異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
1,219 / 1,369

1218 ノエルの微笑み

しおりを挟む
自らを光の弾としてハビエルに特攻したレイチェル。
味方ながらその凄まじい力に圧倒されそうになる。頼もしさと同時に恐ろしさを持つ、それが私の持つレイチェルの印象だ。


・・・・・負けてられないな。

私もこの身に宿す風を全開にして地面を蹴った。この身を包む緑色の風は、私の体の底から力を引き出してくれるようだ。この体に流れるカエストゥスの血が、風の精霊と共鳴しているのだろう。

「ウオォォォォォォーーーーーーーーッツ!」

レイチェルが光の弾なら私は風の剣だ!ノエルの蔦もハビエルの圧も斬り裂いてやる!

自分の背丈よりも長い得物を握り締め、緑の風の剣と化したアゲハがノエルにぶつかって行った!





すごい力ね・・・アゲハさん、あなた帝国にいた頃より強くなってるんじゃない?

その風を見れば分かるわ、あなたの覚悟・・・私と刺し違える事も厭(いと)わないと、そこまで強く気持ちを固めているのね。

あなたの覚悟、私にも分かるわ。私もハビエルのためなら、あなたと同じ気持ちで戦えるから。
だからね、あなたはここで殺すわ。ハビエルに刃を向けるのなら、誰であろうと許さない。

自らを風に変えた体当たり、私にはとても躱しきれるものではないわ。
でもね、私は魔力量なら師団長にも負けないって自信があるの。

私のありったけの魔力を込めた蔦なら負けない!あなたがどれだけの力で向かって来ようと・・・

「潰してあげるわッ!」


ノエル・メレイシアの紫色の眼が鋭さを帯びると、全身から溢れ出す魔力が勢いをました。
足元から上昇気流の如く立ち昇るソレは、ノエルの長い薄紫色の髪を逆立たせる。そして轟音と共に地面が揺れたと感じた瞬間、何本もの巨大な蔦が一斉に地面を突き破って飛び出して来た!




でかいッ!

ソレが目に入った瞬間、アゲハの脳裏に浮かんだ最初の言葉だった。

アゲハの体など軽く隠れるであろう大きさのソレは、もはや蔦と呼んでいいのか分からない程だった。
先は鋭く尖り、槍をもイメージをさせる。話しに聞いたノエルの蔦は、体に巻き付いて地面に引きずり込むというものだったが、これはもう突き刺す事を目的としている。

地面を突き破って突出してきた破壊力を考えれば、生身で防御などできるはずもない。
しかし、己の胸に迫り来る巨大な蔦の槍を目にして、アゲハはニヤリと笑った。

・・・これがノエル・メレイシアの本気って事だね?確かにすごいよ、大木だって貫きそうな鋭さだ。
でもね、私の風はこの程度じゃ・・・・・

「止められないんだよォォォーーーーーーーッツ!」


横一線に振るった薙刀は、その身を覆い隠す程に巨大な蔦を一文字に斬り裂いた!

「ハァァァァァーーーーーーーーッツ!」

続く第二、第三の蔦を、返す刃で斬り飛ばす!
次々と襲い来る巨大な蔦も、アゲハの振るう薙刀の前に全てが斬り落とされる!


「そ、そんな!?」

ノエルは驚きに目を見開いた。
全魔力を込めた蔦だ。大岩を砕き、巨木をへし折る事だって造作もない。
それほどの破壊力を持った蔦が、こうもあっさりと斬って捨てられるなど想像だにしなかった。

予想外の事態を目の当たりにし、ノエルの思考が一瞬止まる。それは1秒にも満たない刹那の時を争う戦いでは、致命的な隙となった。

「私の風に斬れないものはない」

ノエルの攻撃が止まったほんの一瞬の間隙を、アゲハは見逃さなかった。
精霊の風を纏った刃で目の前の全ての蔦を斬り払い、薙刀の刃が届く距離まで一気に踏み込んだ。

我が身を護る蔦さえ斬り払われては、もはやノエルに抵抗する術など無い。

「終わりだ。ノエル・メレイシ・・・ッ!?」

アゲハはこのまま真っすぐ薙刀を突き出し、ノエルの胸を貫けばいい。
それで勝利となる・・・はずだった。




「ふふふ、本当にすごいわアゲハさん。でもね、相手の魔道具が見えない時は、もう少し警戒するべきよ。私の魔道具は蔦だけど、どこからどうやって出していたと思う?地面に魔力を流して使うのはその通りだけど、元となる蔦はどこから出ていたと思う?」


微笑みながら話しを続けるノエルの右手の平からは、先の鋭く尖った蔦が真っすぐに伸びていた。

「ぐっ・・・う、がふっ!」

吐き出した血が地面に赤い色をつける。
ノエルの蔦はアゲハの腹を突き破り、背中まで抜けていた。


「正解は御覧の通り私の体の中よ。蔦は体内に埋め込む魔道具なの。だからこうやって手の平からも出せるのよ。まぁ、これは奥の手だから普通は見せないわ。私にこれを使わせたんだから、アゲハさんは本当に優秀だわ。誉めてあげる」

「ぐっ・・・う、こ、この・・・・・ぐッツ!?」

震える両手に力を入れて、落としそうになった得物を握り直す!
そしてクスクスと笑うノエルに向かって、刃を向けようとしたその時、凄まじい重圧が全身に圧し掛かった。


ハビエルの空量眼によって地面に圧し潰されたアゲハを見下ろし、ノエルはにこやかに微笑んだ。


「アゲハさん、そうやって地面に這いつくばってるの、とってもお似合いよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

処理中です...