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【982 緑の炎】
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目が覚めた時、自分がどこにいるのか分からなかった。
見上げた空は真っ暗で、今が夜だという事は理解できた。
生い茂る草に顔が包まれていて、頭や背中に感じる冷たい感触に、自分が今、地面に倒れている事に気が付いて上半身を起こした。
なぜ自分がこんなところで寝ていたのか?
意識を失う直前まで、自分が何をしていたのか?覚醒したばかりの頭は膜を張ったようにぼんやりとしていたが、腹部や胸に走った痛みで思い出した。
「ッ!・・・そ、そうだ!王子!」
あの時俺は、王子の魔力を正面からまともに浴びて、吹き飛ばされたんだ!
そしてここは?
体の痛みなど気にしていられない。立ち上がって辺りを見回して見ると、ここが一面草花だけの広くひらけた場所だという事は分かった。
見覚えはあった。確か首都バンテージから、かなり離れた場所だ。
俺はこんなに遠くまで飛ばされたのか・・・
夜の冷たい風が頬を撫でると、だんだん頭がハッキリしてきた。
「・・・王子、なぜ・・・なぜ・・・・・」
あの時、なぜ一緒に逃げなかったんだ・・・・・
マルコ様を失った悲しみは、王子から生きる気力を奪う程深かったという事なのか・・・・・
「くそッ!」
両の拳を握り締めて俺は叫んだ。
悔しかった。何もかもが悔しかった。なぜ俺はこんなにも無力なんだ。
俺が強ければ・・・俺がもっと強ければ・・・俺が・・・・・・・
「・・・・・行かなきゃ・・・」
しばらく立ち尽くしていたが、やがて俺は首都に向かって歩き出した。
どのくらい気を失っていたか分からない。もう全てが終わっているかもしれない。
だけど俺は行かなければならない。
この戦争の結末を見届けるために・・・・・
「・・・・・おかしい」
感覚的なものだが、数時間は歩いたと思う。
平野を抜けて森に入り、一人歩き続けた。夜の森だ、静かなのは当然だと思う。
だが静か過ぎた。
枯れ枝を踏む音がやけに大きく響く。
静寂が耳に痛いくらいだ。
これが平時ならば気に留めなかったかもしれないが、今はそうではない。
立ち止まって周囲を見回して確信した。
この森からは、虫も動物も、何一つ気配が感じられない。
「・・・どういう事だ?」
気のせいではない。ジョルジュとは比べられるはずもないが、俺もカエストゥスの人間として、風の精霊の加護は受けている。集中して感覚を研ぎ澄ませば、虫や動物の動きくらいは感じ取れる。
だが何も感じられなかった。
今この森で動いているのは俺だけだ。
そしてその答えはすぐに分かった。
「ッ!?」
それは突然だった。
自分の背後で突然何かが動く気配を感じ、振り返った俺の目に飛び込んできたのは、ぐにゃりと歪んだ闇だった。
「なっ、あ・・・・・」
大きさで言えば、俺の背丈より少し大きいくらいだろうか。
どこまでも無限に広がる闇の中で、俺の目に映るその空間だけが歪んでいるのだ。
まるで嗤っているかのように。
これは・・・黒渦、なのか?
なぜここに黒渦が?どうして突然現れた?これはいったい・・・・・
様々な考えが頭を駆け巡り、俺の思考は一瞬だが停止して、目の前の黒渦に対して無防備に立ち尽くしてしまった。
それが命取りだった。
呆然とする俺に、渦は大きく口を開けて広がり、頭から丸呑みにしようと襲い掛かってきた。
「ッ!し、しまっ・・・!」
我に返ったがもう遅い。避けるタイミングが完全に一歩遅れてしまった。
闇に呑み込まれる・・・・・はずだった。
だがその時、突如俺の体が緑色の炎に包まれて燃え上がった。
「なにっ!?こ、これは・・・まさか!?」
風の精霊だ!
この緑色の炎は風の精霊だ!まさか、俺を護ってくれるのか?
俺を喰らおうとした闇の渦は、精霊の炎を浴びると、空中に霧散させられるように消えて行った。
「・・・・・風の精霊・・・・・俺を、助けてくれるのか」
体を包み込む緑色の炎が、夜の闇で揺らめいた。
見上げた空は真っ暗で、今が夜だという事は理解できた。
生い茂る草に顔が包まれていて、頭や背中に感じる冷たい感触に、自分が今、地面に倒れている事に気が付いて上半身を起こした。
なぜ自分がこんなところで寝ていたのか?
意識を失う直前まで、自分が何をしていたのか?覚醒したばかりの頭は膜を張ったようにぼんやりとしていたが、腹部や胸に走った痛みで思い出した。
「ッ!・・・そ、そうだ!王子!」
あの時俺は、王子の魔力を正面からまともに浴びて、吹き飛ばされたんだ!
そしてここは?
体の痛みなど気にしていられない。立ち上がって辺りを見回して見ると、ここが一面草花だけの広くひらけた場所だという事は分かった。
見覚えはあった。確か首都バンテージから、かなり離れた場所だ。
俺はこんなに遠くまで飛ばされたのか・・・
夜の冷たい風が頬を撫でると、だんだん頭がハッキリしてきた。
「・・・王子、なぜ・・・なぜ・・・・・」
あの時、なぜ一緒に逃げなかったんだ・・・・・
マルコ様を失った悲しみは、王子から生きる気力を奪う程深かったという事なのか・・・・・
「くそッ!」
両の拳を握り締めて俺は叫んだ。
悔しかった。何もかもが悔しかった。なぜ俺はこんなにも無力なんだ。
俺が強ければ・・・俺がもっと強ければ・・・俺が・・・・・・・
「・・・・・行かなきゃ・・・」
しばらく立ち尽くしていたが、やがて俺は首都に向かって歩き出した。
どのくらい気を失っていたか分からない。もう全てが終わっているかもしれない。
だけど俺は行かなければならない。
この戦争の結末を見届けるために・・・・・
「・・・・・おかしい」
感覚的なものだが、数時間は歩いたと思う。
平野を抜けて森に入り、一人歩き続けた。夜の森だ、静かなのは当然だと思う。
だが静か過ぎた。
枯れ枝を踏む音がやけに大きく響く。
静寂が耳に痛いくらいだ。
これが平時ならば気に留めなかったかもしれないが、今はそうではない。
立ち止まって周囲を見回して確信した。
この森からは、虫も動物も、何一つ気配が感じられない。
「・・・どういう事だ?」
気のせいではない。ジョルジュとは比べられるはずもないが、俺もカエストゥスの人間として、風の精霊の加護は受けている。集中して感覚を研ぎ澄ませば、虫や動物の動きくらいは感じ取れる。
だが何も感じられなかった。
今この森で動いているのは俺だけだ。
そしてその答えはすぐに分かった。
「ッ!?」
それは突然だった。
自分の背後で突然何かが動く気配を感じ、振り返った俺の目に飛び込んできたのは、ぐにゃりと歪んだ闇だった。
「なっ、あ・・・・・」
大きさで言えば、俺の背丈より少し大きいくらいだろうか。
どこまでも無限に広がる闇の中で、俺の目に映るその空間だけが歪んでいるのだ。
まるで嗤っているかのように。
これは・・・黒渦、なのか?
なぜここに黒渦が?どうして突然現れた?これはいったい・・・・・
様々な考えが頭を駆け巡り、俺の思考は一瞬だが停止して、目の前の黒渦に対して無防備に立ち尽くしてしまった。
それが命取りだった。
呆然とする俺に、渦は大きく口を開けて広がり、頭から丸呑みにしようと襲い掛かってきた。
「ッ!し、しまっ・・・!」
我に返ったがもう遅い。避けるタイミングが完全に一歩遅れてしまった。
闇に呑み込まれる・・・・・はずだった。
だがその時、突如俺の体が緑色の炎に包まれて燃え上がった。
「なにっ!?こ、これは・・・まさか!?」
風の精霊だ!
この緑色の炎は風の精霊だ!まさか、俺を護ってくれるのか?
俺を喰らおうとした闇の渦は、精霊の炎を浴びると、空中に霧散させられるように消えて行った。
「・・・・・風の精霊・・・・・俺を、助けてくれるのか」
体を包み込む緑色の炎が、夜の闇で揺らめいた。
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