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1081 生還
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うまくいった・・・・・
体の中に漲った光を外へ向けて放つ。感覚に任せてやってみたが、イメージ通りにうまくできた。
力強さに満ち溢れているこの光は、しばらくはもつはずだ。
アルベルトの号令にしたがって、俺達は足を速めて急ぎ山を降りている。
それこそ飛び降りる勢いだ。このペースなら光が消える前に下までたどり着けるかもしれない。
魔法使いのみんなが心配だったけれど、レイマートがエミリーを、レミューがロゼを、エクトールがフィルを背負っている。レイマートも毒が抜けたばかりでキツイと思うけど、そこはさすがゴールド騎士というところか。
アゲハも先頭を走っているし、リーザも大丈夫そうだ。
しかし驚いたのはリカルドだ。
あいつがユーリをおんぶするなんて思わなかった。
てっきりまた俺に言ってくるかと思ったけど、光が闇を消して、アルベルトが声を上げるなり、ユーリの手を引いて何も言わせずに背負っちまうんだもんな。
・・・まぁ、リカルドもやっぱり気にかけてるって事だな。
これでもう少し、普段から仲良くなってくれたらいい。
「アラタ、体はどうだ?」
俺を背負うレイチェルが、前を向いたまま声をかけて来た。
かなりのスピードで走っているようだ。目に映る景色が一瞬で変わっていく様子は、たった一蹴りで十メートルも飛んでいるような、それほどの速さに感じられる。
「なんとか、意識は保ってるよ・・・悪いな」
小さな声で返事をすると、レイチェルは前を向いたまま、そうか、と呟いた。
そう、意識は保っているが、もう体は動かない。闇を消すために全身から光を放った俺は、急速に力を失って倒れ込んだんだ。
再び宿った光の力だったけれど、山全体の闇を払うには、全て出しきるしかなかった。
だけどレイチェルがすぐに俺を助け起こし、そのまま背負ってくれたんだ。
まるで予見していたように、スムーズな動きだった。きっとこうなる可能性は高いと思っていたんだ。
「山を降りる前にも言ったと思うが、なぜ謝る?キミが光の力を使ったおかげで、我々の生存率が大きく上がったんだ。その結果キミは動けなくなったが、それをフォローするのは私の役目だ。お互い様じゃないのか?」
「・・・そうだったな、ありがとうレイチェル。助かったよ」
「こちらこそだ、アラタ。あとは私にまかせておけ」
頼もしい言葉を口にするレイチェルに感謝して、俺は身を任せた。
そして二時間程走り続けて、俺達は無事にパウンド・フォーを降りる事ができた。
山を降りた頃には、俺が使った光の力も消えかかっていた。光が消えたらまたトバリが現れるのではないか?そう警戒したが、レイチェルが店長にもらったというガラス玉を地面にぶつけて割ると、眩い光が溢れ出して再び闇を遠ざけたのだ。
これは切り札としてとっておいたらしい。本当に最後の最後で生きる道を繋いでくれた。
みんな疲れ果てていたけれど、気力を振り絞って走った。
そして登頂前に泊まった小屋まで辿り着き、なんとか無事に全員が生還する事ができた。
体の中に漲った光を外へ向けて放つ。感覚に任せてやってみたが、イメージ通りにうまくできた。
力強さに満ち溢れているこの光は、しばらくはもつはずだ。
アルベルトの号令にしたがって、俺達は足を速めて急ぎ山を降りている。
それこそ飛び降りる勢いだ。このペースなら光が消える前に下までたどり着けるかもしれない。
魔法使いのみんなが心配だったけれど、レイマートがエミリーを、レミューがロゼを、エクトールがフィルを背負っている。レイマートも毒が抜けたばかりでキツイと思うけど、そこはさすがゴールド騎士というところか。
アゲハも先頭を走っているし、リーザも大丈夫そうだ。
しかし驚いたのはリカルドだ。
あいつがユーリをおんぶするなんて思わなかった。
てっきりまた俺に言ってくるかと思ったけど、光が闇を消して、アルベルトが声を上げるなり、ユーリの手を引いて何も言わせずに背負っちまうんだもんな。
・・・まぁ、リカルドもやっぱり気にかけてるって事だな。
これでもう少し、普段から仲良くなってくれたらいい。
「アラタ、体はどうだ?」
俺を背負うレイチェルが、前を向いたまま声をかけて来た。
かなりのスピードで走っているようだ。目に映る景色が一瞬で変わっていく様子は、たった一蹴りで十メートルも飛んでいるような、それほどの速さに感じられる。
「なんとか、意識は保ってるよ・・・悪いな」
小さな声で返事をすると、レイチェルは前を向いたまま、そうか、と呟いた。
そう、意識は保っているが、もう体は動かない。闇を消すために全身から光を放った俺は、急速に力を失って倒れ込んだんだ。
再び宿った光の力だったけれど、山全体の闇を払うには、全て出しきるしかなかった。
だけどレイチェルがすぐに俺を助け起こし、そのまま背負ってくれたんだ。
まるで予見していたように、スムーズな動きだった。きっとこうなる可能性は高いと思っていたんだ。
「山を降りる前にも言ったと思うが、なぜ謝る?キミが光の力を使ったおかげで、我々の生存率が大きく上がったんだ。その結果キミは動けなくなったが、それをフォローするのは私の役目だ。お互い様じゃないのか?」
「・・・そうだったな、ありがとうレイチェル。助かったよ」
「こちらこそだ、アラタ。あとは私にまかせておけ」
頼もしい言葉を口にするレイチェルに感謝して、俺は身を任せた。
そして二時間程走り続けて、俺達は無事にパウンド・フォーを降りる事ができた。
山を降りた頃には、俺が使った光の力も消えかかっていた。光が消えたらまたトバリが現れるのではないか?そう警戒したが、レイチェルが店長にもらったというガラス玉を地面にぶつけて割ると、眩い光が溢れ出して再び闇を遠ざけたのだ。
これは切り札としてとっておいたらしい。本当に最後の最後で生きる道を繋いでくれた。
みんな疲れ果てていたけれど、気力を振り絞って走った。
そして登頂前に泊まった小屋まで辿り着き、なんとか無事に全員が生還する事ができた。
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