1,123 / 1,253
1112 ジーンとケイトの修行
しおりを挟む
「ハァッツ!」
左足を一歩前に踏み込む。そして腰を左に回しながら、右手を下からすくうように振り上げる!
その瞬間、ジーンの手の動きに合わせて、青く輝く結界が上方向に回転し、着弾した数発の爆裂弾を全て空高く打ち上げた。
「・・・ふいをついた攻撃にも、連射にも対応できるようになったな。ジーン、合格だ。もう俺が教える事は何もない」
樹の陰から伸びた黒いブーツが雪を踏み、長い金髪の男が姿を見せた。
右手の平からは魔力を帯びた白い煙が微かに立ち昇り、魔法を撃ったのはこの男だと教えていた。
「はぁ・・・ふぅ・・・店長、今日までありがとうございます」
ジーンは結界を解くと、正面から歩いて来る金髪の男、ウィッカーに頭を下げた。
「顔を上げろ、あらたまる必要はない。俺は教えられる事は教えたが、それを習得するためにお前がどれほどの努力をしてきたかは分かっているつもりだ。ジーン、魔法を撥ね返すこの技、返しは、俺の師ブレンダン・ランデルが編み出した結界技の極意だ。誰にでもできる事じゃない、それをお前は完璧にモノにした。お前の努力が実を結んだんだ・・・頑張ったな」
ジーンを労うように肩に手を置いて、優しく言葉をかける。
「青魔法は仲間を護ってこそです・・・だから俺は、どんな攻撃からもみんなを護れるように、この返しの精度を上げたかったんです」
「ああ、今のお前ならできるさ・・・」
ジーンの戦う理由、その根底には仲間を護りたいという強い気持ちがある。
子供の頃にケイトと離れ離れになった事が、ジーンの心に根深い傷となって残っているのだ。
再会した時のケイトはボロボロだった。
ケイトの親が決めた引っ越しであり、新しい住まいでケイトが辛い思いをしていた事は、当時のジーンには知りようもない事だった。
だが理屈ではないのだ。
大切な幼馴染が辛い思いをしていた時に、自分は何もできなかった。気付く事もできなかった。
ジーンはそんな自分を許せなかった。
だから強くなろうと思った。
大切な人を護るため、もう二度と失わないために・・・・・
「ジーン、今のすごいよ!完璧じゃん!」
少し離れた場所に立って、訓練を見ていたケイトが駆け寄って来た。
ジーンより先にウィッカーの訓練を受けたケイトは、呼吸こそ落ち着いているが、まだ汗が引かないのか、濡れた髪が額や頬に張り付いている。それだけ厳しい訓練だったという事が伺える。
「ケイト、うん・・・なんとかできた、かな?」
「店長も認めてくれたし、バッチリじゃん!アタシはソレ全然できなかったけど、さすがジーンだね!」
照れたように笑って返事をするジーンに、ケイト手も叩いて褒めちぎった。
「ケイト、ジーンは精密な魔力操作が得意だから返しを習得できた。でもケイトは魔力量でジーンより上だ。だからこそジーンにはできなかった、もう一つの結界技をモノにできたんだ。お互いに足りない部分を補い合える、お前達は理想のパートナーだと思うよ」
「へへへ、やっぱり店長もそう思います?」
ウィッカーにジーンとの仲を褒められて、ケイトは気を良くしたように笑う。
「ケイト、キミが新たに覚えた結界は、集団戦で大きく生かせるし、戦術の幅も広がると思う。僕とケイト、二つの結界でみんなを護ろう」
「ジーン、うん、もちろんだよ。アタシ頑張るね、この新しい技もだけど、この三ヶ月で魔力だってけっこう上がったんだ。期待してよね!」
ジーンとケイトの二人も訓練を終えた。
それぞれが帝国と戦うための力を、着実に付けている。
自分が教えた技をどんどん吸収し成長していく弟子達の姿に、ウィッカーは小さく口元をほころばせた。
左足を一歩前に踏み込む。そして腰を左に回しながら、右手を下からすくうように振り上げる!
その瞬間、ジーンの手の動きに合わせて、青く輝く結界が上方向に回転し、着弾した数発の爆裂弾を全て空高く打ち上げた。
「・・・ふいをついた攻撃にも、連射にも対応できるようになったな。ジーン、合格だ。もう俺が教える事は何もない」
樹の陰から伸びた黒いブーツが雪を踏み、長い金髪の男が姿を見せた。
右手の平からは魔力を帯びた白い煙が微かに立ち昇り、魔法を撃ったのはこの男だと教えていた。
「はぁ・・・ふぅ・・・店長、今日までありがとうございます」
ジーンは結界を解くと、正面から歩いて来る金髪の男、ウィッカーに頭を下げた。
「顔を上げろ、あらたまる必要はない。俺は教えられる事は教えたが、それを習得するためにお前がどれほどの努力をしてきたかは分かっているつもりだ。ジーン、魔法を撥ね返すこの技、返しは、俺の師ブレンダン・ランデルが編み出した結界技の極意だ。誰にでもできる事じゃない、それをお前は完璧にモノにした。お前の努力が実を結んだんだ・・・頑張ったな」
ジーンを労うように肩に手を置いて、優しく言葉をかける。
「青魔法は仲間を護ってこそです・・・だから俺は、どんな攻撃からもみんなを護れるように、この返しの精度を上げたかったんです」
「ああ、今のお前ならできるさ・・・」
ジーンの戦う理由、その根底には仲間を護りたいという強い気持ちがある。
子供の頃にケイトと離れ離れになった事が、ジーンの心に根深い傷となって残っているのだ。
再会した時のケイトはボロボロだった。
ケイトの親が決めた引っ越しであり、新しい住まいでケイトが辛い思いをしていた事は、当時のジーンには知りようもない事だった。
だが理屈ではないのだ。
大切な幼馴染が辛い思いをしていた時に、自分は何もできなかった。気付く事もできなかった。
ジーンはそんな自分を許せなかった。
だから強くなろうと思った。
大切な人を護るため、もう二度と失わないために・・・・・
「ジーン、今のすごいよ!完璧じゃん!」
少し離れた場所に立って、訓練を見ていたケイトが駆け寄って来た。
ジーンより先にウィッカーの訓練を受けたケイトは、呼吸こそ落ち着いているが、まだ汗が引かないのか、濡れた髪が額や頬に張り付いている。それだけ厳しい訓練だったという事が伺える。
「ケイト、うん・・・なんとかできた、かな?」
「店長も認めてくれたし、バッチリじゃん!アタシはソレ全然できなかったけど、さすがジーンだね!」
照れたように笑って返事をするジーンに、ケイト手も叩いて褒めちぎった。
「ケイト、ジーンは精密な魔力操作が得意だから返しを習得できた。でもケイトは魔力量でジーンより上だ。だからこそジーンにはできなかった、もう一つの結界技をモノにできたんだ。お互いに足りない部分を補い合える、お前達は理想のパートナーだと思うよ」
「へへへ、やっぱり店長もそう思います?」
ウィッカーにジーンとの仲を褒められて、ケイトは気を良くしたように笑う。
「ケイト、キミが新たに覚えた結界は、集団戦で大きく生かせるし、戦術の幅も広がると思う。僕とケイト、二つの結界でみんなを護ろう」
「ジーン、うん、もちろんだよ。アタシ頑張るね、この新しい技もだけど、この三ヶ月で魔力だってけっこう上がったんだ。期待してよね!」
ジーンとケイトの二人も訓練を終えた。
それぞれが帝国と戦うための力を、着実に付けている。
自分が教えた技をどんどん吸収し成長していく弟子達の姿に、ウィッカーは小さく口元をほころばせた。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる