は先程と同じように精霊神様を抱き抱え背中をさする。
「だから気にするな」
「ごべん……なさい!」
その後、彼が泣き止むまでかなり時間がかかった。
◇◇◇◇◇◇◇
「精霊になりませんか?」
それは唐突だった。
泣き止んだと思ったら急に姿を消し数秒後にまた目の前に現れそう告げた。
「精霊?」
「はい。先程、地球の創造神様と優さんの蘇生について交渉をしてきたのですが……」
「お?まさか蘇れるの?」
「無理でした」
ですよねー。終始涙目だもんこの子。顔に無理でしたってかいてあったもん。だけどちょっと期待してしまった。
「申し訳ありません」
「気にしないで。それで僕はこれからどうなるの?」
「優さんには私が住まう世界に転生して貰いたいのです。ですがただの転生ではありません」
「ただの転生じゃない?」
「はい。転生先、種族を指定し尚且つ記憶を保持したまま転生を行います」
「普通の転生だとどうなるの?」
「転生先や種族がランダムになり記憶を消されます」
つまり、人間になれない可能性があるのか。下手したら羽虫に……
優は、ゾッとした。流石に虫だけは嫌だ。特に黒光するやつなんか考えただけで失神しそうだ。
「なんで異世界に転生しなきゃいけないんだ?地球じゃだめなのか?」
別に異世界に転生しても良いけど理由がない。何か使命的なやつを押し付けられたら面倒だ。
「それはですね。地球でも良いのですがその……」
だんだん顔が赤くなりもじもじし始める。
「それは、私があなたを気に入ったからです。神様である私を助けてくれた。それが、とても嬉しかったんです」
その後、赤面しながら淡々と自分自身について語ってくれた。曰く、精霊神ということだけで周りの大精霊や精霊に恐れ多いと距離を置かれたりして寂しかったらしい。
「我儘ですよね、すみません。この状況になったのは私のせいなのに」
とても微笑ましい理由だった。てっきり魔王を討伐しろだとか言われるのかと思ったよ。
「つまり、精霊神様はボッチなんだね?」
それを聞いた精霊神様は「ヴっ!」と変な声を出し地面に手をつける。精霊神様は豆腐メンタルのようだ。
「その、無理にとは……。「良いよ!異世界に転生するよ!」え?」
食い気味に答えると精霊神様から変な声が漏れた。
「別に同情したからじゃないよ。もし理不尽な使命を突きつけられていたら断ってた。それに何よりも異世界にはとても興味がある」
それを聞いた精霊神はまたもや涙目になる。
「種族は精霊で良いよ!」
「あ、ありがとうございます。早速転生を始めますね」
すると、さっきまで自身がいた白い空間から突如宇宙空間のような場所に移された。そこにはまさしく夜空に散りばめられた宝石の如く色とりどりの発光体が無数に浮かんでいた。
「この発光体は概念です。精霊は皆概念から生まれます」
優はこの綺麗な景色に見惚れていると遠くからものすごいスピードで向かってくる橙色の発光体を発見した。
「ねえ、あれ大丈夫?こっちに向かってきてるんだけど?」
「恐らくアレが優さんに最も適している概念だよ」
「つまり?」
「大丈夫。ピッチャーフライが顔面に当たるぐらいの痛さだから」
地味に痛いやつじゃん。
ちょ、待って!
心の準備が……
ゴン!と鈍い音が鳴り響き、発光体は優の体の中へ溶けていく。すると優の体が橙色の光に包まれ同時に頭の中にその概念の名前、魔法等の様々な情報が流れ込んできた。
(なんだか頭が朦朧としてきた。とても眠い)
「概念は【家】だね。とても強い概念だ。それにとても安らぐ。優さんにピッタリな概念だよ!」
(精霊神様がなんか言ってるな?)
優は膨大な情報による頭への負担と原因不明の倦怠感に襲われていた。それに加えて酷い睡魔が優を襲ってくる。
「優さん、私達友達だよね?」
(ふふ、友達だよ)
「ありがとう」
そして優は微睡みの中へ旅立った。
気がつくと、白い空間にいた。おまけに目の前には泣きじゃくるピンク色の羽をつけた男の子が土下座をしている。
どういう状況コレ?僕は確か、道路に飛び出した猫を庇い車に轢かれたんだよね?じゃあ、ここは死後の世界?
「うぇーーーん!オエッ!グスグス、、、」
……とりあえず、泣き止ませるか。
僕は、目の前で泣きじゃくる5歳ほどの少年を抱き抱え泣き止むまで背中をさすった。すると、しばらくして落ち着いたのか「ありがとう。下してもらってもよろしいですか?」と言われたのでそっと下した。
「本当に申し訳ございませんでした」
そして、先程と同じ土下座をし急に謝り出した。
いやいや……君は一体何者なの?
いきなり、謝られても困るんだけど!
「私、先程助けられた猫なんです」
「のようには見えないけど?」
尻尾も猫耳もない。代わりにピンク色の羽はつけてるけど猫要素は皆無だ。
「はい。訳あって猫に化け、あなたの世界にお邪魔していました。あ!自己紹介がまだでしたね。私は精霊神エクローシアです。異世界からやってきました」
「僕は二階堂優です。それで、そのワケってなんですか?」
「飲み込みが早いですね?「ここはどこなんだ!」とか、「異世界って何?」とか聞かれるかと思いましたよ」
現代人を舐めたらいかんぜよ。最近弟に読まされたラノベとやらで予習済みなのだ。
……ちなみにかなり動揺しているのは内緒だ。まさか、ノンフィクションだなんて。
「訳はですね、優さんがいた世界に精霊が飛ばされてしまったのです。恐らく、精霊召喚の誤作動だとは思いますが、まさか別の世界に飛ばされてしまうだなんて思いもよりませんでした」
「なるほど、その精霊を連れ帰るためにこちらの世界に来たと」
「話が早くて助かります。その後、私はその精霊を無事元の世界に送ることができたのですが……」
少年は涙目でちらっとこちらを見る。
「最後、気が緩んでしまったのかついでに観光して帰ろうと思いぶらぶらしていたら赤信号に気づかず……」
また、ポロポロと涙をこぼし始める。次は声を押し殺し泣かないように意識をして。
「そうか、なら君を守れて良かったよ」
「私は、精霊神です。轢かれても死にません。それに優さんはまだ高校生、家族もいる。私はあなたの未来を奪ってしまった」
「確かに、無駄死にだったかもしれないな」
それを聞いてさらに精霊神の嗚咽が激しくなる。
何か生まれるんじゃないかって心配になるほどに。
「だけど後悔はないよ。庇ったのがただの子猫でも精霊神様でも轢かれても大丈夫そうな超ゴツいマッチョマンだったとしても僕は同じことをしていた」
僕は先程と同じように精霊神様を抱き抱え背中をさする。
「だから気にするな」
「ごべん……なさい!」
その後、彼が泣き止むまでかなり時間がかかった。
◇◇◇◇◇◇◇
「精霊になりませんか?」
それは唐突だった。
泣き止んだと思ったら急に姿を消し数秒後にまた目の前に現れそう告げた。
「精霊?」
「はい。先程、地球の創造神様と優さんの蘇生について交渉をしてきたのですが……」
「お?まさか蘇れるの?」
「無理でした」
ですよねー。終始涙目だもんこの子。顔に無理でしたってかいてあったもん。だけどちょっと期待してしまった。
「申し訳ありません」
「気にしないで。それで僕はこれからどうなるの?」
「優さんには私が住まう世界に転生して貰いたいのです。ですがただの転生ではありません」
「ただの転生じゃない?」
「はい。転生先、種族を指定し尚且つ記憶を保持したまま転生を行います」
「普通の転生だとどうなるの?」
「転生先や種族がランダムになり記憶を消されます」
つまり、人間になれない可能性があるのか。下手したら羽虫に……
優は、ゾッとした。流石に虫だけは嫌だ。特に黒光するやつなんか考えただけで失神しそうだ。
「なんで異世界に転生しなきゃいけないんだ?地球じゃだめなのか?」
別に異世界に転生しても良いけど理由がない。何か使命的なやつを押し付けられたら面倒だ。
「それはですね。地球でも良いのですがその……」
だんだん顔が赤くなりもじもじし始める。
「それは、私があなたを気に入ったからです。神様である私を助けてくれた。それが、とても嬉しかったんです」
その後、赤面しながら淡々と自分自身について語ってくれた。曰く、精霊神ということだけで周りの大精霊や精霊に恐れ多いと距離を置かれたりして寂しかったらしい。
「我儘ですよね、すみません。この状況になったのは私のせいなのに」
とても微笑ましい理由だった。てっきり魔王を討伐しろだとか言われるのかと思ったよ。
「つまり、精霊神様はボッチなんだね?」
それを聞いた精霊神様は「ヴっ!」と変な声を出し地面に手をつける。精霊神様は豆腐メンタルのようだ。
「その、無理にとは……。「良いよ!異世界に転生するよ!」え?」
食い気味に答えると精霊神様から変な声が漏れた。
「別に同情したからじゃないよ。もし理不尽な使命を突きつけられていたら断ってた。それに何よりも異世界にはとても興味がある」
それを聞いた精霊神はまたもや涙目になる。
「種族は精霊で良いよ!」
「あ、ありがとうございます。早速転生を始めますね」
すると、さっきまで自身がいた白い空間から突如宇宙空間のような場所に移された。そこにはまさしく夜空に散りばめられた宝石の如く色とりどりの発光体が無数に浮かんでいた。
「この発光体は概念です。精霊は皆概念から生まれます」
優はこの綺麗な景色に見惚れていると遠くからものすごいスピードで向かってくる橙色の発光体を発見した。
「ねえ、あれ大丈夫?こっちに向かってきてるんだけど?」
「恐らくアレが優さんに最も適している概念だよ」
「つまり?」
「大丈夫。ピッチャーフライが顔面に当たるぐらいの痛さだから」
地味に痛いやつじゃん。
ちょ、待って!
心の準備が……
ゴン!と鈍い音が鳴り響き、発光体は優の体の中へ溶けていく。すると優の体が橙色の光に包まれ同時に頭の中にその概念の名前、魔法等の様々な情報が流れ込んできた。
(なんだか頭が朦朧としてきた。とても眠い)
「概念は【家】だね。とても強い概念だ。それにとても安らぐ。優さんにピッタリな概念だよ!」
(精霊神様がなんか言ってるな?)
優は膨大な情報による頭への負担と原因不明の倦怠感に襲われていた。それに加えて酷い睡魔が優を襲ってくる。
「優さん、私達友達だよね?」
(ふふ、友達だよ)
「ありがとう」
そして優は微睡みの中へ旅立った。
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