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1064 予期せぬ状況
しおりを挟む「ッ!これは・・・デューク、まさか!?」
突然辺り一帯が闇に覆われ、スカーレット・シャリフは空を見上げた。
さっきまで青空が広がっていたのに、今は一切の陽の光が遮られて暗闇が空を埋めている。
帝国軍師団長であるスカーレットには、この現象に覚えがあった。
「な、なんだこの闇は!?」
ゴールド騎士アルベルト・ジョシュアは、突然闇に包まれるという不測の事態に足を止めた。
スカーレットとの戦いの最中だったが、この闇はとても無視できるものではなかった。
首を回して辺りを見回し、そして闇を照らす光に気が付いた。
「あれは・・・」
陽の光が遮られても、完全なる暗闇ではなかった。
少し離れた場所で、大きな輝きを放つ光りが見える。
恐ろしく邪悪な気を発しているところを見ると、おそらくあれが原因なのだろう。
「黒い光の暴走・・・まさか、あのデュークが追い詰められたのか?」
アルベルトと対峙していたスカーレットも、アルベルトに注意を払いながらも、光に意識を向けていた。
光りがスカーレットの顔を照らし、そして垣間見えた表情は、眉根を寄せた険しいものだった。
この闇は帝国の仕業かと思ったが、スカーレットにとっても予期せぬ状況らしい。
「へぇ、この状況・・・どうやらお前ら帝国の仕業のようだな?俺らをここで足止めして、戦力を分断させるのが目的だったようだが、お前の相方の方がヤバいみたいだな?」
アルベルトは振り返らなかったが、自分の後ろで膝を着き、息を切らしている三人に意識を向けた。
大蛇サローンを倒した後、レイマート達への加勢に向かおうとしたところで、突如現れ攻撃を仕掛けて来たのは、深紅のローブを纏った緋色の髪の女だった。
帝国軍黒魔法兵団団長にして、第四師団長スカーレット・シャリフ。
アルベルトに油断と言う油断があったわけではない。
だが大蛇サローンを倒し、仲間の無事を確認できた事で生じた僅かな気の緩み、そこを突かれて先制攻撃を許してしまった。
最初に狙われたのはフィル達、三人のシルバー騎士だった。
運悪く、青魔法使いのエミリーの魔力が切れていた事も重なり、結界を張る事ができなかった。
そのため三人は爆発魔法の直撃を受けてしまう。
すぐに反撃に移ったアルベルトにより、更なる追撃は許さなかったが、スカーレットの魔力はシルバー騎士三人を遥かに凌駕しており、三人が受けたダメージは大きかった。
その結果、白魔法使いロゼのヒールでも、いまだ回復に時間がかかっており、戦線離脱を余儀なくされていた。
なぜスカーレットは先手を取れたのに、最初にゴールド騎士のアルベルトを狙わなかったのか?
それは弱い者から順に倒していった方が効率がいい。そういう考え方もなかったわけではない。
だが最大の理由は、一騎当千と謳われるクインズベリーのゴールド騎士が相手でも、一対一ならば勝てるという、スカーレットの自信に他ならなかった。
「・・・貴様の相手をしている場合ではなくなった」
黒い光によって生じたこの闇の空間を見回すと、スカーレットはアルベルトに視線を向けて、
小さくそう呟いた。
そして一歩後ろへ下がると、アルベルトがニヤリと笑って口を開いた。
「おいおい、自分から仕掛けておいて、今更どこに行くんだよ?」
スカーレットが下がっても、アルベルトに逃がすつもりはさらさら無かった。
不意を突かれて、仲間を攻撃された事による怒りも大きいが、帝国の師団長と一対一という図式は、アルベルトとしても好ましかった。
大陸一の軍事国家、ブロートン帝国の師団長が単独で行動しているのだ。
今ここでスカーレットの首を取る事ができれば、これからの戦況に大きな影響を与えるだろう。
そしてあの黒い光の発生源で、何が起きているのか?それは分からない。
だがスカーレットの仲間がいる事は間違いない。合流させると面倒になるだろう。
ここまで自分とスカーレットは、ほぼ互角の戦いを繰り広げている。
だからこそ合流させてはならない!今はスカーレット撃破できる千載一遇の機会なのだ!
「お前はここで俺に斬られるんだ。逃げずにかかって来いよ、師団長さん?」
右手に握る剣先を突き付けて、アルベルトはスカーレットを睨みつけた。
「・・・フン」
だがアルベルトの挑発も意に介さず、スカーレットは風魔法を使い空中に浮かび上がる。
ギリギリまで視線を切らず、アルベルトと睨み合いながら、少しづつ後方へと下がって行った。
そして暗闇に紛れ、お互いの姿が認識できないくらいの距離を取った時、スカーレットは身を翻した。
「黙って行かせると思ったか!」
スカーレットが背を向けた瞬間、アルベルトは地面を強く蹴って飛び出した!
スカーレットが下がっても追いかけず、足に闘気を溜めておいて、この瞬間を待っていた。
なぜならば、一足で追いつけるからだ。
溜めに溜めた闘気を爆発させて地面を蹴りつける!
その推進力は、瞬き程の一瞬でアルベルトをスカーレットの元に運んだ。
スカーレットが身を翻した時、アルベルトはスカーレットの背中をとっていたのである。
「なッ!?」
「もらった!」
気配を察し、スカーレットが振り返ろうとした時には、すでにアルベルトの剣がスカーレットの背中に振り下ろされていた。
突然辺り一帯が闇に覆われ、スカーレット・シャリフは空を見上げた。
さっきまで青空が広がっていたのに、今は一切の陽の光が遮られて暗闇が空を埋めている。
帝国軍師団長であるスカーレットには、この現象に覚えがあった。
「な、なんだこの闇は!?」
ゴールド騎士アルベルト・ジョシュアは、突然闇に包まれるという不測の事態に足を止めた。
スカーレットとの戦いの最中だったが、この闇はとても無視できるものではなかった。
首を回して辺りを見回し、そして闇を照らす光に気が付いた。
「あれは・・・」
陽の光が遮られても、完全なる暗闇ではなかった。
少し離れた場所で、大きな輝きを放つ光りが見える。
恐ろしく邪悪な気を発しているところを見ると、おそらくあれが原因なのだろう。
「黒い光の暴走・・・まさか、あのデュークが追い詰められたのか?」
アルベルトと対峙していたスカーレットも、アルベルトに注意を払いながらも、光に意識を向けていた。
光りがスカーレットの顔を照らし、そして垣間見えた表情は、眉根を寄せた険しいものだった。
この闇は帝国の仕業かと思ったが、スカーレットにとっても予期せぬ状況らしい。
「へぇ、この状況・・・どうやらお前ら帝国の仕業のようだな?俺らをここで足止めして、戦力を分断させるのが目的だったようだが、お前の相方の方がヤバいみたいだな?」
アルベルトは振り返らなかったが、自分の後ろで膝を着き、息を切らしている三人に意識を向けた。
大蛇サローンを倒した後、レイマート達への加勢に向かおうとしたところで、突如現れ攻撃を仕掛けて来たのは、深紅のローブを纏った緋色の髪の女だった。
帝国軍黒魔法兵団団長にして、第四師団長スカーレット・シャリフ。
アルベルトに油断と言う油断があったわけではない。
だが大蛇サローンを倒し、仲間の無事を確認できた事で生じた僅かな気の緩み、そこを突かれて先制攻撃を許してしまった。
最初に狙われたのはフィル達、三人のシルバー騎士だった。
運悪く、青魔法使いのエミリーの魔力が切れていた事も重なり、結界を張る事ができなかった。
そのため三人は爆発魔法の直撃を受けてしまう。
すぐに反撃に移ったアルベルトにより、更なる追撃は許さなかったが、スカーレットの魔力はシルバー騎士三人を遥かに凌駕しており、三人が受けたダメージは大きかった。
その結果、白魔法使いロゼのヒールでも、いまだ回復に時間がかかっており、戦線離脱を余儀なくされていた。
なぜスカーレットは先手を取れたのに、最初にゴールド騎士のアルベルトを狙わなかったのか?
それは弱い者から順に倒していった方が効率がいい。そういう考え方もなかったわけではない。
だが最大の理由は、一騎当千と謳われるクインズベリーのゴールド騎士が相手でも、一対一ならば勝てるという、スカーレットの自信に他ならなかった。
「・・・貴様の相手をしている場合ではなくなった」
黒い光によって生じたこの闇の空間を見回すと、スカーレットはアルベルトに視線を向けて、
小さくそう呟いた。
そして一歩後ろへ下がると、アルベルトがニヤリと笑って口を開いた。
「おいおい、自分から仕掛けておいて、今更どこに行くんだよ?」
スカーレットが下がっても、アルベルトに逃がすつもりはさらさら無かった。
不意を突かれて、仲間を攻撃された事による怒りも大きいが、帝国の師団長と一対一という図式は、アルベルトとしても好ましかった。
大陸一の軍事国家、ブロートン帝国の師団長が単独で行動しているのだ。
今ここでスカーレットの首を取る事ができれば、これからの戦況に大きな影響を与えるだろう。
そしてあの黒い光の発生源で、何が起きているのか?それは分からない。
だがスカーレットの仲間がいる事は間違いない。合流させると面倒になるだろう。
ここまで自分とスカーレットは、ほぼ互角の戦いを繰り広げている。
だからこそ合流させてはならない!今はスカーレット撃破できる千載一遇の機会なのだ!
「お前はここで俺に斬られるんだ。逃げずにかかって来いよ、師団長さん?」
右手に握る剣先を突き付けて、アルベルトはスカーレットを睨みつけた。
「・・・フン」
だがアルベルトの挑発も意に介さず、スカーレットは風魔法を使い空中に浮かび上がる。
ギリギリまで視線を切らず、アルベルトと睨み合いながら、少しづつ後方へと下がって行った。
そして暗闇に紛れ、お互いの姿が認識できないくらいの距離を取った時、スカーレットは身を翻した。
「黙って行かせると思ったか!」
スカーレットが背を向けた瞬間、アルベルトは地面を強く蹴って飛び出した!
スカーレットが下がっても追いかけず、足に闘気を溜めておいて、この瞬間を待っていた。
なぜならば、一足で追いつけるからだ。
溜めに溜めた闘気を爆発させて地面を蹴りつける!
その推進力は、瞬き程の一瞬でアルベルトをスカーレットの元に運んだ。
スカーレットが身を翻した時、アルベルトはスカーレットの背中をとっていたのである。
「なッ!?」
「もらった!」
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