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1226 激突
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「ア、ラ・・・タ・・・っ!」
地面に倒れ伏しているレイチェルは、その強烈な重圧によって言葉を発する事はできなかった。
最初に受けたモノよりもはるかに重い。指先を動かす事さえできない程のとてつもない威力だった。
しかしレイチェルは見た。僅かに開いた瞼から、光を纏う黒髪の男を。
ハビエルのこのとてつもない闇に呑まれず、真向から対峙している。
キミってヤツは・・・待ってろと言ったのに・・・
だけどこいつの闇に打ち勝つには、アラタ、キミの光しかないだろう。
いけアラタ!キミの力を見せてやれ!
レイチェルはこの場に駆けつけた、光の力を持つ仲間に全てを託して祈った。
「・・・その闇を見れば分かる。お前を倒せば全て解決ってわけだな」
一人言のように呟くと、アラタは右足を一歩後ろへ引き、左足を前に出した。
両の拳は軽く握り、右拳は目線の高さで、左拳はやや前に出して構える。
目の前にいる男は左の肩から先を喪失している。傷口からはおびただしい量の出血をしており、身に纏う深紅のローブもボロボロに切り刻まれている。深刻なダメージを抱えている事は一目で分かった。
おそらくさっきのあの攻撃だ。
距離はあったがハッキリと見えた。風の上級魔法、トルネード・バーストに似ているがまるで別物だった。
離れていても、ものすごい冷気が肌に刺さったし、風に混じった氷で肌が切られそうになった、
向かい合うこの男の、その背中に広がる抉られた大地、なぎ倒された樹々、破壊された家屋を見れば、あれがどれほどの破壊力だったのかは十分に想像できる。
あれは風魔法と氷魔法を合わせたんだ、合成魔法・・・ミゼルさんは完成させていたんだ。
しかしどれだけダメージを負っていても、この男はレイチェル達をまとめて倒した強敵である。
もっと慎重に挑まなければならないはずだ。だが不思議と気負いは無く、平常心のまま向かい合う事ができた。
これはきっと、今も自分を護ってくれているこの光のおかげなのだろう。
戦いには相性がある。
体術だけならば自分はレイチェルには適わない。百回やって百回負けるだろう。
しかし相手が闇であるならば、他の誰よりも自分が最適である。
「・・・貴様、俺の闇を恐れていないようだな?その光・・・そうか、それが闇に対抗できる理由か?赤毛の女も似たような光を出していたが、性質はずいぶん異なるようだな?」
ハビエル・フェルトゥザは、レイチェル達へ止めは刺さずに、目の前で光を纏う男、サカキアラタに向き直った。
ハビエルもまた感じ取っていた。
この光を纏った男こそ、この戦いにおける最大の敵であると。
この体から発している闇は、同じ空間にいるだけでも少なくないプレッシャーを与えるものだが、この光を纏う男にはまるで影響が見られない。間違いなくこの光の力によるものだろう。
「レイチェルの闘気の事か?似ているが違う。俺の力は光、闇を倒すための力だ」
そう答えると、アラタの体から発せられる光が力強さを増した。
それは周囲を取り囲む闇を吹き飛ばす程に強く、暗闇に包まれていた空間を大きく照らし出す。
「お前は俺が倒す」
確固たる意志をその目に宿し、アラタの闘志が燃え上がった。
アラタの光によって、その体から発する闇が押され出す。
このまま光が大きくなれば、村を覆う闇さえ吹き飛ばしてしまうだろう。真正面から自分に対抗する力をぶつけてくる男に、ハビエルの表情が変わった。
「・・・なるほど、闇を倒す力と言うだけの事はある。貴様の光には確かに闇を払う力があるようだ。だがな、逆もまた然(しか)りだぞ」
左肩の傷口を押さえる右手を離すと、ハビエルは拳を握り締め、天に向かって叫び声を上げた。
「グオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッツ!」
腹の奥底から怒りも憎しみも何もかも、全てを吐き出すような絶叫とともに、内に宿した膨大なる闇が解き放たれる。
光りが闇を払うのならば、闇が光を呑み込む事も然り。
アラタの光が闇を吹き飛ばさんと押していたが、再び闇が光を覆い始める。
「ッ!こ、この圧力は!?」
想像していた以上の闇の圧に、アラタは思わず後ずさりしそうになった。
少しでも気を抜くと、一気に飲み込まれてしまいそうだ。
これほどの闇なら、レイチェル達が倒されてしまった事も無理はないだろう。
光の力を持たない人間が、闇に抗う術はないのだから。
「これでも耐えるか!面白い!まさかここまで闇に抗える人間がいたとはな!俺達の戦いは今日ここで貴様を潰すためにあったようだ!俺達の名誉のために、俺達の勝利のためにその光を消してやるぞ!」
「ぐぅっ!お、俺は負けない!闇に世界を支配なんて絶対にさせない!仲間達のためにも、この世界に光を取り戻すためにも、お前の闇を消してやる!」
せめぎ合う光と闇の中で、アラタもハビエルも理解した。
ここで全てが決まると・・・
長かったこの戦いに、ついに決着の時が来た。
地面に倒れ伏しているレイチェルは、その強烈な重圧によって言葉を発する事はできなかった。
最初に受けたモノよりもはるかに重い。指先を動かす事さえできない程のとてつもない威力だった。
しかしレイチェルは見た。僅かに開いた瞼から、光を纏う黒髪の男を。
ハビエルのこのとてつもない闇に呑まれず、真向から対峙している。
キミってヤツは・・・待ってろと言ったのに・・・
だけどこいつの闇に打ち勝つには、アラタ、キミの光しかないだろう。
いけアラタ!キミの力を見せてやれ!
レイチェルはこの場に駆けつけた、光の力を持つ仲間に全てを託して祈った。
「・・・その闇を見れば分かる。お前を倒せば全て解決ってわけだな」
一人言のように呟くと、アラタは右足を一歩後ろへ引き、左足を前に出した。
両の拳は軽く握り、右拳は目線の高さで、左拳はやや前に出して構える。
目の前にいる男は左の肩から先を喪失している。傷口からはおびただしい量の出血をしており、身に纏う深紅のローブもボロボロに切り刻まれている。深刻なダメージを抱えている事は一目で分かった。
おそらくさっきのあの攻撃だ。
距離はあったがハッキリと見えた。風の上級魔法、トルネード・バーストに似ているがまるで別物だった。
離れていても、ものすごい冷気が肌に刺さったし、風に混じった氷で肌が切られそうになった、
向かい合うこの男の、その背中に広がる抉られた大地、なぎ倒された樹々、破壊された家屋を見れば、あれがどれほどの破壊力だったのかは十分に想像できる。
あれは風魔法と氷魔法を合わせたんだ、合成魔法・・・ミゼルさんは完成させていたんだ。
しかしどれだけダメージを負っていても、この男はレイチェル達をまとめて倒した強敵である。
もっと慎重に挑まなければならないはずだ。だが不思議と気負いは無く、平常心のまま向かい合う事ができた。
これはきっと、今も自分を護ってくれているこの光のおかげなのだろう。
戦いには相性がある。
体術だけならば自分はレイチェルには適わない。百回やって百回負けるだろう。
しかし相手が闇であるならば、他の誰よりも自分が最適である。
「・・・貴様、俺の闇を恐れていないようだな?その光・・・そうか、それが闇に対抗できる理由か?赤毛の女も似たような光を出していたが、性質はずいぶん異なるようだな?」
ハビエル・フェルトゥザは、レイチェル達へ止めは刺さずに、目の前で光を纏う男、サカキアラタに向き直った。
ハビエルもまた感じ取っていた。
この光を纏った男こそ、この戦いにおける最大の敵であると。
この体から発している闇は、同じ空間にいるだけでも少なくないプレッシャーを与えるものだが、この光を纏う男にはまるで影響が見られない。間違いなくこの光の力によるものだろう。
「レイチェルの闘気の事か?似ているが違う。俺の力は光、闇を倒すための力だ」
そう答えると、アラタの体から発せられる光が力強さを増した。
それは周囲を取り囲む闇を吹き飛ばす程に強く、暗闇に包まれていた空間を大きく照らし出す。
「お前は俺が倒す」
確固たる意志をその目に宿し、アラタの闘志が燃え上がった。
アラタの光によって、その体から発する闇が押され出す。
このまま光が大きくなれば、村を覆う闇さえ吹き飛ばしてしまうだろう。真正面から自分に対抗する力をぶつけてくる男に、ハビエルの表情が変わった。
「・・・なるほど、闇を倒す力と言うだけの事はある。貴様の光には確かに闇を払う力があるようだ。だがな、逆もまた然(しか)りだぞ」
左肩の傷口を押さえる右手を離すと、ハビエルは拳を握り締め、天に向かって叫び声を上げた。
「グオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッツ!」
腹の奥底から怒りも憎しみも何もかも、全てを吐き出すような絶叫とともに、内に宿した膨大なる闇が解き放たれる。
光りが闇を払うのならば、闇が光を呑み込む事も然り。
アラタの光が闇を吹き飛ばさんと押していたが、再び闇が光を覆い始める。
「ッ!こ、この圧力は!?」
想像していた以上の闇の圧に、アラタは思わず後ずさりしそうになった。
少しでも気を抜くと、一気に飲み込まれてしまいそうだ。
これほどの闇なら、レイチェル達が倒されてしまった事も無理はないだろう。
光の力を持たない人間が、闇に抗う術はないのだから。
「これでも耐えるか!面白い!まさかここまで闇に抗える人間がいたとはな!俺達の戦いは今日ここで貴様を潰すためにあったようだ!俺達の名誉のために、俺達の勝利のためにその光を消してやるぞ!」
「ぐぅっ!お、俺は負けない!闇に世界を支配なんて絶対にさせない!仲間達のためにも、この世界に光を取り戻すためにも、お前の闇を消してやる!」
せめぎ合う光と闇の中で、アラタもハビエルも理解した。
ここで全てが決まると・・・
長かったこの戦いに、ついに決着の時が来た。
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