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13 魔法使いと僧侶
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酒が進み、友もそれなりに酔いが回ってきたのだろう。
僧侶の女性にちょっと近い距離感で、色々と武勇伝などを語っており、僧侶も笑顔で相槌をうっている。すっかり二人の世界に入っている。
「ふ~ん・・・あんたはあの子を好きにならないんだ?」
それを見ていると、魔法使いの女性が俺を見ながら、意外そうにそう呟いたのだ。
「え?・・・どういう意味?」
いきなりの言葉に、俺は思った事をそのまま口にして返した。
魔法使いは軽く息を付くと、前に座る二人を確認するように顔を向ける。
俺もつられて友と僧侶に顔を向ける。
「ほら、あんたの友達見れば分かるでしょ?もうすっかりメロメロじゃない?」
言われてみると、魔法使いの指摘通りだった。
あんなににやけた顔の友は、10年来の付き合いである俺も見た事がない。
友はもてないわけではない。
勇者と分かる前でも、故郷の村で何人かの女の子と交際経験があったのは知っている。
だがそれは、女の子の方から気持ちを伝えての付き合いだった。
考えてみれば、友の方からあそこまでメロメロになってしまうのは初めてだろう。
「・・・うん。メロメロだな」
「メロメロっしょ」
俺と魔法使いは完全一致の意見を記念して、オレンジジュースで乾杯した。
「キミは、あんまり飲まないんだね?」
「オレンジジュース飲んでるじゃない?」
「いや、酒の話しで・・・」
「分かってるわよ。冗談に決まってるでしょ?」
そう言って魔法使いは、話しを流すようにプラプラと手を振った。
「あたしね、飲めないわけじゃないの。でも、飲まないようにしてるんだ」
「へぇ、どうして?」
続きを促すように言葉を向けると、魔法使いはまた正面に座る二人に目を向けた。
友は顔が真っ赤になっていて、完全に出来上がっている。
僧侶はまだそこまでではなさそうだが、目がトロンとなっていて、それなりに回っているのは分かる。
「分かるでしょ?女の二人旅で、二人とも酔い潰れちゃったらどうなると思う?」
「あぁ・・・確かに危険だね」
ならず者も多く集まる酒場で、年頃の女性二人が酔い潰れていたら、いったいどんな目にあうかなんて、考えるまでもない。
「あの子は付き合いが良いからね。周りの空気をすごい大切にするの。だから、みんなが気分良くいれるように、率先してお酒ついだりしてたでしょ?興味ない話しでも嫌な顔しないで聞くし。それで見た目も良いから、男はみんなあの子を好きになっちゃうの」
「なるほど・・・その言い方だと、俺達の前にもパーティを組んだ事あるの?」
彼女の空いたコップにオレンジジュースを注ぐ。
「あはは、あの子がお酒ついだからって、あたしにオレンジつがなくていいのに・・・え?あんた今、オレンジついだよね?ふつう空いたコップと新しいのを交換しない?あんたなにでついだの?」
「ピッチャーでもらっておいたぞ。キミ、ずっとオレンジ飲んでるから好きなんだろ?多いなら俺も飲むから頑張ろうぜ」
そう言ってオレンジジュースが並々入った巨大なピッチャーを見せると、魔法使いは手を叩いて大笑いした。
「・・・ぷっ、あっははははは!あんた何考えてんのよ!?あたし一人のためにピッチャーって!いくら好きでもこんなに飲めないわよ!」
「だから俺も飲むって」
「あははははは!頑張んなさいよ!あたしこんなにいらないから!」
魔法使いは目の前のたっぷり入ったピッチャーがどうやらツボに入ったようで、笑いが止まらなくなっている。
友は酔いつぶれてしまいテーブルに突っ伏しているが、僧侶は俺と大笑いしている魔法使いを、物珍しそうにじっと見つめていた。
僧侶の女性にちょっと近い距離感で、色々と武勇伝などを語っており、僧侶も笑顔で相槌をうっている。すっかり二人の世界に入っている。
「ふ~ん・・・あんたはあの子を好きにならないんだ?」
それを見ていると、魔法使いの女性が俺を見ながら、意外そうにそう呟いたのだ。
「え?・・・どういう意味?」
いきなりの言葉に、俺は思った事をそのまま口にして返した。
魔法使いは軽く息を付くと、前に座る二人を確認するように顔を向ける。
俺もつられて友と僧侶に顔を向ける。
「ほら、あんたの友達見れば分かるでしょ?もうすっかりメロメロじゃない?」
言われてみると、魔法使いの指摘通りだった。
あんなににやけた顔の友は、10年来の付き合いである俺も見た事がない。
友はもてないわけではない。
勇者と分かる前でも、故郷の村で何人かの女の子と交際経験があったのは知っている。
だがそれは、女の子の方から気持ちを伝えての付き合いだった。
考えてみれば、友の方からあそこまでメロメロになってしまうのは初めてだろう。
「・・・うん。メロメロだな」
「メロメロっしょ」
俺と魔法使いは完全一致の意見を記念して、オレンジジュースで乾杯した。
「キミは、あんまり飲まないんだね?」
「オレンジジュース飲んでるじゃない?」
「いや、酒の話しで・・・」
「分かってるわよ。冗談に決まってるでしょ?」
そう言って魔法使いは、話しを流すようにプラプラと手を振った。
「あたしね、飲めないわけじゃないの。でも、飲まないようにしてるんだ」
「へぇ、どうして?」
続きを促すように言葉を向けると、魔法使いはまた正面に座る二人に目を向けた。
友は顔が真っ赤になっていて、完全に出来上がっている。
僧侶はまだそこまでではなさそうだが、目がトロンとなっていて、それなりに回っているのは分かる。
「分かるでしょ?女の二人旅で、二人とも酔い潰れちゃったらどうなると思う?」
「あぁ・・・確かに危険だね」
ならず者も多く集まる酒場で、年頃の女性二人が酔い潰れていたら、いったいどんな目にあうかなんて、考えるまでもない。
「あの子は付き合いが良いからね。周りの空気をすごい大切にするの。だから、みんなが気分良くいれるように、率先してお酒ついだりしてたでしょ?興味ない話しでも嫌な顔しないで聞くし。それで見た目も良いから、男はみんなあの子を好きになっちゃうの」
「なるほど・・・その言い方だと、俺達の前にもパーティを組んだ事あるの?」
彼女の空いたコップにオレンジジュースを注ぐ。
「あはは、あの子がお酒ついだからって、あたしにオレンジつがなくていいのに・・・え?あんた今、オレンジついだよね?ふつう空いたコップと新しいのを交換しない?あんたなにでついだの?」
「ピッチャーでもらっておいたぞ。キミ、ずっとオレンジ飲んでるから好きなんだろ?多いなら俺も飲むから頑張ろうぜ」
そう言ってオレンジジュースが並々入った巨大なピッチャーを見せると、魔法使いは手を叩いて大笑いした。
「・・・ぷっ、あっははははは!あんた何考えてんのよ!?あたし一人のためにピッチャーって!いくら好きでもこんなに飲めないわよ!」
「だから俺も飲むって」
「あははははは!頑張んなさいよ!あたしこんなにいらないから!」
魔法使いは目の前のたっぷり入ったピッチャーがどうやらツボに入ったようで、笑いが止まらなくなっている。
友は酔いつぶれてしまいテーブルに突っ伏しているが、僧侶は俺と大笑いしている魔法使いを、物珍しそうにじっと見つめていた。
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