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1巻
1-3
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「人が死ねば、魂というものが骸から生まれ出る。その際に、黄泉へ送られる魂から、不必要とされた不純物だけが取り除かれる。それを俺は〝遺志〟と呼んでいる」
伝令役は聞き入っていた。
男の言葉に、話す内容に。
「黄泉とは罪無き魂が落ちる場所よ。穢れを抱いたまま彼処へ向かう事は出来ない。だから、その前に穢れを落とすのだ。その行為により、〝遺志〟が生まれる。言うなれば、それは怨念に近い」
「────」
怨念ですか、と伝令役は言う。聞き慣れない言葉であったのか、その表情には一層深い疑問が刻み込まれた。
「あぁ、怨念だ……そして、魂から穢れとして取り除かれ、行き場を失った〝遺志〟は、果たして何処へ行くと思う」
そう言って、男は異形の伝令役──魔族と呼ばれる彼を指差した。
「答えはな、魔族の命だ。穢れは新しい生命としてこの地に根を張るのだ」
男の言葉は続く。
「魔族が人を恨み、憎み、殺しに向かう。その理由の全てがそこに帰結するのだ。魂から穢れとして取り除かれた〝遺志〟というものは、いわば憎悪の塊よ。怨嗟の声すら漏れ出るソレを基として生まれた魔族が、どうして人を憎まずいられようか? だから、俺達魔族は人間を恨み続けているのだ」
「────」
真摯な眼差しを男に向けながら、伝令役の魔族が言う。ならばどうして、仇討ちに行こうとしないのか。そうも冷静でいられるのか。
人間とは、憎むべき対象ではなかったのか、と。
「お前の言葉はもっともだ。だがな、長く生きていれば嫌でも理解する。俺達の恨みには、限界があるんだ」
それこそが、今回勇者によって魔族の一人──魔将軍ゴルドを失ったというのに、男が動揺を見せるどころか、言葉一つで受け入れた理由であった。
「俺達魔族の恨みは、魂より取り除かれた穢れ分の恨みを返せば終わってしまう。中身の失われた器だけの存在になってしまう。だから、長く生きれば生きるだけ、空虚になる。そして、死を求める。だから俺は、ゴルドを送り出した」
「────」
成る程と、伝令役が神妙に頷く。
そして、今度は彼が質問をした。
「────」
では、貴方様があの人間を助ける理由は何でしょうか、と。
「何を当たり前の事を聞く」
男は面白可笑しそうに笑いながら言う。
「姿形など些細な事でしかないだろう? 元より魔族自体が、真に何者であるか曖昧な存在なのだから」
人間の一部なのか。
はたまた、魔族という別の存在なのか。その真偽を判断出来るものは何処にも居やしない。ならば、
「判断材料など、境遇や心しかあり得まい? 不服ならばアイツの心に問えばいい。さすれば分かるだろうよ。アイツが、俺達の同胞である、とな」
「────」
それが、あの人間を助ける理由ですか、と伝令役は厳しい表情で今一度問いかける。
それに対する男の答えは──破顔であった。
「不服か?」
言葉に乗せられた圧に身を竦ませながら、伝令役の魔族は首を左右に振る。
そもそも、伝令役の彼ごときに、男の言葉に反論する権利なぞありはしない。
にもかかわらず、こうしてさも対等であるかのように問答をしていた。それこそが異常なのだが、当の男には全く気にかける様子が見受けられない。
伝令役は言う。
「────」
不服なわけがありません。
──魔王様、と。
「そうか」
本来ならば、そこで話は終わる筈だった。
魔王と呼ばれた男が、その受け答えをしたところで、終わる筈だった。
しかし、異形の魔族がもう一つだけ質問を付け足した事により、話は終わらなかった。
「────」
どうして魔王様は、あの人間に執着するのですか、と。
「執着、執着か。お前には俺が執着しているように見えたか」
内容を吟味するように言葉を反芻し、確かめる。そして相好を崩し、面白可笑しそうに尋ね返した。
その返答は、小さな首肯ひとつ。
「変なところに気付くのだな」
魔王と呼ばれた男は別段、怒る事もなくそう言って、伝令役の男を彼なりに褒めてみせた。
「執着、とはまた言い得て妙な言葉だ。確かに俺はあの人間に執着しているのだろう。お前に言われずとも、薄々ではあったがその自覚はあった」
「────」
ならば尚更、どうしてなのですかと伝令役は言う。
「お前は少し、遠慮という言葉を覚えた方が良いな」
魔王は苦笑いを浮かべながら、優しい言葉で咎める。
すると伝令役は平伏し、すぐさま申し訳ありませんと許しを乞うた。
「まあ良い……理由、だったな。俺が人間を気にかける、その理由」
少しだけ悩むそぶりを見せる魔王。
そして眉根を寄せ、瞑目。
「昔の俺と重なったから、なのかもな」
様々な感情が込められたであろうその言葉を魔王が口にした時、閉じられていた目蓋は既に開かれていた。
「…………」
意味深な言葉だったが、今度は何故なのですかと問う声は聞こえてこない。
それはきっと、遠慮を知れという先程の忠告に留意しているからなのだろう。
殊勝な奴……。
などと思いながらも、魔王は少しだけ意地悪な問い掛けをする。
「質問を、しなくても良いのか?」
口角がほんの僅かに喜悦に歪んでいたのは、ご愛嬌といったところか。
しかし、伝令役は縦に一度首を振るだけ。
「そうか……ま、あまり知り過ぎるものでもない、か」
魔王はそんな彼の選択を尊重し、表情に薄らと貼り付けていた意地の悪い笑みを消してから一言。
「伝令ご苦労だった。もう下がって良いぞ」
それを聞き、平伏したままの状態を貫いていた伝令役は頭を上げる。そしてゆっくりとその場から離れて行った。
「なあ、ツェレア・ベイセスト」
魔王は名を呼ぶ。
この場にいない一人の少女の名を、物憂げに。
「人間とはどうしてこうも、醜いのだろうな」
寂しげに、言う。
そこには何故か、自嘲が込められていた。
自責が混じり込んでいた。
5
風が、吹く。
まるでこれから何かが起こるぞと言わんばかりに、無風であった筈の場所に、ゴゥと音を立てて強風が吹き込み、私の身体を打ち据える。
「──今日は外にいたのね」
声が聞こえた。
それは、ここ数年ですっかり聞き慣れた友人の声。民草から女神と呼ばれるラナーである。
まるで転移でもしてきたかのように突然現れた彼女であったが、外にいる時は決まってこの登場の仕方なので、既に私は慣れてしまっていた。
だから、微塵も驚く事はない。
「今日はどうしたの?」
「始まったから、教えてあげようと思って」
「魔王と勇者の戦いが?」
「……それ以外に何があるのよ」
ラナーが呆れる。
そりゃそうだ。私だってそれ以外に心当たりはない。
「じきに、此処へ兵士が殺到するわよ」
──貴女の未来予想図通りに、ね。
ラナーもラナーで、勇者と魔王が衝突すれば、万が一にも勇者に勝ち目は無いと捉えているらしい。それは女神としてどうなんだと言ってやりたくもあったけれど、彼女がこういう性格だと今までの付き合いから理解していた為、私が言葉にする事はない。
「知ってる」
他に責任を押し付けるしか能の無い愚王と王侯貴族共の性格からすれば、魔王に負けた責任の向かいどころは、神託を断った私の元しかあり得ない。
「大軍で押し寄せられたら貴女も無事では済まないでしょう」
此度の魔王との戦闘。その戦犯として選ばれるのだから、騎士団一個中隊が此処に押し寄せても不思議ではないと。
ラナーは言外に言ってみせるが、当の本人たる私は何の危機感も抱いてはいなかった。
「それとも、あの外れ切った魔王にでも守ってもらう予定だったのかしら」
ラナーはしばしば魔王の事を『外れた存在』であると評す。それは決して道を外れているという意味ではない。
女神と称えられる彼女の目から見ても、生き物として存在が外れ過ぎているという意味からくるものであった。
あの魔王は、如何なる戦場だろうが生き残ってみせる。それだけの武と知を持ち、生き物としての枠組みから外れ切っている。最早意思を持った災厄とさえ言えた。
「そんなわけないよ」
私も魔王の規格外ぶりは分かる。現に、今も頼ってしまっているぐらいだ。
だけど私は彼女の言葉を否定する。
何故ならば、
「そもそもこれは、私の復讐。私の為の、復讐なんだよ」
私の中で、不撓不屈の何かが轟々と燃え上がる。どこまでもそれは──燃え盛る。
「手を借りるのは一度だけと決めてる。何もかもを頼れば、それは私の復讐じゃなくなってしまう。だから、その選択肢はあり得ない」
「じゃあどうするのよ?」
「そんなもの、決まってる」
風の音だけが響く寂然とした世界。
妙に心地の好い静寂に身を委ねる私は、スゥと息を吸い込み、満を持して言う。
そこで、ピタリと風はやんだ。
「……私が、この手で終わらせる」
その言葉に、ラナーは頬を僅かに引き攣らせていた。
私は全身から覚悟という名の圧を放ち、世界を揺るがす。
「きっと向こうは、私は殺せない人間だと思い込んでる」
当たり前だ。
殺せるタイミングで私は誰一人殺さなかったのだから。その事実があるから、彼らは私を侮っているだろう。そこに、つけ込む隙がある。
「本当の戦渦はここからなんだよ、ラナーッ!!!」
私は叫ぶ。
万感の思いを込めて叫び散らす。
「その為の七年だ。その為に、私は生きてきた」
何度も言うようだけど、私にはそれしかないんだよ。そう彼女の心に刻みつけんと、私は同じセリフを口にする。
「主役は私だよ。だったら、私が動かないでどうするの。私が他の誰かに頼り切りでどうするの。そうは思わない? ねえ、ラナー」
6
「──勇者が魔王に敗北しただとッ⁉」
王の怒号が飛ぶ。
ふざけるなという憤懣がこれでもかと込められた叫び声。それに気圧されたのか、「勇者一行が魔王に敗北し、命からがら逃げ果せた」という報告をした伝令役は、ガタガタと身体を恐怖に震わせていた。
「……お主、それが何を意味するのか、分かっておきながらの言葉であると捉えて良いのだな?」
悪逆非道な行為を繰り返す魔王を排除し、太平の世を取り戻す。
此度の魔王討伐は、そのような名目を掲げての行為であった。
しかし、その裏には政治的駆け引きも存在しており、国王の嫡子である王太子が恙なく王位を継承する為の実績として扱うつもりだったのだ。
他国は勿論、自国に対しても、「王太子は王としての資質に問題なし」と知らしめる為の魔王討伐。それが失敗したともなれば──。
「わ、分かっております‼ ですが、此度の魔王討伐は殿下に問題はなかったのです‼」
他の要因があって魔王討伐を成せなかったのだと言って、伝令役は保身に走る。
「女神からの神託では勇者は三人選ばれていました……しかし、実際に向かったのは二人だけ。人数合わせとして腕利きを一人連れてはいましたが……やはりそこに要因があったのでしょう」
「ほぅ? 続けよ」
「はっ。ですので、此度の討伐失敗の責は殿下にはありません。誉れ高き勇者という役目を負いながらもその任を放棄したあの女にあるのです」
「ツェレア・ベイセスト、か。ならばどうする?」
「あの女の首を以て、今回の討伐の失敗については納得して貰う他ないでしょう。民衆の前で、彼らが納得出来るだけの理由を並べ立てた上で斬首に処す。その理由がたとえ根拠のないものであったとしても問題はありません。何せ幸いにも、ツェレア・ベイセストといえば悪業ばかりの毒婦ですから」
これ以上ないほどに都合の良い存在ではありませんか。と笑みを深める使者に呼応するように、王も頰を緩める。
「よかろう。そこまで言うのならば、その通りに事を収めろと他の者にも伝えるが良い」
「ははっ。ありがたき幸せ」
それだけを告げ、使者の男はその場を後にしようとする。
そこへ、王は忘れていたとばかりにもう一言、男に投げかけた。
「ツェレア・ベイセストは以前、勧誘を行った際に勇者の側付きを一瞬で無力化したと報告を受けたが……」
「ご心配には及びません。今回、ツェレア・ベイセストの身柄確保には王国直属の騎士団一個中隊を派遣いたします。殿下の評判を二度も汚した悪女を裁く為と言うと、彼らも二つ返事で頷いてくれましたよ」
「ほうほう! そうかそうか。万事抜かりないと言うのならば、我から言う事は何も無い。良い報告を待っておるぞ──」
*****
「いやあ、凄い顔ぶれだね。騎士団長さんに、貴方は最近噂の天才騎士さん? あ、貴方は東方の剣術を修めたっていう……」
ラナーとの邂逅から数日後。
私の家の前にぞろぞろとやってきた騎士団──その数、二百人ほどだろうか。
眼前に広がる景色は、人、人、人。
気持ちいいくらいに敵意を向けられながら、私が前列に立つ者達の顔ぶれを物色している折。
酷く平坦な声が私の鼓膜を揺らした。
「ツェレア・ベイセスト殿。貴女にはとある嫌疑がかかっております。御同行願えますか」
「嫌だね」
「……御同行頂けないのであれば、武力行使もやむを得ません」
そこで、場に静寂が訪れる。
私の思考は、少しだけ硬直していた。
この程度の脅しが通用すると思っている連中の滑稽さに。そして、あまりにもシナリオ通りに進んでいる事への戸惑いに。
けれど、それも一瞬。
張り詰めた空気はとあるキッカケにより、容易く霧散する。
「……はは。あははっ」
そのキッカケとなったのは──私の微かな笑い声。
脅されているのは私。
選択を迫られているのも私。
騎士二百人ほどに囲まれているのも私。
笑う要素も、笑える筈もないというのに、私は満ち満ちた心地で笑い声を上げる。
そして、場に殺気が満ちていく。
「武力行使、かあ。武力……武力ねえ。あははっ。ははははははッ。はっはっはっは‼」
この場にあまりにも似つかわしくない哄笑はやむ事を知らず、いつまでも響き渡る。そう思われた刹那、私が騎士団長さんと呼んだ男が、剣の柄に手を掛ける。しかしその瞬間。
「────何その冗談。笑えないんだけど」
言葉に乗せた私の殺意が、場を一瞬で呑み込んだ。
息がつまるほどの圧迫感。
けれど、私にとってはその感覚がどうしようもなく心地好い。
私は最早、ツェレア・ベイセストであっただけのナニカだ。得体の知れない不明瞭なナニカだ。「復讐に死ぬ」を道理として臓腑の裏まで刻み込んだ、救いようのない阿呆。それでいて、そこに何の呵責も抱いていないのだから、度し難いという他ないだろう。
そんな私が、殺意と敵意が飛び交うこの状況に対して怯える筈がない。
むしろ逆だ。救いようのない邪心を背負う私だからこそ、この状況を前にして口の端を吊り上げる。凄絶に、酷薄に、残忍に、狂気に。
言ってしまえば、それが私の宿痾だから。
騒めく声など全て黙殺だ。関係ない。
ザッ、と大地を強く踏みしめるこの音こそが、彼らに対する私の答え。
嗚呼、そうだ。お返しをしよう。
殺意には殺意を。敵意には敵意を。
そのお返しこそが、今の私の根底に据えられた絶対的な意志なのだから。
「今更御託なんて要らないよね」
そう告げるや否や、私は姿を揺らす。
そこに不審な挙措は存在しない。構えすら無く、一瞬で臨戦態勢に移った私は、
「──消え……ッ⁉」
隊の頭であろう騎士団長さんの前に、刹那に移動を遂げていた。
「バイバイ」
私は右腕で彼に殴りかかる。
その時、私の顔からは、感情全てが抜け落ちていた。笑いも、憤怒も、何もかもが抜け落ちた能面のような面差しで、騎士団長さんを見据えていた。
そこに異常でも感じたのか、彼は動かない。
一瞬の出来事に、何が起こったのかを正しく理解する事が叶わず──動けない。しかし、
「──お前がな」
割り込む声がひとつ。
それは、私が天才と認識していた一人の騎士だった。彼だけは私に対して油断していなかったのだろう。せせら笑いながら私と騎士団長さんの間に割り込み、剣を差し込んでくる。その間に、騎士団長さんは距離を取った。
天才くんの表情には、私に対するほんの僅かな賞賛が見えた。恐らく驚嘆しているのだろう。瞬時に肉薄したこの速さに。
しかし、自分には及ばない。まずはその腕を刎ねさせて貰う。
……彼の考えはそんなところだろうか。
「へえ?」
私の右腕と、天才くんの剣が交錯し──虚しく鉄の音と火花が散った。
伝令役は聞き入っていた。
男の言葉に、話す内容に。
「黄泉とは罪無き魂が落ちる場所よ。穢れを抱いたまま彼処へ向かう事は出来ない。だから、その前に穢れを落とすのだ。その行為により、〝遺志〟が生まれる。言うなれば、それは怨念に近い」
「────」
怨念ですか、と伝令役は言う。聞き慣れない言葉であったのか、その表情には一層深い疑問が刻み込まれた。
「あぁ、怨念だ……そして、魂から穢れとして取り除かれ、行き場を失った〝遺志〟は、果たして何処へ行くと思う」
そう言って、男は異形の伝令役──魔族と呼ばれる彼を指差した。
「答えはな、魔族の命だ。穢れは新しい生命としてこの地に根を張るのだ」
男の言葉は続く。
「魔族が人を恨み、憎み、殺しに向かう。その理由の全てがそこに帰結するのだ。魂から穢れとして取り除かれた〝遺志〟というものは、いわば憎悪の塊よ。怨嗟の声すら漏れ出るソレを基として生まれた魔族が、どうして人を憎まずいられようか? だから、俺達魔族は人間を恨み続けているのだ」
「────」
真摯な眼差しを男に向けながら、伝令役の魔族が言う。ならばどうして、仇討ちに行こうとしないのか。そうも冷静でいられるのか。
人間とは、憎むべき対象ではなかったのか、と。
「お前の言葉はもっともだ。だがな、長く生きていれば嫌でも理解する。俺達の恨みには、限界があるんだ」
それこそが、今回勇者によって魔族の一人──魔将軍ゴルドを失ったというのに、男が動揺を見せるどころか、言葉一つで受け入れた理由であった。
「俺達魔族の恨みは、魂より取り除かれた穢れ分の恨みを返せば終わってしまう。中身の失われた器だけの存在になってしまう。だから、長く生きれば生きるだけ、空虚になる。そして、死を求める。だから俺は、ゴルドを送り出した」
「────」
成る程と、伝令役が神妙に頷く。
そして、今度は彼が質問をした。
「────」
では、貴方様があの人間を助ける理由は何でしょうか、と。
「何を当たり前の事を聞く」
男は面白可笑しそうに笑いながら言う。
「姿形など些細な事でしかないだろう? 元より魔族自体が、真に何者であるか曖昧な存在なのだから」
人間の一部なのか。
はたまた、魔族という別の存在なのか。その真偽を判断出来るものは何処にも居やしない。ならば、
「判断材料など、境遇や心しかあり得まい? 不服ならばアイツの心に問えばいい。さすれば分かるだろうよ。アイツが、俺達の同胞である、とな」
「────」
それが、あの人間を助ける理由ですか、と伝令役は厳しい表情で今一度問いかける。
それに対する男の答えは──破顔であった。
「不服か?」
言葉に乗せられた圧に身を竦ませながら、伝令役の魔族は首を左右に振る。
そもそも、伝令役の彼ごときに、男の言葉に反論する権利なぞありはしない。
にもかかわらず、こうしてさも対等であるかのように問答をしていた。それこそが異常なのだが、当の男には全く気にかける様子が見受けられない。
伝令役は言う。
「────」
不服なわけがありません。
──魔王様、と。
「そうか」
本来ならば、そこで話は終わる筈だった。
魔王と呼ばれた男が、その受け答えをしたところで、終わる筈だった。
しかし、異形の魔族がもう一つだけ質問を付け足した事により、話は終わらなかった。
「────」
どうして魔王様は、あの人間に執着するのですか、と。
「執着、執着か。お前には俺が執着しているように見えたか」
内容を吟味するように言葉を反芻し、確かめる。そして相好を崩し、面白可笑しそうに尋ね返した。
その返答は、小さな首肯ひとつ。
「変なところに気付くのだな」
魔王と呼ばれた男は別段、怒る事もなくそう言って、伝令役の男を彼なりに褒めてみせた。
「執着、とはまた言い得て妙な言葉だ。確かに俺はあの人間に執着しているのだろう。お前に言われずとも、薄々ではあったがその自覚はあった」
「────」
ならば尚更、どうしてなのですかと伝令役は言う。
「お前は少し、遠慮という言葉を覚えた方が良いな」
魔王は苦笑いを浮かべながら、優しい言葉で咎める。
すると伝令役は平伏し、すぐさま申し訳ありませんと許しを乞うた。
「まあ良い……理由、だったな。俺が人間を気にかける、その理由」
少しだけ悩むそぶりを見せる魔王。
そして眉根を寄せ、瞑目。
「昔の俺と重なったから、なのかもな」
様々な感情が込められたであろうその言葉を魔王が口にした時、閉じられていた目蓋は既に開かれていた。
「…………」
意味深な言葉だったが、今度は何故なのですかと問う声は聞こえてこない。
それはきっと、遠慮を知れという先程の忠告に留意しているからなのだろう。
殊勝な奴……。
などと思いながらも、魔王は少しだけ意地悪な問い掛けをする。
「質問を、しなくても良いのか?」
口角がほんの僅かに喜悦に歪んでいたのは、ご愛嬌といったところか。
しかし、伝令役は縦に一度首を振るだけ。
「そうか……ま、あまり知り過ぎるものでもない、か」
魔王はそんな彼の選択を尊重し、表情に薄らと貼り付けていた意地の悪い笑みを消してから一言。
「伝令ご苦労だった。もう下がって良いぞ」
それを聞き、平伏したままの状態を貫いていた伝令役は頭を上げる。そしてゆっくりとその場から離れて行った。
「なあ、ツェレア・ベイセスト」
魔王は名を呼ぶ。
この場にいない一人の少女の名を、物憂げに。
「人間とはどうしてこうも、醜いのだろうな」
寂しげに、言う。
そこには何故か、自嘲が込められていた。
自責が混じり込んでいた。
5
風が、吹く。
まるでこれから何かが起こるぞと言わんばかりに、無風であった筈の場所に、ゴゥと音を立てて強風が吹き込み、私の身体を打ち据える。
「──今日は外にいたのね」
声が聞こえた。
それは、ここ数年ですっかり聞き慣れた友人の声。民草から女神と呼ばれるラナーである。
まるで転移でもしてきたかのように突然現れた彼女であったが、外にいる時は決まってこの登場の仕方なので、既に私は慣れてしまっていた。
だから、微塵も驚く事はない。
「今日はどうしたの?」
「始まったから、教えてあげようと思って」
「魔王と勇者の戦いが?」
「……それ以外に何があるのよ」
ラナーが呆れる。
そりゃそうだ。私だってそれ以外に心当たりはない。
「じきに、此処へ兵士が殺到するわよ」
──貴女の未来予想図通りに、ね。
ラナーもラナーで、勇者と魔王が衝突すれば、万が一にも勇者に勝ち目は無いと捉えているらしい。それは女神としてどうなんだと言ってやりたくもあったけれど、彼女がこういう性格だと今までの付き合いから理解していた為、私が言葉にする事はない。
「知ってる」
他に責任を押し付けるしか能の無い愚王と王侯貴族共の性格からすれば、魔王に負けた責任の向かいどころは、神託を断った私の元しかあり得ない。
「大軍で押し寄せられたら貴女も無事では済まないでしょう」
此度の魔王との戦闘。その戦犯として選ばれるのだから、騎士団一個中隊が此処に押し寄せても不思議ではないと。
ラナーは言外に言ってみせるが、当の本人たる私は何の危機感も抱いてはいなかった。
「それとも、あの外れ切った魔王にでも守ってもらう予定だったのかしら」
ラナーはしばしば魔王の事を『外れた存在』であると評す。それは決して道を外れているという意味ではない。
女神と称えられる彼女の目から見ても、生き物として存在が外れ過ぎているという意味からくるものであった。
あの魔王は、如何なる戦場だろうが生き残ってみせる。それだけの武と知を持ち、生き物としての枠組みから外れ切っている。最早意思を持った災厄とさえ言えた。
「そんなわけないよ」
私も魔王の規格外ぶりは分かる。現に、今も頼ってしまっているぐらいだ。
だけど私は彼女の言葉を否定する。
何故ならば、
「そもそもこれは、私の復讐。私の為の、復讐なんだよ」
私の中で、不撓不屈の何かが轟々と燃え上がる。どこまでもそれは──燃え盛る。
「手を借りるのは一度だけと決めてる。何もかもを頼れば、それは私の復讐じゃなくなってしまう。だから、その選択肢はあり得ない」
「じゃあどうするのよ?」
「そんなもの、決まってる」
風の音だけが響く寂然とした世界。
妙に心地の好い静寂に身を委ねる私は、スゥと息を吸い込み、満を持して言う。
そこで、ピタリと風はやんだ。
「……私が、この手で終わらせる」
その言葉に、ラナーは頬を僅かに引き攣らせていた。
私は全身から覚悟という名の圧を放ち、世界を揺るがす。
「きっと向こうは、私は殺せない人間だと思い込んでる」
当たり前だ。
殺せるタイミングで私は誰一人殺さなかったのだから。その事実があるから、彼らは私を侮っているだろう。そこに、つけ込む隙がある。
「本当の戦渦はここからなんだよ、ラナーッ!!!」
私は叫ぶ。
万感の思いを込めて叫び散らす。
「その為の七年だ。その為に、私は生きてきた」
何度も言うようだけど、私にはそれしかないんだよ。そう彼女の心に刻みつけんと、私は同じセリフを口にする。
「主役は私だよ。だったら、私が動かないでどうするの。私が他の誰かに頼り切りでどうするの。そうは思わない? ねえ、ラナー」
6
「──勇者が魔王に敗北しただとッ⁉」
王の怒号が飛ぶ。
ふざけるなという憤懣がこれでもかと込められた叫び声。それに気圧されたのか、「勇者一行が魔王に敗北し、命からがら逃げ果せた」という報告をした伝令役は、ガタガタと身体を恐怖に震わせていた。
「……お主、それが何を意味するのか、分かっておきながらの言葉であると捉えて良いのだな?」
悪逆非道な行為を繰り返す魔王を排除し、太平の世を取り戻す。
此度の魔王討伐は、そのような名目を掲げての行為であった。
しかし、その裏には政治的駆け引きも存在しており、国王の嫡子である王太子が恙なく王位を継承する為の実績として扱うつもりだったのだ。
他国は勿論、自国に対しても、「王太子は王としての資質に問題なし」と知らしめる為の魔王討伐。それが失敗したともなれば──。
「わ、分かっております‼ ですが、此度の魔王討伐は殿下に問題はなかったのです‼」
他の要因があって魔王討伐を成せなかったのだと言って、伝令役は保身に走る。
「女神からの神託では勇者は三人選ばれていました……しかし、実際に向かったのは二人だけ。人数合わせとして腕利きを一人連れてはいましたが……やはりそこに要因があったのでしょう」
「ほぅ? 続けよ」
「はっ。ですので、此度の討伐失敗の責は殿下にはありません。誉れ高き勇者という役目を負いながらもその任を放棄したあの女にあるのです」
「ツェレア・ベイセスト、か。ならばどうする?」
「あの女の首を以て、今回の討伐の失敗については納得して貰う他ないでしょう。民衆の前で、彼らが納得出来るだけの理由を並べ立てた上で斬首に処す。その理由がたとえ根拠のないものであったとしても問題はありません。何せ幸いにも、ツェレア・ベイセストといえば悪業ばかりの毒婦ですから」
これ以上ないほどに都合の良い存在ではありませんか。と笑みを深める使者に呼応するように、王も頰を緩める。
「よかろう。そこまで言うのならば、その通りに事を収めろと他の者にも伝えるが良い」
「ははっ。ありがたき幸せ」
それだけを告げ、使者の男はその場を後にしようとする。
そこへ、王は忘れていたとばかりにもう一言、男に投げかけた。
「ツェレア・ベイセストは以前、勧誘を行った際に勇者の側付きを一瞬で無力化したと報告を受けたが……」
「ご心配には及びません。今回、ツェレア・ベイセストの身柄確保には王国直属の騎士団一個中隊を派遣いたします。殿下の評判を二度も汚した悪女を裁く為と言うと、彼らも二つ返事で頷いてくれましたよ」
「ほうほう! そうかそうか。万事抜かりないと言うのならば、我から言う事は何も無い。良い報告を待っておるぞ──」
*****
「いやあ、凄い顔ぶれだね。騎士団長さんに、貴方は最近噂の天才騎士さん? あ、貴方は東方の剣術を修めたっていう……」
ラナーとの邂逅から数日後。
私の家の前にぞろぞろとやってきた騎士団──その数、二百人ほどだろうか。
眼前に広がる景色は、人、人、人。
気持ちいいくらいに敵意を向けられながら、私が前列に立つ者達の顔ぶれを物色している折。
酷く平坦な声が私の鼓膜を揺らした。
「ツェレア・ベイセスト殿。貴女にはとある嫌疑がかかっております。御同行願えますか」
「嫌だね」
「……御同行頂けないのであれば、武力行使もやむを得ません」
そこで、場に静寂が訪れる。
私の思考は、少しだけ硬直していた。
この程度の脅しが通用すると思っている連中の滑稽さに。そして、あまりにもシナリオ通りに進んでいる事への戸惑いに。
けれど、それも一瞬。
張り詰めた空気はとあるキッカケにより、容易く霧散する。
「……はは。あははっ」
そのキッカケとなったのは──私の微かな笑い声。
脅されているのは私。
選択を迫られているのも私。
騎士二百人ほどに囲まれているのも私。
笑う要素も、笑える筈もないというのに、私は満ち満ちた心地で笑い声を上げる。
そして、場に殺気が満ちていく。
「武力行使、かあ。武力……武力ねえ。あははっ。ははははははッ。はっはっはっは‼」
この場にあまりにも似つかわしくない哄笑はやむ事を知らず、いつまでも響き渡る。そう思われた刹那、私が騎士団長さんと呼んだ男が、剣の柄に手を掛ける。しかしその瞬間。
「────何その冗談。笑えないんだけど」
言葉に乗せた私の殺意が、場を一瞬で呑み込んだ。
息がつまるほどの圧迫感。
けれど、私にとってはその感覚がどうしようもなく心地好い。
私は最早、ツェレア・ベイセストであっただけのナニカだ。得体の知れない不明瞭なナニカだ。「復讐に死ぬ」を道理として臓腑の裏まで刻み込んだ、救いようのない阿呆。それでいて、そこに何の呵責も抱いていないのだから、度し難いという他ないだろう。
そんな私が、殺意と敵意が飛び交うこの状況に対して怯える筈がない。
むしろ逆だ。救いようのない邪心を背負う私だからこそ、この状況を前にして口の端を吊り上げる。凄絶に、酷薄に、残忍に、狂気に。
言ってしまえば、それが私の宿痾だから。
騒めく声など全て黙殺だ。関係ない。
ザッ、と大地を強く踏みしめるこの音こそが、彼らに対する私の答え。
嗚呼、そうだ。お返しをしよう。
殺意には殺意を。敵意には敵意を。
そのお返しこそが、今の私の根底に据えられた絶対的な意志なのだから。
「今更御託なんて要らないよね」
そう告げるや否や、私は姿を揺らす。
そこに不審な挙措は存在しない。構えすら無く、一瞬で臨戦態勢に移った私は、
「──消え……ッ⁉」
隊の頭であろう騎士団長さんの前に、刹那に移動を遂げていた。
「バイバイ」
私は右腕で彼に殴りかかる。
その時、私の顔からは、感情全てが抜け落ちていた。笑いも、憤怒も、何もかもが抜け落ちた能面のような面差しで、騎士団長さんを見据えていた。
そこに異常でも感じたのか、彼は動かない。
一瞬の出来事に、何が起こったのかを正しく理解する事が叶わず──動けない。しかし、
「──お前がな」
割り込む声がひとつ。
それは、私が天才と認識していた一人の騎士だった。彼だけは私に対して油断していなかったのだろう。せせら笑いながら私と騎士団長さんの間に割り込み、剣を差し込んでくる。その間に、騎士団長さんは距離を取った。
天才くんの表情には、私に対するほんの僅かな賞賛が見えた。恐らく驚嘆しているのだろう。瞬時に肉薄したこの速さに。
しかし、自分には及ばない。まずはその腕を刎ねさせて貰う。
……彼の考えはそんなところだろうか。
「へえ?」
私の右腕と、天才くんの剣が交錯し──虚しく鉄の音と火花が散った。
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