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1232 中間地点へ
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翌日の早朝、起床したレイジェスのメンバーを集めると、レイチェルは金髪の魔道剣士と並んで前に立った。
そして昨晩の話し合いを説明しながら、新たな仲間を紹介した。
「そう言うわけで、魔道剣士ラクエル・エンリケスだ。彼女は正式に私達と行動を共にして、帝国と戦う事になった。みんな、よろしく頼む」
ラクエルはレイチェルに手を差し向けられると、右手を顔の横で軽く振り、ニコニコと笑って自己紹介を始めた。
「どもども、魔道剣士のラクエルです。一応昨日全員と顔は合わせてるし、一緒に戦った人もいるから、細かい事はいいよね?そう言うわけでよろしくー」
お気に入りの赤いカーディガンは昨日の戦いで着れなくなってしまったため、今朝は黒いタートルネックの上に、白いファーコートを着ている。
明るく軽い調子で話すラクエルに、レイジェスのメンバー達もクスリと笑ってしまい空気が和む。
昨日一緒に戦った事もあり、全員がラクエルを快く受け入れた。
それからそれぞれが言葉を交わしてお互いの理解を深めていたところで、朝食の時間になった。
「ラクエル、中間地点まで行ったらレイジェスは二手に分かれる事になるんだが、キミはどっちに行きたいか希望はあるか?」
配給のパンとスープを受け取ると、それぞれが適当な場所に腰をかけてソレを口にする。
平らな岩に並んで座り、レイチェルがラクエルに話しを向けると、ラクエルは口に含んだスープを飲み込み、視線を空に向けて答えた。
「ん~・・・パウンド・フォーと、ユナニマス大川だったよね?じゃあアタシはユナニマス大川に行かせてもらおうかな。いい?」
「ああ、希望を聞いているんだからもちろんだ。それに元々戦力は均等に分けられているから、キミがどちらかに行く事で偏りが出る事もない。だが・・・なんでユナニマス大川なんだ?全く考える事なく決めたように見えるが」
提示された二択に対してラクエルは即答した。
どちらに行ってほしいのか?どっちに行った方が自分の力が生きるのか?
それぞれの地の利や敵の特徴など、何一つ聞かずに決めたという事は、ラクエルにはユナニマス大川を選んだ明確な理由があるのだろう。レイチェルはそう考えた。
「まぁね・・・ユナニマス大川を護ってるのが帝国軍第六師団で、師団長がシャンテル・ガードナーなんでしょ?」
食事の手を止めると、ラクエルはレイチェルに顔を向けて、じっとその目を見つめて問いかけた。
「ああ、そうだが・・・ラクエル、知ってるのか?」
普段の軽い調子からは想像もつかないくらい真っすぐな目を向けられ、レイチェルも口調が真剣みを帯びる。
ラクエルの口から帝国の師団長、シャンテル・ガードナーの名前が出てくるとは思わなかった。
シャンテル・ガードナー。
帝国軍第六師団長にして、白魔法兵団団長。そして戦闘に一番不向きな白魔法使いでありながら、帝国で一番人間を殺した女・・・
ラクエルのこの目・・・間違いない、ラクエルはシャンテル・ガードナーを知っている。
「・・・うん、知ってる。アタシね、あいつに聞かなきゃならない事があるんだ」
・・・・・まさか帝国の師団長になってるとは思わなかった。
続く言葉はとても冷たく・・・そして深い悲しみが感じられた。
朝食を終えると、クインズベリー軍は中間地点に向かって行進を始めた。
時刻は午前八時を少し回ったところだった。空は晴れやかで足の進みは良い。
これまでの遅れを全て取り返せるわけではないが、少なくとも今日の行軍はスムーズなものだろう。
西の山脈パウンド・フォー。北のユナニマス大川。中間地点に着いたらそこを拠点として、軍は二手に分かれる事になる。
現在軍に同行している二人の王子は中間地点に残り、物資の補給や情報の伝達を指揮し、周辺の治安を維持するために力を揮(ふる)っていく。
「よぉ、レイチェル、大活躍じゃねぇか」
ダークブラウンのボディアーマーを身に着け、気安い口調で話しかけてきたボウズ頭の男は、治安部隊隊長のヴァン・エストラーダだった。
「ヴァン、王子の警護はいいのか?さぼってるんじゃないぞ」
ヴァンは本来なら、隊の前方で王子の周囲を警戒しているはずである。
それが一番後ろに並ぶレイジェスのところまで来たため、レイチェルはたしなめるように言葉を返した。
「ああ、それなら心配いらない。周辺を探ったが敵の気配は無いし、フェンテスが付いている」
自然とレイチェルの隣に並び、歩調を合わせて歩き始める。
「セドコン村には軍から何人か残る事になった。これから国に状況の報告をして、今後の管理について色々決めていく事になるだろう」
「そうか・・・せっかく奪還したが、半壊させてしまったからな。大活躍なんて皮肉もいいところだぞ?」
「クックック、だが見方を変えればあの闇と闘って、村が半壊程度で済んだんだぞ?大活躍だと思うがな。まぁいい、それよりお前のところに新しく入った女だが、ずいぶん腕が立つみたいだな?」
本題だと言うように、ヴァンの口調が変わった。どうやら突然現れて村の奪還に尽力した人間に興味が湧いたらしい。
「ラクエルの事か、あいつは強いぞ。純粋な体術なら私と互角だ。それに魔道剣士とやらは引き出しが多いらしい。セドコン村でも、予想もしない攻撃手段を見せてくれた。中間地点からはユナニマス大川に行くぞ。確かお前達もそうだったよな?」
「ああ、俺達治安部隊はユナニマス大川に行く。ラクエルか・・・お前達の接し方を見てれば信用できそうだし、お前と互角なら戦力として申し分ないな。分かった」
聞きたい事を聞けて納得したヴァンは、そろそろ行くな、と言って前列に戻っていった。
「・・・もうすぐだな」
ヴァンの後ろ姿を見送って、レイチェルは小さく呟いた。
もうすぐ軍の中間地点に着く。そこで戦力を半分に分けて、北と西の攻略に当たる事になる。
それは事前に決めた通り、レイジェスのメンバーも半分に分かれてである。
考えないようにしていたが、仲間達全員が無事に帰ってこれる保証などどこにもない。
ここからは帝国も師団長が出てくるのだ。戦いは一層厳しさを増す事だろう。
またみんなと一緒にレイジェスで・・・・・
そっと目を閉じてささやかに願う。
それからクインズベリー軍は、何度かの休憩を挟みながら行進を続けた。
そして夕刻に差し掛かった頃、軍の中間地点に到着した。
そして昨晩の話し合いを説明しながら、新たな仲間を紹介した。
「そう言うわけで、魔道剣士ラクエル・エンリケスだ。彼女は正式に私達と行動を共にして、帝国と戦う事になった。みんな、よろしく頼む」
ラクエルはレイチェルに手を差し向けられると、右手を顔の横で軽く振り、ニコニコと笑って自己紹介を始めた。
「どもども、魔道剣士のラクエルです。一応昨日全員と顔は合わせてるし、一緒に戦った人もいるから、細かい事はいいよね?そう言うわけでよろしくー」
お気に入りの赤いカーディガンは昨日の戦いで着れなくなってしまったため、今朝は黒いタートルネックの上に、白いファーコートを着ている。
明るく軽い調子で話すラクエルに、レイジェスのメンバー達もクスリと笑ってしまい空気が和む。
昨日一緒に戦った事もあり、全員がラクエルを快く受け入れた。
それからそれぞれが言葉を交わしてお互いの理解を深めていたところで、朝食の時間になった。
「ラクエル、中間地点まで行ったらレイジェスは二手に分かれる事になるんだが、キミはどっちに行きたいか希望はあるか?」
配給のパンとスープを受け取ると、それぞれが適当な場所に腰をかけてソレを口にする。
平らな岩に並んで座り、レイチェルがラクエルに話しを向けると、ラクエルは口に含んだスープを飲み込み、視線を空に向けて答えた。
「ん~・・・パウンド・フォーと、ユナニマス大川だったよね?じゃあアタシはユナニマス大川に行かせてもらおうかな。いい?」
「ああ、希望を聞いているんだからもちろんだ。それに元々戦力は均等に分けられているから、キミがどちらかに行く事で偏りが出る事もない。だが・・・なんでユナニマス大川なんだ?全く考える事なく決めたように見えるが」
提示された二択に対してラクエルは即答した。
どちらに行ってほしいのか?どっちに行った方が自分の力が生きるのか?
それぞれの地の利や敵の特徴など、何一つ聞かずに決めたという事は、ラクエルにはユナニマス大川を選んだ明確な理由があるのだろう。レイチェルはそう考えた。
「まぁね・・・ユナニマス大川を護ってるのが帝国軍第六師団で、師団長がシャンテル・ガードナーなんでしょ?」
食事の手を止めると、ラクエルはレイチェルに顔を向けて、じっとその目を見つめて問いかけた。
「ああ、そうだが・・・ラクエル、知ってるのか?」
普段の軽い調子からは想像もつかないくらい真っすぐな目を向けられ、レイチェルも口調が真剣みを帯びる。
ラクエルの口から帝国の師団長、シャンテル・ガードナーの名前が出てくるとは思わなかった。
シャンテル・ガードナー。
帝国軍第六師団長にして、白魔法兵団団長。そして戦闘に一番不向きな白魔法使いでありながら、帝国で一番人間を殺した女・・・
ラクエルのこの目・・・間違いない、ラクエルはシャンテル・ガードナーを知っている。
「・・・うん、知ってる。アタシね、あいつに聞かなきゃならない事があるんだ」
・・・・・まさか帝国の師団長になってるとは思わなかった。
続く言葉はとても冷たく・・・そして深い悲しみが感じられた。
朝食を終えると、クインズベリー軍は中間地点に向かって行進を始めた。
時刻は午前八時を少し回ったところだった。空は晴れやかで足の進みは良い。
これまでの遅れを全て取り返せるわけではないが、少なくとも今日の行軍はスムーズなものだろう。
西の山脈パウンド・フォー。北のユナニマス大川。中間地点に着いたらそこを拠点として、軍は二手に分かれる事になる。
現在軍に同行している二人の王子は中間地点に残り、物資の補給や情報の伝達を指揮し、周辺の治安を維持するために力を揮(ふる)っていく。
「よぉ、レイチェル、大活躍じゃねぇか」
ダークブラウンのボディアーマーを身に着け、気安い口調で話しかけてきたボウズ頭の男は、治安部隊隊長のヴァン・エストラーダだった。
「ヴァン、王子の警護はいいのか?さぼってるんじゃないぞ」
ヴァンは本来なら、隊の前方で王子の周囲を警戒しているはずである。
それが一番後ろに並ぶレイジェスのところまで来たため、レイチェルはたしなめるように言葉を返した。
「ああ、それなら心配いらない。周辺を探ったが敵の気配は無いし、フェンテスが付いている」
自然とレイチェルの隣に並び、歩調を合わせて歩き始める。
「セドコン村には軍から何人か残る事になった。これから国に状況の報告をして、今後の管理について色々決めていく事になるだろう」
「そうか・・・せっかく奪還したが、半壊させてしまったからな。大活躍なんて皮肉もいいところだぞ?」
「クックック、だが見方を変えればあの闇と闘って、村が半壊程度で済んだんだぞ?大活躍だと思うがな。まぁいい、それよりお前のところに新しく入った女だが、ずいぶん腕が立つみたいだな?」
本題だと言うように、ヴァンの口調が変わった。どうやら突然現れて村の奪還に尽力した人間に興味が湧いたらしい。
「ラクエルの事か、あいつは強いぞ。純粋な体術なら私と互角だ。それに魔道剣士とやらは引き出しが多いらしい。セドコン村でも、予想もしない攻撃手段を見せてくれた。中間地点からはユナニマス大川に行くぞ。確かお前達もそうだったよな?」
「ああ、俺達治安部隊はユナニマス大川に行く。ラクエルか・・・お前達の接し方を見てれば信用できそうだし、お前と互角なら戦力として申し分ないな。分かった」
聞きたい事を聞けて納得したヴァンは、そろそろ行くな、と言って前列に戻っていった。
「・・・もうすぐだな」
ヴァンの後ろ姿を見送って、レイチェルは小さく呟いた。
もうすぐ軍の中間地点に着く。そこで戦力を半分に分けて、北と西の攻略に当たる事になる。
それは事前に決めた通り、レイジェスのメンバーも半分に分かれてである。
考えないようにしていたが、仲間達全員が無事に帰ってこれる保証などどこにもない。
ここからは帝国も師団長が出てくるのだ。戦いは一層厳しさを増す事だろう。
またみんなと一緒にレイジェスで・・・・・
そっと目を閉じてささやかに願う。
それからクインズベリー軍は、何度かの休憩を挟みながら行進を続けた。
そして夕刻に差し掛かった頃、軍の中間地点に到着した。
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