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17 帰り道
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俺と魔法使いは、落ち葉を拾うより先に町長の家を訪ねて事情を説明した。
深夜1時を過ぎての来訪と、その内容が広場を破壊してしまったという事だから、それは言葉で言い尽くせない程激しく怒られた。
そして俺達にはあの広場を修理する程のお金はない。
そのため賠償をどうするかという話しになり、俺は一つの提案をした。
炎の魔人を倒すと国から報奨金が出るのだ。
それを賠償に当てさせて欲しいと提案をした。
もちろん四人で討伐するのだから、全部自由にできるわけではない。
だが四等分して俺と魔法使いの分、つまり報奨金の半分を出せば、町長が今この場でざっと見積もった計算でもなんとか足りるそうだ。
それから俺と魔法使いは落ち葉拾いをして、広場に進入禁止のロープを張り、空が白ばみ始めた頃やっと帰り道についた。
「・・・ごめんなさい」
さすがに疲れと眠気もあって、俺が黙っていたのがいけなかったのだろう。
一歩後ろを歩いていた魔法使いが、気落ちした様子で俺の背中に向けて、謝罪の言葉を口にした。
「ん、あぁ・・・気にしないでいいよ。怒ってないから」
顔半分だけ振り返り、気にしていないと見せるように軽い感じで言葉を返す。
「でも、これで何が何でも炎の魔人を倒さないといけなくなったし、報奨金だって・・・あたしが悪いのに・・・」
後ろを付いて来た足音が聞こえなくなったので、俺も足を止めて振り返った。
「・・・魔法使い?」
魔法使いは下を向いていたので表情は見えないけど、少しだけ震えているように見える。
泣いているのだろうか。
「・・・本当に、ごめんなさい・・・あたし、カッとなると、いつも周りが見えなくなって・・・それで、あんたにもこんなに迷惑かけちゃって・・・あんたの分の報奨金は、何年かかってもちゃんと返すから」
「・・・だから、怒ってないって・・・迷惑かけられたとも思ってないよ。だから、本当に報奨金は気にしなくていいよ」
魔法使いに一歩近づいて、できるだけ優しく言葉をかける。
サラっと人を燃やすから、おっかない人だと思ったけど、意外と繊細なのかもしれない。
「でも、悪いよ。あんたは何も悪くないのに・・・今の落ち葉の掃除だって本当はあたし一人でやるべきなのに・・・」
なおも自分を責める魔法使いは、俺より年上だけど、ずっと小さく見えた。
「・・・本当に気にしないでいいんだ。物欲って言うのかな?俺、もう欲しい物が何も無いんだ。だからお金は、生活に必要最低限だけあればいい・・・」
「え・・・もう、欲しい物が無い?それって、どういう意味?」
戸惑った表情を見せる魔法使い。
少し、感傷的になっていたようだ・・・俺は小さく首を振った。
「・・・いや、深い意味はないよ。掃除だけど、キミを置いて一人で帰るなんてできないよ。一緒にやった方が早いだろ?もう仲間なんだから気を使わないでくれ」
そう言って笑って見せると、魔法使いは目に溜めた涙をぬぐい、ありがとう、と言って笑顔を返してくれた。
・・・すっかり朝だな。帰ってオレンジジュースでも飲まないか?
・・・あはは!あんたもすっかりオレンジにハマったみたいね?
・・・キミの宿のオレンジは、本当に美味かったからね
・・・今日は・・・あたしが、奢ってあげる・・・・・
・・・え?いいの?俺がご馳走するって話しだったんじゃ・・・
・・・うるさいわね!あんたは黙って奢られてればいいの!
・・・魔法使い
・・・なによ?
・・・優しいんだな
・・・ちょっ、あ、あんた・・・い、行くわよ!
朝日が眩しくて思わず目を細める
俺を置いて急ぎ足で前を行く魔法使いは、どこか楽しそうに見えた
深夜1時を過ぎての来訪と、その内容が広場を破壊してしまったという事だから、それは言葉で言い尽くせない程激しく怒られた。
そして俺達にはあの広場を修理する程のお金はない。
そのため賠償をどうするかという話しになり、俺は一つの提案をした。
炎の魔人を倒すと国から報奨金が出るのだ。
それを賠償に当てさせて欲しいと提案をした。
もちろん四人で討伐するのだから、全部自由にできるわけではない。
だが四等分して俺と魔法使いの分、つまり報奨金の半分を出せば、町長が今この場でざっと見積もった計算でもなんとか足りるそうだ。
それから俺と魔法使いは落ち葉拾いをして、広場に進入禁止のロープを張り、空が白ばみ始めた頃やっと帰り道についた。
「・・・ごめんなさい」
さすがに疲れと眠気もあって、俺が黙っていたのがいけなかったのだろう。
一歩後ろを歩いていた魔法使いが、気落ちした様子で俺の背中に向けて、謝罪の言葉を口にした。
「ん、あぁ・・・気にしないでいいよ。怒ってないから」
顔半分だけ振り返り、気にしていないと見せるように軽い感じで言葉を返す。
「でも、これで何が何でも炎の魔人を倒さないといけなくなったし、報奨金だって・・・あたしが悪いのに・・・」
後ろを付いて来た足音が聞こえなくなったので、俺も足を止めて振り返った。
「・・・魔法使い?」
魔法使いは下を向いていたので表情は見えないけど、少しだけ震えているように見える。
泣いているのだろうか。
「・・・本当に、ごめんなさい・・・あたし、カッとなると、いつも周りが見えなくなって・・・それで、あんたにもこんなに迷惑かけちゃって・・・あんたの分の報奨金は、何年かかってもちゃんと返すから」
「・・・だから、怒ってないって・・・迷惑かけられたとも思ってないよ。だから、本当に報奨金は気にしなくていいよ」
魔法使いに一歩近づいて、できるだけ優しく言葉をかける。
サラっと人を燃やすから、おっかない人だと思ったけど、意外と繊細なのかもしれない。
「でも、悪いよ。あんたは何も悪くないのに・・・今の落ち葉の掃除だって本当はあたし一人でやるべきなのに・・・」
なおも自分を責める魔法使いは、俺より年上だけど、ずっと小さく見えた。
「・・・本当に気にしないでいいんだ。物欲って言うのかな?俺、もう欲しい物が何も無いんだ。だからお金は、生活に必要最低限だけあればいい・・・」
「え・・・もう、欲しい物が無い?それって、どういう意味?」
戸惑った表情を見せる魔法使い。
少し、感傷的になっていたようだ・・・俺は小さく首を振った。
「・・・いや、深い意味はないよ。掃除だけど、キミを置いて一人で帰るなんてできないよ。一緒にやった方が早いだろ?もう仲間なんだから気を使わないでくれ」
そう言って笑って見せると、魔法使いは目に溜めた涙をぬぐい、ありがとう、と言って笑顔を返してくれた。
・・・すっかり朝だな。帰ってオレンジジュースでも飲まないか?
・・・あはは!あんたもすっかりオレンジにハマったみたいね?
・・・キミの宿のオレンジは、本当に美味かったからね
・・・今日は・・・あたしが、奢ってあげる・・・・・
・・・え?いいの?俺がご馳走するって話しだったんじゃ・・・
・・・うるさいわね!あんたは黙って奢られてればいいの!
・・・魔法使い
・・・なによ?
・・・優しいんだな
・・・ちょっ、あ、あんた・・・い、行くわよ!
朝日が眩しくて思わず目を細める
俺を置いて急ぎ足で前を行く魔法使いは、どこか楽しそうに見えた
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