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03 三本角の鬼 ①
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あれは今から四年前、俺と友の旅も一年を過ぎ、色々な事に慣れてきて少し気が緩んでいた時期の事だった。
その日俺と友は、しばらくの滞在先として寝ぐらを借りていた村の村長から、三本角の鬼を近くで見たから退治してほしいと頼まれた。
魔王討伐の旅の途中と話してあったので、村長は俺達ならば三本角の鬼でも退治できると考えたのだろう。
しかし、三本角の鬼は身の丈250cmもあり、その体は鋼鉄のように固く、大木も片手で握り潰す程の力を持っている。
俺と友も一年でそれなりの経験を積み、強くなっている実感はあった。
実際、二本角の鬼は退治した事もある。
鬼は角の数が多い程に強い。
一本角ならば、少し剣が使える大人が数人でかかれば勝てるだろう。
二本角は俺達のように戦いに身を置き、装備もしっかり整えている戦士が2~3人いれば勝てるだろう。
だが、三本角の鬼は二本角の鬼とは全く別物で、比べ物にならない程に強いのだ。
二本角を退治したと言っても、俺も友もかなりの苦戦をしいられ、戦闘後はしばらく動けなかった程なのだ。
俺はこの村長の依頼は断ろうと思った。
ハッキリ言って、今の俺達では無理だ。
だが村長さんの後ろで、不安そうな顔をしている女の子を見て、友は、まかせてください!と依頼を快諾した。
「・・・あの三本角の鬼との事が、俺とお前のすれ違いの始まりだったんだろうな・・・」
あの日の事を思い出すと、俺はとても悲しくなる。
それは友も同じだろう。
そして、善意からだが依頼を受けてしまった事を悔やんでいる友は、その感情を押し殺す事ができなかったようだ。
「うっせぇよ!その話しはもうやめろ!」
テーブルに拳を叩きつけ、怒りに目を剥き俺を怒鳴りつけた。
その声の大きさに酒場の賑わいは止まり、店中の人達の視線が一斉に俺達に集まる。
友は、ハッとしたように壁に顔を逸らし、苛ただしげに頭を掻いている。
友がテーブルを叩いた衝撃で、つまみのナッツが皿から床に転がり落ちた。
俺は屈んでナッツを拾い集めると、白く細い綺麗な指先が俺の視界に入る。
「私がやりますから、どうぞお座りください」
先程、二回も台拭きを借りた女性店員だった。
店員さんは散らばっているナッツを右手で拾い、左手に持つ器に入れている。
「いえいえ、俺が拾います。お仕事を増やしてしまいすみません」
「そんな事ありませんよ。お酒を飲む場所ですから、このくらいはよくある事です。お気になさらないでください」
俺が謝ると、店員さんは先程と同じように、ニコリと優しい笑顔を見せてくれた。
本当に感じの良い女性だ。
ナッツ掃除が終わると女性店員は、ごゆっくり、と会釈をしてキッチンへ戻って行った。
「なぁ、他の人の迷惑になる。テーブルを叩いたり、蹴ったり、そういう事は控えてくれないか?」
他の客に騒がしくした事を詫び、俺は友へと向き直る。
「・・・チッ、うっせぇな!分かったよ!そんで、この話はまだ続けんのかよ?」
「あぁ、悪いが最後まで話しをさせてほしい」
友はそれ以上何も言わなかったので、俺は話しの続きを口にした。
その日俺と友は、しばらくの滞在先として寝ぐらを借りていた村の村長から、三本角の鬼を近くで見たから退治してほしいと頼まれた。
魔王討伐の旅の途中と話してあったので、村長は俺達ならば三本角の鬼でも退治できると考えたのだろう。
しかし、三本角の鬼は身の丈250cmもあり、その体は鋼鉄のように固く、大木も片手で握り潰す程の力を持っている。
俺と友も一年でそれなりの経験を積み、強くなっている実感はあった。
実際、二本角の鬼は退治した事もある。
鬼は角の数が多い程に強い。
一本角ならば、少し剣が使える大人が数人でかかれば勝てるだろう。
二本角は俺達のように戦いに身を置き、装備もしっかり整えている戦士が2~3人いれば勝てるだろう。
だが、三本角の鬼は二本角の鬼とは全く別物で、比べ物にならない程に強いのだ。
二本角を退治したと言っても、俺も友もかなりの苦戦をしいられ、戦闘後はしばらく動けなかった程なのだ。
俺はこの村長の依頼は断ろうと思った。
ハッキリ言って、今の俺達では無理だ。
だが村長さんの後ろで、不安そうな顔をしている女の子を見て、友は、まかせてください!と依頼を快諾した。
「・・・あの三本角の鬼との事が、俺とお前のすれ違いの始まりだったんだろうな・・・」
あの日の事を思い出すと、俺はとても悲しくなる。
それは友も同じだろう。
そして、善意からだが依頼を受けてしまった事を悔やんでいる友は、その感情を押し殺す事ができなかったようだ。
「うっせぇよ!その話しはもうやめろ!」
テーブルに拳を叩きつけ、怒りに目を剥き俺を怒鳴りつけた。
その声の大きさに酒場の賑わいは止まり、店中の人達の視線が一斉に俺達に集まる。
友は、ハッとしたように壁に顔を逸らし、苛ただしげに頭を掻いている。
友がテーブルを叩いた衝撃で、つまみのナッツが皿から床に転がり落ちた。
俺は屈んでナッツを拾い集めると、白く細い綺麗な指先が俺の視界に入る。
「私がやりますから、どうぞお座りください」
先程、二回も台拭きを借りた女性店員だった。
店員さんは散らばっているナッツを右手で拾い、左手に持つ器に入れている。
「いえいえ、俺が拾います。お仕事を増やしてしまいすみません」
「そんな事ありませんよ。お酒を飲む場所ですから、このくらいはよくある事です。お気になさらないでください」
俺が謝ると、店員さんは先程と同じように、ニコリと優しい笑顔を見せてくれた。
本当に感じの良い女性だ。
ナッツ掃除が終わると女性店員は、ごゆっくり、と会釈をしてキッチンへ戻って行った。
「なぁ、他の人の迷惑になる。テーブルを叩いたり、蹴ったり、そういう事は控えてくれないか?」
他の客に騒がしくした事を詫び、俺は友へと向き直る。
「・・・チッ、うっせぇな!分かったよ!そんで、この話はまだ続けんのかよ?」
「あぁ、悪いが最後まで話しをさせてほしい」
友はそれ以上何も言わなかったので、俺は話しの続きを口にした。
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