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三話
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†
『聖女』の役目とはとどのつまり、民草を守る事である。
迫り来る魔物という脅威から、守る存在。
それが、『聖女』だ。
だからこそ、私は思わずにはいられない。
既に殆ど形骸化してしまった存在であろうとも、『聖女』という存在は、ランドブルグ辺境伯領にこそ、必要なのではないのかと。
ランドブルグ辺境伯領にたどり着いてから、早一週間。
あの時、一瞬だけ見せたルークさんの怒りに塗れた表情は、王国に支援を求めていたが為のものであったのだとランドブルグ辺境伯領の惨状から、否応なしに気付かされた。
ランドブルグ辺境伯は休む間もなく魔物の対処に追われ、疲弊する最中、肝心の王国はといえば、その対策に『聖女選定』を行なったかと思えば、実はそれが伯爵家の娘と婚約したい王太子の戯れであった、と。
……その事実を知れば、どんな聖人であってもブチギレた事だろう。ルークさんは決して馬鹿じゃない。だからきっと、彼はその事実に気付いてる。ルークさんが怒るのは、当然だった
「……王国どころか、教会の連中も腐り切ってるからねえ」
与えられた無駄に広い自室にて、ポツリと私はつぶやいた。
如何に前世の記憶が蘇ったとはいえ、どこまで煎じ詰めようと、この身はルナ・メフィストのものである。故に、ルナ・メフィストとして言わせて貰うならば、ルークさんが幾ら期待しようと、それに王国側が応えてくれる事は絶対に有り得ない。
それが、私が出した結論であった。
だから、私は少しだけ不思議に思ってしまった。王国側も、『聖女』という存在をおし出す為に一躍かった教会に属する腐れ神父共も、誰も彼もが、誰かの為に行動する。
なんて事を己の意志でするわけがない。
それは一目瞭然であるのに、どうしてルークさんは、怒っていたのだろうか。
————それではまるで、期待していたようではないか。
事実、期待していたのだろう。
私に言伝の件を聞いたあの発言こそが、その証左だ。
でも、不可解だった。
この一週間。ルーク・ランドブルグという人間に触れたからこそ、不可解だった。
王国に頼るべきではない。
どこまでもそう割り切れている人間が、少しでも期待をしていたという事実がどうしても。
きっとだから私は、バルコニーに続くガラス張りの扉を開けたんだと思う。
婀娜として満ちた月光に照らされながら、外を眺めるルークさんにその事を聞きたくて、一歩踏み出したのだと思った。
「……あの。ルークさんは、どうして」
「————『聖女』だったから、だ」
私に背を向けたままのルークさんにそう問い掛けようとして。しかし、言葉が言い終わるより先に、言葉が被せられる。
とはいえ、その一言は的確に正鵠を射ていた。
だから思わず、息をのみ、声を止めてしまう。
やがて、そのあまりの正確さに言葉を紡げなくなっていた私に、ルークさんは「違ったか?」と苦笑いを向けた。
「……ルナ嬢。オレはな、元々あんたを追い返すつもりだったんだ」
縁談はやはり、受けられないと。
半ば無理矢理進められた縁談をそれでもと断るつもりだったのだと彼はいう。
「でも、あんたの目を見てオレはその時になって意見を変えた。変えずにはいられなかった。あんたの目が、ずっとまともで、現実を見ていたから」
その独特の物言いは、なんだか無性に懐かしくて。
気が遠くなるほど昔。
まだ私が『聖女』と呼ばれていた頃にもいたんだ。あんたの目が。目の色が。
そうやって、目で物事を判断する友人が。
確か名前は————あいつも、ルークだったような気がする。
「そして、そういう目をするやつに、オレは覚えがあったんだ。そいつ、自分が『聖女』になるんだと言って聞かないような馬鹿でさ」
懐かしむように笑う。
私とルークさんの歳の差は、七歳程度だ。
私が18歳で、ルークさんが25歳あたり。
なのに、今彼が浮かべる笑みというやつは、年相応とは程遠かった。
それこそ、10年。ううん、20年以上、遥か昔の事を懐かしむような様子で、紡がれていたからか、少しだけ驚いてしまった。
「物分かりは悪いし、馬鹿だし、無鉄砲だし、オレどころか周りの言う事すらろくに聞かないヤツだったが……それでもそいつは、一本の芯が通ったやつだった」
ボロクソな評価だった。
でも、ルークさんはその人の事が好きなのだろう。言葉では散々に貶してはいたけど、語る彼の表情は、短い付き合いの中でも見た事のない、心底嬉しそうな笑みを浮かべていたから。
「きっと、だからなんだろうな。あいつが憧れた『聖女』だったから、オレは『もしかすると』と、期待を寄せてたんだろうさ」
結局、それは無駄に終わったがなと言葉が締め括られる。
既に『聖女』という存在が形骸化しつつあるこの世界にて、『聖女』を目指すような変人がいたのかと思いながら、私は彼の言葉に納得した。
でも、妙な事もあったもんだと思った。
宮中の貴族諸侯や、権力を持った教会の人間。
それらに見切りをつけ、散々としか言いようがない感情を抱く私のような奴とおんなじ目をした奴がいるとは、世界は案外狭いのかもしれない。
しかも、『聖女』を目指していたときた。
まるでそれは、〝前世の私そのもの〟ではないか。そう思ったが、絶対にあり得ないであろうその可能性を真っ先に切り捨てながら、私は小さく笑う事にした。
「とはいえ、結果的にあんたを受け入れて良かった。オレはまだ目にした事はないが、臣下連中からは、素晴らしい才だと聞いている。ルナ嬢が『聖女』に選ばれなかった事が不思議で仕方がないと、絶賛だったぞ」
……そりゃまあ、前世の話とはいえ、これでも元『聖女』ですから。
そんな感想をのみ込みながら、私は愛想笑いを浮かべつつ————そして、少しだけ罪悪感に見舞われた。
続くように心なしか、チクリと細針で心臓をつつかれたような痛みに襲われる。
この一週間、私はルークさんの言葉に従って終始、治癒に徹していた。
魔物を倒す術もあるのに、それをひた隠しにして、治癒に徹していた。だから、私の胸の中に罪悪感がぽつりと残っていたんだと思う。拭いきれない罪悪感ってやつに、苛まれたんだと思う。
「私としては、選ばれなくて良かったって思ってますけどね」
「……選ばれたかったから、立候補したんじゃないのか?」
ルークさんは色々とそこの事情を知っている人間だ。だから、へんに誤魔化してもボロが出てしまうだけ。現に、今もボロが出てる。
「選ばれたかったです。でも、それはあくまで対抗意識から来るものでした」
今生の、ルナ・メフィストとしての記憶を辿りながら、握り締めながら、本音を吐露する。
「妹と比べられるだけの人生でしたから、何か一つでも、勝ちたかったんです。勝って、見返したかったんです。勝って、私という人間をちゃんと見て欲しかったんです」
————両親に。妹に。周りの、人間に。
それが、偽らざるルナ・メフィストの望みだった。
「でも、それだけですよ。だから、結果的に選ばれなくても良かったかなって。何せ私は、両親含め、貴族や権力を好き勝手に使う神父共が大嫌いですから」
きっと、今の私は最高に良い笑顔を浮かべているって、そんな揺るぎない確信があったんだ。
『聖女』の役目とはとどのつまり、民草を守る事である。
迫り来る魔物という脅威から、守る存在。
それが、『聖女』だ。
だからこそ、私は思わずにはいられない。
既に殆ど形骸化してしまった存在であろうとも、『聖女』という存在は、ランドブルグ辺境伯領にこそ、必要なのではないのかと。
ランドブルグ辺境伯領にたどり着いてから、早一週間。
あの時、一瞬だけ見せたルークさんの怒りに塗れた表情は、王国に支援を求めていたが為のものであったのだとランドブルグ辺境伯領の惨状から、否応なしに気付かされた。
ランドブルグ辺境伯は休む間もなく魔物の対処に追われ、疲弊する最中、肝心の王国はといえば、その対策に『聖女選定』を行なったかと思えば、実はそれが伯爵家の娘と婚約したい王太子の戯れであった、と。
……その事実を知れば、どんな聖人であってもブチギレた事だろう。ルークさんは決して馬鹿じゃない。だからきっと、彼はその事実に気付いてる。ルークさんが怒るのは、当然だった
「……王国どころか、教会の連中も腐り切ってるからねえ」
与えられた無駄に広い自室にて、ポツリと私はつぶやいた。
如何に前世の記憶が蘇ったとはいえ、どこまで煎じ詰めようと、この身はルナ・メフィストのものである。故に、ルナ・メフィストとして言わせて貰うならば、ルークさんが幾ら期待しようと、それに王国側が応えてくれる事は絶対に有り得ない。
それが、私が出した結論であった。
だから、私は少しだけ不思議に思ってしまった。王国側も、『聖女』という存在をおし出す為に一躍かった教会に属する腐れ神父共も、誰も彼もが、誰かの為に行動する。
なんて事を己の意志でするわけがない。
それは一目瞭然であるのに、どうしてルークさんは、怒っていたのだろうか。
————それではまるで、期待していたようではないか。
事実、期待していたのだろう。
私に言伝の件を聞いたあの発言こそが、その証左だ。
でも、不可解だった。
この一週間。ルーク・ランドブルグという人間に触れたからこそ、不可解だった。
王国に頼るべきではない。
どこまでもそう割り切れている人間が、少しでも期待をしていたという事実がどうしても。
きっとだから私は、バルコニーに続くガラス張りの扉を開けたんだと思う。
婀娜として満ちた月光に照らされながら、外を眺めるルークさんにその事を聞きたくて、一歩踏み出したのだと思った。
「……あの。ルークさんは、どうして」
「————『聖女』だったから、だ」
私に背を向けたままのルークさんにそう問い掛けようとして。しかし、言葉が言い終わるより先に、言葉が被せられる。
とはいえ、その一言は的確に正鵠を射ていた。
だから思わず、息をのみ、声を止めてしまう。
やがて、そのあまりの正確さに言葉を紡げなくなっていた私に、ルークさんは「違ったか?」と苦笑いを向けた。
「……ルナ嬢。オレはな、元々あんたを追い返すつもりだったんだ」
縁談はやはり、受けられないと。
半ば無理矢理進められた縁談をそれでもと断るつもりだったのだと彼はいう。
「でも、あんたの目を見てオレはその時になって意見を変えた。変えずにはいられなかった。あんたの目が、ずっとまともで、現実を見ていたから」
その独特の物言いは、なんだか無性に懐かしくて。
気が遠くなるほど昔。
まだ私が『聖女』と呼ばれていた頃にもいたんだ。あんたの目が。目の色が。
そうやって、目で物事を判断する友人が。
確か名前は————あいつも、ルークだったような気がする。
「そして、そういう目をするやつに、オレは覚えがあったんだ。そいつ、自分が『聖女』になるんだと言って聞かないような馬鹿でさ」
懐かしむように笑う。
私とルークさんの歳の差は、七歳程度だ。
私が18歳で、ルークさんが25歳あたり。
なのに、今彼が浮かべる笑みというやつは、年相応とは程遠かった。
それこそ、10年。ううん、20年以上、遥か昔の事を懐かしむような様子で、紡がれていたからか、少しだけ驚いてしまった。
「物分かりは悪いし、馬鹿だし、無鉄砲だし、オレどころか周りの言う事すらろくに聞かないヤツだったが……それでもそいつは、一本の芯が通ったやつだった」
ボロクソな評価だった。
でも、ルークさんはその人の事が好きなのだろう。言葉では散々に貶してはいたけど、語る彼の表情は、短い付き合いの中でも見た事のない、心底嬉しそうな笑みを浮かべていたから。
「きっと、だからなんだろうな。あいつが憧れた『聖女』だったから、オレは『もしかすると』と、期待を寄せてたんだろうさ」
結局、それは無駄に終わったがなと言葉が締め括られる。
既に『聖女』という存在が形骸化しつつあるこの世界にて、『聖女』を目指すような変人がいたのかと思いながら、私は彼の言葉に納得した。
でも、妙な事もあったもんだと思った。
宮中の貴族諸侯や、権力を持った教会の人間。
それらに見切りをつけ、散々としか言いようがない感情を抱く私のような奴とおんなじ目をした奴がいるとは、世界は案外狭いのかもしれない。
しかも、『聖女』を目指していたときた。
まるでそれは、〝前世の私そのもの〟ではないか。そう思ったが、絶対にあり得ないであろうその可能性を真っ先に切り捨てながら、私は小さく笑う事にした。
「とはいえ、結果的にあんたを受け入れて良かった。オレはまだ目にした事はないが、臣下連中からは、素晴らしい才だと聞いている。ルナ嬢が『聖女』に選ばれなかった事が不思議で仕方がないと、絶賛だったぞ」
……そりゃまあ、前世の話とはいえ、これでも元『聖女』ですから。
そんな感想をのみ込みながら、私は愛想笑いを浮かべつつ————そして、少しだけ罪悪感に見舞われた。
続くように心なしか、チクリと細針で心臓をつつかれたような痛みに襲われる。
この一週間、私はルークさんの言葉に従って終始、治癒に徹していた。
魔物を倒す術もあるのに、それをひた隠しにして、治癒に徹していた。だから、私の胸の中に罪悪感がぽつりと残っていたんだと思う。拭いきれない罪悪感ってやつに、苛まれたんだと思う。
「私としては、選ばれなくて良かったって思ってますけどね」
「……選ばれたかったから、立候補したんじゃないのか?」
ルークさんは色々とそこの事情を知っている人間だ。だから、へんに誤魔化してもボロが出てしまうだけ。現に、今もボロが出てる。
「選ばれたかったです。でも、それはあくまで対抗意識から来るものでした」
今生の、ルナ・メフィストとしての記憶を辿りながら、握り締めながら、本音を吐露する。
「妹と比べられるだけの人生でしたから、何か一つでも、勝ちたかったんです。勝って、見返したかったんです。勝って、私という人間をちゃんと見て欲しかったんです」
————両親に。妹に。周りの、人間に。
それが、偽らざるルナ・メフィストの望みだった。
「でも、それだけですよ。だから、結果的に選ばれなくても良かったかなって。何せ私は、両親含め、貴族や権力を好き勝手に使う神父共が大嫌いですから」
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