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1218 ノエルの微笑み
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自らを光の弾としてハビエルに特攻したレイチェル。
味方ながらその凄まじい力に圧倒されそうになる。頼もしさと同時に恐ろしさを持つ、それが私の持つレイチェルの印象だ。
・・・・・負けてられないな。
私もこの身に宿す風を全開にして地面を蹴った。この身を包む緑色の風は、私の体の底から力を引き出してくれるようだ。この体に流れるカエストゥスの血が、風の精霊と共鳴しているのだろう。
「ウオォォォォォォーーーーーーーーッツ!」
レイチェルが光の弾なら私は風の剣だ!ノエルの蔦もハビエルの圧も斬り裂いてやる!
自分の背丈よりも長い得物を握り締め、緑の風の剣と化したアゲハがノエルにぶつかって行った!
すごい力ね・・・アゲハさん、あなた帝国にいた頃より強くなってるんじゃない?
その風を見れば分かるわ、あなたの覚悟・・・私と刺し違える事も厭(いと)わないと、そこまで強く気持ちを固めているのね。
あなたの覚悟、私にも分かるわ。私もハビエルのためなら、あなたと同じ気持ちで戦えるから。
だからね、あなたはここで殺すわ。ハビエルに刃を向けるのなら、誰であろうと許さない。
自らを風に変えた体当たり、私にはとても躱しきれるものではないわ。
でもね、私は魔力量なら師団長にも負けないって自信があるの。
私のありったけの魔力を込めた蔦なら負けない!あなたがどれだけの力で向かって来ようと・・・
「潰してあげるわッ!」
ノエル・メレイシアの紫色の眼が鋭さを帯びると、全身から溢れ出す魔力が勢いをました。
足元から上昇気流の如く立ち昇るソレは、ノエルの長い薄紫色の髪を逆立たせる。そして轟音と共に地面が揺れたと感じた瞬間、何本もの巨大な蔦が一斉に地面を突き破って飛び出して来た!
でかいッ!
ソレが目に入った瞬間、アゲハの脳裏に浮かんだ最初の言葉だった。
アゲハの体など軽く隠れるであろう大きさのソレは、もはや蔦と呼んでいいのか分からない程だった。
先は鋭く尖り、槍をもイメージをさせる。話しに聞いたノエルの蔦は、体に巻き付いて地面に引きずり込むというものだったが、これはもう突き刺す事を目的としている。
地面を突き破って突出してきた破壊力を考えれば、生身で防御などできるはずもない。
しかし、己の胸に迫り来る巨大な蔦の槍を目にして、アゲハはニヤリと笑った。
・・・これがノエル・メレイシアの本気って事だね?確かにすごいよ、大木だって貫きそうな鋭さだ。
でもね、私の風はこの程度じゃ・・・・・
「止められないんだよォォォーーーーーーーッツ!」
横一線に振るった薙刀は、その身を覆い隠す程に巨大な蔦を一文字に斬り裂いた!
「ハァァァァァーーーーーーーーッツ!」
続く第二、第三の蔦を、返す刃で斬り飛ばす!
次々と襲い来る巨大な蔦も、アゲハの振るう薙刀の前に全てが斬り落とされる!
「そ、そんな!?」
ノエルは驚きに目を見開いた。
全魔力を込めた蔦だ。大岩を砕き、巨木をへし折る事だって造作もない。
それほどの破壊力を持った蔦が、こうもあっさりと斬って捨てられるなど想像だにしなかった。
予想外の事態を目の当たりにし、ノエルの思考が一瞬止まる。それは1秒にも満たない刹那の時を争う戦いでは、致命的な隙となった。
「私の風に斬れないものはない」
ノエルの攻撃が止まったほんの一瞬の間隙を、アゲハは見逃さなかった。
精霊の風を纏った刃で目の前の全ての蔦を斬り払い、薙刀の刃が届く距離まで一気に踏み込んだ。
我が身を護る蔦さえ斬り払われては、もはやノエルに抵抗する術など無い。
「終わりだ。ノエル・メレイシ・・・ッ!?」
アゲハはこのまま真っすぐ薙刀を突き出し、ノエルの胸を貫けばいい。
それで勝利となる・・・はずだった。
「ふふふ、本当にすごいわアゲハさん。でもね、相手の魔道具が見えない時は、もう少し警戒するべきよ。私の魔道具は蔦だけど、どこからどうやって出していたと思う?地面に魔力を流して使うのはその通りだけど、元となる蔦はどこから出ていたと思う?」
微笑みながら話しを続けるノエルの右手の平からは、先の鋭く尖った蔦が真っすぐに伸びていた。
「ぐっ・・・う、がふっ!」
吐き出した血が地面に赤い色をつける。
ノエルの蔦はアゲハの腹を突き破り、背中まで抜けていた。
「正解は御覧の通り私の体の中よ。蔦は体内に埋め込む魔道具なの。だからこうやって手の平からも出せるのよ。まぁ、これは奥の手だから普通は見せないわ。私にこれを使わせたんだから、アゲハさんは本当に優秀だわ。誉めてあげる」
「ぐっ・・・う、こ、この・・・・・ぐッツ!?」
震える両手に力を入れて、落としそうになった得物を握り直す!
そしてクスクスと笑うノエルに向かって、刃を向けようとしたその時、凄まじい重圧が全身に圧し掛かった。
ハビエルの空量眼によって地面に圧し潰されたアゲハを見下ろし、ノエルはにこやかに微笑んだ。
「アゲハさん、そうやって地面に這いつくばってるの、とってもお似合いよ」
味方ながらその凄まじい力に圧倒されそうになる。頼もしさと同時に恐ろしさを持つ、それが私の持つレイチェルの印象だ。
・・・・・負けてられないな。
私もこの身に宿す風を全開にして地面を蹴った。この身を包む緑色の風は、私の体の底から力を引き出してくれるようだ。この体に流れるカエストゥスの血が、風の精霊と共鳴しているのだろう。
「ウオォォォォォォーーーーーーーーッツ!」
レイチェルが光の弾なら私は風の剣だ!ノエルの蔦もハビエルの圧も斬り裂いてやる!
自分の背丈よりも長い得物を握り締め、緑の風の剣と化したアゲハがノエルにぶつかって行った!
すごい力ね・・・アゲハさん、あなた帝国にいた頃より強くなってるんじゃない?
その風を見れば分かるわ、あなたの覚悟・・・私と刺し違える事も厭(いと)わないと、そこまで強く気持ちを固めているのね。
あなたの覚悟、私にも分かるわ。私もハビエルのためなら、あなたと同じ気持ちで戦えるから。
だからね、あなたはここで殺すわ。ハビエルに刃を向けるのなら、誰であろうと許さない。
自らを風に変えた体当たり、私にはとても躱しきれるものではないわ。
でもね、私は魔力量なら師団長にも負けないって自信があるの。
私のありったけの魔力を込めた蔦なら負けない!あなたがどれだけの力で向かって来ようと・・・
「潰してあげるわッ!」
ノエル・メレイシアの紫色の眼が鋭さを帯びると、全身から溢れ出す魔力が勢いをました。
足元から上昇気流の如く立ち昇るソレは、ノエルの長い薄紫色の髪を逆立たせる。そして轟音と共に地面が揺れたと感じた瞬間、何本もの巨大な蔦が一斉に地面を突き破って飛び出して来た!
でかいッ!
ソレが目に入った瞬間、アゲハの脳裏に浮かんだ最初の言葉だった。
アゲハの体など軽く隠れるであろう大きさのソレは、もはや蔦と呼んでいいのか分からない程だった。
先は鋭く尖り、槍をもイメージをさせる。話しに聞いたノエルの蔦は、体に巻き付いて地面に引きずり込むというものだったが、これはもう突き刺す事を目的としている。
地面を突き破って突出してきた破壊力を考えれば、生身で防御などできるはずもない。
しかし、己の胸に迫り来る巨大な蔦の槍を目にして、アゲハはニヤリと笑った。
・・・これがノエル・メレイシアの本気って事だね?確かにすごいよ、大木だって貫きそうな鋭さだ。
でもね、私の風はこの程度じゃ・・・・・
「止められないんだよォォォーーーーーーーッツ!」
横一線に振るった薙刀は、その身を覆い隠す程に巨大な蔦を一文字に斬り裂いた!
「ハァァァァァーーーーーーーーッツ!」
続く第二、第三の蔦を、返す刃で斬り飛ばす!
次々と襲い来る巨大な蔦も、アゲハの振るう薙刀の前に全てが斬り落とされる!
「そ、そんな!?」
ノエルは驚きに目を見開いた。
全魔力を込めた蔦だ。大岩を砕き、巨木をへし折る事だって造作もない。
それほどの破壊力を持った蔦が、こうもあっさりと斬って捨てられるなど想像だにしなかった。
予想外の事態を目の当たりにし、ノエルの思考が一瞬止まる。それは1秒にも満たない刹那の時を争う戦いでは、致命的な隙となった。
「私の風に斬れないものはない」
ノエルの攻撃が止まったほんの一瞬の間隙を、アゲハは見逃さなかった。
精霊の風を纏った刃で目の前の全ての蔦を斬り払い、薙刀の刃が届く距離まで一気に踏み込んだ。
我が身を護る蔦さえ斬り払われては、もはやノエルに抵抗する術など無い。
「終わりだ。ノエル・メレイシ・・・ッ!?」
アゲハはこのまま真っすぐ薙刀を突き出し、ノエルの胸を貫けばいい。
それで勝利となる・・・はずだった。
「ふふふ、本当にすごいわアゲハさん。でもね、相手の魔道具が見えない時は、もう少し警戒するべきよ。私の魔道具は蔦だけど、どこからどうやって出していたと思う?地面に魔力を流して使うのはその通りだけど、元となる蔦はどこから出ていたと思う?」
微笑みながら話しを続けるノエルの右手の平からは、先の鋭く尖った蔦が真っすぐに伸びていた。
「ぐっ・・・う、がふっ!」
吐き出した血が地面に赤い色をつける。
ノエルの蔦はアゲハの腹を突き破り、背中まで抜けていた。
「正解は御覧の通り私の体の中よ。蔦は体内に埋め込む魔道具なの。だからこうやって手の平からも出せるのよ。まぁ、これは奥の手だから普通は見せないわ。私にこれを使わせたんだから、アゲハさんは本当に優秀だわ。誉めてあげる」
「ぐっ・・・う、こ、この・・・・・ぐッツ!?」
震える両手に力を入れて、落としそうになった得物を握り直す!
そしてクスクスと笑うノエルに向かって、刃を向けようとしたその時、凄まじい重圧が全身に圧し掛かった。
ハビエルの空量眼によって地面に圧し潰されたアゲハを見下ろし、ノエルはにこやかに微笑んだ。
「アゲハさん、そうやって地面に這いつくばってるの、とってもお似合いよ」
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