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1219 愛する男の腕の中で
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しくじっった・・・まさか、手の平からも蔦を出せるなんて・・・・・
いや、これは私の読みのあまさ、ノエルの蔦にできる事を、決めつけてしまった事が招いた結果だ。
隠し持った武器がある事くらい、可能性として頭に入れておくべきだったんだ・・・・・
刺し貫かれた腹が焼かれるように熱い。脳天にまで突き刺さる激痛に襲われて声も出ない。
そして全身にかかる重圧によって地面に圧し潰されながら、私は自分の考えの甘さを痛感していた。
「あらあら、そんなに顔を歪めるなんて本当に苦しいのね、でも安心して。今楽にしてあげるわ」
痛みと重圧で顔を上げる事はできなかったが、ノエルが私に手の平を向けた事は、風の動きで感じられた。
おそらく蔦で止めを刺そうとしているのだろう。
・・・ここまでか?・・・私はここまでなのか?・・・こんなところで死ぬのか?
なんのために今日まで生きて来た?かつてカエストゥスで散っていった同胞の想いを継ぎ、カエストゥスの誇りを、そして美しい風を取り戻すために戦ってきたんだろう!
立て!まだ私は戦える!立つんだアゲハ!
「ぐっ!うぐぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッツ」
地面に潰されながら声を張り上げた。両手で土を掴み、力を振り絞る。
力を入れた分、穴の開いた腹部から血が流れ出るがかまいやしない。どの道ここで立たなければ死ぬんだ。
「ぐっ・・・うぅ・・・っ!」
歯を食いしばり気力を振り絞る。
致命傷と言ってもいい深手を負っているにも関わらず、アゲハは驚異的な精神力で上半身を持ち上げた。
今抗わなければ死ぬ。
死を目の前に突きつけられた事で、精神が肉体の限界を超えた力を引き出した。
しかし、アゲハに抗う事ができたのはそこまでだった。
圧し潰されそうな体を起こし、顔を上げたアゲハの眼に映ったのは、死を告げるノエルの眼差しだった。
「・・・アゲハさん、あなた本当にすごいわ。その体でハビエルの空量眼にそこまで抗えるなんて。でも残念、私の方が早いわよ」
ノエルの紫色の瞳が冷たく光り、アゲハに向けた右手に魔力が集中する。
一瞬の後にこれは解き放たれるだろう。それはつまり、蔦の槍がアゲハを貫くという事。
「もう、眠りなさ・・・っ!」
アゲハに止めを刺そうとしたその時、ノエルの視界は信じられないものを映した。
絶対の強者であるはずのハビエル。
その眼が放つ重圧は、何人であろうと地面に圧し潰し無力化させるものだった。
しかしハビエルと対峙する赤毛の女戦士は持ちこたえていた。
上半身を曲げ、膝を折り、かろうじて耐えているようではあるが、それでも潰されずに立っていた。
ハビエルの力を知っているノエルからすれば、とても信じられない光景だった。
驚きのあまり、アゲハへ撃つ蔦を止めてしまう程だった。
そして続く場面に、ノエルは考えるよりも先に走っていた。
赤毛の女戦士レイチェルが、ナイフを構えてハビエルにぶつかっていった。
一度でレイチェルを潰せなかったハビエルは、より強い魔力を込めて再び空量眼を発動させるが、先手をとって動いたレイチェルの方が早かった。
二人の距離は一歩で詰められる程近い。レイチェルの体当たりを、魔法使いのハビエルに躱せるはずもない。
「ウォォォォォォーーーーーーーーーーーッツ!」
「し、しまッ・・・!?」
闘気を全開にし、この一撃に全てを懸けたレイチェルの執念が、ハビエル・フェルトゥザを上回った・・・・・そう思われた。
「・・・・・な、に?」
予想外の事態に、レイチェルは目を見開いた。
肉を斬り裂き、刃先が深くめり込む感触が手に伝わってくる。そう、レイチェルのナイフは、確かにその胸に突き刺さっていた。
ハビエルではなく、ノエルの胸に・・・・・
「うッ・・・ぐ・・・・・ゲホッ!」
胸に走る強烈な痛み。せり上がってきたものを吐き出すと、地面に赤い色がついた。血である。
考えて動いたわけではない。ソレが眼に入った時、考えるよりも先に動いていたのだ。
「・・・ノ、ノエ・・・ル?」
あの瞬間・・・・・赤毛の女戦士のナイフが刺さる。
駄目だ、これは到底かわせないし、防ぐ事もできそうにない。
受け入れるしかないのか?ハビエルが覚悟を決めたその時・・・
「お前・・・なんで・・・」
ノエル・メレイシアが自分を庇って、レイチェルの前に飛び出していた。
「・・・ハ・・・ハビ、エル・・・・・に、逃げて・・・・・」
振り返って顔を見る事もできず、ノエルはその場に崩れ落ちた。
「ノ、ノエルッ!」
両手でしっかりとノエルの体を受け止め、ハビエルは必死にその名を呼び続けた。
「ノエル!どうして俺の前に立った!?どうして俺をかばった!?こ、こんな、事・・・・・」
声が震える・・・目に映る現実を受け入れる事ができない。
「・・・ハビ、エル・・・・・け、ケガは、ない・・・?あの時・・・助けてくれたから・・・今度は、私が・・・」
「・・・ノエル・・・お前、まだそんな事・・・・・」
「ハビエル・・・・・わたし・・・わたし、ね・・・・・」
愛してるわ・・・ハビエル・・・・・
最後に穏やかな笑みを浮かべると、ノエルの首が力なく折れた。
愛する男の腕の中で、女は息を引き取った。
「・・・・・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーッツ!」
喉が張り裂けそうな程の絶叫と共に、ハビエル・フェルトゥザの体からドス黒い闇が噴き出した
いや、これは私の読みのあまさ、ノエルの蔦にできる事を、決めつけてしまった事が招いた結果だ。
隠し持った武器がある事くらい、可能性として頭に入れておくべきだったんだ・・・・・
刺し貫かれた腹が焼かれるように熱い。脳天にまで突き刺さる激痛に襲われて声も出ない。
そして全身にかかる重圧によって地面に圧し潰されながら、私は自分の考えの甘さを痛感していた。
「あらあら、そんなに顔を歪めるなんて本当に苦しいのね、でも安心して。今楽にしてあげるわ」
痛みと重圧で顔を上げる事はできなかったが、ノエルが私に手の平を向けた事は、風の動きで感じられた。
おそらく蔦で止めを刺そうとしているのだろう。
・・・ここまでか?・・・私はここまでなのか?・・・こんなところで死ぬのか?
なんのために今日まで生きて来た?かつてカエストゥスで散っていった同胞の想いを継ぎ、カエストゥスの誇りを、そして美しい風を取り戻すために戦ってきたんだろう!
立て!まだ私は戦える!立つんだアゲハ!
「ぐっ!うぐぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッツ」
地面に潰されながら声を張り上げた。両手で土を掴み、力を振り絞る。
力を入れた分、穴の開いた腹部から血が流れ出るがかまいやしない。どの道ここで立たなければ死ぬんだ。
「ぐっ・・・うぅ・・・っ!」
歯を食いしばり気力を振り絞る。
致命傷と言ってもいい深手を負っているにも関わらず、アゲハは驚異的な精神力で上半身を持ち上げた。
今抗わなければ死ぬ。
死を目の前に突きつけられた事で、精神が肉体の限界を超えた力を引き出した。
しかし、アゲハに抗う事ができたのはそこまでだった。
圧し潰されそうな体を起こし、顔を上げたアゲハの眼に映ったのは、死を告げるノエルの眼差しだった。
「・・・アゲハさん、あなた本当にすごいわ。その体でハビエルの空量眼にそこまで抗えるなんて。でも残念、私の方が早いわよ」
ノエルの紫色の瞳が冷たく光り、アゲハに向けた右手に魔力が集中する。
一瞬の後にこれは解き放たれるだろう。それはつまり、蔦の槍がアゲハを貫くという事。
「もう、眠りなさ・・・っ!」
アゲハに止めを刺そうとしたその時、ノエルの視界は信じられないものを映した。
絶対の強者であるはずのハビエル。
その眼が放つ重圧は、何人であろうと地面に圧し潰し無力化させるものだった。
しかしハビエルと対峙する赤毛の女戦士は持ちこたえていた。
上半身を曲げ、膝を折り、かろうじて耐えているようではあるが、それでも潰されずに立っていた。
ハビエルの力を知っているノエルからすれば、とても信じられない光景だった。
驚きのあまり、アゲハへ撃つ蔦を止めてしまう程だった。
そして続く場面に、ノエルは考えるよりも先に走っていた。
赤毛の女戦士レイチェルが、ナイフを構えてハビエルにぶつかっていった。
一度でレイチェルを潰せなかったハビエルは、より強い魔力を込めて再び空量眼を発動させるが、先手をとって動いたレイチェルの方が早かった。
二人の距離は一歩で詰められる程近い。レイチェルの体当たりを、魔法使いのハビエルに躱せるはずもない。
「ウォォォォォォーーーーーーーーーーーッツ!」
「し、しまッ・・・!?」
闘気を全開にし、この一撃に全てを懸けたレイチェルの執念が、ハビエル・フェルトゥザを上回った・・・・・そう思われた。
「・・・・・な、に?」
予想外の事態に、レイチェルは目を見開いた。
肉を斬り裂き、刃先が深くめり込む感触が手に伝わってくる。そう、レイチェルのナイフは、確かにその胸に突き刺さっていた。
ハビエルではなく、ノエルの胸に・・・・・
「うッ・・・ぐ・・・・・ゲホッ!」
胸に走る強烈な痛み。せり上がってきたものを吐き出すと、地面に赤い色がついた。血である。
考えて動いたわけではない。ソレが眼に入った時、考えるよりも先に動いていたのだ。
「・・・ノ、ノエ・・・ル?」
あの瞬間・・・・・赤毛の女戦士のナイフが刺さる。
駄目だ、これは到底かわせないし、防ぐ事もできそうにない。
受け入れるしかないのか?ハビエルが覚悟を決めたその時・・・
「お前・・・なんで・・・」
ノエル・メレイシアが自分を庇って、レイチェルの前に飛び出していた。
「・・・ハ・・・ハビ、エル・・・・・に、逃げて・・・・・」
振り返って顔を見る事もできず、ノエルはその場に崩れ落ちた。
「ノ、ノエルッ!」
両手でしっかりとノエルの体を受け止め、ハビエルは必死にその名を呼び続けた。
「ノエル!どうして俺の前に立った!?どうして俺をかばった!?こ、こんな、事・・・・・」
声が震える・・・目に映る現実を受け入れる事ができない。
「・・・ハビ、エル・・・・・け、ケガは、ない・・・?あの時・・・助けてくれたから・・・今度は、私が・・・」
「・・・ノエル・・・お前、まだそんな事・・・・・」
「ハビエル・・・・・わたし・・・わたし、ね・・・・・」
愛してるわ・・・ハビエル・・・・・
最後に穏やかな笑みを浮かべると、ノエルの首が力なく折れた。
愛する男の腕の中で、女は息を引き取った。
「・・・・・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーッツ!」
喉が張り裂けそうな程の絶叫と共に、ハビエル・フェルトゥザの体からドス黒い闇が噴き出した
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