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【972 圧倒】
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「無駄だ。貴様の攻撃は俺には通用しない」
爆裂空破弾を弾き飛ばし、双炎砲を打ち払う。皇帝の中級魔法はずば抜けた威力だった。
だがタジーム・ハメイドには、その一切がまるで通用しなかった。
「これならどうだァァァァァーーーーーーッツ!」
皇帝の右手の平で、超高密度に圧縮された風の球が激しく暴れ回る。
射程距離の短さから中級魔法に分類されているが、その破壊力は上級魔法と遜色のない風魔法、サイクロンプレッシャー!
振り被った右手をタジームの胸に叩きこむ!
「・・・・・フン」
「な・・・ッ!?」
実質上級魔法と言えるサイクロンプレッシャー。皇帝が使うソレは想像を絶する程の破壊力を誇る。だがそれさえも、タジームには右手一本で受け止められていた。
暴れる風の球を掴み、己の手の中に抑え込む。
「サ、サイクロンプレッシャーを・・・受け止めるだと!? 」
それは皇帝と言えども不可能な芸当だった。
本来サイクロンプレッシャーは、対象にぶつかった瞬間、押さえつけられていた風が解き放たれて暴れ出す。したがって受け止める事自体、もっと言えば触るさえ不可能なのだ。
だがタジームはその桁違いの魔力にものを言わせて、解放された風を力づくで無理やり封じていた。
「この町のように、貴様も焼かれるがいい」
左手で皇帝の右腕を掴むと、タジームは火の魔力を放出した。
「き、きさ・・・ぐッアァァァァァァーーーーーーーーッツ!
一瞬にして真っ赤な炎に全身を焼かれ、皇帝の叫び声が灰色の空に響き渡る。
「熱いか?だがな、家を焼かれた民の痛みはこんなものではないぞ」
右手で押さえていた皇帝の風魔法、サイクロンプレッシャーを握り潰すと、そのまま右拳に風を纏わせ皇帝の顔面を殴り飛ばす!
「うぐぁッ!」
炎に包まれたまま、鼻から血を飛ばして地面に落下していく皇帝に、タジームは右手に炎の魔力を込めて狙いをつけた。
「死ね」
言葉鋭く言い放つと、タジームは火球を連続して撃ち放った!
その大きさは一発一発が軽く人一人を呑み込む程である。
「ぐ、ぬおぉぉぉぉぉぉぉー-------ッツ!」
落下しながらも皇帝は、全身から魔力を放出して己を焼く炎を吹き飛ばした!
火の粉が空中に舞い散り、風に消えていく。
「このっ・・・ッツ!?」
すかさず風魔法で落下を止めて体を浮かせる。態勢を整えようと上空を睨んだ皇帝の目に飛び込んできたのは、自分への追撃として迫りくる何発もの巨大な火の球だった。
「なッ!?タ、タジィィィムゥゥゥゥゥゥゥー--------ッツ!」
両目を見開き、怒りの咆哮を上げた皇帝を、真っ赤に燃え上がる火球が飲みこんでいった。
そのまま中庭に叩きつけられると、二発、三発と次々に火球が撃ち込まれて、空まで届く爆炎が噴き上がった。
「・・・・・チッ、しぶといな」
燃え上がる巨大な炎、そして空を焦がす黒煙を見つめながら、タジームは舌を打った。
炎と煙に視界を防がれているのでまだその姿は見えないが、その魔力は感じ取れたからだ。
皇帝はまだ生きている。
タジーム・ハメイドの火球は、初級魔法と呼ぶには強大過ぎた。
並みの魔法使いならば、上級魔法の灼炎竜でも太刀打ちできないだろう。それほどの威力を持った火球を何発も受け、未だ爆炎の中心地で焼かれながらも、皇帝はまだ生きているのだ。
タジームが皇帝の生存を感じ取ったその時、風の刃が炎を斬り裂き、タジームの右頬をかすめた。
「・・・これだけ力量の差を見せても、まだ戦意は失っていないようだな」
頬を伝う赤い血を親指で拭い取り、タジームは目の前の黒煙に向かって言葉を発した。
すると煙の中から一瞬の強い光が発せられ、放出された魔力が黒煙を吹き飛ばし、ドス黒い魔力を纏った皇帝がその姿を現した。
その姿は凄惨を極めていた。全身は赤黒く焼けただれ、その体からは赤い血煙が上がっていた。
大きく乱れた呼吸は、すでに立っている事もやっとの状態だと教えていた。
しかしその目はまだ死んではいない。
憎悪の炎を燃え上がらせ、全身から発する殺気は目の前のタジームにぶつけられていた。
「また魔力開放で凌いだようだな?なるほど、曲がりなりにも俺と比較されるだけはある」
「・・・殺してやる」
呪詛のように、腹の底から重く響く言葉を吐き出すと、皇帝は両手に破壊の魔力を漲らせた。
「光源爆裂弾か・・・貴様はそれで大勢の兵達を殺し、町を破壊して火の海に変えた。俺は貴様を決して許さん」
両の拳を握り締めると、タジームはその拳に魔力を漲らせて構えた。
皇帝の魔力は大気を震わせた。
そしてその魔力に当てられた灰色の空からは、まるで雷でも落ちそうな轟音が地上へと響き渡る。
「ハァッ・・・ハァッ・・・つくづく・・・舐めてくれるな・・・なんだその構えは?それで余の光源爆裂弾を・・・・・」
その両手に漲る破壊の魔力は、強烈な光を発して灰色の空を眩しい程に輝かせた。
両腕を広げて弾みをつけると、そのまま一気にタジームに向かって押し出す!
光源爆裂弾!
「防げるとでも思っているのかァァァァァァァァー-------ッツ!」
巨大な破壊のエネルギー弾が、タジーム・ハメイドに向かい撃ち放たれた!
皇帝の光源爆裂弾の破壊力は、今さら説明するまでもない。
なぜならこの日すでに二発撃ちこまれており、今もなお巨大な爆煙が天高く上がっているのだから。
帝国のこの戦争における損害は大きい。
大陸一の軍事国家と呼ばれた帝国だが、軍は壊滅し、立て直しには十数年はかかるだろうと見ていた。
そのための補填はカエストゥスを制圧した後に、宝物庫から捻出しようという考えもあったため、上級魔法の使用は可能な限り控えていた。
だが中級魔法さえも通用しない以上、もはや使うしかなかった。
ここで撃てばタジームだけでなく、その後ろのエンスウィル城さえも跡形も無く消し飛ばしてしまうだろう。
宝物庫は惜しい。しかしそんな事を気に掛ける事態ではなくなっているのだ。
撃たねば負ける。敗北は死を意味する。勝たねば全てを失うのだ!
「吹き飛ぶがいい!タジィィィムゥゥゥゥゥー------------ッツ!」
生きるか死ぬか!ただそれだけだ!今ここで目の前の男を殺す!
掛け値なしの全力の光源爆裂弾がタジームに迫る!
「ハァァァァァー------ッツ!」
気合と共に、タジーム・ハメイドの両手が大きく光り輝く!
両の拳に込めた魔力を、迫り来る破壊の光弾に向けて撃ち放つ!
「魔力開放だと!?余の光源爆裂弾と撃ち合うつもりか!?」
「撃ち合う?そんなつもりはない・・・こうするんだ!」
タジームは撃ち放った魔力の波動で光源爆裂弾を受け止めると、爆発させないように光弾を包み込んだ。
「なにィィィィィィーーーーーーーーーッツ!?」
皇帝は驚愕した。
上級魔法の光源爆裂弾、皇帝の使うソレは町一つ消滅させる程の破壊力を誇る。
撥ね返す事も、迎撃する事も敵わない程に強大なその光弾を、タジームは魔力で受け止めたのだ。
「力と力をぶつけてしまえば、ここで爆発するだろう?城を破壊させるわけにはいかんからな。こいつは捨てさせてもらうぞ」
皇帝の驚きを他所に、タジームは両腕を振り上げて、光源爆裂弾をはるか空高くへと打ち上げた。
爆裂空破弾を弾き飛ばし、双炎砲を打ち払う。皇帝の中級魔法はずば抜けた威力だった。
だがタジーム・ハメイドには、その一切がまるで通用しなかった。
「これならどうだァァァァァーーーーーーッツ!」
皇帝の右手の平で、超高密度に圧縮された風の球が激しく暴れ回る。
射程距離の短さから中級魔法に分類されているが、その破壊力は上級魔法と遜色のない風魔法、サイクロンプレッシャー!
振り被った右手をタジームの胸に叩きこむ!
「・・・・・フン」
「な・・・ッ!?」
実質上級魔法と言えるサイクロンプレッシャー。皇帝が使うソレは想像を絶する程の破壊力を誇る。だがそれさえも、タジームには右手一本で受け止められていた。
暴れる風の球を掴み、己の手の中に抑え込む。
「サ、サイクロンプレッシャーを・・・受け止めるだと!? 」
それは皇帝と言えども不可能な芸当だった。
本来サイクロンプレッシャーは、対象にぶつかった瞬間、押さえつけられていた風が解き放たれて暴れ出す。したがって受け止める事自体、もっと言えば触るさえ不可能なのだ。
だがタジームはその桁違いの魔力にものを言わせて、解放された風を力づくで無理やり封じていた。
「この町のように、貴様も焼かれるがいい」
左手で皇帝の右腕を掴むと、タジームは火の魔力を放出した。
「き、きさ・・・ぐッアァァァァァァーーーーーーーーッツ!
一瞬にして真っ赤な炎に全身を焼かれ、皇帝の叫び声が灰色の空に響き渡る。
「熱いか?だがな、家を焼かれた民の痛みはこんなものではないぞ」
右手で押さえていた皇帝の風魔法、サイクロンプレッシャーを握り潰すと、そのまま右拳に風を纏わせ皇帝の顔面を殴り飛ばす!
「うぐぁッ!」
炎に包まれたまま、鼻から血を飛ばして地面に落下していく皇帝に、タジームは右手に炎の魔力を込めて狙いをつけた。
「死ね」
言葉鋭く言い放つと、タジームは火球を連続して撃ち放った!
その大きさは一発一発が軽く人一人を呑み込む程である。
「ぐ、ぬおぉぉぉぉぉぉぉー-------ッツ!」
落下しながらも皇帝は、全身から魔力を放出して己を焼く炎を吹き飛ばした!
火の粉が空中に舞い散り、風に消えていく。
「このっ・・・ッツ!?」
すかさず風魔法で落下を止めて体を浮かせる。態勢を整えようと上空を睨んだ皇帝の目に飛び込んできたのは、自分への追撃として迫りくる何発もの巨大な火の球だった。
「なッ!?タ、タジィィィムゥゥゥゥゥゥゥー--------ッツ!」
両目を見開き、怒りの咆哮を上げた皇帝を、真っ赤に燃え上がる火球が飲みこんでいった。
そのまま中庭に叩きつけられると、二発、三発と次々に火球が撃ち込まれて、空まで届く爆炎が噴き上がった。
「・・・・・チッ、しぶといな」
燃え上がる巨大な炎、そして空を焦がす黒煙を見つめながら、タジームは舌を打った。
炎と煙に視界を防がれているのでまだその姿は見えないが、その魔力は感じ取れたからだ。
皇帝はまだ生きている。
タジーム・ハメイドの火球は、初級魔法と呼ぶには強大過ぎた。
並みの魔法使いならば、上級魔法の灼炎竜でも太刀打ちできないだろう。それほどの威力を持った火球を何発も受け、未だ爆炎の中心地で焼かれながらも、皇帝はまだ生きているのだ。
タジームが皇帝の生存を感じ取ったその時、風の刃が炎を斬り裂き、タジームの右頬をかすめた。
「・・・これだけ力量の差を見せても、まだ戦意は失っていないようだな」
頬を伝う赤い血を親指で拭い取り、タジームは目の前の黒煙に向かって言葉を発した。
すると煙の中から一瞬の強い光が発せられ、放出された魔力が黒煙を吹き飛ばし、ドス黒い魔力を纏った皇帝がその姿を現した。
その姿は凄惨を極めていた。全身は赤黒く焼けただれ、その体からは赤い血煙が上がっていた。
大きく乱れた呼吸は、すでに立っている事もやっとの状態だと教えていた。
しかしその目はまだ死んではいない。
憎悪の炎を燃え上がらせ、全身から発する殺気は目の前のタジームにぶつけられていた。
「また魔力開放で凌いだようだな?なるほど、曲がりなりにも俺と比較されるだけはある」
「・・・殺してやる」
呪詛のように、腹の底から重く響く言葉を吐き出すと、皇帝は両手に破壊の魔力を漲らせた。
「光源爆裂弾か・・・貴様はそれで大勢の兵達を殺し、町を破壊して火の海に変えた。俺は貴様を決して許さん」
両の拳を握り締めると、タジームはその拳に魔力を漲らせて構えた。
皇帝の魔力は大気を震わせた。
そしてその魔力に当てられた灰色の空からは、まるで雷でも落ちそうな轟音が地上へと響き渡る。
「ハァッ・・・ハァッ・・・つくづく・・・舐めてくれるな・・・なんだその構えは?それで余の光源爆裂弾を・・・・・」
その両手に漲る破壊の魔力は、強烈な光を発して灰色の空を眩しい程に輝かせた。
両腕を広げて弾みをつけると、そのまま一気にタジームに向かって押し出す!
光源爆裂弾!
「防げるとでも思っているのかァァァァァァァァー-------ッツ!」
巨大な破壊のエネルギー弾が、タジーム・ハメイドに向かい撃ち放たれた!
皇帝の光源爆裂弾の破壊力は、今さら説明するまでもない。
なぜならこの日すでに二発撃ちこまれており、今もなお巨大な爆煙が天高く上がっているのだから。
帝国のこの戦争における損害は大きい。
大陸一の軍事国家と呼ばれた帝国だが、軍は壊滅し、立て直しには十数年はかかるだろうと見ていた。
そのための補填はカエストゥスを制圧した後に、宝物庫から捻出しようという考えもあったため、上級魔法の使用は可能な限り控えていた。
だが中級魔法さえも通用しない以上、もはや使うしかなかった。
ここで撃てばタジームだけでなく、その後ろのエンスウィル城さえも跡形も無く消し飛ばしてしまうだろう。
宝物庫は惜しい。しかしそんな事を気に掛ける事態ではなくなっているのだ。
撃たねば負ける。敗北は死を意味する。勝たねば全てを失うのだ!
「吹き飛ぶがいい!タジィィィムゥゥゥゥゥー------------ッツ!」
生きるか死ぬか!ただそれだけだ!今ここで目の前の男を殺す!
掛け値なしの全力の光源爆裂弾がタジームに迫る!
「ハァァァァァー------ッツ!」
気合と共に、タジーム・ハメイドの両手が大きく光り輝く!
両の拳に込めた魔力を、迫り来る破壊の光弾に向けて撃ち放つ!
「魔力開放だと!?余の光源爆裂弾と撃ち合うつもりか!?」
「撃ち合う?そんなつもりはない・・・こうするんだ!」
タジームは撃ち放った魔力の波動で光源爆裂弾を受け止めると、爆発させないように光弾を包み込んだ。
「なにィィィィィィーーーーーーーーーッツ!?」
皇帝は驚愕した。
上級魔法の光源爆裂弾、皇帝の使うソレは町一つ消滅させる程の破壊力を誇る。
撥ね返す事も、迎撃する事も敵わない程に強大なその光弾を、タジームは魔力で受け止めたのだ。
「力と力をぶつけてしまえば、ここで爆発するだろう?城を破壊させるわけにはいかんからな。こいつは捨てさせてもらうぞ」
皇帝の驚きを他所に、タジームは両腕を振り上げて、光源爆裂弾をはるか空高くへと打ち上げた。
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