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1075 残るか降りるか
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「・・・・・これはちょっと、まずいかもしれないな」
レイチェルは右手を腰に当て、標高3000メートル地点から山裾に目を向けて、眉間にシワを寄せた。
「どうした?なにかあったのか?」
後ろから声をかけたのは、ゴールド騎士のアルベルト。
全員の安否を確認し、現状の確認もできたので、下山するための準備をしていたところだった。
「ああ・・・これは想定できなかった・・・」
レイチェルはチラリとアルベルトに目を向けると、下を見て見ろと言うように、視線で促した。
「下になにかあるのか?・・・っ!?」
レイチェルの隣に立ったアルベルトは、促されるまま山裾に顔を向け、そして言葉を詰まらせた。
山裾までは緩やかな坂になっている。目の前に広がる生い茂る樹々、そしてその樹々の陰で蠢く無数の闇の渦・・・・・そう、黒渦だ。
レイチェル達の立っている3000メートル地点から上は晴れ間が覗いているが、ここより下はまだ暗闇が山を包み込んでいたのだ。
「おい、レイチェル・・・これどうなってんだ?闇は晴れたんじゃねぇのかよ?」
「私もそう思ったんだがな・・・少し考えがあまかったようだ。実際この闇を見ていると、少しづつ消えてはいるようなんだ。闇が消えるまでここで待っていれば、安全に下山する事はできる。ただな、それを待っていられるかと言うと・・・分かるだろ?」
そこまで話して、レイチェルは空を見上げた。
闇が晴れたおかげで空はよく見える、そして陽はだいぶ傾いてきていた。
アルベルトも顔を上げて、レイチェルの言わんとする事を察した。
「・・・日没まであと2~3時間ってところか。ここで闇が消えるのを待っている時間はなさそうだな」
夜になればトバリが出現し襲われるだろう。いかに闘気や光の力があると言っても、朝まで凌ぐ事はできないだろう。ならばイチかバチか、山を降りた方が生き残れる可能性はあるかもしれない。
「アルベルト、どうする?この隊のリーダーはお前だ。私はお前の決定に従おう。だが私の意見を言わせてもらうなら、ここで一晩凌げるとは思えない。爆発で山の地形も変わって洞窟も破壊された。身を隠す場所もないからな」
「そうだな、加えてメンバーの半分は力を使い果たしている。歩くだけでやっとだ・・・だけど行くしかねぇだろうな」
倒れていたアゲハもリーザも目を覚ましたが、二人とも戦う力は残っていない。
ユーリも魔力はほとんど残っていないし、アラタも自力で歩く事がやっとの状態だった。
騎士団も、レイマートは毒から回復したばかりであり、青魔法使いのエミリーも魔力が枯渇寸前である。
「戦えるのは、私とお前、リカルドにレミューとエクトール、魔法使いはフィルとロゼか・・・護りながらの戦いは厳しいが、やるしかないな」
レイチェルは頭の中で現在の戦力を分析しつつ、眼下で蠢く闇を見据えた。
ほんの数十メートル先からは、真っ暗な闇に覆われた別世界と化している。うかつに足を踏み入れればそのまま呑まれてしまうだろう。
「蛇を倒して師団長とも一戦交えて、やっと帰れると思ったのに最後にこれかよ。たくっ、冗談キツイぜ」
体をほぐすように肩を回し、アルベルトも眼下に広がる闇を見ながら、大きく息を吐き出した。
文句を口にしているが、その目には力がある。アルベルトはこの闇に入っても、全員が生きて抜け出せると言う自信を持っていた。
「フッ、それじゃあみんなに話してこようか。あまり時間はないから、早く隊列も決めないとな」
二人はもう一度、山を囲むように広がる闇に目を落とすと、踵を返して仲間達が待つ場所へと足を進ませた。
レイチェルは右手を腰に当て、標高3000メートル地点から山裾に目を向けて、眉間にシワを寄せた。
「どうした?なにかあったのか?」
後ろから声をかけたのは、ゴールド騎士のアルベルト。
全員の安否を確認し、現状の確認もできたので、下山するための準備をしていたところだった。
「ああ・・・これは想定できなかった・・・」
レイチェルはチラリとアルベルトに目を向けると、下を見て見ろと言うように、視線で促した。
「下になにかあるのか?・・・っ!?」
レイチェルの隣に立ったアルベルトは、促されるまま山裾に顔を向け、そして言葉を詰まらせた。
山裾までは緩やかな坂になっている。目の前に広がる生い茂る樹々、そしてその樹々の陰で蠢く無数の闇の渦・・・・・そう、黒渦だ。
レイチェル達の立っている3000メートル地点から上は晴れ間が覗いているが、ここより下はまだ暗闇が山を包み込んでいたのだ。
「おい、レイチェル・・・これどうなってんだ?闇は晴れたんじゃねぇのかよ?」
「私もそう思ったんだがな・・・少し考えがあまかったようだ。実際この闇を見ていると、少しづつ消えてはいるようなんだ。闇が消えるまでここで待っていれば、安全に下山する事はできる。ただな、それを待っていられるかと言うと・・・分かるだろ?」
そこまで話して、レイチェルは空を見上げた。
闇が晴れたおかげで空はよく見える、そして陽はだいぶ傾いてきていた。
アルベルトも顔を上げて、レイチェルの言わんとする事を察した。
「・・・日没まであと2~3時間ってところか。ここで闇が消えるのを待っている時間はなさそうだな」
夜になればトバリが出現し襲われるだろう。いかに闘気や光の力があると言っても、朝まで凌ぐ事はできないだろう。ならばイチかバチか、山を降りた方が生き残れる可能性はあるかもしれない。
「アルベルト、どうする?この隊のリーダーはお前だ。私はお前の決定に従おう。だが私の意見を言わせてもらうなら、ここで一晩凌げるとは思えない。爆発で山の地形も変わって洞窟も破壊された。身を隠す場所もないからな」
「そうだな、加えてメンバーの半分は力を使い果たしている。歩くだけでやっとだ・・・だけど行くしかねぇだろうな」
倒れていたアゲハもリーザも目を覚ましたが、二人とも戦う力は残っていない。
ユーリも魔力はほとんど残っていないし、アラタも自力で歩く事がやっとの状態だった。
騎士団も、レイマートは毒から回復したばかりであり、青魔法使いのエミリーも魔力が枯渇寸前である。
「戦えるのは、私とお前、リカルドにレミューとエクトール、魔法使いはフィルとロゼか・・・護りながらの戦いは厳しいが、やるしかないな」
レイチェルは頭の中で現在の戦力を分析しつつ、眼下で蠢く闇を見据えた。
ほんの数十メートル先からは、真っ暗な闇に覆われた別世界と化している。うかつに足を踏み入れればそのまま呑まれてしまうだろう。
「蛇を倒して師団長とも一戦交えて、やっと帰れると思ったのに最後にこれかよ。たくっ、冗談キツイぜ」
体をほぐすように肩を回し、アルベルトも眼下に広がる闇を見ながら、大きく息を吐き出した。
文句を口にしているが、その目には力がある。アルベルトはこの闇に入っても、全員が生きて抜け出せると言う自信を持っていた。
「フッ、それじゃあみんなに話してこようか。あまり時間はないから、早く隊列も決めないとな」
二人はもう一度、山を囲むように広がる闇に目を落とすと、踵を返して仲間達が待つ場所へと足を進ませた。
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