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1083 アラタの決意
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閉店後のレイジェス店内。
なにかあった時には事務所で話し合う。これはレイジェスの恒例になっていた。
今回パウンド・フォーから帰還してレイジェスに来たのは、アラタ、レイチェル、リカルド、ユーリ、そしてアゲハの五人。全員がレイジェスのメンバーだ。
アルベルト達騎士団とリーザは、女王への報告、そして今も安否を気にかけている仲間達に、少しでも早く元気な姿を見せたいと考え、途中で別れて城へと向かったのだった。
そして無事に帰っては来たが、さすがに疲労を隠しきれないアラタ達を見て、今日は解散して詳しい話しは明日以降にしようという意見もでた。
だが事が事だけに、早く情報を共有したいというレイチェルの言葉に従い、いつも通り店に泊まって話し合う事となった。
「いやぁ~、あれはやべぇよ!マジでやべぇ!あんなおっかねぇヤツ初めてだな!人間じゃねぇよあいつ!」
事務所の長いテーブル席に腰を下ろし、リカルドは身振り手振りを交えて演説をしていた。
リカルドが力説しているのは、デューク・サリバンについてだった。
すでに全員が知っている事だが、帝国軍第七師団のデューク・サリバンは、アラタの恩人である村戸修一である。
アラタもそれを知った時には驚いたが、半信半疑な部分もあった。
実際に会えば分かり合える。戦う事もない。そう考えていたところもあった。
だが現実は非情だった。
言葉を交わし突きつけられたものは、明確な決別。
レイチェルもアゲハも、沢山の仲間達が殺されかけた。
「マジハンパじゃねぇんだって!レイチェルの限舞闘争くらってノーダメージなんだぞ!?頭おかしいだろ!?ミゼルなら死んでんぞ!あんなのにどうやって勝つんだよ!?」
「おい!なんでそこで俺を殺すんだよ!」
「リカルード、分かった!分かったから座れって!ミッチーも反応すんなよ!」
「だからなんでリカルードなんだよ!?言うなって言ってんだろ!最近やっとやめたって思ってたのに、ここで復活すんじゃねぇよ!ぶっ飛ばすぞ!」
興奮して席から立ち上がるリカルド。ジャレットがその腕を掴み、落ち着くように言い聞かせて座らせる。抗議の声を上げたミゼルも、不満気ながら口を閉じた。
「はぁ、まったく・・・まぁ言いたい事はだいたい分かった。アラやん、お前のニホンの恩人ってのは、どうやら戦うしかねぇみたいだな?」
ジャレットは自分の向かい側に座るアラタに顔を向けた。
パウンド・フォーで何があったか、その報告はレイチェルが中心に説明し、アゲハが補足する形で進めていた。最後にリカルドが騒ぎ出したが、ここまでアラタはずっと黙りこくっていた。
「・・・・・」
「アラやん、やっぱ無理か?」
話しを向けられても口をつぐんでいるアラタに、ジャレットはもう一度、今度は少し強めに言葉をかけた。
「・・・ジャレットさん、俺は迷ってました」
アラタはゆっくりと顔を上げると、ジャレットの目を真っすぐに見て口を開いた。
真剣味を帯びたアラタの黒い瞳を見て、ジャレットも何かを感じて目を細めた。
隣に座るカチュアも、アラタの口調から何かの決意を感じ取り、その顔をじっと見つめている。
「・・・村戸さんと会うまで、ずっと迷ってました。村戸さんが帝国にいると聞いても、どこか信じ切れなくて・・・あの村戸さんが悪に染まるはずはない。なにかの間違いだって・・・でも、パウンド・フォーで会って俺の覚悟は決まりました。俺は・・・戦います」
そこで言葉を区切ると、アラタは隣に座るカチュアの手を握った。
「アラタ君・・・」
「俺が護るべきものが分かったんです。村戸さんは恩人です。だけど今の俺は結婚して、この店で働いています。このレイジェスが俺の居場所なんです。カチュアを、みんなを護るためなら、俺は村戸さんとも戦わなくてはならない。あの山でそう覚悟を決めたんです」
ジャレットは黙って話しを聞いていた。
押しに弱く、どこか控えめな性格をしているアラタがどんな決断をするのか。ジャレットはずっと気にしていた。
故郷の恩人と戦うなんて、果たしてできるのだろうか?戦争を控えているこの状況でも、まだ決心を固めていないのであれば、じっくり話しをしなければと思っていた。
だがジャレットの心配は杞憂だった。
言葉の一つ一つから、アラタの決意を感じた。
帰って来たアラタを見た時にも感じていたが、空気、身に纏う雰囲気が変わっていた。
今自分を見る黒い瞳にも、以前にはなかった力強さを感じる。
・・・・・アラやん、お前自分の殻を破ったみたいだな
「・・・何を護るべきか、それが分かったんなら俺から言う事は何もねぇよ」
小さくフッと笑うと、ジャレットはシルヴィアに目を向けた。
その視線が話しの続きを託すという意味だと理解し、シルヴィアは小さく頷きアラタに目を向けた。
「アラタ君も頼もしくなったわね・・・さて、それじゃあレイジェスに残っていた私達からも報告があるわ。一昨日、ロンズデールからリンジーさん達が来たわよ」
なにかあった時には事務所で話し合う。これはレイジェスの恒例になっていた。
今回パウンド・フォーから帰還してレイジェスに来たのは、アラタ、レイチェル、リカルド、ユーリ、そしてアゲハの五人。全員がレイジェスのメンバーだ。
アルベルト達騎士団とリーザは、女王への報告、そして今も安否を気にかけている仲間達に、少しでも早く元気な姿を見せたいと考え、途中で別れて城へと向かったのだった。
そして無事に帰っては来たが、さすがに疲労を隠しきれないアラタ達を見て、今日は解散して詳しい話しは明日以降にしようという意見もでた。
だが事が事だけに、早く情報を共有したいというレイチェルの言葉に従い、いつも通り店に泊まって話し合う事となった。
「いやぁ~、あれはやべぇよ!マジでやべぇ!あんなおっかねぇヤツ初めてだな!人間じゃねぇよあいつ!」
事務所の長いテーブル席に腰を下ろし、リカルドは身振り手振りを交えて演説をしていた。
リカルドが力説しているのは、デューク・サリバンについてだった。
すでに全員が知っている事だが、帝国軍第七師団のデューク・サリバンは、アラタの恩人である村戸修一である。
アラタもそれを知った時には驚いたが、半信半疑な部分もあった。
実際に会えば分かり合える。戦う事もない。そう考えていたところもあった。
だが現実は非情だった。
言葉を交わし突きつけられたものは、明確な決別。
レイチェルもアゲハも、沢山の仲間達が殺されかけた。
「マジハンパじゃねぇんだって!レイチェルの限舞闘争くらってノーダメージなんだぞ!?頭おかしいだろ!?ミゼルなら死んでんぞ!あんなのにどうやって勝つんだよ!?」
「おい!なんでそこで俺を殺すんだよ!」
「リカルード、分かった!分かったから座れって!ミッチーも反応すんなよ!」
「だからなんでリカルードなんだよ!?言うなって言ってんだろ!最近やっとやめたって思ってたのに、ここで復活すんじゃねぇよ!ぶっ飛ばすぞ!」
興奮して席から立ち上がるリカルド。ジャレットがその腕を掴み、落ち着くように言い聞かせて座らせる。抗議の声を上げたミゼルも、不満気ながら口を閉じた。
「はぁ、まったく・・・まぁ言いたい事はだいたい分かった。アラやん、お前のニホンの恩人ってのは、どうやら戦うしかねぇみたいだな?」
ジャレットは自分の向かい側に座るアラタに顔を向けた。
パウンド・フォーで何があったか、その報告はレイチェルが中心に説明し、アゲハが補足する形で進めていた。最後にリカルドが騒ぎ出したが、ここまでアラタはずっと黙りこくっていた。
「・・・・・」
「アラやん、やっぱ無理か?」
話しを向けられても口をつぐんでいるアラタに、ジャレットはもう一度、今度は少し強めに言葉をかけた。
「・・・ジャレットさん、俺は迷ってました」
アラタはゆっくりと顔を上げると、ジャレットの目を真っすぐに見て口を開いた。
真剣味を帯びたアラタの黒い瞳を見て、ジャレットも何かを感じて目を細めた。
隣に座るカチュアも、アラタの口調から何かの決意を感じ取り、その顔をじっと見つめている。
「・・・村戸さんと会うまで、ずっと迷ってました。村戸さんが帝国にいると聞いても、どこか信じ切れなくて・・・あの村戸さんが悪に染まるはずはない。なにかの間違いだって・・・でも、パウンド・フォーで会って俺の覚悟は決まりました。俺は・・・戦います」
そこで言葉を区切ると、アラタは隣に座るカチュアの手を握った。
「アラタ君・・・」
「俺が護るべきものが分かったんです。村戸さんは恩人です。だけど今の俺は結婚して、この店で働いています。このレイジェスが俺の居場所なんです。カチュアを、みんなを護るためなら、俺は村戸さんとも戦わなくてはならない。あの山でそう覚悟を決めたんです」
ジャレットは黙って話しを聞いていた。
押しに弱く、どこか控えめな性格をしているアラタがどんな決断をするのか。ジャレットはずっと気にしていた。
故郷の恩人と戦うなんて、果たしてできるのだろうか?戦争を控えているこの状況でも、まだ決心を固めていないのであれば、じっくり話しをしなければと思っていた。
だがジャレットの心配は杞憂だった。
言葉の一つ一つから、アラタの決意を感じた。
帰って来たアラタを見た時にも感じていたが、空気、身に纏う雰囲気が変わっていた。
今自分を見る黒い瞳にも、以前にはなかった力強さを感じる。
・・・・・アラやん、お前自分の殻を破ったみたいだな
「・・・何を護るべきか、それが分かったんなら俺から言う事は何もねぇよ」
小さくフッと笑うと、ジャレットはシルヴィアに目を向けた。
その視線が話しの続きを託すという意味だと理解し、シルヴィアは小さく頷きアラタに目を向けた。
「アラタ君も頼もしくなったわね・・・さて、それじゃあレイジェスに残っていた私達からも報告があるわ。一昨日、ロンズデールからリンジーさん達が来たわよ」
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