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1066 光の本質
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黒渦だと!?やはりデュークの力が暴走しているのか!
デュークめ、いったい何があったと言うんだ!?
貴様が力を暴走させるほど、追い詰められたと言うのか!?
やはりこいつらの相手をしている場合ではない。一秒でも早くデュークを止めなければ、帝国にも大きな被害がでる。
いつもと違う様子が気にかかって追いかけて来てみたが、予感的中だったな。
まさか、黒渦がこの私に食ってかかるとはな!
だが・・・
「このスカーレット・シャリフを舐めるなァァァァァーーーーーーーーッツ!」
背後に現れた闇の渦が、大口を開けてスカーレットを飲みこもうと襲い掛かった!
そして闇の口がスカーレットの緋色の髪に触れそうになったその時、スカーレットの全身から赤き魔力が放出された!
純粋なる魔力を解き放つこの攻撃は、魔力開放!
予備動作無しで、手を使う事も無く発する事ができるこの技は、黒魔法使い最速の攻撃方法である。
火の精霊の加護を強く受けており、自身も火魔法に長けているスカーレット・シャリフ。
その赤く色付けられた魔力が、大口を開けた闇を吹き飛ばした!
スカーレットの魔力で焼かれ、散り散りになって消えゆく闇を一瞥すると、スカーレットは地上のアルベルト達に顔向けた。
「・・・・・命拾いしたな」
それだけを言葉にすると、スカーレットは風魔法を使い、この闇の世界を作り出した男の元へと飛び去った。
「ぐっ・・・」
飛び去って行くスカーレットを、アルベルトは追いかける事ができなかった。
そしてスカーレットの姿が見えなくなると、その場に剣を刺して膝を着いた。
炎の獅子に体内を焼かれたダメージは大きく、とても動ける状態ではなかった。この場で剣を構えて睨みを効かせていただけでも、並外れた精神力が成せる業だった。
「アルベルト様!」
重症のアルベルトにロゼが駆け寄ると、すぐさまヒールをかけた。
「うぐっ!く・・・ロ、ロゼ、お、俺はいい、フィルとエミリーを・・・」
「しゃべらないでください!フィルもエミリーももう大丈夫です!アルベルト様はご自分の体を心配してください!」
部下を想ってのアルベルトの言葉だった。
だが体の中まで焼かれたアルベルトは、自分が思っているよりも危険な状態であり、ロゼが厳しい口調で叱責をする事も無理からぬ事だった。
「ああ、そうだな、悪い・・・」
「アルベルト様・・・私もあの光が気になります。でも体を治さなけば何もできません。今は大人しく・・・」
「ロゼ!」
ロゼの言葉を途中で遮ると、アルベルトは左手でロゼの肩を掴んで自分の方に引き寄せた。
そして右手で剣を掴むと、正面に向かって突き出した!
「えっ!?」
自分の顔のすぐ横を鋭い刃が通過し、ロゼの表情が驚きで強張る。
「・・・たくっ・・・マジかよ」
アルベルトが闘気を纏わせた剣は、目の前で蠢く黒い渦に突き刺さっていた。
闇が痛みを感じるとは思えない。だが黒渦は闘気に焼かれ火が付くと、まるで苦痛を感じているように唸り、そして燃え尽きるように消失していった。
もしアルベルトが闘気を習得していなければ、黒渦を撃退する事はできなかっただろう。
「ア、アルベルト様・・・い、今のは・・・」
ロゼは後ろを振り返り、たった今自分に襲い掛かろうとしたモノの正体を確認した。
「ロゼは見た事がなかったか?・・・今のがトバリだ」
「っ!もしかしてと思いましたが・・・やっぱり今のが、夜を総べるモノ、闇の主トバリでしたか。突然暗闇に包まれましたが、この空間がトバリを呼んだのでしょうか?」
夜は外に出てはいけない。ロゼに限らず、この世界の人々はそれが当たり前の世界で生きてきた。
夜、外に出てしまえば、トバリと呼ばれる闇の主に食われてしまうからだ。
したがって、トバリと呼ばれる黒渦の姿を知っている者は非常に少なく、知らない事こそ当然と言っていい事だった。
「そう考えていいだろう。あの緋色の髪の女が、黒い光の暴走と言っていた・・・どうやら相方がいるようだが、そいつがこの状況を作りあげたらしい。この闇がどこまで広がっているのか分からんが、この闇は夜の闇と変わらんようだな・・・ロゼ、すまんが回復を急いでくれ。動ける程度で構わん」
「こんな事ができるなんて・・・分かりました、急ぎます!」
ロゼのヒールを受けながら、アルベルトはこの闇に包まれた世界で、強い光を放っている何者かに目を向けた。
あれはなんだ?
俺の闘気や、アラタの光の力と似ているようにも見えるが、本質はまったく違う。
これだけ離れていても、背筋がゾッとするような冷たさを感じる。
アラタの光は生命の力が溢れていた。熱く強い輝きを持った力だった。
だがこの何者かの光、スカーレットの言葉を借りれば、黒い光を暴走させた者は、まるでこの世界の全てを憎み破壊しようとしているような、恐ろしい程の冷たい光を放っている。
ここで止めなければならない
直感で理解した
この黒い光を放っている者こそ、この戦争の核になる者だ
ここでコイツを止めなければ、この戦争・・・クインズベリーは負けるかもしれない
デュークめ、いったい何があったと言うんだ!?
貴様が力を暴走させるほど、追い詰められたと言うのか!?
やはりこいつらの相手をしている場合ではない。一秒でも早くデュークを止めなければ、帝国にも大きな被害がでる。
いつもと違う様子が気にかかって追いかけて来てみたが、予感的中だったな。
まさか、黒渦がこの私に食ってかかるとはな!
だが・・・
「このスカーレット・シャリフを舐めるなァァァァァーーーーーーーーッツ!」
背後に現れた闇の渦が、大口を開けてスカーレットを飲みこもうと襲い掛かった!
そして闇の口がスカーレットの緋色の髪に触れそうになったその時、スカーレットの全身から赤き魔力が放出された!
純粋なる魔力を解き放つこの攻撃は、魔力開放!
予備動作無しで、手を使う事も無く発する事ができるこの技は、黒魔法使い最速の攻撃方法である。
火の精霊の加護を強く受けており、自身も火魔法に長けているスカーレット・シャリフ。
その赤く色付けられた魔力が、大口を開けた闇を吹き飛ばした!
スカーレットの魔力で焼かれ、散り散りになって消えゆく闇を一瞥すると、スカーレットは地上のアルベルト達に顔向けた。
「・・・・・命拾いしたな」
それだけを言葉にすると、スカーレットは風魔法を使い、この闇の世界を作り出した男の元へと飛び去った。
「ぐっ・・・」
飛び去って行くスカーレットを、アルベルトは追いかける事ができなかった。
そしてスカーレットの姿が見えなくなると、その場に剣を刺して膝を着いた。
炎の獅子に体内を焼かれたダメージは大きく、とても動ける状態ではなかった。この場で剣を構えて睨みを効かせていただけでも、並外れた精神力が成せる業だった。
「アルベルト様!」
重症のアルベルトにロゼが駆け寄ると、すぐさまヒールをかけた。
「うぐっ!く・・・ロ、ロゼ、お、俺はいい、フィルとエミリーを・・・」
「しゃべらないでください!フィルもエミリーももう大丈夫です!アルベルト様はご自分の体を心配してください!」
部下を想ってのアルベルトの言葉だった。
だが体の中まで焼かれたアルベルトは、自分が思っているよりも危険な状態であり、ロゼが厳しい口調で叱責をする事も無理からぬ事だった。
「ああ、そうだな、悪い・・・」
「アルベルト様・・・私もあの光が気になります。でも体を治さなけば何もできません。今は大人しく・・・」
「ロゼ!」
ロゼの言葉を途中で遮ると、アルベルトは左手でロゼの肩を掴んで自分の方に引き寄せた。
そして右手で剣を掴むと、正面に向かって突き出した!
「えっ!?」
自分の顔のすぐ横を鋭い刃が通過し、ロゼの表情が驚きで強張る。
「・・・たくっ・・・マジかよ」
アルベルトが闘気を纏わせた剣は、目の前で蠢く黒い渦に突き刺さっていた。
闇が痛みを感じるとは思えない。だが黒渦は闘気に焼かれ火が付くと、まるで苦痛を感じているように唸り、そして燃え尽きるように消失していった。
もしアルベルトが闘気を習得していなければ、黒渦を撃退する事はできなかっただろう。
「ア、アルベルト様・・・い、今のは・・・」
ロゼは後ろを振り返り、たった今自分に襲い掛かろうとしたモノの正体を確認した。
「ロゼは見た事がなかったか?・・・今のがトバリだ」
「っ!もしかしてと思いましたが・・・やっぱり今のが、夜を総べるモノ、闇の主トバリでしたか。突然暗闇に包まれましたが、この空間がトバリを呼んだのでしょうか?」
夜は外に出てはいけない。ロゼに限らず、この世界の人々はそれが当たり前の世界で生きてきた。
夜、外に出てしまえば、トバリと呼ばれる闇の主に食われてしまうからだ。
したがって、トバリと呼ばれる黒渦の姿を知っている者は非常に少なく、知らない事こそ当然と言っていい事だった。
「そう考えていいだろう。あの緋色の髪の女が、黒い光の暴走と言っていた・・・どうやら相方がいるようだが、そいつがこの状況を作りあげたらしい。この闇がどこまで広がっているのか分からんが、この闇は夜の闇と変わらんようだな・・・ロゼ、すまんが回復を急いでくれ。動ける程度で構わん」
「こんな事ができるなんて・・・分かりました、急ぎます!」
ロゼのヒールを受けながら、アルベルトはこの闇に包まれた世界で、強い光を放っている何者かに目を向けた。
あれはなんだ?
俺の闘気や、アラタの光の力と似ているようにも見えるが、本質はまったく違う。
これだけ離れていても、背筋がゾッとするような冷たさを感じる。
アラタの光は生命の力が溢れていた。熱く強い輝きを持った力だった。
だがこの何者かの光、スカーレットの言葉を借りれば、黒い光を暴走させた者は、まるでこの世界の全てを憎み破壊しようとしているような、恐ろしい程の冷たい光を放っている。
ここで止めなければならない
直感で理解した
この黒い光を放っている者こそ、この戦争の核になる者だ
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