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1128 クインズベリー国の軍団長
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謁見の間を出て一階まで降りると、正門の前にはすでに庭を埋め尽くすほどの兵達が集まっていた。
「すげぇ数だな・・・何人いるんだ?」
数えきれない、いや数えようとさえ思わない数の兵を見て、アラタが誰に言うでもなく言葉を漏らすと、となりを歩いていたヴァンが言葉を拾って答えた。
「ここに集まっているのは一万人だ。クインズベリー軍の兵士は総勢で七万、そこに騎士団五千と治安部隊が二万、全部合わせても十万に届かないくらいだ」
「へぇ、ここに一万って事は、残りはどこにいるんだ?」
アラタが興味を持ったように質問をすると、ヴァンは歩きながら答えた。
「軍の残り六万のうち、五万は町を出た先の草原地帯で待機している。とてもここには入りきらないだろ?なんでここに一万いるかって言うと、町の人達に出陣を見せるためなんだ。クインズベリー国は帝国に屈せず戦うってとこを見せるためだな。そんで残りの一万は国に残って国の警備だ。さすがに全軍出しちまったら、国内が不安定になるからな」
「なるほどな・・・騎士団と治安部隊も同じで、草原で待機か?」
「そうだ。騎士団も千人程度を残してあとは出陣だ。治安部隊も一万五千人が参戦する。治安部隊に関しては、副隊長のカリウスが残ってまとめてくれるから心配はいらない。騎士団の方も、シルバー騎士の上位者が何人か残って指揮を執るそうだ」
「そうか、国内の治安維持のために少しは兵を残しておくにしても、戦力のほとんどは戦場に行く事になるんだな。しかし、クインズベリー軍と騎士団と治安部隊、これだけの大所帯を誰がどうやってまとめるんだ?王子もいるしさ」
「ああ、それなら心配はいらない。アンリエール様もおっしゃていただろ?王子の事は軍団長に任せてあるって」
そこまで話すとヴァンは足を止めて、あそこを見ろ、そう言って中庭に集まっている集団の、先頭に立つ男を指差した。
「あの人がクインズベリー国軍団長の、バーナード・ロブギンスさんだ」
「え?・・・あの人が?」
ヴァンの指し示す先に目を向け、アラタは眉根を寄せた。
年齢は60代半ばから70歳くらいだろうか。肉厚な鉄の鎧に身を包んでいるところを見ると体力型と思われるが、おそらく身長は170センチも無く、体力型としては小柄な部類に入る。
頭髪はほぼ白く染まっており、黒いものがほとんど無い。鼻の下から顎にかけても白い髭で覆われている。歳を重ねた分だけ顔中にシワが刻まれており、鎧を着てこの場に立っていなければ、とてもこの老人が七万の兵を束ねる軍団長とは思えなかった。
「その反応、まぁ分からなくはねぇけど、ロブギンスさんを見かけで判断すると痛い目見るぜ?」
ヴァンは軍団長を見たアラタが何を思ったのか、見透かしたように笑った。
「あ、いや・・・ごっつい大男を想像してたから、確かに驚いたのは本当だけど、見くびったりはしないよ。ああいう感じのお爺さんは、本当に強いってのは身を持って体験してるから」
アラタはロンズデールで戦った、魔道剣士のアロル・ヘイモンを思い出していた。
今、この目に映っている軍団長のバーナード・ロブギンスよりも、もっと小さいヘイモンに、アラタはギリギリまで追い込まれたのだ。人を見かけで判断してはいけないという事は、骨身に染みて理解している。
「・・・へぇ、お前もなかなかの経験してそうだな」
知らない間にアラタが精神的にも成長している事を感じ、ヴァンは感心したように頷いた。
「おい、二人とも口を閉じろ・・・軍団長が話すぞ」
二人の前に立っていたレイチェルが顔半分だけ振り返り、親指をロブギンスに向けた。
その指に釣られるように、アラタとヴァンがもう一度顔をロブギンスに向けると、ロブギンスは目の前に置かれた台の上に立ち、中庭に並ぶ兵士達の顔を見渡して、口を開き言葉を発した。
「すげぇ数だな・・・何人いるんだ?」
数えきれない、いや数えようとさえ思わない数の兵を見て、アラタが誰に言うでもなく言葉を漏らすと、となりを歩いていたヴァンが言葉を拾って答えた。
「ここに集まっているのは一万人だ。クインズベリー軍の兵士は総勢で七万、そこに騎士団五千と治安部隊が二万、全部合わせても十万に届かないくらいだ」
「へぇ、ここに一万って事は、残りはどこにいるんだ?」
アラタが興味を持ったように質問をすると、ヴァンは歩きながら答えた。
「軍の残り六万のうち、五万は町を出た先の草原地帯で待機している。とてもここには入りきらないだろ?なんでここに一万いるかって言うと、町の人達に出陣を見せるためなんだ。クインズベリー国は帝国に屈せず戦うってとこを見せるためだな。そんで残りの一万は国に残って国の警備だ。さすがに全軍出しちまったら、国内が不安定になるからな」
「なるほどな・・・騎士団と治安部隊も同じで、草原で待機か?」
「そうだ。騎士団も千人程度を残してあとは出陣だ。治安部隊も一万五千人が参戦する。治安部隊に関しては、副隊長のカリウスが残ってまとめてくれるから心配はいらない。騎士団の方も、シルバー騎士の上位者が何人か残って指揮を執るそうだ」
「そうか、国内の治安維持のために少しは兵を残しておくにしても、戦力のほとんどは戦場に行く事になるんだな。しかし、クインズベリー軍と騎士団と治安部隊、これだけの大所帯を誰がどうやってまとめるんだ?王子もいるしさ」
「ああ、それなら心配はいらない。アンリエール様もおっしゃていただろ?王子の事は軍団長に任せてあるって」
そこまで話すとヴァンは足を止めて、あそこを見ろ、そう言って中庭に集まっている集団の、先頭に立つ男を指差した。
「あの人がクインズベリー国軍団長の、バーナード・ロブギンスさんだ」
「え?・・・あの人が?」
ヴァンの指し示す先に目を向け、アラタは眉根を寄せた。
年齢は60代半ばから70歳くらいだろうか。肉厚な鉄の鎧に身を包んでいるところを見ると体力型と思われるが、おそらく身長は170センチも無く、体力型としては小柄な部類に入る。
頭髪はほぼ白く染まっており、黒いものがほとんど無い。鼻の下から顎にかけても白い髭で覆われている。歳を重ねた分だけ顔中にシワが刻まれており、鎧を着てこの場に立っていなければ、とてもこの老人が七万の兵を束ねる軍団長とは思えなかった。
「その反応、まぁ分からなくはねぇけど、ロブギンスさんを見かけで判断すると痛い目見るぜ?」
ヴァンは軍団長を見たアラタが何を思ったのか、見透かしたように笑った。
「あ、いや・・・ごっつい大男を想像してたから、確かに驚いたのは本当だけど、見くびったりはしないよ。ああいう感じのお爺さんは、本当に強いってのは身を持って体験してるから」
アラタはロンズデールで戦った、魔道剣士のアロル・ヘイモンを思い出していた。
今、この目に映っている軍団長のバーナード・ロブギンスよりも、もっと小さいヘイモンに、アラタはギリギリまで追い込まれたのだ。人を見かけで判断してはいけないという事は、骨身に染みて理解している。
「・・・へぇ、お前もなかなかの経験してそうだな」
知らない間にアラタが精神的にも成長している事を感じ、ヴァンは感心したように頷いた。
「おい、二人とも口を閉じろ・・・軍団長が話すぞ」
二人の前に立っていたレイチェルが顔半分だけ振り返り、親指をロブギンスに向けた。
その指に釣られるように、アラタとヴァンがもう一度顔をロブギンスに向けると、ロブギンスは目の前に置かれた台の上に立ち、中庭に並ぶ兵士達の顔を見渡して、口を開き言葉を発した。
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