引き返せない道

秋庭 涼

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引き返せない道

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「ここが貴族のお邸なのね・・・意外と質素だわ」

ジャンヌはヴィヴィアナとマティルデの姉妹に、クリスマス休暇の返礼として、夏のヴァカンスに彼女らの実家に誘われていた。

断るのも悪いと思って、しぶしぶながらも出かけたジャンヌだったが、この数ヶ月で自分のうちに奇妙な気持ちが芽生えてくるのを感じていた。

―そういえば私にはアディのように恋人の一人もいない。ファンと称する者たちはたくさんいたが、所詮はただの取り巻きに過ぎない。

そこに自分を自分として慕ってくれる人物が現れた・・・

「何考えてるの? 女同士じゃないのよ」

どうせただの友達どまりで終わるに決まってるんだから。自分にはそんな趣味はないことだし。

そう思いつつ玄関のノッカーを叩くと、ぎいいっと重たげな音を立てて扉が開いた。

そこには、ヴィヴィアナとマティルデが満面の笑みでジャンヌを迎えていた。

「いらっしゃい、ジャンヌ嬢」マティルデが心底嬉しそうに「長旅でお疲れになったでしょう? すぐにお身体を休めてくださいな」とジャンヌに言う。

「マドモワゼル、お待ちしてましたわ」

ヴィヴィアナも嬉しそうだ。

ジャンヌが中へ足を踏み入れると、彼女の実家のように派手ではないが、上品な調度品ばかりが置かれているのが目に付く。

「さあ、こちらへどうぞ」マティルデが早速客室に案内する。まるで一流のホテルのような部屋だった。そのあたりはさすが貴族といったところだろうか。

「すぐに珈琲をお持ちしますね・・・ところでジャンヌ嬢」

マティルデが遠慮がちに「私とヴィヴィアナも同席してよろしいでしょうか?」

「え? ええ。それは構わないわよ」

ジャンヌはたかが珈琲を飲むのに、なぜそんな遠慮をするのかと訝しむ。

「ありがとうございます。では、少々お待ちください」

マティルデが部屋を出て行く。

ジャンヌは客室のソファに座ると、うんと伸びをした。さすがに少々疲れた。眠気がさしてくるのがわかる。少しだけ、珈琲が運ばれてくるまで・・・

「―ヌ嬢、ジャンヌ嬢」マティルデの声で、はっと目を覚ます。

「やだ・・・私ったら寝ていたのね」

ジャンヌは時計を見た。15分程度しか経っていない。

「ジャンヌ嬢の寝顔もとても素敵ですわね」

マティルデがそんなことを言う。

「そ、そうかしら・・・」なんとなく声が上ずってしまうのは何故だろう?


(そうか、今まで誰にもそんなこと言われたことなかったからだわ)


ジャンヌはそう感じた(だって私の寝顔を知っているのは家族だけですもの)。

「ますます、欲しくなりましたわ」

急にマティルデの話し方が変わった。先ほどまで上品な貴族令嬢だったのが、いきなり娼婦になった・・・そんな印象だ。

「ねえ、ジャンヌ嬢・・・あなたには恋人はいらっしゃらないそうですわね」

「・・・」ジャンヌはどう答えてよいのか戸惑った。

「では、さぞかしお身体は乾いていらっしゃるとお見受けしますわ」マティルデは続けて「女優ともあろうお方が、そんなことでは駄目ですわ・・・それではプリマになどなれはしません」

そのとき、部屋のドアが開いてヴィヴィアナが入ってきた。

「私どもがお相手を務めさせていただきとう存じます。マドモワゼル」

ジャンヌは混乱した。まさか、そんなことが・・・

そんなことを考えてるうちに、マティルデがジャンヌの唇に接吻した・・・家族以外の人物との初めての接吻。

マティルデはジャンヌの背中に腕を回すと、背中を優しく撫でた。

「お厭かしら?」マティルデがジャンヌの耳元で囁く。ジャンヌがまたしても答えに窮していると、彼女の手がジャンヌの乳房をつかんだ。そしてゆっくりと揉む。

「あ・・・」ジャンヌは思わず声を出していた。マティルデは相当慣れているのだろう、服の上からでも充分に今まで感じたことのない何かが、溢れるのを経験した。

「お姉さま、私も仲間に入れてください」ヴィヴィアナも、ジャンヌの身体を愛撫し始めた。

「や、やめて・・・女同士でなんて間違ってるわ・・・」

ジャンヌはなんとかそれだけを言ったが、マティルデはくすりと笑った。

「ふふ、ジャンヌ嬢。では、これはどうしたことかしら?」

マティルデの手が、ジャンヌの秘所に伸びる。下着の上からでも、そこは湿り気を帯びていた。

「少し愛撫しただけなのに、どうしてここはこんなになっているの?」

マティルデが問う。ヴィヴィアナはジャンヌのドレスを乱し、下着を脱がせ始めた。

「・・・!」

ジャンヌに抵抗する気力は残されていなかった。それというのもマティルデとヴィヴィアナに同時に上下を攻められはじめたからだった。

「とても素敵よ、ジャンヌ嬢・・・」マティルデがジャンヌの乳首を吸い始める。

「あ、あ・・・」

ヴィヴィアナも負けじとジャンヌの下半身に指を這わせ、その部分を丁寧に撫でる。

「マドモワゼルのあの部分、とても綺麗な薔薇色をしているわ・・・それに、もうこんなになってしまっている」

くちゅくちゅ、といった音がヴィヴィアナの指遣いにあわせてジャンヌ自身にも聞こえてきた。

「いや・・・恥ずかしい、あっ!」

ジャンヌが叫んだのは、ヴィヴィアナがその部分に舌を使いはじめたからだ。

「駄目・・・そんなところ」

ジャンヌはいつの間にか全裸にされているのに気づかなかった。姉妹の攻めに、初めてのジャンヌは自分で自分が分からなかったのだ。

「ジャンヌ嬢・・・今は私たちにお任せを―」マティルデがジャンヌの乳房を愛撫しながら言った。そして、再び舌と唇を使う。

「ああ・・・おかしくなりそう・・・」ジャンヌは手慣れた攻めにとうとう屈してしまった。

「嬉しいですわ、マドモワゼル」ヴィヴィアナが微笑む「では、私たちもね、お姉さま」

姉妹も着ていたものを脱ぎ捨てる。ヴィヴィアナの身体はまだ発展途上といった感じだったが、マティルデは充分に熟した女の身体を持っていた。

「ジャンヌ嬢は初めてでいらっしゃるから、ここは私に任せて、ヴィヴィアナ」

マティルデが言ったが、ヴィヴィアナは不満そうに「私だってマドモワゼルをご満足させることができるわ」と文句を垂れる。

「困った子ねえ・・・でも、ここは私の言うことを聞くのよ、わかって?」

そう会話してる間にも、二人はジャンヌへの攻めをやめない。

ヴィヴィアナは仕方なくジャンヌの身体から離れる。すかさず、マティルデがジャンヌの身体の上にのしかかった。

「身体が変なの・・・お願い、助けて・・・」ジャンヌはマティルデに訴えた。

「ええ、もちろんわかっておりますわ。ジャンヌ嬢はここがいいんですよね」マティルデはジャンヌの下半身に顔を埋め、あの部分に舌を滑り込ませた。

「はあっ・・・」ジャンヌは声を上げる。

「そして、たぶんここも」マティルデは彼女の今まで知らなかった箇所に、舌を伸ばした。

「や、いやあ・・・あっ、そこいい・・・」ジャンヌはまたしても初めての快楽に我を忘れた。

「こちらのほうが、いいみたいですわね」

そして指でそこに触れる。びくりと、ジャンヌの身体が反応する。

「さあ・・・今までご存じ無かった場所を、私がお教えしますわ」

指でゆっくりとそこを刺激する。ジャンヌは既に女優ではなかった。一人の女として快楽を貪欲に受け入れていた。

「あ、あ・・・お願い、もっと・・・」

「では、いきましょう」マティルデがどこか魔物めいた言い方をする。そして、その部分を舌で舐めはじめる。

「ああん! いいわ、すごくいい」ジャンヌはたまらず腰をよじらせる。

「ジャンヌ嬢・・・貴女も何て可愛らしい方なのかしら」

マティルデはそう言うと、指でそこを撫で続ける。

「あ、ああっ!」

突然、ジャンヌは身体をのけぞらせると、ぐったりと力が抜けてしまう。

マティルデは満足そうに「いかがでした? 初めてが同性というのもなかなか経験できませんわよ」

だが、ジャンヌは荒い息をつきそれに答えることが出来ない。

「次は私よ、お姉さま」今度はヴィヴィアナがジャンヌを攻め始める。

「もう、赦して・・・私、おかしくなっちゃうわ・・・」

ジャンヌはヴィヴィアナのとても少女とは思えない性技に酔った。

「駄目です。マドモワゼルは何も考えないでください・・・私も先ほどのお姉さまと同じく、連れて行きます」

「あんっ、そこはもう―」

ヴィヴィアナはジャンヌのその部分を積極的に弄ぶ。

「いやあっ!」

ジャンヌはまたしても身体を震わせた。

ヴィヴィアナも満足したように、そっとジャンヌに接吻をした。

「ジャンヌ嬢、貴女はこの快楽を知ってしまった・・・殿方ではもう貴女の身体の火照りを鎮めることはかないません」

マティルデが服装を整えながら言った。

「いつでもお相手しますわ、マドモワゼル」

ヴィヴィアナがジャンヌの身体にドレスを被せながら、微笑む。

虚ろな目で姉妹を見るジャンヌ。もう引き返すことはできないのだと、彼女自身がよく分かっていた。


―了―
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