俺と友と追放と

理太郎

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24 全員での話し合い

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僧侶の状態異常治癒魔法で酒の抜けた友だったが、素面になってもその態度は変わらなかった。
店に迷惑をかけたという意識も無いようだ。

「それで・・・なんだか穏やかじゃない話ししてたよね?どういう事?ん?勇者様?」

今、俺達はテーブルに着いている。
魔法使いと僧侶は、酒場に行ったきりいつまでも帰って来ない俺達が気になって、探しに来たそうだ。

そして魔法使いは、さっきの友の行動を一部始終見ていたため、静かだが恐ろしい程に冷たく研ぎ澄まされた殺気を友に向けている。

「あぁ、こいつには抜けてもらおうと思ってよ。それで話し合ってたんだよ」

俺にクイっと親指を向け、面倒そうに口を曲げる友に、魔法使いの殺気が一気に膨れ上がった。


「・・・ありがとう。でも俺はいい。止めるんだ」

今にも友に攻撃を仕掛けようと、席を立った魔法使いの前に手を伸ばして制止をかける。

「・・・あんたがそう言うんなら・・・でも、納得のいく話しは聞かせてくれるんでしょうね?」

渋々といった表情で魔法使いが怒りを抑えて腰を下す。


「ちっ、お前はいっつもコイツの肩持つな。まぁいい・・・説明はすっけどよ、なんでこの人もここにいんだよ?」

友が指差す先には、この酒場の女性店員さんが座っていた。


「はい。勇者様が何度もテーブルを叩いて大声を上げますので、他のお客様のご迷惑になっております。本来ならお帰りいただくところなのですが、私が同席して騒ぎを起こさないようにしていただけましたら、残っていただいても大丈夫です」

勇者を前にして、笑顔で堂々とそう宣言する女性店員。つまり見張り役だ。
俺は隣に座るそんな彼女の横顔を見つめていた。

やはり彼女が近くにいると、とても落ち着くし懐かしい感じがする。


「・・・ちっ、まぁ・・・しかたねぇか。俺もこの酒場が使えなくなるのは避けたい。分かった。それでいい」

「ご理解いただきありがとうございます」

つまらなそうに舌打ちをする友に、女性店員さんは笑顔で頭を下げた。

俺達は炎の魔人も倒したし、自分で言うのもなんだが功績をどんどん上げている。
だからだろう。友の態度は以前と比べて非常に横暴になっている。
一度は改善されてきていた俺との仲も、そういう友の態度へ俺が苦言を呈したりする事が気に入らないのか、再び険悪になってしまっていた。

以前は魔法使いも友と普通に話していたが、最近の友の態度は目に余るものがあり、今では必要な事しか話していない。

場の雰囲気を大事にする僧侶が、頑張って友とみんなの仲を繋いでいる。
ハッキリ言って、僧侶がいるから俺達はまだ四人で組めている。

俺は雪女との約束があるから、なんとしても友と魔王退治をするつもりではあるが、僧侶と魔法使いは、どうしても俺達と組まなければならない理由はないのだ。


「では、勇者様・・・お二人で話していた事を、最初から教えてください。どうして彼が抜けなければならないのかを・・・」


いつものおっとりとした感じからは想像もできない、強くはっきりとした意思を持った声だった。
僧侶の気迫に気圧されるように、友は少し口ごもって話し出した。
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