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1165 共闘する二人

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「おい、シャクール、今のすげぇ風はお前だろ?いきなりで吹っ飛ばされたぞ」

爆発による熱波や、魔食い鳥の落下による衝撃波によって、辺り一帯の雪はすっかり吹き飛ばされていた。ひび割れた地面に立つディリアン・ベナビデスは、目の前に降り立った銀髪の黒魔法使い、シャクール・バルデスを睨み付けた。

「ディリアン、元気そうだな。どうやったか知らんが、うまく勝ったみたいじゃないか」

ディリアンの言葉などまるで耳に入っていないように、シャクールは軽い調子で言葉をかける。

「・・・土煙を消そうとしたってのは分かったけどよ、ここに俺がいんのも分かってたよな?もうちょっと慎重に加減してやれよ?あんなの台風じゃねぇか」

「それで、敵はちゃんと仕留めたんだろうな?死体を確認するまでは油断できんぞ」

「聞けよ!お前本当にそういうとこ直せよ!」

全く話しを聞かないシャクールに、ディリアンが怒りをぶちまける。


「はいはい、そこまでにしろ。ディリアン、お前の気持ちはよく分かるぞ。だがな、バルデスに言っても無駄だ、分かるだろ?」

睨むディリアン。意に介さないシャクール。全く温度差の違う二人の間に手を入れて、呆れ顔のルーシーが仲裁をする。

「バルデス、お前もせめて会話を成立させる努力はしろ」

「うむ、今更私に何の努力が必要かは分からんが、必要な努力は惜しまんぞ」

自信満々に宣言するシャクールの顔を見て、ルーシーは額に手を当て天を仰ぎ見た。

「・・・・・ディリアン、色々言い足りないだろうが、もう話しを進めていいか?」

「・・・ああ、俺も諦めた」


二人は大きな溜息をつくと、これからの事について話し始めた。







「オォォォォォォォーーーーーーーーーッツ!」

金色に輝く闘気の剣、オーラブレードを人形の胸に叩きつける!

鋼鉄を思わせる硬さの淑女の人形を斬り裂く事はできない。だがジャレットのパワーで打たれた人形は、抵抗する事もできずに一直線に弾き飛ばれていく!

「アーちゃん!」

ジャレットの視線の先、人形が飛ばされていく先では、薙刀を上段に構えたアゲハが待ち構えていた。
その刃先には研ぎ澄まされた緑色の風が集まり、鋭さを極限にまで高めていた。

「ハァァァァァァーーーーーーーーーッツ!」

気合いを発し、向かって来る人形に渾身の一太刀を振り下ろす!
それは見事に淑女の人形を真っ二つにし、勢いをそのままに地面に深く刃を突き刺した。

精霊の力で研ぎ澄まされた風の刃は、いかに鋼鉄に如き淑女の人形でも撥ね返せるものではなかった。
アゲハとジャレットは共闘する中で、自然とそれぞれの役割が決まっていった。

ジャレットのオーラブレードでは人形を斬る事はできない。
アゲハの風の刃ならば通す事ができるが、それは力を集中させて放つ一太刀に限る。

そのためジャレットは果敢に人形に攻めて、アゲハに繋ぐ事を役目とした。

アゲハはジャレットが必ず自分に繋いでくれると信じ、力を集中して待った。


「はぁ・・・はぁ・・・本当に硬い人形だった、風の刃を直接くらわせてやっとか」

真っ二つになって転がる淑女の人形を見下ろして、アゲハは額の汗を拭った。
勝つには勝ったが、的が小さく素早い人形を相手にする事は、人間を相手にするより手こずらされた。

「ふぅ・・・アーちゃん、やったな」

オーラブレードの刃を消して、ジャレットはアゲハの元へと歩き近づいた。

「ジャレット・・・ああ、即席コンビの割には、私らなかなかだったじゃん?」

「おう、うまく役割分担ができてたしな。しっかし硬い人形だったぜ、コレを斬るなんてアーちゃんの風の刃ってのはすげぇな」

ジャレットも真っ二つになった淑女の人形を見下ろした。それは一切の歪みの無い見事な斬り口だった。これを見ればアゲハの風の刃が、どれ程の鋭さを持っているのか分かるというものだった。

さっきまでちょこまかと素早しこく動き、二人を翻弄していた人形だが、二つに斬り分けられてしまっては、さすがに活動を停止せざるをえなかった。


「これは私のものではなく風の精霊の力だ。精霊への感謝を忘れなければ、その力を最大に引き出してくれるんだよ」

「なるほどな・・・ん?あれ、ケイティ・・・隣にいるのは確か・・・」

遠くからこちらに向かって歩いて来る人影を目にし、ジャレットは口を開いた。

そしてその言葉の続きを引き取るように、アゲハが答えた。


「あれは・・・四勇士のフィゲロアってヤツだな。あの様子だと、あいつらも戦っていたみたいだな」
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