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こ、こいつ、なんだその右手は?
このオーラ、初めて見るが魔法や魔道具の類じゃねぇ。感じられるプレッシャーが一気に強くなるし、実際このオーラがあるのと無いので、パワーもスピードもだいぶ変わりやがる。
だが弱点もある。あまり長くは持たないみたいだ。途中でへばったのかオーラが消えたら、そのとたん息が上がりやがった。一時的な身体能力の上昇、それがこのオーラの力ってところだろう。
もう限界だと思ったんだが、まさかまだ出せるとは思わなかった。
しかも右手にだけオーラを集中させたってのか?とんでもねぇプレッシャーだ。
「受けてみろ!レオンクローーーーーーーーッツ!」
レイマートの闘気に気圧され、それまで果敢に攻めていたバージルの足が止まった時、レイマートは地面を蹴ってバージルに飛び掛かった。
全闘気を集中させた右手は、獲物を狩る獅子の爪のように指を立てられていた。
その指先はバージルの首ではなく、的の大きい胴体に向けられており、レイマートは叫び声を上げて必殺のレオンクローを繰り出した!
「ッ!」
バージルが己が失態に気付いた時には、すでにレイマートは地面を蹴っていた。
しまった!こいつのオーラに一瞬だが目を奪われた!どこだ!?どこにくる!?
首、いやこの軌道は腹だ!身長差を考えれば顔面への攻撃は腕を伸ばす分、浅くなりやすい。
腹を狙うって事は、こいつはこの一発を確実に入れる気だって事だ。当然普通なら腕でガードされる事を計算に入れるだろうが、このオーラの爪はダメだ!こいつは腕で防げるものじゃねぇ!
先手を取られた分一手遅れちまってる。反撃は間に合わねぇし、防御もできねぇ攻撃だってんなら、あとは躱すしかねぇ!
地面を後ろに蹴って体をのけ反らすと、弧を描くレイマートの右腕の範囲から、バージルの体が離れて行く。それでも完全に攻撃の範囲外に抜け出せたわけではない。後手に回ってしまった分、このままレイマートが右腕を振り抜けば、バージルの腹部に爪が当たる事は当たる。だがそれはかなり浅い。
深紅の鎧を斬り裂いたとしても、肉体へのダメージは、せいぜい薄皮一枚を斬られた程度のものだろう。
残念だったな、一瞬ヒヤリとさせられたが、この間合いならてめぇの攻撃は届かねぇぞ。
当たってもぜいぜい深紅の鎧を削るくらいだ。
そしてこれだけのオーラをかき集めての攻撃なんだ、平気な振りをしているが、これを外せばテメェも終わりなんだろ?
この一撃を躱したら、てめぇにはこの俺がトドメをくれてやるぜ!
ニヤリと笑うバーシルを見て、レイマートは嘲るように口の端を持ち上げて笑い返した。
へっ、馬鹿が!てめぇの考えなんざお見通しなんだよ!
確かにこのまま振り抜いても、てめぇにダメージは与えられねぇだろうな。
だがな、俺のレオンクローは闘気で斬り裂く技だ。放出する闘気が大きければ大きい程、爪もまた大きさを増していく。これがどういう意味か分かるか?
「オォォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
レイマートが声を張り上げると、右手に纏う闘気の爪も、その大きさを一回り以上増した。
そしてそれは、後ろに飛んだバージルの体にも十分に届く。
「な、にィィィィィッツ!?」
目を見開くバージル。
「終わりだ、死ね」
もはや距離を詰める必要はない。
腹どころか上半身が斬り飛ばされそうなくらい、巨大な闘気の爪が振り抜かれた!
くっ!ま、まずい!これは駄目だ!絶対にくらったら駄目だ!
だがどうする!?この体勢じゃ躱せねぇ、防御もできねぇ!くらえば死ぬ!
迫りくる闘気の爪を前にして、バージルの脳内では思考が超高速で駆け巡った。
回避は不可能。防御も不可能。では防ぐ方法はないのか?
いいや、一つだけある・・・だが、これをやるには覚悟がいる。
うまくいく保証はないし、自殺するようなものかもしれない。
だがやらねば絶対に死ぬ。どうする?いや、迷っている場合ではない!
「なにッ!?」
回避にしろ防御にしろ、それはレイマートが想定した行動のどれでもなかった。
「ぐっ!うがぁぁぁーーーーーーーッツ!」
鋭い痛みとともに、バージルの左腕が肩口から斬り飛ばされた。
バージルのとった選択は、回避でも防御でもなく体当たりだった。
着地と同時に腹筋を使い、力で体を前に起こす。そのままレイマートのレオンクローに自らぶつかっていった。
バージルは左腕を犠牲にしてレイマートの懐に入り、命だけは守り抜いた。
距離を取るのではなく詰める。さらに自ら腕を差し出す事で、レイマートの攻撃範囲を制限したのだ。
そして覚悟があれば痛みには耐えられる。
左腕を斬り飛ばされる痛みは想像を絶していたが、覚悟を持っていたバージルは痛みに屈する事なく、次の行動を起こしていた。
「ぐがァッツ!」
レイマートの懐に潜りこんだバージルはそのまま頭を突き上げて、レイマートの顔面を打ち付けた!
野郎、あそこで前に出てくるだと!?こいつ不意打ちだけじゃねぇ!
土壇場で覚悟を決められる気迫がある!
鼻が潰され、血を吹き散らされる。
顔面への強烈な一撃によって、レイマートは条件反射で一瞬だが目を瞑ってしまった。
このレベルの戦いでは、一瞬でも相手から注意を外せば、次の瞬間に殺されてもおかしくない。
だがレイマートが次に目を開けた時、すでにバージルの姿は無かった。
「ぐっ、はぁ・・・ぜぇ・・・野郎、逃げやがったか・・・」
潰された鼻からボタボタと落ちる血をぬぐい、レイマートは口に入った血液混じりの唾を吐き捨てた。
腕一本を失ったバージルは、頭突きからの追撃を選ばず、この場からの離脱を選択した。
頭突きによってレイマートは一瞬だが両目を閉じた。バージルがその気ならば、もう一発拳を叩き込む事は可能だった。だがバージルが選んだ選択は逃走である。
いくら力に自信があっても、もう一発拳を叩き込んで決着がつく保証はない。
大量出血している中、戦闘を長引かせるわけにはいかない。
それにあれだけの深手を与えたのだ。しばらくは回復に専念せざるをえないだろう。
生き延びればいずれまた相まみえる事もあるはずだ。
「はぁ・・・ふぅ・・・俺も、限界だ」
一度大きく息をつくと、レイマートはその場にどかりと腰を下ろした。
「アルベルトさん・・・俺はちょっと休むんで、あとは頼みます」
このオーラ、初めて見るが魔法や魔道具の類じゃねぇ。感じられるプレッシャーが一気に強くなるし、実際このオーラがあるのと無いので、パワーもスピードもだいぶ変わりやがる。
だが弱点もある。あまり長くは持たないみたいだ。途中でへばったのかオーラが消えたら、そのとたん息が上がりやがった。一時的な身体能力の上昇、それがこのオーラの力ってところだろう。
もう限界だと思ったんだが、まさかまだ出せるとは思わなかった。
しかも右手にだけオーラを集中させたってのか?とんでもねぇプレッシャーだ。
「受けてみろ!レオンクローーーーーーーーッツ!」
レイマートの闘気に気圧され、それまで果敢に攻めていたバージルの足が止まった時、レイマートは地面を蹴ってバージルに飛び掛かった。
全闘気を集中させた右手は、獲物を狩る獅子の爪のように指を立てられていた。
その指先はバージルの首ではなく、的の大きい胴体に向けられており、レイマートは叫び声を上げて必殺のレオンクローを繰り出した!
「ッ!」
バージルが己が失態に気付いた時には、すでにレイマートは地面を蹴っていた。
しまった!こいつのオーラに一瞬だが目を奪われた!どこだ!?どこにくる!?
首、いやこの軌道は腹だ!身長差を考えれば顔面への攻撃は腕を伸ばす分、浅くなりやすい。
腹を狙うって事は、こいつはこの一発を確実に入れる気だって事だ。当然普通なら腕でガードされる事を計算に入れるだろうが、このオーラの爪はダメだ!こいつは腕で防げるものじゃねぇ!
先手を取られた分一手遅れちまってる。反撃は間に合わねぇし、防御もできねぇ攻撃だってんなら、あとは躱すしかねぇ!
地面を後ろに蹴って体をのけ反らすと、弧を描くレイマートの右腕の範囲から、バージルの体が離れて行く。それでも完全に攻撃の範囲外に抜け出せたわけではない。後手に回ってしまった分、このままレイマートが右腕を振り抜けば、バージルの腹部に爪が当たる事は当たる。だがそれはかなり浅い。
深紅の鎧を斬り裂いたとしても、肉体へのダメージは、せいぜい薄皮一枚を斬られた程度のものだろう。
残念だったな、一瞬ヒヤリとさせられたが、この間合いならてめぇの攻撃は届かねぇぞ。
当たってもぜいぜい深紅の鎧を削るくらいだ。
そしてこれだけのオーラをかき集めての攻撃なんだ、平気な振りをしているが、これを外せばテメェも終わりなんだろ?
この一撃を躱したら、てめぇにはこの俺がトドメをくれてやるぜ!
ニヤリと笑うバーシルを見て、レイマートは嘲るように口の端を持ち上げて笑い返した。
へっ、馬鹿が!てめぇの考えなんざお見通しなんだよ!
確かにこのまま振り抜いても、てめぇにダメージは与えられねぇだろうな。
だがな、俺のレオンクローは闘気で斬り裂く技だ。放出する闘気が大きければ大きい程、爪もまた大きさを増していく。これがどういう意味か分かるか?
「オォォォォォォォーーーーーーーーーーッツ!」
レイマートが声を張り上げると、右手に纏う闘気の爪も、その大きさを一回り以上増した。
そしてそれは、後ろに飛んだバージルの体にも十分に届く。
「な、にィィィィィッツ!?」
目を見開くバージル。
「終わりだ、死ね」
もはや距離を詰める必要はない。
腹どころか上半身が斬り飛ばされそうなくらい、巨大な闘気の爪が振り抜かれた!
くっ!ま、まずい!これは駄目だ!絶対にくらったら駄目だ!
だがどうする!?この体勢じゃ躱せねぇ、防御もできねぇ!くらえば死ぬ!
迫りくる闘気の爪を前にして、バージルの脳内では思考が超高速で駆け巡った。
回避は不可能。防御も不可能。では防ぐ方法はないのか?
いいや、一つだけある・・・だが、これをやるには覚悟がいる。
うまくいく保証はないし、自殺するようなものかもしれない。
だがやらねば絶対に死ぬ。どうする?いや、迷っている場合ではない!
「なにッ!?」
回避にしろ防御にしろ、それはレイマートが想定した行動のどれでもなかった。
「ぐっ!うがぁぁぁーーーーーーーッツ!」
鋭い痛みとともに、バージルの左腕が肩口から斬り飛ばされた。
バージルのとった選択は、回避でも防御でもなく体当たりだった。
着地と同時に腹筋を使い、力で体を前に起こす。そのままレイマートのレオンクローに自らぶつかっていった。
バージルは左腕を犠牲にしてレイマートの懐に入り、命だけは守り抜いた。
距離を取るのではなく詰める。さらに自ら腕を差し出す事で、レイマートの攻撃範囲を制限したのだ。
そして覚悟があれば痛みには耐えられる。
左腕を斬り飛ばされる痛みは想像を絶していたが、覚悟を持っていたバージルは痛みに屈する事なく、次の行動を起こしていた。
「ぐがァッツ!」
レイマートの懐に潜りこんだバージルはそのまま頭を突き上げて、レイマートの顔面を打ち付けた!
野郎、あそこで前に出てくるだと!?こいつ不意打ちだけじゃねぇ!
土壇場で覚悟を決められる気迫がある!
鼻が潰され、血を吹き散らされる。
顔面への強烈な一撃によって、レイマートは条件反射で一瞬だが目を瞑ってしまった。
このレベルの戦いでは、一瞬でも相手から注意を外せば、次の瞬間に殺されてもおかしくない。
だがレイマートが次に目を開けた時、すでにバージルの姿は無かった。
「ぐっ、はぁ・・・ぜぇ・・・野郎、逃げやがったか・・・」
潰された鼻からボタボタと落ちる血をぬぐい、レイマートは口に入った血液混じりの唾を吐き捨てた。
腕一本を失ったバージルは、頭突きからの追撃を選ばず、この場からの離脱を選択した。
頭突きによってレイマートは一瞬だが両目を閉じた。バージルがその気ならば、もう一発拳を叩き込む事は可能だった。だがバージルが選んだ選択は逃走である。
いくら力に自信があっても、もう一発拳を叩き込んで決着がつく保証はない。
大量出血している中、戦闘を長引かせるわけにはいかない。
それにあれだけの深手を与えたのだ。しばらくは回復に専念せざるをえないだろう。
生き延びればいずれまた相まみえる事もあるはずだ。
「はぁ・・・ふぅ・・・俺も、限界だ」
一度大きく息をつくと、レイマートはその場にどかりと腰を下ろした。
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