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1229 感謝と悲しみの涙
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「アラタくん!」
レイジェスの戦士達がセドコン村から帰還すると、カチュアがアラタの名前を呼びながら駆け寄って来た。
カチュアはアラタと一緒にセドコン村の入り口まで行ったが、倒れたニーディア・エスパーザの治療のため村へは入らず、先に軍に戻っていたのだ。
「カチュア、ただいま」
「おかえりなさい、アラタくん・・・すごく疲れてるみたいだけど、大丈夫?あの闇を払うために、また光の力を使ったんでしょ?」
セドコン村を闇が覆った時、カチュアは理解した。なぜアラタがあれほど村に行こうとしたのかを。
レイチェルに任せておけと言われたのに、嫌な予感がすると言って強引に軍を出て追いかけたのは、この闇を感じ取っていたからなのだと。
「うん、いつも心配ばかりかけてごめん。でも、今回は自力で歩けるくらいには体力も残ってるよ」
「ううん、私はアラタ君が無事ならそれでいいの。ちゃんと帰って来てくれたから、私は大丈夫だよ」
ニコリと笑うカチュアを見て、アラタはしばし疲れを忘れる事ができるくらい心が温かくなった。
帰りを待ってくれる人がいる。それだけで頑張れる。そう心から思えた。
心配ばかりかけている事への申し訳なさはある。
だからこそこれからの戦いも、必ず生き残ってみせると固く心に誓ったのだった。
それからレイチェル達も帰りを待っていた仲間達に囲まれ、無事を喜ぶ声をかけられていると、青いローブを着た長い茶髪の女性が、木製の杖を手にしながら近づいて来た。
「・・・レイジェスのみなさん・・・」
それはカチュアからヒールで治療を受けたニーディアだった。
カチュアが治療を施した後もニーディアが目を覚まさなかったため、軍の白魔法使い達にニーディアを任せていたのだ。外傷こそ無かったが、強い魔力を浴びせられて意識を失っていたため、目覚めるには時間がかかると思われていた。だがどうやら無事に起きられたようだ。
レイチェルやジャレット、レイジェスのメンバー達がニーディアに顔を向けると、カチュアが前に進み出た。
「ニーディアさん、もう大丈夫なんですか?どこか痛みませんか?」
体を気遣うカチュアに、ニーディアはニコリと微笑んで見せる。
「レイジェスの白魔法使いカチュアさん。あなたが私を治療してくれたと聞いたわ。本当にありがとう」
「え!そ、そんな、頭を上げてください、誰だって倒れている人を放っておけませんよ。私は当たり前の事をしただけです」
深々と頭を下げるニーディアにカチュアが慌てたように言葉をかけると、ニーディアはゆっくりと顔を上げた。その表情はとても寂し気で、カチュアは言葉を詰まらせた。
「・・・村に行く前に、私達はあなた方を軽視するような態度を取っていたわ・・・・・それなのに、私は命を救ってもらったし、仲間の仇まで討ってもらった。どれだけ言葉を尽くしても・・・感謝しきれない・・・う、うう・・・・・」
話しながらニーディアの目には大粒の涙が浮かび、そして零れ落ちた。
仲間達の仇が討てた事で、ニーディアは自分の心に一つの区切りを付ける事はできた。
けれど仲間達が帰ってくるわけではない。将来を期待された若手として、よくチーム組んでいた。心の内を打ち明けられるくらい信頼関係があった。
ラゴフ・・・クレイグ・・・エリクス・・・・・
自分だけが生き残ってしまった。
その悲しみはすぐに癒えるものではない。
「ニーディアさん・・・」
肩を震わせて涙を流すニーディアの背中を、カチュアは優しく撫でる。
「・・・ニーディアと言ったな?」
話しを聞いていたアゲハが、一歩前に出てニーディアの顔を見る。
名前を問われてニーディアが頷くと、アゲハはニーディアの腕に優しく手を触れた。
「私はアゲハ・シンジョウだ。私の体にはカエストゥスの血が流れている。戦う目的は滅ぼされた祖国の復讐のためだ。200年も前の事と思うかもしれないが、風の精霊を通して感じたんだ。かつて帝国に殺された同郷の人々の恐怖や悲しみをな。私の先祖も帝国との戦いで命を失った・・・」
ニーディアは黙ってアゲハの話しに耳を傾けた。
アゲハはかつての戦争の当事者ではない。けれど口にする言葉には深い悲しみが感じられ、ニーディアの心に強く響いた。
「気持ちが分かるとは言わない。一緒にチームを組んでいた大切な仲間なんだろ。今はいっぱい泣けばいい・・・そして涙が枯れたら、その時立ち上がればいいさ」
そう言って抱き寄せて胸を貸すと、緊張の糸が切れたように、ニーディアは声を上げて泣いた。
今はとても悲しくて辛い
心が張り裂けそうだ
けれどこの涙が少しでも傷を癒してくれたなら
その時はもう一度・・・・・
もう一度立ち上がってみよう
レイジェスの戦士達がセドコン村から帰還すると、カチュアがアラタの名前を呼びながら駆け寄って来た。
カチュアはアラタと一緒にセドコン村の入り口まで行ったが、倒れたニーディア・エスパーザの治療のため村へは入らず、先に軍に戻っていたのだ。
「カチュア、ただいま」
「おかえりなさい、アラタくん・・・すごく疲れてるみたいだけど、大丈夫?あの闇を払うために、また光の力を使ったんでしょ?」
セドコン村を闇が覆った時、カチュアは理解した。なぜアラタがあれほど村に行こうとしたのかを。
レイチェルに任せておけと言われたのに、嫌な予感がすると言って強引に軍を出て追いかけたのは、この闇を感じ取っていたからなのだと。
「うん、いつも心配ばかりかけてごめん。でも、今回は自力で歩けるくらいには体力も残ってるよ」
「ううん、私はアラタ君が無事ならそれでいいの。ちゃんと帰って来てくれたから、私は大丈夫だよ」
ニコリと笑うカチュアを見て、アラタはしばし疲れを忘れる事ができるくらい心が温かくなった。
帰りを待ってくれる人がいる。それだけで頑張れる。そう心から思えた。
心配ばかりかけている事への申し訳なさはある。
だからこそこれからの戦いも、必ず生き残ってみせると固く心に誓ったのだった。
それからレイチェル達も帰りを待っていた仲間達に囲まれ、無事を喜ぶ声をかけられていると、青いローブを着た長い茶髪の女性が、木製の杖を手にしながら近づいて来た。
「・・・レイジェスのみなさん・・・」
それはカチュアからヒールで治療を受けたニーディアだった。
カチュアが治療を施した後もニーディアが目を覚まさなかったため、軍の白魔法使い達にニーディアを任せていたのだ。外傷こそ無かったが、強い魔力を浴びせられて意識を失っていたため、目覚めるには時間がかかると思われていた。だがどうやら無事に起きられたようだ。
レイチェルやジャレット、レイジェスのメンバー達がニーディアに顔を向けると、カチュアが前に進み出た。
「ニーディアさん、もう大丈夫なんですか?どこか痛みませんか?」
体を気遣うカチュアに、ニーディアはニコリと微笑んで見せる。
「レイジェスの白魔法使いカチュアさん。あなたが私を治療してくれたと聞いたわ。本当にありがとう」
「え!そ、そんな、頭を上げてください、誰だって倒れている人を放っておけませんよ。私は当たり前の事をしただけです」
深々と頭を下げるニーディアにカチュアが慌てたように言葉をかけると、ニーディアはゆっくりと顔を上げた。その表情はとても寂し気で、カチュアは言葉を詰まらせた。
「・・・村に行く前に、私達はあなた方を軽視するような態度を取っていたわ・・・・・それなのに、私は命を救ってもらったし、仲間の仇まで討ってもらった。どれだけ言葉を尽くしても・・・感謝しきれない・・・う、うう・・・・・」
話しながらニーディアの目には大粒の涙が浮かび、そして零れ落ちた。
仲間達の仇が討てた事で、ニーディアは自分の心に一つの区切りを付ける事はできた。
けれど仲間達が帰ってくるわけではない。将来を期待された若手として、よくチーム組んでいた。心の内を打ち明けられるくらい信頼関係があった。
ラゴフ・・・クレイグ・・・エリクス・・・・・
自分だけが生き残ってしまった。
その悲しみはすぐに癒えるものではない。
「ニーディアさん・・・」
肩を震わせて涙を流すニーディアの背中を、カチュアは優しく撫でる。
「・・・ニーディアと言ったな?」
話しを聞いていたアゲハが、一歩前に出てニーディアの顔を見る。
名前を問われてニーディアが頷くと、アゲハはニーディアの腕に優しく手を触れた。
「私はアゲハ・シンジョウだ。私の体にはカエストゥスの血が流れている。戦う目的は滅ぼされた祖国の復讐のためだ。200年も前の事と思うかもしれないが、風の精霊を通して感じたんだ。かつて帝国に殺された同郷の人々の恐怖や悲しみをな。私の先祖も帝国との戦いで命を失った・・・」
ニーディアは黙ってアゲハの話しに耳を傾けた。
アゲハはかつての戦争の当事者ではない。けれど口にする言葉には深い悲しみが感じられ、ニーディアの心に強く響いた。
「気持ちが分かるとは言わない。一緒にチームを組んでいた大切な仲間なんだろ。今はいっぱい泣けばいい・・・そして涙が枯れたら、その時立ち上がればいいさ」
そう言って抱き寄せて胸を貸すと、緊張の糸が切れたように、ニーディアは声を上げて泣いた。
今はとても悲しくて辛い
心が張り裂けそうだ
けれどこの涙が少しでも傷を癒してくれたなら
その時はもう一度・・・・・
もう一度立ち上がってみよう
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