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23 そして現在
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「結局、お前は僧侶にフラれたんだよな」
「うっせぇよ。そんな昔の事はもういいんだよ」
僧侶と魔法使いとパーティを組み、炎の魔人を倒した俺達は、今も変わらず四人で旅を続けている。この四人でパーティを組んでもう二年目か。早いものだ。
しかし今日、友は俺と決別しようとしている。
この場にいるのは俺と友の二人だ。
だから、俺は確認しておかなければならない。
「なぁ、今日俺とこういう話しの場を設ける事は、あの二人も知っているのか?」
すっかり氷が溶けて、水滴の付いたグラスを指先で持ち口をつける。
自分が思っていた以上に話し疲れていたようだ。ぬるくなった水が喉に染み渡る。
「・・・いいや、俺の独断だ。あの二人、特に魔法使いはお前に相当入れ込んでるからな。絶対に反対するに決まってるからな」
以外にも友は正直に話した。
嘘を付いても俺が本人に確認すればすぐにバレると判断したのだろう。
この町にいる限り、俺とあの二人を合わせないようにする事など不可能だ。力づくで妨害しようにも、俺の実力を知っているだけに、簡単にいかない事は分かっているだろうからな。
「・・・そうか。なら、こうは考えないのか?仮にお前の要求が通ったとして、あの二人が俺に付いて来て、お前が一人になるとは?」
「・・・・・あ?」
友は俺が何を言っているのか分からない。
心底理解できないというように、口を開けて固まっている。
昔からこうだ。
女性関係になると、どこか抜けているのだ。
自分に都合の良いように解釈して、それが現実になると信じて疑わない。
だから何回僧侶にフラれても、恥ずかしがっているだけと決めつけて再度アタックをかける。
そのせいで最近の僧侶は、友が活躍しても遠くから控えめな拍手をするだけになった。
あの僧侶がだ。
「・・・・・お前、何言ってんだ?」
「・・・言葉通りだが?あの二人が俺に付いて来るって・・・」
「そんなわけねぇだろぉぉぉぉぉォォォォォォッツ!」
怒声とともに、今日一番の鉄槌がテーブルに叩きつけられた。
当然グラスから水は零れる。
俺は悲しくなった。
なぜ何回言っても分かってくれない?
頼むからテーブルを叩かないでくれ。
「百歩譲ってだ!魔法使いがお前に付いて行くのはまだ分かる!だがな!僧侶は絶対に俺だ!だって俺は勇者だぞ!魔王を倒す勇者は俺なんだ!だったら当然俺と来るだろうがよォォォォーッツ!」
よほど癇に障ったのだろう。
額には青筋を浮かべ目は血走っており、口の端に泡を溜めて俺を怒鳴るその形相は、人というよりもはや魔物だった。
友よ、もしやお前には魔物の血が入っているのか?
「勇者様、恐れ入りますが他のお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かに願えませんでしょうか?」
俺もどう言葉を返そうか悩んでいると、あの女性店員さんがテーブル脇に来て、控えめな口調で友にお願いし頭を下げた。
「あぁぁぁぁん!?なんだとテメェ!?」
だいぶ酒が入っていたところに、俺が地雷を踏んでしまったようで、友は一気に爆発してしまったようだ。
頭を下げている女性店員さんに対して、わざわざイスから降りて、下から顔を覗きこんで睨みを利かせている。もうチンピラにしか見えない。
「おい、もうやめろ。お前は勇者だろ?酒に酔って店に迷惑をかけるなんて恥以外なにものでもない」
「あぁぁぁぁん!?なんだとテメェ!?」
駄目だ。完全に酒に呑まれている。
標的を俺に変えると、今度は額をくっつけて睨みつけてきた。
ものすごく酒くさくて、ありえないほど近い。
俺が顔をしかめたその時、突然友の全身が淡く輝く光に包まれた。
「こ、これは・・・!」
「ふ~・・・勇者様、飲みすぎは駄目ですよ」
声の方に振り返ると、そこには聖なるタクトを友に向けた僧侶と、両手を腰に当てて、なんだか不機嫌そうな魔法使いが立っていた。
「うっせぇよ。そんな昔の事はもういいんだよ」
僧侶と魔法使いとパーティを組み、炎の魔人を倒した俺達は、今も変わらず四人で旅を続けている。この四人でパーティを組んでもう二年目か。早いものだ。
しかし今日、友は俺と決別しようとしている。
この場にいるのは俺と友の二人だ。
だから、俺は確認しておかなければならない。
「なぁ、今日俺とこういう話しの場を設ける事は、あの二人も知っているのか?」
すっかり氷が溶けて、水滴の付いたグラスを指先で持ち口をつける。
自分が思っていた以上に話し疲れていたようだ。ぬるくなった水が喉に染み渡る。
「・・・いいや、俺の独断だ。あの二人、特に魔法使いはお前に相当入れ込んでるからな。絶対に反対するに決まってるからな」
以外にも友は正直に話した。
嘘を付いても俺が本人に確認すればすぐにバレると判断したのだろう。
この町にいる限り、俺とあの二人を合わせないようにする事など不可能だ。力づくで妨害しようにも、俺の実力を知っているだけに、簡単にいかない事は分かっているだろうからな。
「・・・そうか。なら、こうは考えないのか?仮にお前の要求が通ったとして、あの二人が俺に付いて来て、お前が一人になるとは?」
「・・・・・あ?」
友は俺が何を言っているのか分からない。
心底理解できないというように、口を開けて固まっている。
昔からこうだ。
女性関係になると、どこか抜けているのだ。
自分に都合の良いように解釈して、それが現実になると信じて疑わない。
だから何回僧侶にフラれても、恥ずかしがっているだけと決めつけて再度アタックをかける。
そのせいで最近の僧侶は、友が活躍しても遠くから控えめな拍手をするだけになった。
あの僧侶がだ。
「・・・・・お前、何言ってんだ?」
「・・・言葉通りだが?あの二人が俺に付いて来るって・・・」
「そんなわけねぇだろぉぉぉぉぉォォォォォォッツ!」
怒声とともに、今日一番の鉄槌がテーブルに叩きつけられた。
当然グラスから水は零れる。
俺は悲しくなった。
なぜ何回言っても分かってくれない?
頼むからテーブルを叩かないでくれ。
「百歩譲ってだ!魔法使いがお前に付いて行くのはまだ分かる!だがな!僧侶は絶対に俺だ!だって俺は勇者だぞ!魔王を倒す勇者は俺なんだ!だったら当然俺と来るだろうがよォォォォーッツ!」
よほど癇に障ったのだろう。
額には青筋を浮かべ目は血走っており、口の端に泡を溜めて俺を怒鳴るその形相は、人というよりもはや魔物だった。
友よ、もしやお前には魔物の血が入っているのか?
「勇者様、恐れ入りますが他のお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かに願えませんでしょうか?」
俺もどう言葉を返そうか悩んでいると、あの女性店員さんがテーブル脇に来て、控えめな口調で友にお願いし頭を下げた。
「あぁぁぁぁん!?なんだとテメェ!?」
だいぶ酒が入っていたところに、俺が地雷を踏んでしまったようで、友は一気に爆発してしまったようだ。
頭を下げている女性店員さんに対して、わざわざイスから降りて、下から顔を覗きこんで睨みを利かせている。もうチンピラにしか見えない。
「おい、もうやめろ。お前は勇者だろ?酒に酔って店に迷惑をかけるなんて恥以外なにものでもない」
「あぁぁぁぁん!?なんだとテメェ!?」
駄目だ。完全に酒に呑まれている。
標的を俺に変えると、今度は額をくっつけて睨みつけてきた。
ものすごく酒くさくて、ありえないほど近い。
俺が顔をしかめたその時、突然友の全身が淡く輝く光に包まれた。
「こ、これは・・・!」
「ふ~・・・勇者様、飲みすぎは駄目ですよ」
声の方に振り返ると、そこには聖なるタクトを友に向けた僧侶と、両手を腰に当てて、なんだか不機嫌そうな魔法使いが立っていた。
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