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【966 必要とされる事】
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「私はフローラ・ラミレスです。こちらこそよろしくお願いします。あらためて、本当にありがとうございました」
帝国兵に捕まった私を助けてくれたのは、ジョルジュ様のお姉様だった。
深く頭を下げると、シャーロット様は、頭上げて、と笑って声をかけてくれた。
「あ~、フローラちゃん、そんなかしこまんないでよ。ゲスい男がいたから射っただけだしね。それよか、どっか行こうとしてたんじゃないの?」
シャーロット様に言われて思い出した。
「あ、そうだ!お城に行かないないと!すみませんシャーロット様、急いでますので私はこれで!」
「え、城?待って!城はダメだよ」
自分の役目を思い出して、シャーロット様の脇を走り抜けようとすると腕を掴まれた。
「え・・・?」
強い力で掴まれて、何事かと目を丸くすると、シャーロット様は真剣な顔で話し始めた。
「フローラちゃん、今城に行くのは死にに行くようなものだよ。少し前に城の近くを通ったんだけど、大臣のロペスさんが軍を率いて出陣していた。もう帝国とぶつかってる頃だと思う。今言ったら巻き込まれる」
「で、でも私は・・・私のヒールだって、少しは役に立つと思うから・・・」
みんな死んだ。みんな逃げずに戦った。だから私もこの魔力の限り戦わないと・・・・・
俯く私の肩に手が置かれる。顔を上げるとシャーロット様と目が合った。
シャーロット様のアイスブルーの瞳は、私の心の中まで見通すように、深く澄んだ色をしていた。
「・・・何か思い詰めてるね?あのさ、フローラちゃんの事情は知らないけど、自分から死にに行くのはダメだよ。見過ごせない。誰かを助けたいって気持ちは立派だし応援したいけど、それは自分が生き残ってからの話しだよ?フローラちゃんが死んじゃったら、これから先助けられる人も助けられなくなる。まずは自分を大事にして?いいね?」
「・・・・・」
反論なんてできるはずもない。シャーロット様の言う通りだ・・・・・でも、理屈じゃない。
納得したいけれど気持ちがついていけなくて、私はまた下を向いてしまった。
「あのさ、私・・・ッ!?」
なにかを言いかけて、シャーロット様は突然私に飛びついた。
「きゃぁッ!?」
肩を掴まれ地面に押し倒されたその時、耳をつんざく爆発音が鳴り響いた。同時に大きな地揺れが起きて、突風が吹き荒れた。とても目を開けていられなかった。
そしてそれは一発で終わらず、連続した爆発とそれに伴う大揺れ、そしてその衝撃が起こす大風が私達の体を強く打ちつけた。
な、何!?なんなの!?
お城の方からだ、シャーロット様の言う通り、きっとロペス様が皇帝とぶつかったんだ。
こんな大爆発、多分上級魔法だ。
私はシャーロット様に頭を抱えられ、ただ風が治まるのを待つしかなかった・・・・・
「・・・あ、あのシャーロット様、ありがとうございます。もう大丈夫では?」
「顔を上げないで!もう一発来る!」
ある程度風が治まって、私が体を起こそうとすると、シャーロット様が鋭く言葉を発して私を止めた。
その直後、わずかに顔を上げていた私の目に映ったのは、今までで一番の大爆発だった。
凄まじい爆風が襲ってきた。城まではまだいくらか距離があったけれど、シャーロット様が押さえてくれてなかったら、私なんて一瞬で吹き飛ばされていただろう。
目を閉じて歯を食いしばり体を低くして、必死に地面にしがみつくだけで精一杯だった。
しばらくそうして堪えて、やっと爆風が治まってきた時に目を開けると、エンスウィル城があった場所には巨大なキノコ雲が立ち昇り、カエストゥスの空を灰色に染めていた。
この時の私は知る由もなかったのだが、この時まだ城は落ちてはいなかった。
皇帝が城の前に並び立つカエストゥス軍に向かって、光源爆裂弾を撃ち放った事による爆煙が城を隠してしまったのだが、目にした位置の関係で私には、城が跡形もなく吹き飛んでしまったように見えたのだ。
呆然とへたりこんでている私の肩に、シャーロット様が手をかけた。
「・・・フローラちゃん、気をしっかり持って。私の父と母が一般人の救助を手伝っているんだ。一緒に来て」
「・・・・・・・」
すぐには言葉が出てこなかった。
だけど、ゆっくり顔を向けると、シャーロット様は力強い目で私を見つめ、もう一度言葉をかけてくれた。
「行こう。私もできるだけの人を誘導したけれど、あの爆発ではもうここにはいられない。でも最後にあなたと会えて良かった。白魔法使いなんでしょ?力を貸して、あなたが必要なの!」
シャーロット様から差し出された手を見て、なぜか急に、胸が締め付けられるような・・・とても切ないものがこみ上げてきた。
「あれ?フローラちゃん?・・・・・泣いてるの?」
エロール君の願いなら、どんなに辛くても頑張って生きないとって、そう思ってここまで走ってきた。
お城に行って戦っている人達の手当をしなきゃ、もう私にできる事はそれしかないって思ってた。
でもお城が無くなってしまったら、私は何をすればいいんだろう?
生きてる意味があるのかな?
「・・・辛い事がいっぱいあったんだね?・・・おいで」
差し出された手を握ると、シャーロット様は私をそっと引き寄せて、そして抱きしめてくれた。
温かい胸に顔をうずめて、頭を優しく撫でられると、私は涙が止まらなくなった。
それから私が泣き止むまで、シャーロット様は何も言わずに頭を撫でてくれた。
こんな私でも、必要だって言ってくれた事が嬉しかった。
お城が無くなっても、まだ私の力が役に立てる場所があるんだ。
エロール君・・・辛いけど、寂しいけど、私・・・頑張ってみるよ。
帝国兵に捕まった私を助けてくれたのは、ジョルジュ様のお姉様だった。
深く頭を下げると、シャーロット様は、頭上げて、と笑って声をかけてくれた。
「あ~、フローラちゃん、そんなかしこまんないでよ。ゲスい男がいたから射っただけだしね。それよか、どっか行こうとしてたんじゃないの?」
シャーロット様に言われて思い出した。
「あ、そうだ!お城に行かないないと!すみませんシャーロット様、急いでますので私はこれで!」
「え、城?待って!城はダメだよ」
自分の役目を思い出して、シャーロット様の脇を走り抜けようとすると腕を掴まれた。
「え・・・?」
強い力で掴まれて、何事かと目を丸くすると、シャーロット様は真剣な顔で話し始めた。
「フローラちゃん、今城に行くのは死にに行くようなものだよ。少し前に城の近くを通ったんだけど、大臣のロペスさんが軍を率いて出陣していた。もう帝国とぶつかってる頃だと思う。今言ったら巻き込まれる」
「で、でも私は・・・私のヒールだって、少しは役に立つと思うから・・・」
みんな死んだ。みんな逃げずに戦った。だから私もこの魔力の限り戦わないと・・・・・
俯く私の肩に手が置かれる。顔を上げるとシャーロット様と目が合った。
シャーロット様のアイスブルーの瞳は、私の心の中まで見通すように、深く澄んだ色をしていた。
「・・・何か思い詰めてるね?あのさ、フローラちゃんの事情は知らないけど、自分から死にに行くのはダメだよ。見過ごせない。誰かを助けたいって気持ちは立派だし応援したいけど、それは自分が生き残ってからの話しだよ?フローラちゃんが死んじゃったら、これから先助けられる人も助けられなくなる。まずは自分を大事にして?いいね?」
「・・・・・」
反論なんてできるはずもない。シャーロット様の言う通りだ・・・・・でも、理屈じゃない。
納得したいけれど気持ちがついていけなくて、私はまた下を向いてしまった。
「あのさ、私・・・ッ!?」
なにかを言いかけて、シャーロット様は突然私に飛びついた。
「きゃぁッ!?」
肩を掴まれ地面に押し倒されたその時、耳をつんざく爆発音が鳴り響いた。同時に大きな地揺れが起きて、突風が吹き荒れた。とても目を開けていられなかった。
そしてそれは一発で終わらず、連続した爆発とそれに伴う大揺れ、そしてその衝撃が起こす大風が私達の体を強く打ちつけた。
な、何!?なんなの!?
お城の方からだ、シャーロット様の言う通り、きっとロペス様が皇帝とぶつかったんだ。
こんな大爆発、多分上級魔法だ。
私はシャーロット様に頭を抱えられ、ただ風が治まるのを待つしかなかった・・・・・
「・・・あ、あのシャーロット様、ありがとうございます。もう大丈夫では?」
「顔を上げないで!もう一発来る!」
ある程度風が治まって、私が体を起こそうとすると、シャーロット様が鋭く言葉を発して私を止めた。
その直後、わずかに顔を上げていた私の目に映ったのは、今までで一番の大爆発だった。
凄まじい爆風が襲ってきた。城まではまだいくらか距離があったけれど、シャーロット様が押さえてくれてなかったら、私なんて一瞬で吹き飛ばされていただろう。
目を閉じて歯を食いしばり体を低くして、必死に地面にしがみつくだけで精一杯だった。
しばらくそうして堪えて、やっと爆風が治まってきた時に目を開けると、エンスウィル城があった場所には巨大なキノコ雲が立ち昇り、カエストゥスの空を灰色に染めていた。
この時の私は知る由もなかったのだが、この時まだ城は落ちてはいなかった。
皇帝が城の前に並び立つカエストゥス軍に向かって、光源爆裂弾を撃ち放った事による爆煙が城を隠してしまったのだが、目にした位置の関係で私には、城が跡形もなく吹き飛んでしまったように見えたのだ。
呆然とへたりこんでている私の肩に、シャーロット様が手をかけた。
「・・・フローラちゃん、気をしっかり持って。私の父と母が一般人の救助を手伝っているんだ。一緒に来て」
「・・・・・・・」
すぐには言葉が出てこなかった。
だけど、ゆっくり顔を向けると、シャーロット様は力強い目で私を見つめ、もう一度言葉をかけてくれた。
「行こう。私もできるだけの人を誘導したけれど、あの爆発ではもうここにはいられない。でも最後にあなたと会えて良かった。白魔法使いなんでしょ?力を貸して、あなたが必要なの!」
シャーロット様から差し出された手を見て、なぜか急に、胸が締め付けられるような・・・とても切ないものがこみ上げてきた。
「あれ?フローラちゃん?・・・・・泣いてるの?」
エロール君の願いなら、どんなに辛くても頑張って生きないとって、そう思ってここまで走ってきた。
お城に行って戦っている人達の手当をしなきゃ、もう私にできる事はそれしかないって思ってた。
でもお城が無くなってしまったら、私は何をすればいいんだろう?
生きてる意味があるのかな?
「・・・辛い事がいっぱいあったんだね?・・・おいで」
差し出された手を握ると、シャーロット様は私をそっと引き寄せて、そして抱きしめてくれた。
温かい胸に顔をうずめて、頭を優しく撫でられると、私は涙が止まらなくなった。
それから私が泣き止むまで、シャーロット様は何も言わずに頭を撫でてくれた。
こんな私でも、必要だって言ってくれた事が嬉しかった。
お城が無くなっても、まだ私の力が役に立てる場所があるんだ。
エロール君・・・辛いけど、寂しいけど、私・・・頑張ってみるよ。
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