異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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997 今の力

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「・・・アルベルト・ジョシュア、か・・・何の用だ?」

週の半分は城へ来ていると言っても、ゴールド騎士のアルベルトと顔を合わせるのは数か月ぶりだった。

まるで待ち伏せていたように現れたアルベルトに、レイチェルは足を止めると、警戒するように一定の距離を保った。
そしていつ仕掛けられても対応できるように、アルベルトの目をじっと見つめ、視線を切らさなかった。

「おいおい、そう露骨に警戒するなよ。今更俺がお前に何かするわけないだろ?あの時だって、お互いに戦う必要があったから戦っただけだろ?」

アルベルトは敵意は無いと伝えるように、軽い口調で話しながら、両手を肩まで上げて見せた。

「・・・まぁ、それもそうだな。私を待ち伏せていたから、あの時のリベンジにでも来たのかと思ったよ」

「・・・あの時よりずっと腕を上げたみたいだな?だがそれはお前だけじゃない」

「そのようだな、さすがゴールド騎士だ。身に纏う空気が違う・・・今やればどっちが勝つかな?」

アルベルトが探るような目を向けると、レイチェルもそれを受けて言葉を返した。
言葉だけ聞けばアルベルトを評価しているようだが、その口ぶりと表情からは、自分が上だという自信と確信が覗いて見える。

会話が止まり、アルベルトとレイチェルの間に緊張が走った。

二人の距離は3~4メートル程度開いているが、アルベルトとレイチェルにとっては一歩で詰めれる間合いである。今仕掛けようと思えば十分できる。

今ここで一戦交えてもいい。睨み合う両者の目はそう語っていた。

だがレイチェルもアルベルトも、ほとんど同時に戦闘態勢を解いた。

城の復興がほぼ完了したと言うのに、ここで争い被害を出すなどあってはならない。
一度は敵対して本気で戦った相手であるが、今は国のために共に戦う同士なのだ。

考えている事が同じであると感じ取ったアルベルトは、フッと小さく息をもらすと、通路の奥にクイっと親指を向けた。


「・・・お前と戦うつもりはない。少し話せないか?」

「・・・いいだろう」


レイチェルが了承すると、アルベルトは背中を向けて歩き出した。
その数歩後ろを付いて歩くレイチェルは、アルベルトの背中に目をやり、あらためてゴールド騎士の強さを感じとった。


隙が無い。


仮に今この背中に斬りかかったとしても、受け止められるか躱されるか・・・いずれにしろ当てる事はできないだろう。

やはりあの時よりも相当力を付けている。

敵として戦った時は実に手ごわかった。
だが今度の戦いは、同じクインズベリーの人間として、力を合わせて帝国と戦う事になる。


「・・・味方となると、ずいぶん頼もしいじゃないか」

アルベルトの背中を見ながら、レイチェルは小さく呟いた。

ゴールド騎士は一騎当千。その言葉は伊達ではない。
そしてこのアルベルトに並ぶもう一人の実力者、ゴールド騎士のフェリックス・ダラキアン。

三人目のゴールド騎士、レイマート・ハイランドは、アルベルトとフェリックスには一つ届いていないが、それでもゴールド騎士の名に恥じない力を持っている。

シルバー騎士もブロンズ騎士達も、日々厳しい訓練積んでいる。その実力は以前とは比べ物にならない

クインズベリーは、帝国と戦うための国力を着実に付けてきている。


「フッ、国を護る騎士団が、リサイクルショップの店員に、頼りっぱなしでいられないだろ?」

レイチェルの呟きが聞こえたのか、アルベルトは顔半分振り返ると、ニヤリと笑って見せた。

「なんだ、聞こえてたのか?まぁ、頼りにしてるよ」

「ったく、可愛げのねぇ女だな・・・ほら、ここだ」


通路の奥、目的の場所に着いて立ち止まると、アルベルトはその部屋の扉を開けると、手を差し向けて入るように促した。


「・・・お前は・・・」

室内にいた人物は、レイチェルの姿を見るとイスに座ったまま、挨拶でもするように片手を上げた。

「やぁ、待ってたよ、レイチェル・エリオット」

騎士というにはかなりの小柄で、おそらく身長は160cmに満たない。

切れ長の瞳に長いまつ毛。瞳の色も髪と同じ紫色。
少しシャープな顎のライン、全体的に線が細く、まるで女性のような印象を受ける。

腰まである長い紫色の髪を後ろで束ね、薄い桃色の唇から、軽い調子で言葉を発するその男は・・・・・

「ゴールド騎士、フェリックス・ダラキアンか・・・それと」

レイチェルが目を向けると、フェリックスの隣のイスに座っていた女性が腰を上げ、両手を腰の前で揃えて頭を下げた。
雪のように白い髪が、肩から滑るように落ちる。

そしてゆっくりと顔を上げると、小さく微笑みながら、レイチェルの目を見て言葉を口にした。


「闇の巫女、ルナ・フローレンスです。お久しぶりですね」
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