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1巻
1-2
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「動けば握り潰す」
一瞬の出来事に何が起こったのか分からず、ぽかんと惚けていた少年と少女に向けて私が言う。
私の左手は未だ男の頭を力強く掴んでいる。
人の頭を握り潰せるわけがない。
そんな事は分かっているだろうに、先程の目にも留まらぬ速攻が彼らの判断能力を著しく低下させているようで、まともに言葉も紡げない。
「見た感じ……お前、結構偉い人だよね」
地面に伏す男はそんな私の質問に対し、むぐぐと唸るだけ。けれど、私は辛うじて喋れる程度には力加減をしているので、単に喋りたくないだけなんだろうと判断し、話を進める。
「私を連れて来いって命令した人に一つ、伝言をお願い出来るかな」
そう言って、私は男の耳元へゆっくりと顔を近づける。
そして、
「四肢をもがれて達磨にされたくなかったら二度と私に関わるな」
圧をかけてそれだけを告げ、私は顔を離す。
「そう、伝えて貰えるかな」
神託において重要な私という存在が抜ければ、王都の連中は慌てふためくだろうか。
そう思うと少しだけ、胸がすく思いであった。
「でも、それだけじゃ間違いなく、ただの脅しって思われる」
どんな些細な事であれ、貴族連中に弱みを見せてはいけない。それを身を以て知っているからこそ、視線が己の右足下へ向かう。
「恨むなら、私から容赦を取り除いてくれた王さまと、その息子と、貴族の方々と……こうして這いつくばる事になった自分の弱さを恨もうね」
私が右の足に力を込めると同時。バキリ、と、骨が纏めて砕ける音がいやに響いた。
右腕を踏み潰された激痛に身を悶えさせ、その痛苦から逃れるように意識を手放した男から視線を外し、驚愕に目を見開く少年少女に向けて一言。
「私を連れて行きたいなら襲い掛かってくれていいよ。ただ、コイツとお揃いになるかもしれないけど」
そう言うや否や、彼らは私から半歩距離を取り、壊れた玩具のように忙しなくかぶりを振る。
「……何も、聞く耳を一切持ってないわけじゃない。コイツには『関わるなって伝えろ』と言ったけど、それは舐め腐った態度を取るならの話。誠意を見せてくれれば、私だって話くらいは聞く」
その誠意とは、斬り落とした右腕を私の目の前に持ってくる事である。それを理解しているからか、彼らは何も言う事が出来なかった。
「命令一つ、たかだか神託程度で全てが無かった事になると思ったら大間違い。私達の溝は、そんなに浅いもんじゃない」
*****
「まるで女優ね……ほんと、いい性格してるわよ貴女」
小屋を訪れた彼らが立ち去ってから数分後。
今度はノックもなしに一人の女性が立ち入ってくる。
「元々貴女が神託で自分を指名してくれって頼み込んできた癖に、抜け抜けと知らないなんて言うんだもの。可笑しくて笑い転げそうだったわ」
「……ラナー」
人形めいた相貌の麗人。
私がラナーと呼んだその女性は、ずかずかと我が物顔で部屋の奥へと進み、私のすぐ側で立ち止まる。
「なんで殺さなかったの?」
「……あの騎士達の事?」
「それ以外何があるのよ。人間憎しっていつも言ってる貴女がなんで殺さなかったのか気になって仕方がないのよ。だって絶好の機会じゃない……ねえ、どうして殺さなかったの?」
「困るからだよ」
私は刹那の逡巡もなく即答する。
私の友人はこのラナーと、もう一人だけ。
こうして時折会って話している事もあり、彼女は私の考えの大半を知っていると言って間違いない。
ただ、今回の事に関しては、事の全貌をまだ話してはいなかった。故の、疑問。
「神託で選ばれたあの二人の子供に、それの付き添い人、騎士二十数名程度。あれを私が皆殺しにして、私憎しで団結されたら困るからだよ」
「……別にいいじゃない。貴女の目的はこの腐り切った世界を壊す事。そうだったじゃない? それとも、私が知らない間に変わっちゃったかしら?」
「変わってない。人間憎しは一切変わってない」
「だったらなんで──」
そこで、ラナーの言葉が止まる。
その理由はきっと、私が口の端を吊り上げていたから。残酷に、残忍に、冷酷に、酷薄に、円弧を描くように笑みを作っていたから。
自分でも分かる。
今の私はとても醜悪な笑みを浮かべているって。
「ただ斬り殺されて死ぬだなんて、生温いと思わない?」
嗚呼、嗚呼。
どこまでも苦しんで、喘いで、絶望しろよ。
私がそうだったように、お前らも。
これはやり返しなんだ。
誰もが正当と認めるやり返し。
私が味わった痛苦をそのままお返しする。ただそれだけの復讐劇。
斬り殺す? とんでもない。
そんな優しい事を私がしてやるものか。
「……きっとあの愚王なら、事の次第を一部隠して国民に話すよ。神託で選ばれた人間は国王の召集に従わなかった。その理由は、被害妄想を抱いた罪人だったから、って。私にした行為を全てひた隠しにして、ね」
王の思考が手に取るように分かる。
あの悪意にさらされ続けたからこそ、まるで未来予知でもするかのように分かってしまう。
「それからきっと、私という存在など居ても居なくても変わりないと判断する。そして、一行は魔王に挑んで、敗北する。王は言うんだ。負けたのは召集に従わなかった私のせいであると。私憎しで国を纏めようとするけれど、そこで邪魔が入る。それが、魔王による事実暴露」
いつになく気分が高揚している事もあってか、ラナーに言い聞かせているにもかかわらず、早口にまくし立ててしまう。
「魔王は言うんだ。国の貴族が私にした事を全て! 包み隠さず‼ だから協力しなかったのだと! でも私は言っていた。腕一つ差し出せは手打ちにすると。それを王は拒んだ。そのくらいの罪は受け入れて然るべきであったのに拒んだ! そして生まれる上層部とその他による不和。後はもう内部から壊れるだけ。いつ復讐されるか分からず、不安に駆られながら過ごして、過ごして、そして殺されるの──私にね」
「……そう上手く事が運ぶかしら」
「運ぶ。間違いなくね。それに、今代の魔王は私の数少ない友人だよ? 理不尽な運命に対する恨みへの理解は、誰よりも深い」
「……まあ、いいわ。貴女が満足するなら私はそれで」
私の想いが聞けて満足したのか、ラナーはそれだけ告げて私の前から立ち去ろうとする。
「……止めないの?」
「貴女は止めて欲しいの?」
「まさか」
それこそあり得ない。
これは、もう決定事項だ。
後戻りするなんて選択肢は存在しない。
「私はただ、『女神』なんて呼ばれてるラナーがこんな計画に加担しても良かったのかって思っただけ」
「私は聞いただけよ。一人の少女の願いを聞いただけ。神託で自分を指名して欲しいという願いを聞いただけ。その結果、人間が滅ぼうとも、私の知った話じゃないわよ。『女神』はね、醜悪な人間には手を貸さないの」
「……私も十分醜悪だと思うけどね」
「あら、それは私が判断する事よ。貴女の価値観は私にとってはどうでもいいの。私が醜悪でないと判断した。必要な事実はそれくらいでしょう?」
他者の意見に一切靡かない。
自分の判断こそが全て。
その在り方は、私の好むところであった。
「……あぁ、そうよ。もう一つ、貴女に聞きたい事があったの」
「私に答えられる事ならなんでも答えるよ」
「そう。なら、遠慮はしないわ。ねえ、」
少しだけ厳しい視線を向けながら、ラナーが口を開く。こちらの真意を探るような、そんな眼光であった。
いつになく真剣なラナーの様子に、場が少しだけ張り詰めてしまう。
「どうして私には名乗ってくれないのかしら」
その言葉に、私は小さく笑みをこぼす。
「名は、捨てたから。ただそれだけだよ」
ツェレア・ベイセストという名は捨てている。
だからこそ、今の私は名も無き人間。
名も無き人間に、失うものは何も無い。
……とは言っても、私がツェレア・ベイセストという事実に変わりはなく、その名で呼ばれれば、神託がどうのこうのと言っていた連中にしたように、反応してしまう。
きっと、ラナーがどうして名乗ってくれないのかと言ったわけはそこに収束するのだろう。
「……本当に、それだけかしらね?」
数少ない友人に、隠し事をするべきではないのだろう。だけど私は「そうだよ」と言って首を縦に振り、肯定した。
見せるべきではないのだ。
たとえ友人相手であっても、この淀み過ぎた感情だけは。
口で「殺す」と叫ぶのと、これは全くの別物だ。名を呼ばれたその瞬間、胸の奥から湧き上がるどす黒い感情が全身に絡みつき、容赦のない敵意と殺意が否応なく発露する。
今こうして私が比較的平静を保てているのも、ツェレア・ベイセストと現在の私を別物として考えているからに他ならない。
過去の、名があった頃の私は、よく嘔吐いていた。
涙が溢れ、苦痛に囚われ、孤独に喘いでいた。
痛みに声を上げれば、『魔の森』に棲まう魔獣共が餌を見つけたと歓び集まる。
だから私はひたすら感情を押し隠すしか出来なかった。誰が悪かったのだと、毎日、毎日、毎日──毎日自問して。
理不尽過ぎる事実を自答する。弱者である私が悪いのだと。
ツェレア・ベイセストだった何かが、ぼろぼろと崩れ落ち始めたのも、丁度あの頃。
私の中に生まれ、蠢いて、染み込んだ感情が鎌首をもたげながら、令嬢時代から残る人間らしさの全てを壊し尽くした。
そして私は、名無しになったのだ。
荒れ狂う想いを閉じ込めるように、ツェレア・ベイセストというかつての名を捨てたのだ。
「……前の名前は捨てた。本当に、ただそれだけだよラナー」
念を押すように再度言う。
「……そう」
彼女はどうしてか、少しだけ悲しそうで。
けれど、私がそう言うと分かっていたのか、その表情に落胆の色は薄かった。
せめて、数少ない友人にだけは。この醜い感情を、狂気を、人間として致命的なまでに壊れ切った憤懣と憎悪を、見せたくはなかった。
だから、そのトリガーとなるツェレア・ベイセストという名を呼んで欲しくない。
言葉の裏に隠されたその想いを感じ取ってくれたのか、ラナーがこれ以上私の名前に言及する事はなかった。
「何もかも捨ててしまった方がいいんだよ。人間らしさも、何もかも全て。失うモノをゼロにしてしまった方が、私にとってはどこまでも都合が良い」
憚られるものがなければ、何だって出来る。
だから私は──。
「まあ、貴女の人生だもの。どんな生き方をしようが、貴女の自由。私がとやかく言う権利なんて何処にもないわ」
そう言ってラナーは、もう聞く事はないとばかりにドアノブに手を掛け、押し開ける。
「また、寄らせて貰うわね」
ラナーが小屋から立ち去る直前。
びゅう、と一陣の風が吹いた。
そのせいで、小声でひとりごちた彼女の言葉の全てが、私の耳に届く事はなかった。
──ねえ、気付いてる?
辛うじて、風に邪魔をされながらも聞こえたのはそこまで。
でも私には、彼女がこう続けたのが分かった。
貴女のその私を気遣う態度。それがとっても人間らしいって事を──。
3
「新聞ちょうだい」
平坦な声でそう口にする私の頭上には、少し大きめのポーチを首から下げている鳥が一羽。
左の手を高く上げると、その鳥は首に下げたポーチから新聞を一部、こちらに落下させる。
そして私は落ちてきた新聞を手に取り、記事に視線を落とした。
「……概ね予想通り、ね」
あの鳥は、号外が発行された際に飛ばされる一種の配達屋。
先程のように、求めれば誰にだろうと新聞を落とす役割を担っている。
号外が出たという時点で粗方の事は想像がついていたが、こうも予想通りに事が運べば、私が口の端を吊り上げるのも仕方がないだろう。
「神託で選ばれた勇者三人と二十余名を連れて、最西端に位置する街──ドラフブルグにて暴れていた魔族を鎮圧。王都はその祝勝パレードでお祭り騒ぎ。このまま魔王討伐に動く、か」
私に関しては恐らく、現状では無視する方針に決まったのだろう。
私を強引に捕らえようとすれば少なからず被害が出ると、神託にて選ばれた勇者二人と腕を折ってやった男が言ってくれたのかもしれない。
そもそも、敵意をむき出しにして対応したのも、私に構えば被害が出るぞと理解してもらう為。
このタイミングで私を放っておいてくれないと何もかもがお釈迦になってしまうからだ。
「ただ──」
出だしは私が描いた通りに進んでいると言っていい。いいのだが、勇者三人というのが引っかかった。
ラナーが下した神託では、勇者は私の他に二人だけ。
それなのに、記事では一人多い事になっている。
だとすれば、
「代役……かな」
私の代わりに誰かが勇者に選ばれた。
予定にはない事だが、その程度で何年も前から描いてきたストーリーを変更するつもりはない。
それに。
「支障が出るようなら最悪、私の手で」
──殺せばいいのだから。
そう、決意する。
この復讐は、あの時私を見捨てた人間に対するもの。あの時貰った全てを返す為だけの復讐劇。
誰一人として信用出来ない状況を作り出し、襲い来る理不尽に身を震えさせる為だけに描かれたもの。
私だけ我慢しろ?
そんな事は許されないし、私が許さない。
とある聖人の言葉が脳裏を過る。
我意を胸の内に留める事こそが、その者の強さであると。
だけど私は違う。
それが是とされる世界だというならば、私は弱者でいい。恨みを果たせるのならば、私は何にでもなってやるよ。
それが私の願いなのだから。
私の全てはその復讐だけに、愚直に、ひたむきに、注がれ続けてきたのだから──‼
どこまでも澄んだ淡青の空。
蝶よ花よと育てられていた頃は一度も目にする事のない日もあったというのに、復讐に心血を注ぐようになってからはすっかり見慣れてしまった。その広大な空を仰ぎ、私は破顔する。
「何が起ころうと、これだけは変わらない。これだけは、変えられない」
静謐に。
それでいて何処か、苛烈に。激烈に。
私は感情を込めて言葉を紡いでいく。
「だから、」
誓いを此処に。
決意を此処に。
想いを、此処に──。
「たとえなんと言われようとも、貫くよ」
確固たる意志として私の中に根付いてしまった想い。
「私の正義が、悪であったとしても」
罪悪感は生まれない。
後悔も生まれない。
「もう、誰にも止められない」
殺しに対して。
害を与える事に対して、私が罪悪感を抱く事なぞあり得ない。
「だから私はコレを成し遂げよう。コレを貫こう。コレを、果たそう」
全ては、この日の為だけに。
描いたシナリオを現実にする為に。
その障害になったであろうモノはもう既に、
「──名も無き私に、失うモノは何も無いのだから」
薄れて消えたのだから。
これが、ラナーと別れてから十日後の出来事であった。
4
「ゴルド将軍が勇者に……、そうか」
寂れた廃城にて、一人の男が異形の生物より伝えられた言葉を反芻しながら、空を仰ぐ。そこには茜と黒が歪に混ざり合った夜の色が、遥か遠くまで広がっていた。
「────」
男にしか分かり得ないであろう言語で、異形の伝令役は言う。
良いのですか、と。
「ああ、良いさ。問題ない。元よりアイツは死に場を求めていた。俺が助ける事をアイツは求めていなかった。気持ちを汲んでやるのも、『王』の役目だろう?」
「────」
伝令役は慌てて平伏し、ガタガタと僅かに身体を震わせながら男の言葉を待つ。
差し出がましい事を口にしてしまい、申し訳ありません。そんな言葉を添えながら、判決を待つ罪人のように怯えるだけ。
しかし、
「良い。頭を上げろ」
やってきた言葉は、赦し、であった。
「お前は、魔族に生まれてまだ日が浅い。故に許そう。ゴルド将軍や古株の連中の気持ちは、気が遠くなるほど生きて漸く理解に届く。そんなものなのだから」
伝令役は不思議そうに首を傾げた。
「お前は、人が死ねばどうなるか。その答えを知っているか?」
その問いに対して、伝令役はいいえと首を振る。
「だろうな。それを理解していた連中は、俺を含め十人にも満たないのだから」
少しだけ、悲しそうに。
寂寞を漂わせながら男は言葉を続けた。
一瞬の出来事に何が起こったのか分からず、ぽかんと惚けていた少年と少女に向けて私が言う。
私の左手は未だ男の頭を力強く掴んでいる。
人の頭を握り潰せるわけがない。
そんな事は分かっているだろうに、先程の目にも留まらぬ速攻が彼らの判断能力を著しく低下させているようで、まともに言葉も紡げない。
「見た感じ……お前、結構偉い人だよね」
地面に伏す男はそんな私の質問に対し、むぐぐと唸るだけ。けれど、私は辛うじて喋れる程度には力加減をしているので、単に喋りたくないだけなんだろうと判断し、話を進める。
「私を連れて来いって命令した人に一つ、伝言をお願い出来るかな」
そう言って、私は男の耳元へゆっくりと顔を近づける。
そして、
「四肢をもがれて達磨にされたくなかったら二度と私に関わるな」
圧をかけてそれだけを告げ、私は顔を離す。
「そう、伝えて貰えるかな」
神託において重要な私という存在が抜ければ、王都の連中は慌てふためくだろうか。
そう思うと少しだけ、胸がすく思いであった。
「でも、それだけじゃ間違いなく、ただの脅しって思われる」
どんな些細な事であれ、貴族連中に弱みを見せてはいけない。それを身を以て知っているからこそ、視線が己の右足下へ向かう。
「恨むなら、私から容赦を取り除いてくれた王さまと、その息子と、貴族の方々と……こうして這いつくばる事になった自分の弱さを恨もうね」
私が右の足に力を込めると同時。バキリ、と、骨が纏めて砕ける音がいやに響いた。
右腕を踏み潰された激痛に身を悶えさせ、その痛苦から逃れるように意識を手放した男から視線を外し、驚愕に目を見開く少年少女に向けて一言。
「私を連れて行きたいなら襲い掛かってくれていいよ。ただ、コイツとお揃いになるかもしれないけど」
そう言うや否や、彼らは私から半歩距離を取り、壊れた玩具のように忙しなくかぶりを振る。
「……何も、聞く耳を一切持ってないわけじゃない。コイツには『関わるなって伝えろ』と言ったけど、それは舐め腐った態度を取るならの話。誠意を見せてくれれば、私だって話くらいは聞く」
その誠意とは、斬り落とした右腕を私の目の前に持ってくる事である。それを理解しているからか、彼らは何も言う事が出来なかった。
「命令一つ、たかだか神託程度で全てが無かった事になると思ったら大間違い。私達の溝は、そんなに浅いもんじゃない」
*****
「まるで女優ね……ほんと、いい性格してるわよ貴女」
小屋を訪れた彼らが立ち去ってから数分後。
今度はノックもなしに一人の女性が立ち入ってくる。
「元々貴女が神託で自分を指名してくれって頼み込んできた癖に、抜け抜けと知らないなんて言うんだもの。可笑しくて笑い転げそうだったわ」
「……ラナー」
人形めいた相貌の麗人。
私がラナーと呼んだその女性は、ずかずかと我が物顔で部屋の奥へと進み、私のすぐ側で立ち止まる。
「なんで殺さなかったの?」
「……あの騎士達の事?」
「それ以外何があるのよ。人間憎しっていつも言ってる貴女がなんで殺さなかったのか気になって仕方がないのよ。だって絶好の機会じゃない……ねえ、どうして殺さなかったの?」
「困るからだよ」
私は刹那の逡巡もなく即答する。
私の友人はこのラナーと、もう一人だけ。
こうして時折会って話している事もあり、彼女は私の考えの大半を知っていると言って間違いない。
ただ、今回の事に関しては、事の全貌をまだ話してはいなかった。故の、疑問。
「神託で選ばれたあの二人の子供に、それの付き添い人、騎士二十数名程度。あれを私が皆殺しにして、私憎しで団結されたら困るからだよ」
「……別にいいじゃない。貴女の目的はこの腐り切った世界を壊す事。そうだったじゃない? それとも、私が知らない間に変わっちゃったかしら?」
「変わってない。人間憎しは一切変わってない」
「だったらなんで──」
そこで、ラナーの言葉が止まる。
その理由はきっと、私が口の端を吊り上げていたから。残酷に、残忍に、冷酷に、酷薄に、円弧を描くように笑みを作っていたから。
自分でも分かる。
今の私はとても醜悪な笑みを浮かべているって。
「ただ斬り殺されて死ぬだなんて、生温いと思わない?」
嗚呼、嗚呼。
どこまでも苦しんで、喘いで、絶望しろよ。
私がそうだったように、お前らも。
これはやり返しなんだ。
誰もが正当と認めるやり返し。
私が味わった痛苦をそのままお返しする。ただそれだけの復讐劇。
斬り殺す? とんでもない。
そんな優しい事を私がしてやるものか。
「……きっとあの愚王なら、事の次第を一部隠して国民に話すよ。神託で選ばれた人間は国王の召集に従わなかった。その理由は、被害妄想を抱いた罪人だったから、って。私にした行為を全てひた隠しにして、ね」
王の思考が手に取るように分かる。
あの悪意にさらされ続けたからこそ、まるで未来予知でもするかのように分かってしまう。
「それからきっと、私という存在など居ても居なくても変わりないと判断する。そして、一行は魔王に挑んで、敗北する。王は言うんだ。負けたのは召集に従わなかった私のせいであると。私憎しで国を纏めようとするけれど、そこで邪魔が入る。それが、魔王による事実暴露」
いつになく気分が高揚している事もあってか、ラナーに言い聞かせているにもかかわらず、早口にまくし立ててしまう。
「魔王は言うんだ。国の貴族が私にした事を全て! 包み隠さず‼ だから協力しなかったのだと! でも私は言っていた。腕一つ差し出せは手打ちにすると。それを王は拒んだ。そのくらいの罪は受け入れて然るべきであったのに拒んだ! そして生まれる上層部とその他による不和。後はもう内部から壊れるだけ。いつ復讐されるか分からず、不安に駆られながら過ごして、過ごして、そして殺されるの──私にね」
「……そう上手く事が運ぶかしら」
「運ぶ。間違いなくね。それに、今代の魔王は私の数少ない友人だよ? 理不尽な運命に対する恨みへの理解は、誰よりも深い」
「……まあ、いいわ。貴女が満足するなら私はそれで」
私の想いが聞けて満足したのか、ラナーはそれだけ告げて私の前から立ち去ろうとする。
「……止めないの?」
「貴女は止めて欲しいの?」
「まさか」
それこそあり得ない。
これは、もう決定事項だ。
後戻りするなんて選択肢は存在しない。
「私はただ、『女神』なんて呼ばれてるラナーがこんな計画に加担しても良かったのかって思っただけ」
「私は聞いただけよ。一人の少女の願いを聞いただけ。神託で自分を指名して欲しいという願いを聞いただけ。その結果、人間が滅ぼうとも、私の知った話じゃないわよ。『女神』はね、醜悪な人間には手を貸さないの」
「……私も十分醜悪だと思うけどね」
「あら、それは私が判断する事よ。貴女の価値観は私にとってはどうでもいいの。私が醜悪でないと判断した。必要な事実はそれくらいでしょう?」
他者の意見に一切靡かない。
自分の判断こそが全て。
その在り方は、私の好むところであった。
「……あぁ、そうよ。もう一つ、貴女に聞きたい事があったの」
「私に答えられる事ならなんでも答えるよ」
「そう。なら、遠慮はしないわ。ねえ、」
少しだけ厳しい視線を向けながら、ラナーが口を開く。こちらの真意を探るような、そんな眼光であった。
いつになく真剣なラナーの様子に、場が少しだけ張り詰めてしまう。
「どうして私には名乗ってくれないのかしら」
その言葉に、私は小さく笑みをこぼす。
「名は、捨てたから。ただそれだけだよ」
ツェレア・ベイセストという名は捨てている。
だからこそ、今の私は名も無き人間。
名も無き人間に、失うものは何も無い。
……とは言っても、私がツェレア・ベイセストという事実に変わりはなく、その名で呼ばれれば、神託がどうのこうのと言っていた連中にしたように、反応してしまう。
きっと、ラナーがどうして名乗ってくれないのかと言ったわけはそこに収束するのだろう。
「……本当に、それだけかしらね?」
数少ない友人に、隠し事をするべきではないのだろう。だけど私は「そうだよ」と言って首を縦に振り、肯定した。
見せるべきではないのだ。
たとえ友人相手であっても、この淀み過ぎた感情だけは。
口で「殺す」と叫ぶのと、これは全くの別物だ。名を呼ばれたその瞬間、胸の奥から湧き上がるどす黒い感情が全身に絡みつき、容赦のない敵意と殺意が否応なく発露する。
今こうして私が比較的平静を保てているのも、ツェレア・ベイセストと現在の私を別物として考えているからに他ならない。
過去の、名があった頃の私は、よく嘔吐いていた。
涙が溢れ、苦痛に囚われ、孤独に喘いでいた。
痛みに声を上げれば、『魔の森』に棲まう魔獣共が餌を見つけたと歓び集まる。
だから私はひたすら感情を押し隠すしか出来なかった。誰が悪かったのだと、毎日、毎日、毎日──毎日自問して。
理不尽過ぎる事実を自答する。弱者である私が悪いのだと。
ツェレア・ベイセストだった何かが、ぼろぼろと崩れ落ち始めたのも、丁度あの頃。
私の中に生まれ、蠢いて、染み込んだ感情が鎌首をもたげながら、令嬢時代から残る人間らしさの全てを壊し尽くした。
そして私は、名無しになったのだ。
荒れ狂う想いを閉じ込めるように、ツェレア・ベイセストというかつての名を捨てたのだ。
「……前の名前は捨てた。本当に、ただそれだけだよラナー」
念を押すように再度言う。
「……そう」
彼女はどうしてか、少しだけ悲しそうで。
けれど、私がそう言うと分かっていたのか、その表情に落胆の色は薄かった。
せめて、数少ない友人にだけは。この醜い感情を、狂気を、人間として致命的なまでに壊れ切った憤懣と憎悪を、見せたくはなかった。
だから、そのトリガーとなるツェレア・ベイセストという名を呼んで欲しくない。
言葉の裏に隠されたその想いを感じ取ってくれたのか、ラナーがこれ以上私の名前に言及する事はなかった。
「何もかも捨ててしまった方がいいんだよ。人間らしさも、何もかも全て。失うモノをゼロにしてしまった方が、私にとってはどこまでも都合が良い」
憚られるものがなければ、何だって出来る。
だから私は──。
「まあ、貴女の人生だもの。どんな生き方をしようが、貴女の自由。私がとやかく言う権利なんて何処にもないわ」
そう言ってラナーは、もう聞く事はないとばかりにドアノブに手を掛け、押し開ける。
「また、寄らせて貰うわね」
ラナーが小屋から立ち去る直前。
びゅう、と一陣の風が吹いた。
そのせいで、小声でひとりごちた彼女の言葉の全てが、私の耳に届く事はなかった。
──ねえ、気付いてる?
辛うじて、風に邪魔をされながらも聞こえたのはそこまで。
でも私には、彼女がこう続けたのが分かった。
貴女のその私を気遣う態度。それがとっても人間らしいって事を──。
3
「新聞ちょうだい」
平坦な声でそう口にする私の頭上には、少し大きめのポーチを首から下げている鳥が一羽。
左の手を高く上げると、その鳥は首に下げたポーチから新聞を一部、こちらに落下させる。
そして私は落ちてきた新聞を手に取り、記事に視線を落とした。
「……概ね予想通り、ね」
あの鳥は、号外が発行された際に飛ばされる一種の配達屋。
先程のように、求めれば誰にだろうと新聞を落とす役割を担っている。
号外が出たという時点で粗方の事は想像がついていたが、こうも予想通りに事が運べば、私が口の端を吊り上げるのも仕方がないだろう。
「神託で選ばれた勇者三人と二十余名を連れて、最西端に位置する街──ドラフブルグにて暴れていた魔族を鎮圧。王都はその祝勝パレードでお祭り騒ぎ。このまま魔王討伐に動く、か」
私に関しては恐らく、現状では無視する方針に決まったのだろう。
私を強引に捕らえようとすれば少なからず被害が出ると、神託にて選ばれた勇者二人と腕を折ってやった男が言ってくれたのかもしれない。
そもそも、敵意をむき出しにして対応したのも、私に構えば被害が出るぞと理解してもらう為。
このタイミングで私を放っておいてくれないと何もかもがお釈迦になってしまうからだ。
「ただ──」
出だしは私が描いた通りに進んでいると言っていい。いいのだが、勇者三人というのが引っかかった。
ラナーが下した神託では、勇者は私の他に二人だけ。
それなのに、記事では一人多い事になっている。
だとすれば、
「代役……かな」
私の代わりに誰かが勇者に選ばれた。
予定にはない事だが、その程度で何年も前から描いてきたストーリーを変更するつもりはない。
それに。
「支障が出るようなら最悪、私の手で」
──殺せばいいのだから。
そう、決意する。
この復讐は、あの時私を見捨てた人間に対するもの。あの時貰った全てを返す為だけの復讐劇。
誰一人として信用出来ない状況を作り出し、襲い来る理不尽に身を震えさせる為だけに描かれたもの。
私だけ我慢しろ?
そんな事は許されないし、私が許さない。
とある聖人の言葉が脳裏を過る。
我意を胸の内に留める事こそが、その者の強さであると。
だけど私は違う。
それが是とされる世界だというならば、私は弱者でいい。恨みを果たせるのならば、私は何にでもなってやるよ。
それが私の願いなのだから。
私の全てはその復讐だけに、愚直に、ひたむきに、注がれ続けてきたのだから──‼
どこまでも澄んだ淡青の空。
蝶よ花よと育てられていた頃は一度も目にする事のない日もあったというのに、復讐に心血を注ぐようになってからはすっかり見慣れてしまった。その広大な空を仰ぎ、私は破顔する。
「何が起ころうと、これだけは変わらない。これだけは、変えられない」
静謐に。
それでいて何処か、苛烈に。激烈に。
私は感情を込めて言葉を紡いでいく。
「だから、」
誓いを此処に。
決意を此処に。
想いを、此処に──。
「たとえなんと言われようとも、貫くよ」
確固たる意志として私の中に根付いてしまった想い。
「私の正義が、悪であったとしても」
罪悪感は生まれない。
後悔も生まれない。
「もう、誰にも止められない」
殺しに対して。
害を与える事に対して、私が罪悪感を抱く事なぞあり得ない。
「だから私はコレを成し遂げよう。コレを貫こう。コレを、果たそう」
全ては、この日の為だけに。
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薄れて消えたのだから。
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「ゴルド将軍が勇者に……、そうか」
寂れた廃城にて、一人の男が異形の生物より伝えられた言葉を反芻しながら、空を仰ぐ。そこには茜と黒が歪に混ざり合った夜の色が、遥か遠くまで広がっていた。
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「ああ、良いさ。問題ない。元よりアイツは死に場を求めていた。俺が助ける事をアイツは求めていなかった。気持ちを汲んでやるのも、『王』の役目だろう?」
「────」
伝令役は慌てて平伏し、ガタガタと僅かに身体を震わせながら男の言葉を待つ。
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しかし、
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やってきた言葉は、赦し、であった。
「お前は、魔族に生まれてまだ日が浅い。故に許そう。ゴルド将軍や古株の連中の気持ちは、気が遠くなるほど生きて漸く理解に届く。そんなものなのだから」
伝令役は不思議そうに首を傾げた。
「お前は、人が死ねばどうなるか。その答えを知っているか?」
その問いに対して、伝令役はいいえと首を振る。
「だろうな。それを理解していた連中は、俺を含め十人にも満たないのだから」
少しだけ、悲しそうに。
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