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1126 メンバー分け ④

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西の山脈パウンド・フォー。
北の砂漠に流れるユナニマス大川。

クインズベリーが攻略すべき、二つの戦場へ向かうメンバーが決定された。

しかしここでまだ名前が呼ばれていない者達がいる。
彼らはじっとアンリエールに目を向け、自分達の役割についての言葉を待っていた。


「・・・さて、四勇士とサリー、そしてディリアン、あなた方には事前にお話ししていた通り、北と西の中間地点に設置した軍事施設で、待機していただきます」

「はい、承知しました。前回の会議で決めた通り、我々は北と西の戦況によって動く。その方針のままでお変わりないですか?」

四勇士ライース・フィゲロアは、アンリエールの、自分達の今後の行動について、最後の確認をする。

一騎当千とまで呼ばれる四勇士は、たった一人で戦況をひっくり返す程の力を有している。
だからこそ最初から参戦するよりも、西か北、どちらかが苦境に陥った場合、適任者を援軍として向かわせる作戦に決めたのだ。四勇士は、体力型、黒、白、青の魔法使いが揃っているのだから。


「はい、方針に変わりはありません。そしてディリアン、あなたにはライース・フィゲロアと共に行動してもらいます。報告は受けていますが、訓練は順調のようですね?」

アンリエールはフィゲロアの質問に答えると、今度はディリアンに目を向けた。

「はい、自分でも驚いてます。体内の魔力の流れが以前とは比べ物にならないくらいスムーズで、結界の強度が数段上がりました」

「ロンズデールにいた時、短い間とはいえバルデスに教えを受けたと聞きました。もちろんバルデスも優秀ですし、そのままバルデスに師事してもいいでしょう。ですが青魔法使いとしてさらに上を目指すのであれば、やはり同じ青魔法使いに学ぶべきだと思い、フィゲロアに指導させたのですが、正解だったようですね」

アンリエールは今日この日まで、四勇士のライース・フィゲロアにディリアンの訓練を任せていた。

ディリアンから自分も戦争に参加して、前線で戦いたいと直談判を受けたアンリエールは、ディリアンの底上げを考えたのだ。

ロンズデールから帰って来た当時のディリアンでは、補助ならばともかく、前線で戦うにはかなり厳しいだろうというのがアンリエールの見立てだったからだ。

そこで目を付けたのがライース・フィゲロアだった。
四勇士のフィゲロアは、クインズベリー国一の青魔法使いである。師としては申し分ない。
そして普段は城を護る塔で待機しているのだから、稽古をつける時間も十分にある。

アンリエールは前線に出す条件として、決戦の日までフィゲロに師事する事を命じ、ディリアンはそれを受け入れたのだ。


「はい、今なら前線に立って十分戦えると思います」

ディリアンが自信に満ちた目を向けると、アンリエールもそれを受け止めて微笑みを見せた。

「ええ、確かにあなたから感じる魔力は、以前よりもずっと強い。ちゃんとした師に教えを受けた事で、あなたの秘めた力が開花したのでしょう。今のあなたなら幹部クラスとも互角以上に戦えるはずです。前線に出る事を許可します。ですがあなたにはまだ伸びしろがあります。この戦争は長期戦になるでしょう、ですからディリアン、あなたにも四勇士と共に後方で待機してほしいのです。そして出番が来るまではフィゲロアから学べるだけ学びなさい。力を付けるのです。あなたはもっと強くなれます」


期待を込めた言葉は、ディリアンの胸を打った。

兄であるトレバー・ベナビデスは、闇に捕らわれアンリエールに危害を加えた。
父である公爵も、逆恨みから城内で魔法を使い、使用人達や兵達を危険に晒した。

自分はそんな家の人間なのだ。だから女王には疎ましく思われて当然だし、家が残されただけ感謝しなければならない。そう思っていた。

だが、今自分を見つめるアンリエールの瞳はどうだ?
優しくかけられた声はどう聞こえる?


「・・・はい・・・仰せの、ままに・・・精一杯頑張ります」

「・・・ディリアン、期待していますよ」


うつむき、震える声で返事をするディリアンの心情を察し、アンリエールはもう一度優しく声をかけた。





「さて、マルス、オスカー・・・」

北と西へのメンバー分けが終わると、アンリエールは少し距離をとって立っていた、二人の王子の名を呼んだ。


真ん中から左右に分け、顎まで伸びた金色の髪。
意志の強そうな目に、端正な顔立ちをした青年は、第一王子マルス・アレクサンダー。
今年で20歳。

小柄でマルスより10cm程背が低く、長い金色の髪を首の辺りで一本に束ねて結んでいるのは、第二王子オスカー・アレクサンダー。マルスの二つ年下で18歳。


二人の王子がアンリエールの隣に立つと、アンリエールも立ち上がり、謁見の間に集まった全員に聞こえるよう、一段高い声を発した。

「ここにいるマルスとオスカーを、西と北の中間地点まで同行させます。目的は慰問です。そこに着くまで沢山の町や村を通るでしょう、誰もがこの戦争に不安を感じ怯えている事だと思います。そこで王子であるこの二人が顔を見せて声をかける事で、国民の不安を取り除き、希望を持てるようにしたいのです」
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