異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
上 下
1,047 / 1,370

1046 信用

しおりを挟む
こいつ、見た事がある。
クインズベリーの戦いの時にいたな・・・確かレイジェスの店員だったはずだ。

直接話した事はないが、見覚えのある顔にレイマートは記憶を辿った。


「あ?なにガン見してんだよ?ほら、足元来てんぞ?」

レイマートと目があったリカルドは、顎をクイっと動かして、レイマートの足元を指した。
数匹の蛇が今にも噛みつきそうに口を開き、足元に寄ってきている。

「・・・フン」

レイマートもすでにそれは察していた。
視線を向ける事もなく、飛び掛かってきた蛇達を蹴り飛ばして片付ける。

「お~、カッコイイじゃん、さすがゴールド騎士だなっと!」

レイマートの蹴りを見て口笛を吹くと、リカルドは自分に向かって来る大蛇に狙いを付けて、再び矢を射った。
5メートル級の大蛇だったが、リカルドの矢が眉間に突き刺さると、グラリと体勢を崩して前のめりに倒れる。

赤茶色の粘土質の土に大蛇が頭から落ちると、粘り気のある土が飛び跳ね、リカルドのシャツやズボンにもべったりと張り付いた。

「うぉっ、すっげぇ跳ねんな。さすが大蛇、重てぇんだな?身が詰まってんのは良い事だけどよ」

シャツに着いた土を払い落しながら、リカルドは足元で動かなくなった大蛇を観察するように見た。

「・・・頭一発か、思ってたよりあっけねぇな」

「そいつはでかいだけで闇の蛇じゃない!瘴気を発している闇の蛇には、並みの攻撃は通用しないぞ!さっきお前の矢が白蛇に刺さったのは、あいつがまだ闇の瘴気を発していなかったからだ!」

飛び掛かって来る蛇達を手刀で叩き落し、蹴りで頭を破裂させ、尻尾を掴んで樹に投げつける。
レイマートは蛇の群れを相手にしながら、闇の蛇を知らないリカルドに向かって、声を大にしてその生態を伝えた。

「へぇ~・・・そういや騎士団の連中もそんな事言ってたな。でっけぇ蛇は全部闇の蛇かと思ってたわ、って、おい!早速かよ!?」

レイマートに言葉を返したところで、たった今リカルドが倒した大蛇よりも、一回りも二回りも大きい蛇が、猛スピードで向かってきた。おそらく7~8メートルはあるだろう。緑の縞模様で、黄色がかった目はリカルドを獲物として狙いを付けていた。そしてその太く長い体からは、真っ黒な瘴気が滲み出ていた。


「んな事言ってもよぉ、ある武器で戦うしかねぇじゃん?まぁ見てろって」

そう言ってリカルドは矢筒から、1本の土色の矢を取り出すと、大蛇に向かって構えた。

「フシャァァァァァァァーーーーーーーーッツ!」

「ぶっ殺してやん・・・!?」

大蛇が上下に大きく口を開いて、リカルドに飛び掛かったその時、リカルドの脇を黒い影が颯爽と駆け抜けて行った。



長い黒髪が風になびく。
両手で持ち構える長物の刃は、緑色の風で覆われていた。
風は刃をより鋭く研ぎ澄ませている。その斬撃は全てを斬り裂く事だろう。

地面を強く蹴りつけて、蛇の頭の高さまで飛び上がると、アゲハは緑の風を纏った薙刀を振り下ろした!

「ハァァァァァーーーッツ!」

気合一線!8メートルはあるだろう大蛇を、一太刀で頭から両断してみせる。

そして着地と同時に右足を軸に、独楽のように体を回転させながら薙刀を振るうと、突風が巻き起こり地面を這う蛇達を吹き飛ばした。


「うおっ!?んぐ、ぺっ!ぺっ!おいアゲハ!口ん中に砂入ったぞ!砂は食い物じゃねぇんだぞ!」

顔に風をぶつけられたリカルドが、砂を吐きながら抗議すると、アゲハに続くもう一つの影がリカルドの頭を飛び超えた。



「やるな、元師団長ってのは伊達じゃないようだね」

大剣を振り被ったリーザ・アコスタは、アゲハの薙刀で真っ二つに裂かれた大蛇の死骸を一瞥し、その実力を認める言葉を口にした。

元帝国軍師団長という肩書きは聞いていたが、どの程度の力量なのかは見て見なければ分からない。
もちろんパウンド・フォーまで付いて来た実力を考えれば、ある程度はできるだろうと思っていた。
だが今の一太刀で分かった。どうやら自分はアゲハという人間を過小評価していたようだ。
身のこなし、太刀筋、そして風・・・・・この女、強い。


「ハァッツ!」

手近な大蛇に狙いを付けて、一太刀で首を撥ね飛ばす!
そしてそのまま手首を返すと、剣の腹で残った胴体を打ち付けた!それは大蛇の体を宙に打ち上げる程の威力だった。
そして打ち上げられた大蛇は、重力に従い落ちて来る。落ちる先には数十匹の蛇達が群がっていたが、優に100キロは超える大蛇の体を支えられるはずもなく、あっけなく潰されてしまった。



「やるな、さすが女王の専属護衛というところか」

リーザの立ち回りを見たアゲハもまた、その力を認めたように言葉を向ける。

アゲハは風の精霊の力を借りて、強化した刃で大蛇を両断したが、リーザは純粋な腕力で首を斬り飛ばした。同じ体力型でも、腕力ではリーザがアゲハを大きく上回っていた。


「あんたもなかなかのものだ。鋭い太刀に、良い身のこなしだったよ」

大剣を地面に向けて振るい、刃に付いた大蛇の血を払い落とすと、

アゲハとリーザが視線を交わす。

リーザは女王の護衛として、いくら女王がアゲハと認めたと言っても、完全には警戒を解いていなかった。一度は帝国に籍を置いていたのだ、手放しで信じるには、それに足るものをまだ見ていない。

だが、この戦いぶり、そして風がリーザの心の壁を取り払った。

「風を感じろ、か・・・師匠、確かにこの風は清らかですね」

「ん、風がどうかしたのか?」

「いや、こっちの話しだ。それよりさっさと残りの蛇を一掃してやろうじゃないか、アゲハ」

リーザが自分達を取り囲む大蛇達に大剣を向ける。

「・・・フッ、そうだな。さっさ片づけてやろうか、リーザ」

リーザに名前を呼ばれたのは初めてだった。
この遠征中、どこか距離を置かれているように感じていた。だがどうやら自分を認めてくれたようだ。

リーゼの気持ちに応えるように、アゲハはリーザの背中に自分の背を預け、大蛇に向かって薙刀を構えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~

新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」 多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。 ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。 その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。 彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。 これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。 ~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

処理中です...