異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1164 煙の中へ

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魔食い鳥は魔道具だが、魔力を糧に成長する寄生型であり、生命体の一種でもある。
そしてラニの魔食い鳥は、何人もの人間をその背に乗せれる程に大きく、質量も相当なものであった。

その魔食い鳥が上空から落ちて地上に衝突したのだから、その衝撃は凄まじいものであった。
爆発魔法を思わせる轟音ははるか遠くまで響き、大地を割って巻き上がった土煙によって、辺り一帯は見通しがきかなくなる程だった。



「ほぉ・・・これはすごい、想像以上だ」

シャクール・バルデスは、光源爆裂弾によるキノコ雲や、魔食い鳥の落下地点からは十分な距離をとっていた。だがそれでも衝撃によって発生した突風は強くぶつかってくる。
周囲に積もっていた雪もすっかり吹き飛ばされ、目に見える範囲は茶色の地肌が剥き出しになっていた。

魔法使いのシャクールにこの突風は厳しいと思われるが、すでにシャクールは自分とその後ろに立つルーシーの身を護る風の盾を正面に作り出し、爆発の余波や突風を完全に受け流していた。


「青魔法使いのディリアンが、どうやってあの鳥を落としたんだ?」

ルーシーは眉根を寄せながら、魔食い鳥の落下地点を見つめて呟いた。

まさかラニが自分から鳥を落としたとは考えられない。そのためルーシーはディリアンが何らかの方法で、魔食い鳥を落としたと結論付けていた。

「うむ、私もそれは気になったところだ。どれ、こうして待っていてもいつ戻ってくるか分からん。迎えに行ってやるか」

シャクールはルーシーの一人言を拾って答えると、風魔法を使って地面から足を浮かせた。

「待て、バルデス。私も行く」

背中に声をかけられて振り返ったシャクールは、わずかに目を細めてルーシーを見た。

「・・・無理をせず休んでいた方がいいのではないかね?水は使い切り、体力も消耗しているのだろう?光源爆裂弾の黒煙も治まっていないのだぞ?」

「心配してくれるのはありがたいが、お前の風魔法があれば、熱も黒煙も土煙も全て防げるんじゃないのか?四勇士のシャクール・バルデスの魔力なら造作もない事だろ?」

挑発するように、シャクールの顔に指を突き付ける。するとシャクールは自分を指すルーシーの指と、ルーシーの顔を交互に見た後、声高らかに笑い出した。

「・・・フッ、ハハハハハハハハハ!面白い!この私を利用しようというのか?確かに私ならあの程度の熱波も煙も全て防ぐ事はできる。ルーシーよ、堂々と私の力をあてにするそのふてぶてしさは実に面白い。それにその目、私が断っても行くつもりなのだろう?」

「当然だ、ディリアンはこの戦いにおいて私のパートナーだ。ここでじっと待っている事などできん」

「フッ、いいだろう、そこまで言うのなら連れて行ってやる」

ニヤリと笑って、シャクールはルーシーに左手を差し伸べた。その手をルーシーが掴むと、シャクールの魔力がルーシーの体に流れ出し、ルーシーの足元から風が渦巻き出した。

「私の手を離すなよ」

「分かった」

返事をすると、ルーシーの体がフワリと浮いた。

「よろしい、では行こうか」

二人の体を風の鎧が包み込む、そして体を浮かせた二人は巨大なキノコ雲のすぐ近く、魔食い鳥の落下点まで空を飛んで向かった。





「・・・これは、なかなかすごいな」

茶色の土煙の中は密度が濃く、数メートル先も見通せない程だった。
これではディリアンを探しようがないと、ルーシーが困ったように言葉をもらす。

二人の体を包む風の鎧は、熱波も煙も一切通さないため、見る事も話す事も何の影響も受ける事はないのだが、見えない物はどうしようもなかった。

「フッ、確かにこれでは目が利かんな。青魔法使いがいればサーチで一発なのだが、無い物ねだりをしてもしかたないな。私にまかせろ。少し手荒になるがなんとかなるだろう」

そう言って空中で止まると、シャクールは空いている右手に魔力を集中させた。


「シャクール、何をする気だ?・・・おい、お前まさか・・・」

ニヤリと笑う銀髪の黒魔法使いが何をしようとしているのかを察し、ルーシーは頬を引きつらせてシャクールの顔を覗き込んだ。

「なに、心配する事はない・・・じゃまな土煙を吹き飛ばすだけだ!」

右手に集まった魔力が風となって渦を巻き出す。シャクールは右手を大きく掲げると、叩きつけるように力強く振り払った!



風魔法は初級のウインドカッター。中級のサイクロンプレッシャー。上級のトルネードバースト。
この三つの技に分けられている。だが今シャクールのやった事はそのどれにも該当しない。
魔力を風に変えて、そのまま撃ち放つというものだった。

それは台風と呼ぶべき規模のものであり、吹きすさぶ風は辺り一帯を埋め尽くす土煙を吹き飛ばした。

視界を妨げていた煙の障壁はあっという間に無くなり、目の前の景色が見渡せるようになると、シャクールは手を繋いでいた銀髪の女戦士に顔を向け、ニっと笑って見せた。


「ルーシーよ、さっそく見つかったぞ。あそこだ」

シャクールの指先を追うと、数十メートル程離れた場所で、青く輝く結界に身を包んだディリアンが、恨めしそうな目でシャクールを睨んでいた。


「・・・おいシャクール、今の風でディリアンの事も吹っ飛ばしたんじゃないのか?・・・お前すごい睨まれてるぞ」

「なぜだ?私のおかげで早期発見ができたのではないか?感謝こそされ睨まれるなどありえん。あれは眩しくて目を細めているだけだろう」


「・・・お前と話していると、自分がとても常識人だと思わされるよ」

「誉め言葉だな、では行くぞ」


苦笑いするルーシーを気にも留めず、シャクールはルーシーの手を引いて地上に降り立った。
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