上 下
1,245 / 1,277

1244 正体を暴く一撃

しおりを挟む
「す、すごい!さすがゴールド騎士だ!」
「闘気が爆裂弾を消し飛ばしている!すげぇ!いけるぞ!」
「アルベルト様とレイマート様に続け!姿が見えなくても敵は必ずそこにいるんだ!」

アルベルトとレイマート。ゴールド騎士の二人はその闘気によって、帝国軍の爆裂弾を完全に無効化していた。何発、何十発撃たれようと、光り輝く闘気は爆裂弾を通さなかった。闘気に触れた瞬間にそこで爆ぜて終わりである。

二人の突撃はクインズベリー軍の士気を高めた。
姿の見えない敵による攻撃に防戦一方になっていたが、一騎当千と呼ばれるゴールド騎士が先陣を切って道を作った事で、一気に反撃へと転じたのである。

雪の山中を駆け上がる二人の後ろからは、直属の第一騎士団と第二騎士団が続く。
その先頭に立つのは、シルバー騎士の序列三位、エクトール・エドワーズである。

エクトールもレイマートと同じく、一度パウンド・フォーで闇蛇との戦いを経験しており、ゴールド騎士には及ばないものの、闘気を扱う事ができる。
今回はアルベルトの補佐として、第一騎士団の副団長に任命された男である。

本来であれば、副団長はシルバー騎士筆頭のラヴァル・レミューの役目だった。
だがクインズベリー国に残る騎士達の総括のため、レミューは国に残る事になった。そこで役目が回ってきたのが体力型としてレミューに次ぐ実力者、エクトール・エドワーズだった。


そしてもう一人、レイマートの補佐として、第二騎士団の副団長に抜擢されたのが、シルバー騎士序列二位である、フィル・マティアスである。

フィル・マティアスも、レイマート達やエクトールと一緒にパウンド・フォーで闇蛇と戦った男である。
魔法使いとしての技量はもちろん、パウンド・フォーでに戦闘経験を評価されて、第二騎士団副団長に選ばれた男である。
フィルは黒魔法使いであり、魔法使いの少ない騎士団では、魔法使いは魔法騎士と呼ばれている。

そして第二騎士団は、全員ではないが魔法騎士を中心に構成されている。
体力型を中心に構成されている第一騎士団の後ろについて、フィル達第二騎士団も上を目指して山を駆けた。

高まる士気と、迷う事なく山を駆け上がっていく騎士団を見て、カルロス・フォスターは号令をかけた。

「クインズベリー軍第一部隊、第二部隊も突撃だ!先陣を切った騎士団に続け!敵の姿が見えずとも恐れるな!ゴールド騎士のアルベルトとレイマートが道を示す!」

アルベルトとレイマートが道を作り、そこを騎士団とクインズベリー軍が続いて駆け上がって行く。山の戦いで地形の有利と不利は承知の上。魔法での応戦ができないのならば接近戦あるのみ!





・・・青魔法使いのサーチでは、200メートル以内に敵の反応をがあったという事だ。だがここまで登っても影一つ見えない。やはり何らかの方法、おそらく魔道具で姿を消しているという事か。

山を駆け上がりながら、アルベルトは思考を張り巡らせた。
自分に向けて撃たれる爆裂弾は、全て闘気で消し飛ばしている。斬りかかられても、並の剣では通さないだろう。今は闘気が盾となり鎧となってこの身を護っているが、闘気は体力を消耗する。いつまでも出し続けていられるわけではない。
青魔法使いの結界だって同じである。爆裂弾を受け続けている分、消耗は早い。
後ろに続く部下や兵達のためにも、謎は一刻も早く解かねばならない。



「面倒くせぇな・・・」

アルベルトのとなりを走りながら、レイマートはぼそりと呟いた。
闘気によって防いでいるが、こうして山を駆け上がりながらも、何発もの爆裂弾が撃ち込まれたからだ。更に何かが結界を打ち付けてくる。それも闘気が防いでいるが、闘気を通して伝わる衝撃から、それが剣や槍による物理攻撃だと感じ取った。

「つまり、剣が届く距離に敵がいるってわけか・・・だったら!」

強く地面を蹴って飛び上がると、アルベルトを追い越して一人、足場の整った平らな地面に着地した。

「サーチで反応があったのはここら辺だったな・・・こそこそ隠れてんじゃねぇぞ!」

闘気が大きく膨れ上がる。それにともない足元の雪が巻き上げられ、レイマートを中心に突風が吹き荒ぶ。そして闘気を纏った剣を、横一線に振り抜いた。
振り抜かれた剣から発する衝撃波が、周囲に強烈な圧を叩きつける!


「・・・へぇ、種が分かれば単純なもんじゃねぇか?」

剣を振り抜いたレイマートは、目に映る光景にニヤリと口の端を持ち上げた。





「バージル副団長・・・残念なお知らせがあります。ゴールド騎士のクソ野郎が、早くも私のブレンドに気が付いたようです」

栗色の髪を三つ編みに結った女は、隣に立つバージル・ビジェラに、不満気な声で状況を伝えた。
年齢は二十代前半くらいだろう。帝国軍を表す赤い刺繍をあしらったローブを身に纏っている。自分の魔道具が想定より早く見破られた事に苛立っているようだ。

「おう、どうやらそうみてぇだな?ここからでも分かるぜ、あの光がゴールド騎士だろ?周囲の景色に同化するお前の魔道具、ブレンドの特性にこんなに早く気付くとはな・・・ちょっと舐めてたかもしれねぇな」

身長2メートルのバージルは、自分より30センチは低い、三つ編みの女魔法使いを見下ろして言葉を返した。

「まぁ・・・接近戦が始まればどうせ分かる事ですから、いいんですけどね。でも私の予想では、少なくともあと十分は時間を稼げるはずでした。こんなに早く接近戦を決断するなんて、敵にもなかなかの指揮官がいるようですね」

「クインズベリーは戦力を二手に分けた。こっちには軍団副長のカルロス・フォスターが来ている。ヤツの指示なのか、ゴールド騎士の判断なのか、どっちにしても面倒だよな・・・・・確認だがトリッシュ、お前のブレンドは、魔力の粒子が半分以上取れれば効果を無くすんだよな?」

バージルは自分の体を確認するように、手の平や足を見ながら話した。

「はい。正確には一割以上取れれば少しづつ効果を無くしていきます。二割以上で薄っすら見えてきます。三割で半透明って感じですね。五割以上粒子が取れたら効果は消えます。そして粒子は結構簡単に取れます。あのゴールド騎士の一発で、けっこうな人数がモロバレになってますよね。あ、それと同じ粒子をかぶっているから、帝国兵同士はこの通り見えますよ」

ジロリと向けた冷たい視線の先には、帝国兵と戦うゴールド騎士、レイマート・ハイランドが映っていた。

「なるほど、分かった。それで十分だ。それなら俺達の勝ちだ」

バージルはニヤリと笑うと、トリッシュを置いて前線に向かって歩き出した。

「あれ?バージル副団長、どこに行くんです?」

「ああ、ちょっくらゴールド騎士をぶち殺してくるわ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...