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1153 ラニの決断
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「セイラのドレスがァァァァァーーーーーーーーッツ!」
ピンク色の髪をかきむしり、アレリーは空にむかって絶叫した。体から発せられる魔力も勢いが増して、どんどん強く大きくなっていく。
「よ、よせアレリー!これ以上は危険だ!」
ラニは吹き飛ばされそうになりながらも、足に力を入れて、一歩一歩地面を踏みしめるように前に進み、アレリーの肩を掴んだ。
「この野郎ォォォォォォォーーーーーーーーッツ!」
「くっ、感覚共有が強過ぎる!このままじゃ戻って来れなくなるぞ!やはりあの人形は強力だが危険だ・・・アレリー!私を見ろ!私を見るんだ!」
元々アレリーは人の話しを聞かないところがあった。思い込みも強くマイペースだったため、黒魔法使いとしての実力はあったが、人をまとめる事はできず出世とは無縁だった。
扱い辛いというのが、他者から見たアレリーの評価だった。
反対にラニの評価は高かった。
若干16歳にして青魔法使いとして高い能力を見せ、一時は青魔法兵団で次の幹部として期待もされていた。
だが今は青魔法兵団を離れ、はぐれ者が集まるチームに属している・・・・・
アダメスもサンティアゴもそうだった。アダメスは強力な魔道具を持っていたが、ブラック・スフィアは味方さえも巻き込みかねず、尚且つ安全なところから見ているだけでいいという戦闘スタイルを揶揄されて部隊を離れた。
サンティアゴは偵察に優れた魔道具を持っていたが、地味な魔道具だと嘲笑を受けて居場所を無くしてしまった。
そんな彼らを引き受け、居場所を作ったのが今の彼らのリーダーである。
ラニは青魔法兵団を離れる必要はなかった。
だが幼少の頃から一緒に過ごしてきたアレリーを放っておけなかったし、アレリーを一番理解しているのは自分であり、自分ならアレリーの力を生かせると確信もしていた。
そしてアレリーの素質を見抜き、受け入れてくれたリーダーに自分自身も付いて行きたい。
そう思った。だからラニは幹部になれる機会を自ら放棄し、今のチームに入った。
その決断を後悔した事はない。
「アレリーーーーーーーッツ!」
ラニがアレリーの両肩を掴み、声の限り叫んだその時だった。
「いたっ!こいつらだ!」
白いマントをはためかせた銀髪の女が、雪を吹き飛ばしながら丘の下から飛び出して来た!
足には氷の板のような物が付いており、それでここまで滑ってきたようだ。
「てめぇらが帝国か!」
そしてもう一人、白い髪の中性的な顔立ちの男が、両手から青く光る魔力をロープのように伸ばしながら、樹の上から飛び降りて来た!
「なにっ!?ばかな、なぜ・・・」
突如現れた二人に、ラニは振り返って驚きをあらわにした。
アレリーの暴走で注意が散漫になっていた事はいなめない。だがそれでもここは、クインズベリー軍からかなり離れた場所である。そう簡単に見つかるはずはないと判断していたのだ。
それがこんなにも早く発見された事は、完全に計算違いだった。
「・・・なんだ、仲間割れか?・・・まぁどうでもいいがな、なんであれお前達帝国を、私がここで倒す事に変わりはない」
銀髪の女戦士ルーシー・アフマダリエフは、目の前の二人の少女を観察するように見た。
この二人がクインズベリー軍を襲ったのは間違いないだろう。しかしいまいち状況が理解できなかった。
ピンク色の髪をした少女は全身から強烈な魔力を放出して、わけの分からない事を喚いている。
そしてもう一人、水色のショートヘアの少女は、そのピンク色の髪の少女を押さえているように見えた。
「・・・どうやってここが分かったんだ?・・・いや、もう考えてもしかたないか・・・来てしまったのなら、やるしかない」
青魔法使いであるラニの感覚で言えば、1000メートルの距離をサーチで捉えたというのは考えられない事であった。それゆえケイトが、その考えられない数字を成し遂げたと言うのは、最初から考えには含まれておらず、ラニはなぜ自分達の居場所が発見されたのか、答えには辿り着く事ができなかった。
だがそれは、この場面においては何ら問題になる事ではなかった。
なぜならここまで辿り着いた過程がどうであれ、目の前の敵を倒せばいいだけの話しなのだから。
「クインズベリーの犬ども、たった二人で私達を倒せると思っていたのなら、後悔するぞ」
ラニの瞳がギラリと鋭く光ると、足元から青く輝く魔力が放出され、ラニの体が持ち上げられるように少しづつ宙に浮き出した。
「なにっ!?あ、あれは・・・」
ソレを目で追うディリアンの顔は、徐々に上に向けられていく。
「まさか、鳥か?己の魔力で鳥を作ったと言うのか?」
ルーシーの目に映るソレは、魔力で形作られた、青い光を放つ鳥だった。そしてその鳥はラニを背に乗せ空に浮いているのだ。
驚きを隠せないルーシーとディリアンを見下ろし、ラニは指先を突きつけた。
「魔食い鳥の恐ろしさ、見せてやる!」
ピンク色の髪をかきむしり、アレリーは空にむかって絶叫した。体から発せられる魔力も勢いが増して、どんどん強く大きくなっていく。
「よ、よせアレリー!これ以上は危険だ!」
ラニは吹き飛ばされそうになりながらも、足に力を入れて、一歩一歩地面を踏みしめるように前に進み、アレリーの肩を掴んだ。
「この野郎ォォォォォォォーーーーーーーーッツ!」
「くっ、感覚共有が強過ぎる!このままじゃ戻って来れなくなるぞ!やはりあの人形は強力だが危険だ・・・アレリー!私を見ろ!私を見るんだ!」
元々アレリーは人の話しを聞かないところがあった。思い込みも強くマイペースだったため、黒魔法使いとしての実力はあったが、人をまとめる事はできず出世とは無縁だった。
扱い辛いというのが、他者から見たアレリーの評価だった。
反対にラニの評価は高かった。
若干16歳にして青魔法使いとして高い能力を見せ、一時は青魔法兵団で次の幹部として期待もされていた。
だが今は青魔法兵団を離れ、はぐれ者が集まるチームに属している・・・・・
アダメスもサンティアゴもそうだった。アダメスは強力な魔道具を持っていたが、ブラック・スフィアは味方さえも巻き込みかねず、尚且つ安全なところから見ているだけでいいという戦闘スタイルを揶揄されて部隊を離れた。
サンティアゴは偵察に優れた魔道具を持っていたが、地味な魔道具だと嘲笑を受けて居場所を無くしてしまった。
そんな彼らを引き受け、居場所を作ったのが今の彼らのリーダーである。
ラニは青魔法兵団を離れる必要はなかった。
だが幼少の頃から一緒に過ごしてきたアレリーを放っておけなかったし、アレリーを一番理解しているのは自分であり、自分ならアレリーの力を生かせると確信もしていた。
そしてアレリーの素質を見抜き、受け入れてくれたリーダーに自分自身も付いて行きたい。
そう思った。だからラニは幹部になれる機会を自ら放棄し、今のチームに入った。
その決断を後悔した事はない。
「アレリーーーーーーーッツ!」
ラニがアレリーの両肩を掴み、声の限り叫んだその時だった。
「いたっ!こいつらだ!」
白いマントをはためかせた銀髪の女が、雪を吹き飛ばしながら丘の下から飛び出して来た!
足には氷の板のような物が付いており、それでここまで滑ってきたようだ。
「てめぇらが帝国か!」
そしてもう一人、白い髪の中性的な顔立ちの男が、両手から青く光る魔力をロープのように伸ばしながら、樹の上から飛び降りて来た!
「なにっ!?ばかな、なぜ・・・」
突如現れた二人に、ラニは振り返って驚きをあらわにした。
アレリーの暴走で注意が散漫になっていた事はいなめない。だがそれでもここは、クインズベリー軍からかなり離れた場所である。そう簡単に見つかるはずはないと判断していたのだ。
それがこんなにも早く発見された事は、完全に計算違いだった。
「・・・なんだ、仲間割れか?・・・まぁどうでもいいがな、なんであれお前達帝国を、私がここで倒す事に変わりはない」
銀髪の女戦士ルーシー・アフマダリエフは、目の前の二人の少女を観察するように見た。
この二人がクインズベリー軍を襲ったのは間違いないだろう。しかしいまいち状況が理解できなかった。
ピンク色の髪をした少女は全身から強烈な魔力を放出して、わけの分からない事を喚いている。
そしてもう一人、水色のショートヘアの少女は、そのピンク色の髪の少女を押さえているように見えた。
「・・・どうやってここが分かったんだ?・・・いや、もう考えてもしかたないか・・・来てしまったのなら、やるしかない」
青魔法使いであるラニの感覚で言えば、1000メートルの距離をサーチで捉えたというのは考えられない事であった。それゆえケイトが、その考えられない数字を成し遂げたと言うのは、最初から考えには含まれておらず、ラニはなぜ自分達の居場所が発見されたのか、答えには辿り着く事ができなかった。
だがそれは、この場面においては何ら問題になる事ではなかった。
なぜならここまで辿り着いた過程がどうであれ、目の前の敵を倒せばいいだけの話しなのだから。
「クインズベリーの犬ども、たった二人で私達を倒せると思っていたのなら、後悔するぞ」
ラニの瞳がギラリと鋭く光ると、足元から青く輝く魔力が放出され、ラニの体が持ち上げられるように少しづつ宙に浮き出した。
「なにっ!?あ、あれは・・・」
ソレを目で追うディリアンの顔は、徐々に上に向けられていく。
「まさか、鳥か?己の魔力で鳥を作ったと言うのか?」
ルーシーの目に映るソレは、魔力で形作られた、青い光を放つ鳥だった。そしてその鳥はラニを背に乗せ空に浮いているのだ。
驚きを隠せないルーシーとディリアンを見下ろし、ラニは指先を突きつけた。
「魔食い鳥の恐ろしさ、見せてやる!」
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