24 / 30
24 全員での話し合い
しおりを挟む
僧侶の状態異常治癒魔法で酒の抜けた友だったが、素面になってもその態度は変わらなかった。
店に迷惑をかけたという意識も無いようだ。
「それで・・・なんだか穏やかじゃない話ししてたよね?どういう事?ん?勇者様?」
今、俺達はテーブルに着いている。
魔法使いと僧侶は、酒場に行ったきりいつまでも帰って来ない俺達が気になって、探しに来たそうだ。
そして魔法使いは、さっきの友の行動を一部始終見ていたため、静かだが恐ろしい程に冷たく研ぎ澄まされた殺気を友に向けている。
「あぁ、こいつには抜けてもらおうと思ってよ。それで話し合ってたんだよ」
俺にクイっと親指を向け、面倒そうに口を曲げる友に、魔法使いの殺気が一気に膨れ上がった。
「・・・ありがとう。でも俺はいい。止めるんだ」
今にも友に攻撃を仕掛けようと、席を立った魔法使いの前に手を伸ばして制止をかける。
「・・・あんたがそう言うんなら・・・でも、納得のいく話しは聞かせてくれるんでしょうね?」
渋々といった表情で魔法使いが怒りを抑えて腰を下す。
「ちっ、お前はいっつもコイツの肩持つな。まぁいい・・・説明はすっけどよ、なんでこの人もここにいんだよ?」
友が指差す先には、この酒場の女性店員さんが座っていた。
「はい。勇者様が何度もテーブルを叩いて大声を上げますので、他のお客様のご迷惑になっております。本来ならお帰りいただくところなのですが、私が同席して騒ぎを起こさないようにしていただけましたら、残っていただいても大丈夫です」
勇者を前にして、笑顔で堂々とそう宣言する女性店員。つまり見張り役だ。
俺は隣に座るそんな彼女の横顔を見つめていた。
やはり彼女が近くにいると、とても落ち着くし懐かしい感じがする。
「・・・ちっ、まぁ・・・しかたねぇか。俺もこの酒場が使えなくなるのは避けたい。分かった。それでいい」
「ご理解いただきありがとうございます」
つまらなそうに舌打ちをする友に、女性店員さんは笑顔で頭を下げた。
俺達は炎の魔人も倒したし、自分で言うのもなんだが功績をどんどん上げている。
だからだろう。友の態度は以前と比べて非常に横暴になっている。
一度は改善されてきていた俺との仲も、そういう友の態度へ俺が苦言を呈したりする事が気に入らないのか、再び険悪になってしまっていた。
以前は魔法使いも友と普通に話していたが、最近の友の態度は目に余るものがあり、今では必要な事しか話していない。
場の雰囲気を大事にする僧侶が、頑張って友とみんなの仲を繋いでいる。
ハッキリ言って、僧侶がいるから俺達はまだ四人で組めている。
俺は雪女との約束があるから、なんとしても友と魔王退治をするつもりではあるが、僧侶と魔法使いは、どうしても俺達と組まなければならない理由はないのだ。
「では、勇者様・・・お二人で話していた事を、最初から教えてください。どうして彼が抜けなければならないのかを・・・」
いつものおっとりとした感じからは想像もできない、強くはっきりとした意思を持った声だった。
僧侶の気迫に気圧されるように、友は少し口ごもって話し出した。
店に迷惑をかけたという意識も無いようだ。
「それで・・・なんだか穏やかじゃない話ししてたよね?どういう事?ん?勇者様?」
今、俺達はテーブルに着いている。
魔法使いと僧侶は、酒場に行ったきりいつまでも帰って来ない俺達が気になって、探しに来たそうだ。
そして魔法使いは、さっきの友の行動を一部始終見ていたため、静かだが恐ろしい程に冷たく研ぎ澄まされた殺気を友に向けている。
「あぁ、こいつには抜けてもらおうと思ってよ。それで話し合ってたんだよ」
俺にクイっと親指を向け、面倒そうに口を曲げる友に、魔法使いの殺気が一気に膨れ上がった。
「・・・ありがとう。でも俺はいい。止めるんだ」
今にも友に攻撃を仕掛けようと、席を立った魔法使いの前に手を伸ばして制止をかける。
「・・・あんたがそう言うんなら・・・でも、納得のいく話しは聞かせてくれるんでしょうね?」
渋々といった表情で魔法使いが怒りを抑えて腰を下す。
「ちっ、お前はいっつもコイツの肩持つな。まぁいい・・・説明はすっけどよ、なんでこの人もここにいんだよ?」
友が指差す先には、この酒場の女性店員さんが座っていた。
「はい。勇者様が何度もテーブルを叩いて大声を上げますので、他のお客様のご迷惑になっております。本来ならお帰りいただくところなのですが、私が同席して騒ぎを起こさないようにしていただけましたら、残っていただいても大丈夫です」
勇者を前にして、笑顔で堂々とそう宣言する女性店員。つまり見張り役だ。
俺は隣に座るそんな彼女の横顔を見つめていた。
やはり彼女が近くにいると、とても落ち着くし懐かしい感じがする。
「・・・ちっ、まぁ・・・しかたねぇか。俺もこの酒場が使えなくなるのは避けたい。分かった。それでいい」
「ご理解いただきありがとうございます」
つまらなそうに舌打ちをする友に、女性店員さんは笑顔で頭を下げた。
俺達は炎の魔人も倒したし、自分で言うのもなんだが功績をどんどん上げている。
だからだろう。友の態度は以前と比べて非常に横暴になっている。
一度は改善されてきていた俺との仲も、そういう友の態度へ俺が苦言を呈したりする事が気に入らないのか、再び険悪になってしまっていた。
以前は魔法使いも友と普通に話していたが、最近の友の態度は目に余るものがあり、今では必要な事しか話していない。
場の雰囲気を大事にする僧侶が、頑張って友とみんなの仲を繋いでいる。
ハッキリ言って、僧侶がいるから俺達はまだ四人で組めている。
俺は雪女との約束があるから、なんとしても友と魔王退治をするつもりではあるが、僧侶と魔法使いは、どうしても俺達と組まなければならない理由はないのだ。
「では、勇者様・・・お二人で話していた事を、最初から教えてください。どうして彼が抜けなければならないのかを・・・」
いつものおっとりとした感じからは想像もできない、強くはっきりとした意思を持った声だった。
僧侶の気迫に気圧されるように、友は少し口ごもって話し出した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる